コロナ後の観光業はどう生き残るべきか。星野リゾートの戦略を聞く

こんにちは。自粛生活ですっかり自宅警備員と化したヨッピーです。

先日、ひょんな事から星野リゾートの代表とお話する機会がありましてね。

■Withコロナ時代、これが新しい旅の様式
https://www.hoshinoresorts.com/mag/kounou/special.php

その時に僕が「ちょっと~!取材させてくださいよ~!」って言ったら「良いよ」って言ってくれたので、

それをタテに「だって!!!!御社の代表が!!!良いよって言ったんです!!!」「ぜひお願いしますって言ってくれたんですよ!!!!!!!!」ってゴネまくった結果、アレコレ取材させてくれる事になりました。ラッキ~!

コロナ後の経営、どうしよう……!

 

って悩んでいる観光業界の方々はたくさん居ると思うので、業界のトップランナーである星野リゾートがどういう生き残り戦略でコロナとの戦いに挑もうと思っているのか、あれこれ聞いてみようと思います!突撃じゃ~~~!

「星のや東京」へ

そんなわけで星野リゾートが運営する、東京の大手町にある日本旅館「星のや東京」さんにお邪魔しました!

 

そしてその前にいったん、星野リゾートについて。

1914年に軽井沢に星野温泉旅館を開業。以来、軽井沢を拠点に業務を展開するも、1991年に4代目となる星野佳路(よしはる)が代表に就任すると経営困難に陥ったリゾート施設「リゾナーレ小渕沢」や「アルファリゾート・トマム」を再生させるなどして全国に事業を拡大。「星野リゾート」系列施設は国内外に現在42施設ある。他にも「よなよなエール」でお馴染みのクラフトビールメーカー、ヤッホーブルーイングも星野リゾート系列だったりする。僕も「青森屋」には泊まりに行った事があるけどめちゃめちゃ良かった。また行きたい。

そして本日、案内してくれくれるのがこちらの赤羽総支配人です!


今日はよろしくお願いします!


よろしくお願いします!


入口がめちゃくちゃカッコいいな。


まず、この玄関で手の消毒と、体温のチェックをお願いしています。誠に申し訳ないのですが、体温が37.5度以上の方は入館をお断りしております。


おお。ちなみにこれで引っ掛かったら、キャンセル料とかはどうなるんです……?


その際はキャンセル料を頂いておりません。


まあ、そうなりますよね……。経営的にはしんどいんでしょうけど……。


そして、本来であればここからはスタッフがお客様のお荷物を預かり、一緒に客室階までお伺いするのですが、そういったサービスは原則行わない事になりました。エレベーターはどうしても密室になってしまいますので、そこでお客様とご一緒するのを避けよう、と。もちろんご要望がある場合はお荷物をお持ちします。


なるほど。


そして、チェックイン業務についてですが、フロント前が混雑するのを避けるため、お客様のお部屋で行う事にしております。また、チェックインの際に館内のご説明など、一通りスタッフが行っていたのですが、こちらも印刷した用紙をお渡しする事で簡略化しております。なるべく、お客様との接触時間を減らそうという試みですね。

こちらが「星のや東京」の客室!広々してて豪華!!

そしてチェックイン時に海外への渡航履歴があるかどうかの確認。

 

そしてこちらが館内や客室の説明がなされた用紙。本来はスタッフが口頭でひとつひとつ説明していたそうです。

 


それって、葛藤がありませんでした?今までは、「なるべくお客さんに接してコミュニケーションを取って丁寧にやる」っていうのが良しとされてたわけじゃないですか。


それはもうおっしゃる通りですね。星野リゾートはそういった丁寧な接客によって今のブランドイメージを作ってきましたから。ただ、今の状況下においては「安心・安全こそが最大のサービスである」という風に優先順位を変えまして。私たちももどかしさはありますが、とにかく安心・安全に利用出来る環境作りを最優先にしています。


なるほどな~。

 

こちらは各フロアにある共有スペース「お茶の間ラウンジ」。ここでちょっとした作業をしたりくつろいだり出来るような空間になっているが、ここに設置されていた無料で飲み食い出来るお茶菓子やコーヒー、紅茶などの軽飲食は全て撤去され、2Fのフロント前のスペースに集約された。


やはり、飲食が絡むものについてはスタッフの目が行き届く範囲で使って頂こうという方針です。

 

フロント前のイベントスペースと、そちらに移動されたコーヒー、紅茶、お茶にお茶菓子といった軽食類。
部屋に持って帰ってお部屋で食べても良いそうだ。

コロナ前までは、毎晩こちらで行われていた江戸太神楽。いわゆる伝統的な曲芸のようなもの。海外のお客さんにめちゃめちゃ好評だったらしい。こういったお客さんがたくさん集まるイベントは残念ながら全て中止になった。

その代わり、様々な種類の日本酒の「利き酒」が出来る「SAKEラウンジ」を時間を延長して行っている。
ある程度時間の幅を取る事で、お客さんの密集を避ける狙いがあるのだとか。

こちらはアート作品のような星のや東京の天然温泉。

そして温泉の入り口に脱衣かごを設置し、入浴者がこちらの脱衣かごを使う事で、今現在何人が入浴中なのか一目でわかるようになっている。今後は入口にセンサーを設置、常時利用する人数を把握するなどして、密を避ける仕組みを導入予定。

更にお食事。星野リゾート全ての旅館・ホテルでブッフェ形式での提供が中止され、ソーシャルディスタンスを考慮した配置でのレストラン、もしくは客室での提供に変更したそうです。


ちなみに、この「星のや」さんだと、元々高級な施設で部屋数もそれほど多くないから「密を避ける」ってまだ対応しやすいかと思うんですけど、リゾナーレみたいにプールがあって家族連れがたくさん来るような施設だとどうしてるんですか?


