長崎県

平戸オランダ商館

平戸オランダ商館は4世紀の時を経て復元された、大航海時代の建造物です。海の町・平戸の歴史や、貿易、禁教政策などの対外政策の歴史を学ぶことがます。

長崎県平戸の貿易史を学べる「平戸オランダ商館」を取材!

平戸オランダ商館は日本とオランダとの貿易の歴史を感じられる博物館でした。


平戸大橋から車で約10分。

平戸オランダ商館は日本とオランダの貿易の歴史を学べる博物館です。


オランダ倉庫特有の柱を眺めたり、


貴重な展示物を見学したり、

4世紀前の平戸の町の様子を知ることもできるんです!

そんな平戸オランダ商館の魅力を、担当の日高さんに教えてもらいました!

2011年に復元された平戸オランダ商館

オランダ商館の建物は昔からそのままここに建っているんですか?

もとは1609〜1641年まで存続した建物で、現在の姿は復元されたものです。「平戸和蘭商館跡」として国の史跡に指定された場所に、当時の姿を忠実に再現する形で2011年に復元されました。

屋根材は瓦で、全て石積みで造られています。

復元するのは大変ですよね。造り方は当時の設計図などを参考にしたのでしょうか?

当時、建設にあたって購入した材料の会計帳簿が残っていたんです。

東インド会社が経営していただけあって、帳簿はかなり細かく書かれていたので、購入の記録から算出して復元に至りました。

帳簿から復元ですか!まるで魔法のような復元方法ですね・・・!

はい、ここを復元したひとたちの情熱はとてつもないものです。

そんな当館は日本の大工職人が和洋折衷の様式で建設しました。アジア各地に現存するオランダ倉庫も参考にして復元は進められたんです。

商館の向こうにはお城がみえますね。

平戸城です。平戸のシンボルで、平戸オランダ商館から海を挟んだところにあります。

橋も見えますね。まるでゴールデンゲートブリッジ。

あちらは平戸大橋です。昼間は赤く美しいですが、イルミネーションが灯る夜景も素敵ですよ。

海があって港があるから、平戸は貿易の街として栄えたわけですね。

その通りです。1550年に初めてポルトガル船が入港。その後、オランダ、イギリスがやって来て、平戸は西洋貿易の街として栄えたのです。

長崎の貿易史といえば出島の印象が強いのですが、平戸はどのような立ち位置だったのでしょうか?

出島に比べて博多からのアクセスが良好と、地理的なポイントが大きいですね。また、当時の平戸オランダ商館はアジアNo.1の売り上げだったんです。

アジアNo.1!?とんでもない繁盛ですね。

平戸オランダ商館は日本とオランダの貿易が始まった場所

それでは館内を見ていきたいと思います。1階は常設展示、2階では写真展などの企画展示が行われています。

それに、1階の建物には角材、2階には丸太が使われているという建築の構造にも注目いただくとさらに愉しむポイントが増えますよ。

平戸オランダ商館では、どんなことが行われていたのでしょうか?

一言で言えば、日本とオランダの貿易が始まった場所です。江戸幕府から貿易の許可をもらった東インド会社が東アジアの貿易拠点として設置したことがはじまりです。

出島との違いに平戸のほうが福岡からのアクセスがいいということでしたが、国際的には出島とどのような違いがあるのでしょうか?

出島はとても有名ですが、実は平戸は出島よりも前から貿易が行われていたのです。日本で初めてオランダと貿易したのが平戸オランダ商館なんです。

なるほど、それは知りませんでした!

東インド会社のVOCマークが刻まれた石

「FIRANDO」って何ですか?

当時の平戸の呼び名です。「ひらど」と発音が似てるでしょ?

いわれてみれば、確かにそうですね。

こちらの重要そうに展示されている船の模型は一体?

この船に乗って、オランダ人が平戸にやって来たんです。

平戸の貿易史のルーツとなる船ですね。模型の造りも精工で迫力があります。

こちらは1621年の平戸図です。

これはかなり貴重な資料ですよね?

そうなんです。平戸港を描いたものとしては、現存する最古の絵図と言われています。よく見ると、オランダ国旗やイギリスのセントジョージ旗が描かれています。

VOCとは?

VOCはオランダ東インド会社のマークです。このVOCアーチ石は平戸オランダ商館の建造部材として現存する唯一の資料なんです。

貴重な資料が結構残っていますね。

そうなんです。平戸オランダ商館は、日本の対外政策の歴史を学ぶうえでも重要です。たくさんの方に遊びに来てほしいですね。

オランダ人が本物と証明!オランダ錨証明書

支柱が太くて、まるで石柱のような重厚感すらありますね。

生で見ると、かなり迫力がありますよね。柱がY字型になっているのがオランダ倉庫の特徴です。

オランダ商館の建築にはいくつかの謎があって、そのうちのひとつは2階に続く階段がないことです。

なるほど、会計帳簿には階段の材料が記されていなかったんですね。

いちばんはっきり分からないのが、1.2階合わせて21本の支柱です。1階に11本があって、2階には10本。1本足りないんです。

なるほど、明確な設計図から復元していないので謎多き建造物となるわけですね。

2階の支柱は真ん中が空いているので、展示とか行われてたんじゃないかなと私は思います。まあ、このようにオランダ商館の楽しみは「わからない」というとこにもあるんです。復元してみてこれだけわからないのは面白いなと思いますね。

こちらは貴重ですよ。オランダ錨証明書です。

錨証明書とは一体?

