鹿児島県

薩摩英国館ティーワールド

自家製紅茶「夢ふうき」や世界各国の紅茶、本格的なアフタヌーンティーなど、紅茶と軽食を楽しめるスポットです。紅茶やティータイムに関係した雑貨類の販売も。資料館では、生麦事件から薩摩藩留学生をイギリスに派遣するに至るまでの鹿児島とイギリスの関りや紅茶の歴史が学べます。

奥深い紅茶の世界を知って体験できる「薩摩英国館ティーワールド」に行ってきた!

お茶どころとして有名な鹿児島県南九州市知覧町にある「薩摩英国館ティーワールド」で、紅茶の世界を広く知ることができました。グルメは紅茶煮豚のサンドイッチなど、紅茶を飲むだけでなく食べて楽しめるメニューが揃っています。


紅茶の世界を広く知ることのできる「薩摩英国館ティーワールド」は、お茶どころとして有名な鹿児島県南九州市知覧町にあります!

JR鹿児島中央駅から鹿児島交通バス「知覧特攻観音入口」行きにのって約1時間12分、「武家屋敷入口」下車して徒歩5分でたどり着きます。庭に置いてある赤いロンドンバスが目印です。

館内は大きく分けて

・紅茶や軽食を楽しむ「ティールーム」

・英国と薩摩の関わりや紅茶文化を知る「資料館」(入館料350円、小・中学生250円)

・紅茶を中心としたお土産物を買う「ミュージアムショップ」

の3つからなっています。飲んで、食べて、知って、買ってと紅茶を深く楽しめる場所です。

さらに「ミュージアムショップ」や「ティールーム」で販売・提供している紅茶には、自家農園で育てた自家製紅茶もあります。紅茶好きが高じて、未経験から苗からの栽培まで始めてしまったのだとか。

▲館長の田中真紀さん(左)に、紅茶製造担当の田中京子(右)さん
▲館長の田中真紀さん(左)に、紅茶製造担当の田中京子(右)さん

ということで今回は、薩摩英国館に実際にお伺いして、館内の楽しみ方や紅茶の魅力を、館長の田中真紀さんに教えてもらいました!

 

紅茶や軽食から本格的なアフタヌーンティーまで楽しめる「ティールーム」

今日はよろしくお願いします! まずはティールームのことから教えてください。

ティールームでは、日本紅茶協会認定のティー・インストラクターである私の母・田中京子の指導のもと、美味しい紅茶や軽食をお出ししております。紅茶は世界各国の産地のものから、ここ鹿児島で自家栽培して作った「夢ふうき」や「紅ひかり」などをお出ししております。

▲夢ふうきパフェ、紅茶煮豚のサンドイッチ (画像提供:薩摩英国館ティーワールド)

スイーツは英国式のスコーンが人気です。また、自家製紅茶「夢ふうき」を使ったソフトクリームやパフェ、ランチメニューの紅茶煮豚のサンドイッチなど、紅茶を飲むだけでなく食べて楽しめるメニューが揃っています。

本格的なアフタヌーンティーも楽しめると聞きました。

アフタヌーンティーは、フィンガーサンドイッチ2種類、数種類のスイーツ、スコーン、ビスケット、紅茶のセットを2,000円でご用意しております。基本的には前日までの予約をお願いしておりますが、当日でも対応できる場合があるので聞いてみてください。窓の前を流れる川を眺めながらゆっくりお楽しみください。

アフタヌーンティーっていつから始まった文化なんですか?

1840年代のイギリスで始まったと言われています。その頃は夕食が夜の8-9時頃で、その間の空腹しのぎに紅茶とバター付きパンを食べたのが始まりだったとか。その後、女性たちの社交場として華麗な物へと発展して、ヴィクトリア時代には大流行しました。

▲キュウリを薄く切るのが本格的な英国式アフタヌーンティー。昔のキュウリは栽培が難しく貴重だったため、アフタヌーンティーで出すのがおもてなしだったのだとか。

▲イギリス流にスコーンにはクロテッドクリームが添えられています。濃厚なのにさっぱりとした後味で、バターやホイップクリームとはまた少し違った味わいです。

陶器も華やかで素敵ですね。見ているだけでうっとりします。こういう素敵な茶器で優雅にティータイムを楽しめるのがいいですね!

この陶器は薩摩英国館オリジナルなんです。イギリスの老舗デパート「リバティ」で、日本人初のテキスタイルデザイナーを務めた忠隈真理子さんにお願いしてデザインしてもらいました。

未経験からお茶の苗を植えて自家製紅茶を作りスタート

 

自家製紅茶はどのような経緯で作ることになったのですか。

薩摩英国館は1992年からオープンしていて、はじめは資料館のほかにイギリスの紅茶を100種類くらい取り揃えていました。そうしたら、2000年に枕崎市の野菜茶業研究所の方が試験的に作ったべにふうきの紅茶を持ってきてくれたんですよ。香気・水色・滋味の三拍子揃った素晴らしい紅茶で、「おいしい!」と母と一緒に感動しました。

何とか鹿児島産の紅茶を商品化したいと思ったのですが、昭和46年に紅茶の輸入自由化がされて以来ほとんどの農家さんが緑茶に転換しており、栽培をしてくれるところは見つかりませんでした。「自分たちで作ってみたら」と後押しされて、栽培を始めました。

▲茶畑の様子(画像提供:薩摩英国館ティーワールド)

最初はべにふうきとべにひかりの2種類を400本植えました。植えてしばらくして畑に見に行ったら、雑草に埋もれて苗が見えなくてびっくりしました。除草剤を使わずに育てていたので、雑草の方が成長が早くて。その後、何度も根気よく雑草取り繰り返したらお茶が大きくなって、除草しなくても大丈夫な立派な木になりました。

茶葉を紅茶にする方法はどうやって学んだのですか?

