真冬の北海道全駅制覇。クリスマスから始まった6日間の記録_PR

北海道の全駅制覇にライター・patoが挑戦。廃線・廃駅・運休路線を含めた道内の「駅メモ!」対象駅・559箇所すべてにアクセスします。極寒の大地で過ごした六日間。悪夢のような旅路の果てに見たものとは?(読了目安時間:50分)

※本記事は『駅メモ! – ステーションメモリーズ!-』の提供でお送りいたします。

2018年12月25日 AM 9:00 クリスマス

めちゃくちゃ冷たそうな海からみなさんこんにちは。あけましておめでとうございます。2019年もよろしくお願いいたします。

さて、この光景は2018年の年の瀬、それもクリスマスのものですが、入ったら一瞬で体温を奪われそうな極寒の海が見えるかと思います。

ちょっと角度を変えると冷たい海の向こうに氷山のような白い塊が見えるかと思います。はっきり言ってめちゃくちゃ寒いです。人智を超えた寒さとはこのことかと一人で唸っております。

ここがどこかと申しますと、北海道は江差町という場所です。地図で見るとこのようになります。

北海道の南に位置する町で、函館市からバスで3時間ほどの場所に位置し、バス以外はほとんど公共交通機関がないような場所です。人口は約7800人と小さな街で、奥尻島へと行くフェリーがあることと、江差追分(えさしおいわけ)発祥の地として有名な町です。

では、なぜこんな場所にいるのか、そこから説明しなければならないかと思います。やはり、言葉が悪いですが江差町は北海道の中でもあまり有名な場所ではないと思います。札幌や函館などといった有名な都市ではなく、なぜこの場所にいるのか、少し長くなりますがそこから説明しなければなりません。

物語はSPOT編集部から突如やってきたメールから始まりました。

 

SPOT編集部
「北海道……」

pato
「どうしたんですか? 何が北海道なんですか?」

SPOT編集部
「北海道……」

何かショックなことでもあったのでしょうか。いつもなら、あの手この手で巧みに言葉を駆使し、地獄のような旅に誘ってくるのですが、もはやそれすら放棄、地名しか呟かなくなっていました。たぶん策を弄するのが面倒になったんでしょう。

 

pato
「もしかして、北海道の全駅制覇とかそういうのですか?」

SPOT編集部
「北海道……」

ちゃんと喋れや。

 

pato
「そして駅の記録を毎度おなじみの駅メモさんで取るというあれですか?」

SPOT編集部
「北海道……」

なんなんだよこいつ。

 

pato
「行くんですね? 僕が全駅制覇いくんですね? 北の大地に」

SPOT編集部
「北海道……」

もはや、うわごとのように北海道としか言わない編集部、トラウマ級の何らかの被害に遭った人みたいになっていますが、きっと全駅制覇してこいと言いたいのでしょう。

ということで編集部より示された今回のルールです。

駅メモ北海道全駅制覇ルール

・北海道の「駅メモ」対象駅すべてを取る
アイテム利用可。特急、新幹線、何を使っても良い
・期限は無制限、何日かかっても良いがすべて取るまで終わらない
寒いので暖かくして行く

最後のルールはなんなんですか。言われなくても暖かくしていきますよ。

さて、ここで僕の地獄旅にはおなじみとなった「駅メモ」について説明させてください。

駅メモ!-ステーションメモリーズ
https://ekimemo.com/

 

 

「おでかけをもっとたのしく。」をコンセプトにした位置ゲーム。スマホなどのGPS機能を利用し、その場所の近くにある駅を集めることを目的にしている。対象は全国9,000以上の駅であり、ユーザー同士の駅の争奪ゲームとしても楽しめるが、旅行などの移動記録としても楽しめるアプリである。また、一緒に旅する「でんこ」というキャラクターが豊富で、「でんこ」育成ゲームとしても楽しめる。(アプリのインストールはこちら)

 

ゲーム画面はこちら。画面右下にあるチェックインボタンを押すと、そのとき一番近くにある駅にチェックインすることができる。ここでは「新宿」となっている新宿で押したからだ。

右下にいるのが「でんこ」と呼ばれる持ちキャラで、全国の各駅は他のユーザーの「でんこ」が守護しているが、駅にチェックインすることでその駅を取ることも可能となる。

この駅メモを使って北海道すべての対象駅を取ることになるのだが、ここで、この指令がいかに鬼畜であるかを説明したい。

そもそも駅メモには、その県全部の対象駅を取得する「マスターオブ〇〇」という概念が存在する。例えば香川県の全ての駅を取ったのならば「マスターオブ香川」である。これは大変名誉な称号で、多くのユーザーが目指すところだ。

 

