神奈川県

神奈川県立 生命の星・地球博物館

神奈川県小田原市にある「神奈川県立 生命の星・地球博物館」は、地球と生命、自然と人間がともに生きることをテーマにした自然史博物館。展示物を通し、地球の歴史や生物の成り立ちを次の世代に伝えていく役割を担う存在です。また、自然に関する調査や研究や資料の保管だけでなく、学生や地域住民への教育活動も積極的におこなっています。

生命の星・地球博物館に行ってみた!大迫力の展示物が満載

神奈川県小田原市にある「神奈川県立 生命の星・地球博物館」は地域に根ざした自然史博物館。地球の誕生から生物の変遷、環境問題まで幅広く学ぶことができます。そんな生命の星・地球博物館の魅力を広報の方にお伺いしてきました!


 

「あつめる、しらべる、つたえる」

 

そんな博物館の役割を果たすため、真摯な活動を続けているのが、神奈川県小田原市入生田にある「神奈川県立 生命の星・地球博物館」

1995年、神奈川県立歴史博物館の自然史部門が独立する形で誕生したこの施設では、

博物館の醍醐味とも言えるマンモスや恐竜の骨格標本だけでなく、

世界中の珍しく美しい石の数々、

壁一面のアンモナイト、

世界一美しいと言われるモルフォ蝶、

実物大の百科事典など、さまざまな展示物を目にすることができます。

今回は、そんな生命の星・地球博物館の見所や楽しみ方を広報の方に徹底取材!

地球や生命の成り立ち、そして私たち人間が自然界と共存してくためにできることは何か。私自身考えさせられる取材となりました。

今回ご対応いただいた、企画情報部企画普及課長・専門学芸員(無脊椎動物担当)の佐藤さん。

地球と生命の成り立ちを学べる自然史博物館

「生命の星・地球博物館」の概要、見所を教えていただけますか?

当施設の主な役割は「地球と生命・自然と人間がともに生きること」をテーマに、自然科学に関する幅広い資料を収集、管理し、次の世代に伝えていくことです。施設内は大きくわけて

  • 常設展示
  • 期間限定の展示・イベント
  • その他の施設(ミュージアムライブラリ、ミュージアムシアター等)

の3エリアから構成されています。ただ、現在はコロナの影響でミュージアムシアターは閉鎖しています。そのため、まずは一番のメインである常設展示をしっかり堪能していただくのが王道ですね。

常設展示にはどのような物があるのでしょうか?

常設展示は全部で4つのエリアにわけられており、地球の誕生から人類の現在と未来までを流れで学べるようになっています。そのため、それぞれのエリアによって展示されているものはさまざまです。実際に見た方が早いと思いますので、早速一緒に見ていきましょうか。

よろしくお願いします!

【常設展示エリア】圧巻の展示物の数々……!

エリア1「地球を考える 固体地球の営み」

最初のエリアは「地球を考える 固体地球の営み」です。ここでは、地球が生まれた過程、地球自体の仕組み、生命の誕生に関する展示をおこなっています。

壮大なスケール……!ちょっと気になったんですが、この模型で光っている部分は何を表しているんですか?

赤が火山、黄色が地震発生地を表しています。こうして見ると、日本は至るところに火山や地震発生地がありますよね。世界中を見回しても、人口が1億人を超える国でここまで火山や地震発生地が多いのは、日本、メキシコ、インドネシアくらいです。

急にメキシコとインドネシアに親近感が湧いてきました。

めちゃくちゃ光ってました。

あと、このエリアでは世界各国から集められた「石」もぜひ見て欲しいですね。ここまで豊富な種類の石を見られる場所はそうそうありませんよ。

これだけもずっと見ていられそうです。

壁一面のアンモナイトもありました。

エリア2「生命を考える 地球生命の営み」

次のエリアは「生命を考える 地球生命の営み」です。ここでは、地球に誕生した生命と、その進化の過程をメインに展示しています。

うおおおーーっ!これぞ博物館!!テレビやパソコンで見るのとは迫力が違いますね。

そうですね。どんなにVRやARが発達したとしても、本物の臨場感には変えられません。今はコロナの関係でなかなか難しいですが、できるだけ触れるものは触ったり、嗅げるものは嗅いだりして、五感を通して本物を経験して欲しいと思います。

私自身、これまでこうした自然史博物館に来る機会はなかったんですが、本物に触れてその魅力を肌身に感じています!