プールがあるリゾート施設、リゾナーレ八ヶ岳。


プールなどは常に利用者数をカウントしておりまして、お客様向けコンテンツサイトで常時人数を確認する事が出来るようになっております。また、リゾナーレにおいてもブッフェ形式のお食事を中止し、お部屋でお食事を取って頂けるように変更しております。チェックインやお客様へのご案内の簡略化も同じですね。その代わり、例えばエレベーターは30分に1度消毒、清掃するなど徹底した衛生管理に人員を配置しております。


じゃあええと、ざっくりまとめると、

【星野リゾートのコロナ対策】

・スタッフのマスク着用、定期的な手の消毒の徹底

・受付時に手指の消毒、検温、海外渡航歴のチェック

・各所に除菌用アルコールの設置

・チェックイン、ご案内などスタッフとお客さんの接触時間を減らす

・館内の清掃の徹底

・温浴施設、プール、その他館内施設の利用人数の把握と混雑の回避

・ブッフェ提供の中止、ソーシャルディスタンスを取ってのレストラン利用と客室での食事提供の併用

・室内で人が集まるイベントの中止

・屋外アクティビティの強化

・アクティビティの同時利用人数を制限


……という感じですかね。大変そうだなあ。

 

コロナで変わる観光体験

改めてお話をお伺いしました。


よく「コロナで社会が変わる」とか言われてますけど、特に観光業界においてどういう変化があると考えてますか?


当社の代表も言っておりますが、「マイクロツーリズム」という概念ですね。お客様は大きく3つに分けて、「海外のお客様」「他府県のお客様」「地元のお客様」という風に考えているのですが、このうち「海外のお客様」及び「他府県のお客様」についてはなかなかお越しになれないのではないかと。


まあ、特に海外はそうでしょうね……。


でも、逆に言えば東京にお住まいのお客様が海外や他府県に行きづらい状況もあると。そこで「ハワイにも北海道にも行けないから、じゃあせめて近くの星のや東京に泊まってみようか」という需要が間違いなく大きくなるだろうと。実際、この「星のや東京」も時期によっては海外のお客様も多かったのですが、4月以降は東京にお住まいの方がほとんどになりました。


おーなるほど。「遠から近へ」という変化があるわけですね。


そうです。それが全国各地で起こるだろう、と。だから近隣にお住まいの方に満足して頂き、喜んでもらえるようなサービスに変える必要があります。


なるほど。星野代表も「長野県のお客さんに野沢菜出しても『うちの婆ちゃんの野沢菜の方が美味いよ!』って言われちゃう」って言ってましたね。てあとは接客スタイルの変化も大きいですよね。密なサービスが敬遠されるっていう。


それもその通りです。これまで良しとされてきた、近い距離で丁寧な接客というものが受け入れられなくなると。あとは滞在スタイルにも変化があると思います。どちらかと言えば週末にどこかちょっと遠出をしてホテルに泊まる、というスタイルが多かったものが、平日、リモートワークしながらホテルに泊まる、というような。実際、当施設も週末の稼働の方が多かったのですが、近ごろは平日と休日の差が少しずつなだらかになっている傾向があります。


なるほど。滞在習慣の変化か。


それに、リモートワークが前提になれば、通勤しなくて済むようになりますよね。そうなると、今までお父さん、お母さんの仕事の関係で週末しか来れなかったご家族の方々が、リモートワークをしながら1週間まるまる滞在する、というようなスタイルも出て来ると思っております。リゾナーレなど、多くの施設でそういった方向けのプランを提供をしております。

 

大人は仕事、子供は遊ぶ リモートワークステイプラン(長期滞在プラン)概要
https://www.hoshinoresorts.com/information/release/2020/03/84690.html


あー、確かにこれは需要ありそう!子どももずっと家に居たら気が滅入るでしょうしね。


そうですね。この「平日」とか「週末」とか「夏休み」とか「GW」とかそういう、期間とか時間の概念が薄れて行くのはないかと思っています。


それわかります。僕も曜日感覚がゼロになりました。この辺の対策を全部わーっと頑張ればなんとか乗り越えられそうですか……?


とは言え、この騒動になってからお客様が8割減りましたからね……。徐々に回復しつつあるとは言え、完全回復にはほど遠いですし、海外のお客様については当分見込めないでしょうから。私たちとしても手探りで、でもなんとかやるしかない、という気持ちでいます。


そっか~~~。星野リゾートさんなら「ヤッP~~~!コロナ対策の特効薬を考えたぞ~~!これで準備万端!だいじょうブイ!」みたいなのがあるのかと思いました。


残念ながら細かい事をひとつひとつやって行くしかないです。私たちとしても、業界全体としても、誰も経験した事が無い、かつてない危機ですからね。「自分達が新しいスタンダードを作って行くんだ!」という気持ちで頑張りたいと思っております。

 

以上!

この「かつてない危機」をなんとか乗り越えようとする、星野リゾートの取り組みについて紹介しました!
今後の戦略を考えるにあたって、何かしらのヒントになると良いなと思っております!
「旅行」や「旅」といったものがまた、気兼ねなく楽しめる日が来る事を願って!