これは四国の全駅を制覇した時の画像だが、このように駅メモでは各県ごとの制覇状況がカウントされている。全て奪取した県はcompleteと表示されていることがわかると思う。

これと同じ要領でマスターオブ北海道を目指すわけだが、個人的には、あらゆるマスターオブの中で北海道が一番鬼畜で難易度が高いと思っている。そう、一番鬼畜なのだ。これからその理由を順を追って説明していきたいと思う。

 

1. 単純に対象駅が多い

 北海道の駅メモ対象駅は559駅だ。これは異常な数だ。東京都の658駅に次ぐ2番目の多さだ。例えばこれが香川県の駅メモ対象駅なのだけど、路線図に起こすとこうなる。

対象駅100駅の香川県。なんとか取れそうな気がしてくる。ほんわかとやってても取れそうな気がしてくる。なんか楽勝そうじゃない? 旅を楽しんでたら取れたりしない? 同時にお遍路やってもいけそう、そんな気がしてくる。

そして、これが北海道の路線図だ。

ゲロ吐きそう。何らかの悪夢じゃないのこれ。

これ全部取るの? ほんとに? 細かくなりすぎて文字読めないよ? この路線図作ってる段階で発狂しそうになりましたからね、まあ相当のナイトメアですよ。

ちなみに今回のルールに「駅メモのアイテム利用可」と入っているので、「アイテム駆使すれば余裕でしょ?」と思う方もいるかもしれません。ただ、駅メモもそんなに甘くないんですね。もちろん少しラクにはなるのですが、アイテムを使うとしても近くまでは行かないとチェックイン出来ないんですよ。

とにかく尋常じゃない数の対象駅がある。そう覚えておいてください。

 

2. 土地が広大

 言わずと知れたことだが、北海道は広い。とにかく広い。その広さは桁外れで、東京都の36倍。本州の真ん中に北海道があったとするとこんな感じになる。

こんなド級に広い土地を右往左往するのだから、とにかく大変であることしか想像できない。単純明快に悪夢だ。

 

 3. 列車ダイヤがシビア、おまけに冬は大変

 北海道のみならず、日本においては都市部以外のほとんどが車社会を形成している。自然と列車に乗る機会が減り、採算が取れないので本数が減らされていく。そうなってくると、ダイヤがスカスカになってくるのは自明の理で、それをやりくりして列車を乗り継いでいく必要が出てくる。想像以上に乗り換え待ち時間が長く、思うように進めない可能性も出てくる。北海道は広大な大地も相まって人口密度が低いのでその傾向がさらに顕著だ。

さらに、季節は冬だ。冬の北海道だ。大雪や吹雪の影響で、運休、遅延、そういったものがガンガン出てくる可能性がある。これらがマスターオブ北海道の難易度を押し上げる。悪夢だ。

 

4. 廃線、廃駅、運休路線が多い

 駅メモは、駅の思い出を集めるという明確なコンセプトを持つゲームだ。よって、廃線や廃駅によってなくなった駅でも思い出はあるよね、とそれらの駅も対象駅となっている。つまり、廃線となってまるごと線路がなくなっても、駅だけは取りに行かなければならないのである。

上記3の理由で述べた「スカスカのダイヤ」、これの行きつく先に廃線がある。そういった意味では、北海道はかなり廃線、廃駅が多い。おまけに災害によって運休している路線もあり、それらがかなりのネックとなる。これらをどう攻略するかが肝となるだろう。

以上の理由で、マスターオブ北海道への道はかなり過酷だ。特に廃線をどうやって片付けるか、そこが最重要になってくる。

 

ゲロ吐きそうな悪夢の路線図の左下に注目されたい。

ここにはかつてJR江差線と呼ばれる路線があった。北海道新幹線の開業に先立ち、2014年、木古内―江差間の路線は廃線となった。もうここに列車が走ることはないけれども、駅メモ内では活きている。江差から木古内までの9駅もしっかりと健在で、マスターオブ北海道を取得するために絶対に取らなければならない駅になっている。

最初に路線図を見た時に「ここをどう取るかでかわってくるなあ」という実感を抱いた。それくらいここの難易度は高い。函館から見た場合、第三セクターの道南いさりび鉄道が木古内まで続いていて、さらにその先に廃線がある。かなり厳しい。

よし、そんなに難しいのなら最初に取っちまおう。今回の旅は江差町からスタートだ! そんな経緯がありまして、クリスマスイブに新幹線やローカル線などを乗り継ぎ、こうして江差町までやってきたのです。ここから駅メモ北海道全駅制覇の旅を始めます。悪夢の旅、スタートです!

