ご当地サウナ委員会のタカヤマ(@takayamasauna)です。

2022年もあと1ヶ月。今年も全国各地に沢山のサウナ施設が誕生しましたね。サウナや水風呂が何種類も揃った施設も、今では珍しくなくなりました。

それでもサウナ旅に出る理由を、改めて考えさせられます。全国各地のサウナを巡られた読者さんもいらっしゃるかもしれません。しかし目が肥えてしまった方にこそ、おすすめしたいサウナがあります。

それがこちら、「五箇サウナ」。京都の北部・五箇にある村のかやぶき古民家を改装したアウトドアサウナです

まるで実家のように、心から寛ぐことができる安心感。

はじめて訪れる土地なのに、なぜだか懐かしさを感じる不思議。

ぱちぱちと鳴る薪の音と、ゆらゆらと揺れる茜色の炎。

窓からの僅かな自然光に照らされ、ベンチの上に寝転ぶ贅沢。

四季折々の季節の音を聴きつつ、つい寝入ってしまうほどの夢のような時間。

ここには何もないけれど、何もないことの豊かさに気付かされる。

生きていく上で大切だと思える感性が蘇るようなサウナでした。

あなたは京丹後という街を知っているか

今回の旅の行き先は京丹後。こちらの街に、冒頭でおすすめしたサウナがあります。

同じ京都府とはいえ、京都市からはとても離れています。京都市から京丹後までは在来線でおよそ3時間、京都から名古屋までの距離と変わりません。しかしそれでも、足を運ぶ価値がこの街にはあります。

海に面した地域を「海の京都」と呼び、京丹後の近くには日本三景で有名な天橋立があります。この地域を訪れる観光客は、その多くが天橋立を目的地とし「海の京都」まで足を運ぶそうです。

それから、京丹後には伊根というエリアがあります。こちらは「日本で最も海に近い町」「日本のヴェネツィア」と呼ばれており、海外からも多くの観光客が足を運びます。海に面した舟屋から直接、船を出航できる独特な構造になっています。

「海の京都」と呼ばれているだけあり、海の幸が豊富です。肉や野菜などの品質も極めて高く、日本有数の長寿の街とも言われている京丹後の人々において、食文化が暮らしの支えとなっているようです。

風光明媚で美食な街、京丹後。一般的な京都のイメージからは想像もできない「海の京都」ならではの魅力に満ち溢れています。しかし本当の見どころはここから。京丹後の街に誕生した「-蒸- 五箇サウナ」を紹介していきましょう。

驚くほど何も整っていない古民家サウナ

2022年11月。京丹後の五箇という集落に「-蒸-(むす) 五箇サウナ」が誕生しました。銭湯のように人と人がゆるく繋がり、みんなで地域を温めていくというコンセプトがあるそうです。ロゴとデザインがとても可愛らしいですね。

いざ現地を訪れてみると、古民家が川沿いにぽつんと立っているだけでした。これは本当にサウナ施設なのか。しかし古民家の右上には煙突があるので、もしかしたらこれがサウナなのかもしれません。

すると古民家の中からスタッフとおぼしき方が出てきて、こちらに向けて大きく手を振ってくださいました。-蒸-(むす) 五箇サウナを運営されているキリさんに、本日は火入れをして頂けます。

足立キリさんは、長野にある有名なアウトドアサウナ「The Sauna」で初代ヘルパーとして働いておられました。The Sauna卒業後は地元の京都府へと移住し、念願だったアウトドアサウナを作る目標を実現させた方です。

キリさんはThe Saunaにいらっしゃったんですね!サウナを作る目標は元々お持ちだったんですか?

そうですね!The Saunaにいた時から地元の京都でサウナを作りたいと思っていて、サウナ番をしていた時に「アウトドアサウナの良さを京都で広めたい」という想いが強くなったので、独立してから京都に戻ってサウナ作りをしました!

-蒸-五箇サウナが作られる前の、古民家時代の姿

サウナを作る目標が地元で実現できたんですね!サウナを作る上で大変だったことはありますか?

