「このへんは雰囲気が違いますね、同じ島とは思えない」
山の中を走る道路が突如として海に向かう。同時に道路が広くなり綺麗に舗装された近代的な景色が広がる。ここチェジュ島には2つの側面がある。火山性の地形が織りなす大自然という面と、近代的に整備されたリゾート地という面だ。
「ここからはリゾート地だからね。高級ホテルもいくつかある。ロッテホテルにシーラホテル、カジノだってある。まあ、ここにくればリゾート気分を味わえるよ」
オルレ市場で男が残した言葉の謎を解き明かし、「なんだ、エウォル地区まで戻る必要なかったんだ」と駐車していたタクシーに戻ると、フロントウィンドウに紙が挟まっていた。おそらく、あの男が残したものだろう。
とりあえず、これまでの流れで、この座標の位置に向かえばいいことが分かる。調べてみたところ、高級リゾートホテルや観光施設が密集するここ中文地区らしい。
通りを進むと、さすが観光地だけあって、目を惹く形をした奇抜な建物がいくつか見えた。道を歩く観光客の数も多い。
「あの巨大なホテルはなんですか?」
左手に巨大なホテルが見えた。
「ああ、ロッテホテルだね」
中文地区の中心に位置し、広大な敷地を誇るロッテホテル チェジュは500の客室と9つのレストラン、6つの宴会施設、ジム、外国人専用のカジノなどを備える一大リゾートホテルだ。観光客からの人気も高い。
そういえば、ミレイもこういうホテルに泊まってゆっくりしたいって言っていたな。ただ、どう考えてもお値段もなかなかなものだろうし、こういった高級な感じは苦手だ。二人で旅行に行ってもリーズナブルな宿ばかり泊まっていた。なんだろう、この島の景色はぜんぶミレイに繋がるような気がしてきた。
「さらにこの奥にはシーラホテルもあるよ」
ロッテホテルを横目に見ながらシーラホテルの方向に向かう。
「ここだな」
指定された座標の場所に到着する。その場所は車通りの多い道路の真ん中だったので、近くにタクシーを停車し、歩いて向かった。
「あとはこのイラストの意味ですね」
道路脇に茂る樹木の間から、強い木漏れ日が溢れ、ほのかに漂う海風に木々が揺れ、道路に落とされたその光たちもゆっくりと揺れていた。