(ちなみに、僕は青春18きっぷ日本縦断の旅というこれまた悪夢の旅みたいなものを駅メモ片手にやっておりまして、その際に北海道の駅を150個くらい取っているという事情があります。今回はもう取ったものとしてその駅は取らなくていいかなと思ったのですが、それだと参考にならないと思いますので、また最初から取ってみたいと思います)

 

1日目 9:00 江差バスターミナル

さて、江差町に来たのは良いのですが、町の中心らしき場所からは大きく外れた場所に降り立ってしまいました。日本海側に面したこの街は北海道の中でも比較的温暖な場所らしいですが、それでもあちこちに雪が残り、けっこう肌寒いです。

なんでこんな何もない場所に降り立ってしまったのか。実は、この近くに江差バスターミナルがあるからなのです。そこから木古内駅へと行くバスは廃線区間に沿うようにして走っており、好都合なわけです。

ただ、こうまで何もない場所に出るとは思いませんでした。江差の街でちょっと朝ごはんとか色々と期待していたのですが、これでは望めそうにありません。ただ、この先にあるバスターミナルならきっと何かあるでしょう。バスターミナルというくらいですから、バスが集い、人が集い、活発に往来がある場所です。きっと軽食を食べる喫茶店くらいあるでしょう。

バスターミナルなら何かある。なにせターミナルです。それだけを信じて歩き続け、やっと江差バスターミナルに到着しました。さあ、軽食だ!

ちょっとイメージしてたバスターミナルと違うな。

確かにバスはいっぱいいるんだけど、こうなんていうか、その、まあ、うん。とにかく、事務所みたいな場所に入ってバスの時間をチェックすることにしましょう。

木古内行きのバスは11時03分発らしい。現時刻が9時くらいなのでおおよそ2時間の待ち時間だ。ちょっと、このターミナルで2時間待ちはきつい。

こりゃターミナルを出て何か飲食店を探した方がいい。2時間あるんだ。きっとなにか見つかるさ。

何もない。ただ何もないだけでなく、この先を進んでいっても何かありそうな気配が皆無。100キロくらい何もなさそう。とんでもないスケール感だ、北海道。

 

まだ、さっき歩いてきたルートの方が飲食店とかありそう、町の中心に向かうわけだし、そう考えてこちら側を歩いて探索してみることにした。

 

江差町は、町の中心あたりの海岸から突き出た特徴的な島がある。出島みたいな感じで突き出て翼を広げたような形をしていることから「かもめ島」と呼ばれているようだ。もちろんこの「かもめ島」が江差町随一の観光地だ。

 

しばらく歩いていると、突如として変な広場に出た。

駐車場みたいになっているのだけど、ここにポツンと駐車場があるのは変だ。それになんだかロータリーみたいな感じがしないか。そう考えて気が付いた。ああ、ここ駅だったんだ。たぶん、廃線になった江差線の江差駅がここにあったんだ。そう考えると周囲の建物も駅前のそれっぽい感じに見えてくる。

やはり正解だった。ここは江差駅があった場所だ。駅名看板と、線路が一部だけ残されているようだ。

 

線路の終端だけがけっこうエモい感じで残されている。ここには江差線が、そしてその終端があったのだ、と訴えかけてきているようだ。こういう残し方はセンスがあっていいね。

ということで、廃駅、江差駅を取得します。

そして今日の旅のお供は「ノア」と呼ばれるでんこです。

 

浦佐ノア、超クールで、ブレることのない強さを持つでんこ。ごちゃごちゃしたものが嫌いで、シンプルな美しさに惹かれる。とプロフィールにあります。「マスターあなたには美の価値がわかる?」とめちゃくちゃ煽られてますが、たぶん僕には分からないのでしょう。何が美で、何が美でないのか。

 

駅前だった場所には、旧江差駅資料展示館・地域交流館という建物があります。もしかしたらここで江差駅饅頭みたいなお土産物的な食物を売っていたり、軽食などがあるのかもと期待したのですが、これもんですよ。

 

「本日は休館日(代休)です」

いったい何の代休なんだー! と叫んでしまいましたよ。

ということで、この資料館の前にあった自販機でコーンポタージュを購入しました。こういった何も食料が手に入らない場面でコーンポタージュは絶大な威力を発揮します。飲み物というよりはどちらかといえば食べ物だろ、これ、と言い聞かせることで精神的安定を手に入れるのです。

ただ、やはり諦めきれないので、駅前をフラフラ歩いていたおっさんに話しかけてみました。

「すいません、このへんに飲食店ってありますか」

「ふざけちゃいかん! あるわけないだろ!」

別にふざけてないのにめちゃくちゃ怒られました。気が短すぎるだろ。このおっさんに何があったんだ。

さすがにかつては駅前だった場所に飲食店がないのです。おそらくこれ以上探しても見つかることはないでしょう。諦めて、そろそろバスの時間も迫ってきたのでバスターミナルに戻ります。