サウナ作りの予算が限られていたことですかね。地元の施工屋さんにも入って頂けたんですが、自分でDIYしなくてはならないところも多くて、とにかく身体を動かしました。まだ整備中のところもあるので、引き続き作業は続けています。

例えばこれは、使わなくなったトイレを埋め立てるために、ハンマーで外壁を解体しています。どう壊したらいいのかとか全くわからなかったんですが、父親や知人などの力も借りて、トイレを埋め立てることができましたね。

ご自身で模索しながら手作りで進めているのが凄いですよね。サウナ室内も作業されたのですか?

サウナ室は主に壁面塗装をやりました。弁柄と柿渋の自然塗料を使っていて、京都の伝統的なお寺のお堂にも使われていた塗料です。こちらも色んな方々の力を借りて、1つのものを作っていくのも楽しみだったので、皆で実現できてよかったです!

キリさんのお人柄に周りが動いたのですね。サウナ作りを実現してみて、今どんなことを感じますか?

茅葺屋根のアウトドアサウナを作りたいと考えていたので、目標は動けば実現するんだなというのを感じました。都心の新しいサウナ施設と比べると、うちは何も整っていないので驚くかもしれませんが、むしろ余白を楽しんで頂けると嬉しいですね!

何もないのに心が豊かになるサウナ体験

-蒸- 五箇サウナのサウナエリアはこのようになっています。DIYの跡がところどころに残りながらも、サウナを利用する分にはストレスのない環境です。サウナから水風呂、外気浴への導線も近いですね。

外観からは手つかずの古民家のように映りましたが、更衣室とシャワーやトイレなどは新しく作られたものがあるので安心ですね。バスタオルやポンチョなども貸し出しがあるので、自前の水着のみ持っていけば問題ありません。

そしてこちらがサウナ室になります。北欧から取り寄せた薪ストーブに80kgのサウナストーン、それから段の高低差がある2種類のサウナベンチがあります。照明は足元にあるものの、サウナ室全体はとても暗い印象です。

高い方のベンチは横幅が広く、身長がある大人でも寝そべることができます。室内は主に自然光からの光と薪ストーブの炎が照らすのみ。-蒸- 五箇サウナの周辺環境は自然溢れる環境、自然音に耳を澄ましながら、自分の時間を楽しみます。

-蒸- 五箇サウナをグループで利用するとまた違った体験に。都会の喧騒から離れ、普段サウナを共にすることが難しい男女同士でも、水着着用で楽しむことができます。こうしたコミュニケーションを楽しめるのもアウトドアサウナならでは。

水風呂は古民家のすぐ脇を流れている清流に浸かります。この地は日本昔話の羽衣天女伝説が残る場所になっており、磯砂山の山水が流れる川になっています。清流の中で全身に羽衣が出来たとき、羽衣天女伝説に憑依できるかもしれません。

清流の後はインフィニティチェアに寝そべり外気浴。川のせせらぎや自然音に耳を澄ませているだけで、いつも感じている感覚とはまた違う、頭のてっぺんからクリアになっていく感じ。非日常のととのいとも言えるかもしれません。

外気浴中にスタッフが手渡してくれたのは、なんと柿。敷地内の木から採れたそうで「こんなほっこりしたやり取り、いつぶりだろう」と心が温かくなりました。ここには何もないけれど、自然と人がある。何も整っていないところだけれど、心が整う。

そのようなことを、-蒸- 五箇サウナで感じることができました。

最後にお知らせ

-蒸- 五箇サウナは週末のみの営業、時間ごとの貸切利用(14,000円~/曜日変動)が基本です。ただし月曜日だけは銭蒸DAYという開放日を設けており、京丹後市在住の方は500円~、それ以外の方は1,000円で利用できるので、こちらもご検討ください!

-蒸- 五箇サウナの施設詳細

HP:https://tango-spa.snack.chillnn.com/snack/musu-gokasauna-
住所:〒627-0053 京都府京丹後市峰山町鱒留1648
料金:金、土、日、祝日のみ貸切営業。完全予約制。月曜一部開放あり。
備考:ホテルKISSUIENからの送迎サービスあり(有料)。

取材・執筆:タカヤマ(@takayamasauna

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