母が茶業試験場へ行って研修を受けて覚えました。何度も通ってまずは小さい機械で作れるようにして、それから手もみの講習なども受けて手もみ茶の作り方を学びました。

▲茶畑で作業する田中京子さん(画像提供:薩摩英国館ティーワールド)

行動力のあるお母様ですね!ティーインストラクターの資格も取られて、さらに茶業試験場で紅茶づくりまで学ばれて!

資格は元々私が取るつもりだったのですが、当時ちょうど次女の妊娠がわかりました。大阪で年40回の講座に参加しなくてはいけなかったのでさすがに厳しくて。そんなとき母が「私が代わりに行こうか?」とピンチヒッターとして行ってくれて、それから母はすっかり紅茶にのめり込んでいきました。当時50代後半だったのですが、カセットテープに入れた録音を聞きながら一生懸命勉強していました。母は少し前までここで館長をしていましたが、現在は紅茶づくりをメインにやっています。

作った紅茶はいつ頃から売り始めたのですか?

2003年にべにふうきから作った紅茶をオリジナルブランド「夢ふうき」として商品化してお客さんに販売するようになりました。その「夢ふうき」を2007年にイギリスの「グレート・テイスト・アワード」に出品したら日本人で初めて賞を頂きました。それ以降、出品した年はすべて受賞しています。

ミュージアムショップには自家製紅茶やティータイムを楽しくする商品が

▲ミュージアムショップ

自家製紅茶はミュージアムショップでも購入できるんですね。

家族スタッフ総出で手摘みして、香りや色を確かめながら丹精込めて作っているので大量生産は難しく数に限りがあるのですが、予約注文も承っております。収穫時期によって紅茶の味わいは変わりますので、その変化も楽しんで頂けたら。

(画像提供:薩摩英国館ティーワールド)

味はどんな風に変わるんですか?

一番紅茶(ファーストフラッシュ)は緑茶より少し遅い4月半ばごろに収穫が始まります。香りがよくて、夏の太陽に当たっていないので渋みが軽い、そのまま香りを楽しんでもらいたい紅茶です。

二番紅茶は一番積みの40日後くらいに収穫します。夏の日射しを受けるのでタンニンがたくさん作られて渋みがありますけど、コクがあってミルクティーによく合います。

太陽の光が茶葉に渋みを与えるのですね。

▲オリジナルブランド「TEALAN(ティアラン)」シリーズは、紅茶や緑茶をハーブとブレンドしたもの。ハーブの爽やかさと茶葉の旨味が合わさった飲みやすいお茶です

▲その他、ミュージアムショップにはティータイムを楽しく彩る茶器やクロス、紅茶に合うお菓子などが揃っています。

 

生麦事件から薩摩藩留学生に至る鹿児島とイギリスの関係史を知る「資料館」

資料館の見どころついて教えてください。

資料館では、薩摩の近代化への分岐点となった生麦事件から薩英戦争、薩摩藩留学生のイギリス派遣に至る歴史を、Illustrated London News(絵入りロンドンニュース)などで、英国側の視点から紹介しています。

イギリスで「霧の画家」として高い評価を受けた水彩画家・牧野義雄(1869-1956)の知られざる名作「雨のBBC」はぜひ見て欲しいです。

温かいガス灯の光の奥にほのかに描かれている街の風景が印象的な作品で、かつて小説家H.G.ウェルズが所蔵し「この絵にはロンドンの全てが凝集されている」と評していたそうです。

 

ティータイムは幸せ時間

田中さんはいつからイギリスや紅茶に関心があるのですか?

高校時代にイギリスにホームステイをしました。ステイ先の家族は毎晩夕食が終わった後に、ティータイムを楽しむ時間があって、左手にビスケット、右手にミルクティーで話をしたりテレビを見たりしました。紅茶のある時間がすごく楽しい思い出です。今でも紅茶を飲んでいるとイギリスにいた時の楽しい感情や街の匂いまで思い出すような気がします。

ティータイム=楽しい・幸せな時間の象徴なのですね。最後に、ここに来てみたい方へコメントをお願いいたします!

地ビールや地酒に近い感じで、“地紅茶”という言葉があります。収穫して作った土地で飲むのが実は一番おいしいと思っていて、鹿児島の水で淹れる鹿児島の紅茶は最高においしいんです。それは他のどこででも味わえない、ここだけで味わえる特別な味です。ぜひ状況が落ち着いたら、産地の紅茶を味わいに来てください!

 

〒897-0302 鹿児島県南九州市知覧町郡13746-4

TEL. 0993-83-3963

開館時間:11:00〜17:00

休館日:毎週火曜日(祝祭日は開館)

資料館入館料: 350円、小・中学生250円(歴史クイズシート付き)。

http://www.satsuma-eikokukan.jp/index.html

 

取材・執筆:ちえ