バスターミナル内の待合所ではストーブが焚かれ、おばあちゃんがバス待ちをしていました。

「さむいねえ」

「ほんと、さむいですねえ」

「どこまでいくの?」

「木古内です。そこからずーっと列車に乗って北海道の全部の駅を取るんです」

「なんで?」

「(それは僕にもわからない)」

そんな心温まる会話をしていたらバスがやってきました。

 

11:03 江差バスターミナル発 木古内駅行き(函館バス)

(バスターミナルで写真を撮り忘れたので途中の停留所で撮りました)

車内の乗客は2名ほどだった。待合所のおばあちゃんもこのバスに乗るのかと思ったけどそうではないみたいで、若者とおっさんしか乗っていなかった。

このバスは海沿いを走って木古内駅に行くのではなく、けっこう山深い場所を通っていくようだ。かつては江差線も同じような場所を走っていたらしい。廃駅をとっていくのに都合の良いルートだ。

 

バスは進む。僕も次々と江差線の廃駅にチェックインしていく。ちなみにこのバス、途中でトイレ休憩がある。どこかの地域センターみたいな場所に停車した際に、おトイレに行きたい人はどうぞ、と言われる。なかなか画期的なシステムだ。

そんなこんなで、なんとかバスは木古内駅へと到着した。

 

12:25 木古内駅 (運賃1,120円)

 

チェックインした駅 江差(廃駅)、上ノ国(廃駅)、中須田(廃駅)、桂岡(廃駅)、宮越(廃駅)、湯ノ岱(廃駅)、新明[北海道](廃駅)、吉堀(廃駅)、知内(廃駅)、渡島鶴岡(廃駅)、木古内(11/559駅)

廃線である江差線を取ってきたけど、実はこの木古内駅周りにはもう一つ廃駅がある。それが、青函トンネルを抜けて青森へと行くかつての海峡線の廃駅で「知内」という駅だ。これも北海道所属の駅なので、忘れずに取っておきたい。木古内駅ちょっと手前くらいでチェックインするとバスから取れる。

さて、木古内駅である。北海道新幹線と道南いさりび鉄道が通るこの駅には、日本縦断の時に来たことがある。たしか駅前に道の駅があって、そこはかなり充実した感じで飲食店があったはず。これは軽食チャンスですぞ。

でもまあ、ここから乗る予定の道南いさりび鉄道もかなり本数が少なかったはずなので、まずはどれくらい待ち時間があるのかを調べます。ご飯食べてて列車を逃したってなったら笑えないからですね。1時間くらい待ちがあるとちょうどいい感じですね。2時間とかあると大変だから自転車とかレンタルして観光ですかね。そう考えながら時刻表を見に行きます。

現在12:30

めちゃくちゃタイトだな、おい。あと3分しかないじゃないか。しかもこれ逃すと次は3時間後だぞ。意味不明に自転車とかレンタルしないととてもじゃないが時間を潰せない。飯食ってる場合じゃねえ、とにかく乗るんだ。

 

12:35 木古内駅発 函館行き(道南いさりび鉄道)

車内は新幹線からの乗り換え客で混みあっていました。それに今日は12月25日クリスマス、年末の帰省ラッシュがそろそろ始まりそうな日でもあります。車内は、これから故郷に帰るであろう人たちが多かったように思います。

 

江差の方はかなり曇っていて暗雲たちこめるこの世の終わりみたいな感じでしたが、こちらにくると快晴です。景色も綺麗。

僕の隣のボックス席にはけっこう年配の夫婦が座っていて、旦那さんの方がバズーカみたいなカメラを持参してバシャバシャと車窓からの風景を撮影しています。その様子を奥さんがほーんという感じで興味なさげに見ています。

「みろよ、XXXでXXXだ。すげー、XXXXXXXXだ!(早口で何言ってるのかわからん)」

旦那さんはけっこうな剛の者らしく、初めて乗ったっぽい道南いさりび鉄道に興奮気味。ただ、めっちゃくちゃ眠たくなってきたらしく、コクリコクリと眠り始めるんですよ。それでも、いかん、撮影せねば、と目が覚めるらしく、ガバッとなって、

「うおーーー! XXXXXだ。XXXXXXだぞ(早口で何言ってるのかわからん)」

で、またコクリコクリと眠るんですよ。

そういうおもちゃのスイッチをON/OFFしたみたいな動きで面白かった。

車窓から函館山と思われる山が見えてきました。けっこう迫力ある感じですごい。僕もちょっと興奮して、

「うおー! 見ろよ、函館山だぞ、あれがXXXXXでXXXXXXだぞXXXXXX(早口で何言っているのかわからん)」

みたいなことを言おうかと思いましたが、一人旅ですもんね。一人でブツブツ言っていたら完全にアウトな人なのでやめておきました。

ここから海を周りこむようにしてあの山のふもとまで移動します。そこが函館市です。

 