よかったです(笑)。さらに、博物館であれば動物園では絶対にできない「肉食動物と草食動物を並べる」といったこともできるので、そうした視点を持って楽しんでもらうのもいいかと思います。

ただ、博物館では「実際に生きている動物」は展示できないため、近くに映像をうつすモニターを置いて「目の前にある標本の動物が実際はどんな風に生きているのか」イメージしてもらいやすいような工夫をしています。

実際に動いている姿をイメージしやすいよう、モニターに映像が流れていました。

気になったのが、このとてつもなく大きい木(?)は何の木なんでしょうか?

マンモスや首長竜よりも大きな木。

豆の仲間(被子植物)です。

豆!?豆ってもうちょっと小じんまりしたものだとばかり思っていました。

普通のものはもっと小さいんですが、中にはこんな大きなものもあるんですよ。ここに展示されているのは根本から1/3だけで、実物は50mを超えるほど大きいんです。童話で「ジャックと豆の木」ってありますよね?アレって実は、こうした木がモデルになってたんじゃないかって勝手に想像しています。

たしかにこの木なら昔の人は「登っていくと天まで届く」と思ってしまのも納得です。全然違う分野の知識と知識が結びついて面白い……!

それも博物館の醍醐味のひとつですね。このエリアには動物や植物だけでなく昆虫の標本も多数あるので、そちらもぜひご覧ください。

 

 

よく見る単に並べただけの標本ではなく、ひとつのアート作品のような配列ですね!ただ、佐藤さん。アレってもしかして……。

 

世界一大きなゴキ○リです。

(命の危険を感じるデカさ)

 

体長28mの首長竜。上から見るとその大きさは群を抜いていました。

次のエリアに向かうエスカレーターには「マンモスの目線」「ティラノサウルスの目線」などの工夫が施されています。

 

エリア3「神奈川の自然を考える 神奈川の大地と生物」

3つ目は「神奈川の自然を考える 神奈川の大地と生物」エリアです。ここでは、神奈川県の自然や生物の歴史、現状についての展示をおこなっています。ちなみに、「神奈川県」と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

神奈川と言えば、勝手ながら大都会・横浜、サーファーの聖地・湘南、避暑地・鎌倉、みたいなイメージがありますね。自然というよりかは都会、観光地といったイメージです。

そうですよね。ただ、実は神奈川県って「日本の自然を凝縮した箱庭」と呼ばれるほど豊富な自然や生物が見られる場所なんです。というのも、陸地は3つのプレートがぶつかる世界的にも珍しい位置にあり、それぞれの場所由来の生きものが勢揃いしているんです。また、相模湾は親潮と黒潮がちょうどぶつかりあう場所に位置しているだけでなく、深さが約1,500mもあって深海生物もたくさん棲んでいるんです。

へーっ!自分がこれまで抱いていた神奈川県のイメージとは大きく異なりますね。

鮫から蟹までさまざまな生物が生息中。

こんな大きな蟹が神奈川にいるとは。

みなさんよくそう言われます。さらに、日本で一番最初に神奈川で外来生物が発見されるケースが多いのも、横浜や横須賀という日本最大級の港街があるためです。

神奈川県にそんな一面があったとは……!ちなみに、ここで展示されている植物の世話やメンテナンスはどのようにされているのでしょうか?下に土台があるので、そこから自動で水が出ていそうですが。

あっ、ここにある植物は全部模型です。

えっ、模型!?よくレストランの店前に置いてある料理サンプルの植物バージョンということですか??