平戸の海から大きな錨が見つかりました。その錨がオランダのものであるという証明書です。出島でオランダ人に確認して出してもらったそうです。

この証明書はレプリカですか?

これ、とてもきれいに保存されていますが、実は原本なんです。

原本なんですね!保存状態がいいので原本だとは思いませんでした。

ここでしか見られない展示物がたくさんあります。まだまだいきますよ!

オランダと日本の混血児の手紙「こしょろジャガタラ文」

こしょろジャガタラ文?不思議な名ですね。

1639年、江戸幕府の鎖国政策により、オランダ人やその妻子が国から追放されました。平戸からも40人ほどがVOCの本社があるインドネシアのジャカルタに追放となったのです。

その中で「こしょろ」という混血児がいました。こしょろが生まれ故郷である日本への思いを寄せた手紙がジャガタラ文です。

なるほど。故郷を懐かしむような内容が書かれているんでしょうね・・・。

当時は布に手紙文を書く習慣があったんですか?

いえ、手紙が送れなかったときもあった時代に、オランダ船が運べるお茶を包む「モノ」として紙には書いていないという抜け道を使ったので布にかかれているんです。

なるほど、それで布に書いてあるんですね。

実は、当館には同じく平戸にある松浦史料博物館から来ている収蔵品がたくさんあるんです。

松浦史料博物館には、なぜそんなにたくさん収蔵されているんですか?

平戸藩の松浦家に収集癖のある方がいたんです。そのおかげで収蔵品の質も良いんですよ。

松浦家の現在の当主は松浦史料博物館の理事長を務めていらっしゃいます。

ところで、こちらを解説いたします。コルネリア家族肖像です。コルネリアは右側の女性で、オランダ人の平戸商館長を父に、平戸の女性を母にもつ混血児なんです。西洋画の雰囲気ですがよくみると顔に日本人の雰囲気がありますよね。

たしかに、昔のハーフ顔を描いた絵はあまり見ないので希少ですね。ジャガタラ文の話にあったように、混血児は追放されたりと、大変だったでしょう。

改めて見ると、木材が太くて力強いですね。さて、先ほどの話の続きなのですが、松浦史料博物館以外にも連携している博物館などはあるんでしょうか?

現在、オランダ商館ネットワークを作っているんです。

オランダ商館ネットワークとは?

商館同士でサミットを開催し、それぞれの施設の進捗状況を共有したり、ホスト商館がある街を紹介したりして交流が続いています。今後も互いに連携していろんな取り組みをできたらいいなと思っています。

西暦の年号表示で取り壊しの命令へ

これ、東インド会社のマークですよね?

覚えていただけたみたいですね。これは施設の拡大整備にともない、1639年にできた設立記念碑です。「1639」が幕府から突っ込まれてしまいました。

え、1639がですか?何が悪いかったのでしょうか?

1639年というのは西暦ですよね。つまりキリスト教関連施設であると。当時出されていた禁教令のもと、取り壊しの命令が下りました。

こうして1640年に平戸オランダ商館の歴史に幕が下りました。その後、オランダ商館は出島に移転することになるのです。

今からするとむちゃくちゃな理由で幕を閉じたんですね・・・。

お土産もありますね。ドロステチョコレート?はじめて見ました。

こちらはオランダ人に大人気のお菓子です。オランダ人のみなさんは日本でこのお菓子を見ることにとても驚くんです。

オランダ井戸やオランダ塀!屋外にも見どころあり!

屋外にも見どころがあるんですよね。

はい。館内展示だけでなく、屋外もぜひ見ていただきたいです。

猫に見られている・・・。

平戸は自然豊かな場所なので、猫も気持ちよさそうに暮らしています。

これがオランダ井戸ですね。

オランダ井戸は、平戸オランダ商館を代表する現存遺構です。

続いては、オランダ塀。

江戸時代初期に平戸オランダ商館が存在していたことを最もよく示す遺構なんです。

商館の主体部と市街地の間に建てられたもので、火災防止や住民の視界からさえぎることを目的に建設されました。

江戸時代初期にここでオランダと貿易していたんだなと、当時の風景をイメージできますね。

山と海を眺めながら、当時に思いをはせるのもいいですよね。

平戸オランダ商館は日本とオランダの貿易史を学べる博物館でした。

平戸オランダ商館は日本とオランダの貿易史を学べる博物館でした。

17世紀の建造物を2011年に復元した高い技術も感じらたり、海と山に囲まれて、当時へ思いをはせることもできます。

福岡からは出島よりアクセスがいいので、長崎旅行のプランにぜひ組み込んでみてください。

平戸オランダ商館ではYouTubeチャンネルも運営しています。ぜひのぞいてみてください!

平戸オランダ商館の施設情報

公式サイト

https://hirado-shoukan.jp

 

営業時間

8:30〜17:30

 

休館日

毎年6月第3火水木曜日

 

料金

大人 310円(280円)
子供 210円(180円)

※()内は20名様以上の団体料金です

 

アクセス:長崎県平戸市大久保町2477
・車

伊万里東府招ICから約1時間〜1時間20分

佐世保ICから約1時間

 

・電車 / バス
佐世保駅 → [松浦鉄道1時間30分] → たびら平戸口駅→ [路線バス] → 平戸 → 平戸オランダ商館

・バス
博多バスターミナル→ [させぼ号1時間51分] → 佐世保バスセンター→ [西肥自動車運行路線] → 平戸 → 平戸オランダ商館

 

取材・執筆:KOH