13:35 函館駅 (運賃1,110円)

チェックインした駅 札苅、泉沢、釜谷、渡島当別、茂辺地、上磯、清川口、久根別、東久根別、七重浜、五稜郭、函館(23/559駅)

ここ函館駅はホームから改札までがけっこう距離がある感じで歩かされるのですが、その際に前を歩いていたカップルがかなりの感じでイチャイチャしてました。もうそのまま溶け合ってバターになるんじゃないかという勢いで絡み合い、このままここでおっぱじめるつもりなのかと心配になったほどです。まあ、クリスマスですもんね。

あと、ホームから改札へのコーナリングのところでめちゃくちゃ危ない感じで手すりが出っ張っており、先を急ぐ僕はその出っ張りに太ももを強打するという大失態。しかも結構なダメージだったらしく、この後は左足を引きずりながらの旅となりました。あんな危ない配置は絶対に良くない。

 

うおー、函館にやってきたぞー! ここなら確実にご飯を食べられるはず。まず、函館駅の横にはかの有名な函館朝市がありますので、そちらの方を偵察することにしましょう。

ちょっとここではあまりに空腹で写真を撮り忘れたので、後日撮った朝市の様子を見てみましょう。

 

このように活気があるのが函館朝市です。 

 

 あれ、何か落ちてる。なんだろう。近づいてみます。

 

なんで?

脱走してきたのでしょうか。

そんなこんなで、来てみたはいいものの、別に魚介類という気分でもなかったので朝市をスルーし、そのまま突き進んでいきます。

 

ありました。ラッキーピエロ函館駅前店です。

このラッキーピエロは、函館市を中心とした道南地域に17店舗展開する人気のハンバーガーチェーン店だ。いわゆる知る人ぞ知るローカルチェーンで、ご当地バーガーナンバーワンにも輝いたことがあるらしい。画像からも分かる通り、常に行列ができている。さっそく行列に並んだ。

15人くらい並んでいたと思うのだけど、僕以外全部がカップルで、めちゃくちゃ手とか繋ぎながら並んでいた。まあ、クリスマスですもんね。そのカップル御用達みたいなイチャイチャ行列にボケーっと並ぶ、小汚いおっさん、クレイジーピエロみたいな感じでしたね。カップルにおっさんがサンドされたハンバーガーみたいになってました。

 

人気ナンバーワンセット。そういう名前のセットです。一番人気のチャイニーズチキンバーガーにチーズポテトとウーロン茶で650円。ちょっと尋常じゃないレベルで美味しかったです。

さて、ハンバーガーを食べていると隣の席のカップルの会話が聞こえてきました。けっこう初々しい感じのカップルなんですけど、男の方はまあ、今日決めてやろうと思っているらしく、泊まろうみたいなことを遠回しに言っているんです。でも、女性の方はまだ早いと思っているらしく、でも今日はアマゾンから荷物が届くから、みたいなことを言ってるんです。

「そんなの再配達でいいじゃん」

「悪いよ、配達の人に」

「大丈夫、俺なんて毎回再配達だもん」

もう泊まりたいあまり、再配達アピールという訳の分からないことになっていました。

「だいたいさ、アマゾンでなに買ったの?」

「ドッグフード」

「それ、犬が受け取ったりできないかな?」

受け取らねえよ。

まあ、それでも女の子の方も最後はまんざらではない感じでしたし、ドッグフードは再配達にして今日は泊まるんでしょうね。クリスマスですもんね。

さて、お腹も満たされたことですし、ネジを巻きなおして駅を取っていきましょう。函館市は函館駅前から延びる路面電車があります。これをしっかり終点まで取っていきましょう。

 

14:34 函館駅前発 函館どつく行 (函館市電)

 この路面電車は「函館どつく前」という場所まで行くらしいのですが、「どつく」って何だろうと、ずっと車内で考えていました。ここでいきなり関西弁の「どつく」では要領を得ません。調べてみると、これはHakodate Dockという造船会社のことのようです。なるほどなるほど。

ちなみに、この路面電車、途中の「十字街」というめちゃくちゃかっこいい名前の停留所から2つの系統に分かれるようですが、両方を取ってる時間はないので、離れた駅を取れるレーダー(ただし射程距離がある)という便利アイテムで片方の系統を取ることにします。たいして長い路線ではないのでレーダーの射程です。レーダーについては後日の旅程で詳しく説明します。

途中、全ての停留所を北海道のヌシみたいなユーザーが守護していてめちゃくちゃすごかったです。どれだけ僕のでんこがちょっかいかけてもびくともしない。鉄壁の城塞かよ。何者だよ。