はい。超高度な技術を必要とするため、日本全国でも1〜2社さんしか作成できない模型です。ただ、そのぶん恐ろしい値段がします(笑)

(ゴクリ)

 

エリア4「自然との共生を考える 人類の現在と未来」

最後のエリアは「自然との共生を考える 人類の現在と未来」です。ここでは、現在地球が抱える環境問題の普及的な展示をおこなっています。

やはり、こうした問題は避けて通れませんよね。

はい。神奈川は道路工事をはじめとした開発が盛んなため、地層の剥ぎ取り標本が充実しているのも特徴のひとつです。ただ、無秩序な開発は動物や植物の絶滅を招く恐れもありますから、開発と自然保護を両立させる難しさもあると考えています

こうした課題を多くの方に伝えていくのも、自然博物館としての役割というわけですね。

 

「実物百科 ジャンボブック」

常設展示から出てすぐにあるこの「ジャンボブック」も、ぜひ見てもらいたいエリアのひとつです。

すべてが実物大。これぞ本物の百科事典……!シンプルにワクワクします!

このエリアだけはベンチも本仕様になってるんですよ。

芸が細かい。

【その他の施設・エリア】小さなお子さまからご高齢の方まで対応!

常設展示場の次は、その他のエリアを順番に回ってみましょう。

よろしくお願いいたします!

 

ミュージアムライブラリー

ここは図書館として利用したり、夏休み期間中に自由研究の相談を受け付けたりするときに利用する場所です。ちなみに相談を受け付けてくれる方は、元校長先生ですよ。

えっ!引退してから博物館職員として働かれているんですか?

そうです。教師として働かれているうちから、かなりこうした分野に興味があったようですよ。

 

ミニ企画展示コーナー

ここでは、約250畳の特別展示室を使って開催するほど大きくない小規模な展示をおこなっています。今(取材当時2020年12月10日)は「世界のシダ植物」についての展示を開催中です。

ミュージアムシアター(現在閉鎖中)

308席あるミュージアムシアターは、現在コロナ対策のため閉鎖中です。

普段は展示物への理解をより深めるために、子どもから大人まで楽しめるようなクイズ・参加型映像や、自然をモチーフにしたハイビジョン映像を上映しています。

提供:生命の星・地球博物館

 

喫茶店「ともしび喫茶 あ〜す」

1階の「ともしび喫茶 あ〜す」では、自然史博物館ならではの「恐竜カレー」や「地層パフェ」といったメニューを提供しています。このほかにも、3階にはレストランがありますし、3階のテラス席でもお食事を楽しんでいただくことができます。

3階のテラス。

よく見ると背もたれにオウムガイのモチーフが。

売店「ミュージアムショップ」

売店では、博物館にちなんだお土産を販売しています。

公式パンフレットをモチーフにした地球博ラムネが人気とのこと。

救護室・授乳室

救護室や授乳室もご用意しておりますので、具合の悪くなった方や小さなお子さま連れの方はスタッフまでお気軽にお声がけください

 

ターゲットは0歳から100歳まで。より楽しむコツは「友の会」と「ボランティア」にあり

公式ホームページから引用

すべてのエリアをご案内いただきありがとうございました!もう少し深くこの施設を楽しむコツを教えていただきたいのですが、ターゲット層などはあるのでしょうか?

ターゲットは絞っていません。あえて言うのなら「0歳から100歳までがターゲット」です。今はコロナの影響で少なくなっていますが、これまで私たちは土日や夏休みをあわせ年間に100日くらいイベントを開催してきました。内容は子ども向けの企画から、超マニアックな企画までさまざまです。そのため、それぞれの企画としてはターゲットを絞っていますが、全体を通して見ればどんな人でもどこかに引っかかっている、と考えています。

なるほど。そのほか、「生命の星・地球博物館をもっと楽しむコツ」のようなものはあるのでしょうか?

私としては、ぜひ「友の会」「博物館ボランティア」を活用してほしいですね。

「友の会」と「博物館ボランティア」とは、どのような活動をしているのでしょうか?