 

14:45 函館どつく (運賃600円-1日乗車券)

チェックインした駅 函館駅前、市役所前[北海道]、魚市場通、谷地頭、青柳町、宝来町、大町[北海道]、末広町[北海道]、十字街、函館どつく前 (33/559駅)

15分ほどで終着駅である函館どつく前に到着しました。何もない、ただの交差点みたいな場所です。車内で1日乗車券が600円で買えたので、これで残りの駅も制覇していきます。ちなみに1日乗車券はスクラッチ式になっていて、使用する日の日付を自分で削り取って指定します。

 

江差駅の跡地や、函館駅でも感じたのですが、どうやら僕はこんな風に線路が終わっている光景が好きなようです。そう考えると、北海道は地理的に他県との繋がりがありませんので、必然的に終端が多いはずです。そうなるとこの旅でもこういった光景が多くみられるのかもしれません。

 

14:45 函館どつく前発 湯の川行(函館市電)

そのまますぐに折り返しの便にのります。今度は反対側の駅をとっていかねばなりません。

 

15:35 湯の川 (運賃—1日乗車券)

チェックインした駅 新川町[北海道]、松風町、千歳[北海道]、昭和橋、堀川町、千代台、中央病院前、五稜郭公園前、杉並町、柏木町、深堀町、競馬場前[北海道]、駒場車庫前、函館アリーナ前、湯の川温泉、湯の川 (49/559駅)

今度は45分くらいかかったでしょうか。なんとかこれで函館市電の全ての駅をとることができました。ここからまたとんぼ返りして函館駅に戻ります。

ちなみにこちら側の終端。いい……。

 

15:40発 湯の川発 谷地頭行(函館市電)

 もうすでに駅を取ってしまった路線を戻るというのは駅メモの新規狩り的にはかなり効率が悪いのですが、反面、良いこともあります。なにせ、まだ駅を取ってない路線はスマホ片手に駅メモと睨めっこ、駅を取り逃したら大変なことですから鬼の形相でチェックインしているわけです。一瞬たりとも気が抜けないわけです。

ただ、こうして取った路線を戻るということはかなり気が抜けるのです。なんなら居眠りしてもいいくらい。そんなこんなでかなり気を抜いてうつらうつらと眠りかけていたら、いつの間にか車内がかなり混雑していて、僕の目の前に高校生のカップルが立っていました。

男の子の方はお調子者みたいな感じで、女の子は大人しい感じ。手を繋いでましたから付き合ってるんでしょうね。ただ、饒舌に喋っていた男の子が急に元気ない感じになるんです。

「どうしたの?」

「酔った」

どうやら男の子が乗り物酔いした様子。彼女が心配そうにしています。

「大丈夫? 降りる?」

「酔った」

男の子は酔ったしかいいません。まるで北海道としか言わなかった編集部のようです。

「大丈夫?」

そう言って顔を近づけた彼女に、男の子が囁くように言います。

「酔った……ヨシミに酔った」

「もう!」

こっちも「もう!」ですよ。席譲ってやろうとちょっと腰を浮かせた僕がバカみたいですよ。なんなんですか。函館ってけっこう不埒なんですかね。そんなカップルばかりですよ。とにかくまあ、クリスマスということで仕方ないんでしょうか。

 

16:15 函館駅

 函館駅に戻ってきました。北海道は少しだけ日の入りが早いのか、16時ちょっとすぎだというのにほのかに暗く、駅前のイルミネーションも灯り始めていました。

さて、ここまでで、市電を含む函館周辺は取りつくしました。ここからは北に進んでいくわけですが、僕にはちょっとした秘策がありました。

なにせ北海道は広大な土地です。おまけに北海道全域で普通列車の本数はあまり多いとは言えません。結果、特急列車を駆使して行く、これは必須事項でしょう。ただ、特急列車に乗りまくるとめちゃくちゃ料金がかかります。下手したら経費込みでいただくこの記事の原稿料を軽く超える可能性もあります。死ぬほど苦労してかつ赤字、これではなんのこっちゃわかりません。つまり、安くておトクなキップを使う必要があるのです。

 

そこで登場するのが「北海道フリーパス」です。

「JR北海道内の在来線特急列車の普通車自由席及びジェイ・アール北海道バス(一部路線を除く)が7日間乗り降り自由なきっぷです。普通車指定席も6回まで利用できます。北海道をくまなくご旅行される方におトクなきっぷです。」(JR北海道「おトクなきっぷ」より引用)

7日間、北海道の鉄道乗り放題。しかも特急も。6回までなら指定席にも乗れる。これですよ、これ。まさにマスターオブ北海道のために作られたキップでしょ。値段は26,230円。1日にあたりに換算すると4,000円以下、これで特急乗り放題ですから、これを使わない手はありません。こんなおトクでいいんでしょうか。

このフリーパスを購入すべく、函館駅のみどりの窓口の行列に並んでですね、ふふん、今回の旅は特急に乗れるぞ、とウキウキ気分でいたんです。そして、フリーパスって値段いくらだったっけ、と確認の意味でJR北海道のホームページを開いたのです。そこには衝撃的な文字が。

あんぎゃーーーー!

12月28日からの年末年始は使えないという衝撃の文字。

今日が12月25日で、実質的に終わりかけですから、26日と27日しか使えないというわけです。それで26,230円。

「どっちだ。どっちが得なんだ」

目まぐるしく頭の中で計算します。うーん、ただそこまでプランを練ってるわけではないので、どれだけ特急に乗るのか目途が立たない。下手したら2日目は全然乗りませんでした、となる可能性だってある。どうするんだ。どうするんだ。

 

結論は、「フリーパスや18きっぷは使わずに、その都度きっぷを買って乗る」でした。先が見えない以上、下手なきっぷを買うべきではない。完全に天文学的料金を支払うことになりそうですが、まあ、北海道にたくさん金を落としたと思ってそうすることにします。ぜったい赤字だ、これ。何らかの悪夢だろ、これ。

作戦を練ります。

北海道の路線は、この赤で囲った部分が複雑で、よそ者から見たら本当に何がどうなっているのか分からないので、とりあえずそこを少しずつでもクリアできるよう、ここから札幌に行くべきです。近づいてみればこの複雑な部分のカラクリも分かるかもしれない。

 

この特急で札幌まで行きましょう。ちなみに運賃は特急券も含めて8,310円でした。

 

16:37 スーパー北斗17号 函館発 札幌行

特急で一気に札幌に行きつつ駅を取得していくわけですが、大きな難所が一つあります。

 

それがこの部分。

ここでは駒ケ岳を囲むように路線が2つに分かれます。たいていの特急列車は直進して進んでいきますので、大回りする方はそもそもあまり列車が通らず、これらの駅を取ることはかなり難しいです。

ということで、ここはルートビューンという超絶便利アイテムを駆使して取ってしまいましょう。

このルートビューンというアイテム、色々なイベントで貰える場合もあるし、課金して購入するわけですが、なかなか便利なアイテムです。これが、過去に取った駅を基点として同じ路線内であれば今いる駅まで一気にすべてアクセスできるというものです(20駅という制限あり、チェックインはできず、駅にアクセスしたという記録のみ)。

ちょっと難しい使い方になるのですが、実はこの路線、駒ケ岳駅と森駅の間に2つの廃駅があり、それも駅メモ対象駅になります。この2つを取ったあとにルートビューンを使うとどういう理論かわかりませんが普通に大回りの方の駅まで全部取れるらしいです。それをやります。

 

本当に取れる。これでかなり楽になった。この難所が取れたのはかなり大きい。一気に未来が明るくなった。

 

さて、さすが特急列車です。先ほどから車内では車内販売が行き来しています。後ろの方に座っていた爺さんが、車内販売を呼び止め、何やら熱心に質問しています。

「どんな駅弁があるんだ?」

「それでしたら大沼の駅弁、牛めし弁当がおススメですが」

「それには肉が入ってるんか?」

そりゃ入ってるだろうよ、牛めしって言ってるんだから。

ただ、車内販売のお姉さんが爺さんの質問の意味が分からなかったようで、ちょっとずれた答え方をしていて、

「こちら大沼牛を使ったお弁当でして」

「それは肉か?」

肉だろうよ、大沼牛って言ってるんだから。

「大沼名物の牛めしがおススメです」

「それは肉か?」

とよく分からないコントみたいなやりとりがずっと続いていました。

 

そんなこんなで、一気に札幌到着です。

 

20:33 札幌 (運賃8,310円)

チェックインした駅 桔梗、大中山、七飯、新函館北斗、仁山、大沼、大沼公園、赤井川、駒ヶ岳、東山[北海道](廃駅)、姫川[北海道](廃駅)、森、東森、尾白内、掛澗、渡島砂原、渡島沼尻、鹿部、銚子口、流山温泉、池田園、掛川[北海道](廃駅)、石谷、本石倉、石倉、落部、野田生、山越、八雲、鷲ノ巣(廃駅)、山崎、黒岩、北豊津(廃駅)、国縫、中ノ沢、長万部、静狩、礼文、小幌、大岸、豊浦、洞爺、有珠、長和、伊達紋別、北舟岡、稀府、黄金[北海道]、室蘭、母恋、御崎、本輪西、輪西、崎守、東室蘭、鷲別、幌別、富浦[北海道]、登別、虎杖浜、竹浦、北吉原、白老、萩野、社台、錦岡、糸井、青葉、苫小牧、沼ノ端、美々(廃駅)、新千歳空港、南千歳、植苗、千歳[北海道]、長都、サッポロビール庭園、恵庭、恵み野、新札幌、平和、島松、白石、北広島、上野幌、札幌(135駅/559駅)