友の会は、会員の皆さまが主体となって講座を開催したり、会報を作ったりして、自然をより学び、楽しむための交流を目的とした会です。年間のべ2,000名ほどに参加いただいています。
博物館ボランティアは、展示物となりそうな植物の採集をおこなったり、裏方の資料作成や展示開設をしたり、活動内容は多岐に渡ります。こちらは年間のべ4,000名ほどに参加いただいています。

もはやスタッフの一員ような形ですね!より深く学んだり、より深く自然と触れ合ったりしたい人にはたまらない仕組みのような気がします。

そうですね。ただ、私たちは会員の方達を無償のボランティアだとは思っていません。なるべく、動物好きなら動物、植物好きなら植物といった風に、その方が好きな分野に携われているように配慮しています。活動がきっかけで大学もその分野に進み、そこから大学院へ進学し、最終的には大学の先生になった人もいますよ(笑)。

それはすごぎますね(笑)。

当施設では、友の会の会員やボランティアだけでなく、来館された方にもなるべく主体性を持って学んでほしいと思っています。展示物の説明書きを少なくしているのも、あえてなんです。「写真を撮って、見て終わり」で、わかった気になるのではなく、そこから先を自らもっと調べていってほしいという想いからです。

そうした意図があったんですね。私自身、今回の取材を通してこれまで興味がなかった自然科学に興味が湧いてきました。それでは、最後に何かメッセージがあればよろしくお願いいたします。

これからも社会教育施設として、教育の種まきができるよう、「あつめる・しらべる・つたえる」という役割を引き続き担っていきたいと思っています。

この度はありがとうございました!

「友の会」

  • 会費:年額2,000円(年額1万円の賛助会員もあり)
  • 特典:定期刊行物の郵送、会員限定講座への参加、観覧料金の割引、館内施設利用料金の割引
  • 申込方法:窓口、または郵送
  • 問い合わせ先:神奈川県立生命の星・地球博物館 友の会事務局
    (電話:0465-21-1515、FAX :0465-23-8846、友の会E-mail kpmtomo@ybb.ne.jp※入会のお申し込みはできません)

(詳細はこちら

 

「博物館ボランティア」

  • 問い合わせ先:神奈川県立生命の星・地球博物館 ボランティア担当
    (電話:0465-21-1515、お問い合わせフォーム

(詳細はこちら

生命の星・地球博物館の料金、営業時間、アクセス

【公式ホームページ】

http://nh.kanagawa-museum.jp/

※入館予約制を実施している場合がございます。ご来館前に公式ホームページからご確認ください。

【施設概要】

・住所:〒250-0031 神奈川県小田原市入生田499
・電話番号:0465-21-1515

【開館時間】

・午前9時~午後4時30分(入館は午後4時まで)
・休館日:月曜日(祝日・振替休日にあたる場合は翌平日)、館内整備日(8月を除く、原則として毎月第2火曜日、12月・1月・2月の火曜日)、年末年始、燻蒸期間、国民の祝日等の翌日(土曜日、日曜日または国民の祝日等にあたるときを除く)。そのほか臨時の休館日はこちらから。

【入館料()内は20名以上の団体料金】

・20歳以上65歳未満(学生を除く):520円 (410円)
・15歳以上20歳未満、学生(中学生・高校生を除く):300円 (200円)
・高校生、65歳以上:100円 (100円)
・中学生以下:無料

※そのほかの詳しい割引等についてはこちらから

【アクセス】

・車の場合:国道1号線から→「地球博物館前」交差点まがる 駐車場110台分 ※土日祝日は入館制限のため電車もしくはバスでお越しください。
・電車の場合:東京駅から(東海道新幹線をご利用の場合)新幹線 (約40分)→ 小田原駅 箱根登山線 (約10分) → 入生田駅
・バスの場合:JR小田原駅から伊豆箱根バス、元箱根・関所跡・箱根園行き、入生田バス停より徒歩3分

※詳しいアクセスについてはこちらから

 

取材・執筆マッサー
編集:レクリム編集部