めちゃくちゃ大量にとった。途中、支線みたいになってる室蘭がやや難しいですが、レーダーやルートビューンで取れます。

 

さて、ついに札幌到着。こうやって無理をして札幌までやってきたのにはワケがあります。こういった全駅制覇をする時のコツなんですけど、夜になったら可能な限り大都会に近づく、これがけっこう大切なのです。

なぜならば、大都会は地下鉄に路面電車、そういった多くの路線があるのです。半面、地方はそういった路線はなく、おまけに終電も早い。夜8時に終わっちゃった、なんてこともあるのです。そんな早い時間に足止めを食らっては大変効率が悪いですから、夜になったら大都市に移動し、地下鉄なりなんなりを取るべきです。たいていの地下鉄は遅くまでやってますからね。

おまけに、大都市は始発も充実していますから次の日の出発も効率良く、おまけにホテルもネカフェも豊富、宿泊に困って路頭に迷うこともありません。日が落ちそうになってきたら大都市に近づく、これは覚えておいてください。

とうことで、もう20時半で、かなりの地方路線だったらここで終電、もありうるのですがここは大都会札幌、まだまだ地下鉄が動いています。それを取りに行きましょう。

さすが札幌駅、めちゃくちゃ大都会です。

 

地下鉄もまだまだ動いています。

札幌の地下鉄はこの札幌駅と大通駅を中心に3路線あるようです。おまけに路面電車まである。終電までに全部取れるとは思えませんが、できる限り取っておきましょう。

地下鉄車内では特に変わったこともなく、札幌の人はみなさん紳士的なのか、怖いくらい車内が静かでした。変わったことと言えば、僕が地下鉄の駅を守護しているのを発見した駅メモユーザーさんが、「patoがいたw」とSNSで呟いていたことくらいでしょうか。ちょっとレアモンスターみたいな扱いになっていました。

まず地下鉄南北線を制覇。

チェックインした駅 自衛隊前、真駒内、澄川、さっぽろ、すすきの、大通、南平岸、平岸[札幌交通局]、幌平橋、中の島、中島公園、北34条、北24条、北18条、北12条、麻生(151/559駅)

東西線も全部制覇したところでタイムアップ。

東豊線と路面電車はまた別の機会ということにしました。それにしても札幌の地下鉄はすごい。34条だの24条だの11丁目だの18丁目だの、数字の駅名がガンガン出てくる。住んでる人は混乱したりしないんだろうか。

「わり、24条かと思った」

「もう! 34条って言ったでしょ!」

みたいな感じで喧嘩して別れるカップルとかいるんじゃないだろうか。それを聞いていた他人は「憲法の話かな?」とか思ったりしないんだろうか。

チェックインした駅 新さっぽろ、ひばりが丘、大谷地、南郷18丁目、南郷13丁目、南郷7丁目、白石[札幌市交通局]、東札幌、菊水、バスセンター前、西11丁目、西18丁目、円山公園、西28丁目、二十四軒、琴似[札幌市交通局]、発寒南、宮の沢(169駅/559駅)

ちなみに料金は1日乗車券で830円でした。

 

23:19 地下鉄 大通駅

ということで1日目の行程はこれにて終了。

 

いやー今日もおわりましたなー、ん?

 

これ絶対にブラジャーでしょ。僕も通りすがりに見ただけなんで断定はできないけど、絶対にブラジャーに見えた。ブラジャーだ。こんな往来にブラジャーが落ちてるなんて札幌は怖い街だぜ。

 

そろそろ地下から地上に出て泊まる場所でも探しますかな、この出口から出てやろう。ドアをくぐって階段を上がります。

 

とんだトラップですよ。出られないじゃないか。ほんと札幌は怖い街ですよ。なにか注意書きくらいしておいてよ。

 

ということで1日目はこれにておしまい。まとめはこちら。

総取得駅数 169駅
総移動距離 532 km
運賃 11,970円
制覇路線 江差線(廃線)、海峡線(北海道部分)、北海道新幹線(北海道部分)、函館市電2系統、函館市電5系統、道南いさりび鉄道、函館本線(函館~長万部)、函館本線(長万部~苫小牧)、千歳線、札幌市地下鉄南北線、札幌市地下鉄東西線

 

>残り390駅!2日目につづく

 

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