ぬれ煎餅から灯台まで! 心のふるさと「銚子電鉄」全駅とその見どころをご紹介
ぬれ煎餅で有名な「銚子電鉄」全駅とその見どころをご紹介。ぬれ煎餅の元祖「柏屋」の焼きたて情報や、「24時間テレビ」でヒロミがリフォームしたという本銚子駅の駅舎、絶景で知られる犬吠埼灯台などの観光スポットをライターが実際に巡りました。また、くすりと笑える駅名とその由来についても解説。銚子電鉄を使って旅行をする際はぜひこちらの記事を参考にしてください!
いきなり眠そうな顔ですみません。
家から始発で出発し、2時間半ほどでたどり着いたJR銚子駅前から千葉県在住のライター、関 和幸がお送りしております。
銚子といえば千葉県最東端に存在する日本有数の水揚高を誇る漁港の街ですが、そんな銚子でもユニークな存在なのが「銚子電気鉄道株式会社(銚子電鉄)」。
この鉄道会社が数年前に、「ぬれ煎餅」で一大ブームを起こしたことを覚えている方も多いのではないでしょうか?
奇跡のぬれ煎餅
〜小さな煎餅が鉄道を救った〜(銚子電鉄HPへリンク)
(以下、上記リンク先記事を要約)
2006(平成18)年、銚子電鉄は利用客の減少で売り上げが低迷し、倒産寸前であった。
そんなある日、国交省より老朽化した線路と踏切の改善・修理命令が下され、3カ月以内に改修しなければ【運行停止】という大ピンチを迎えてしまう。さらに車両の法定検査までが重なり、数ヶ月以内に6000万円もの大金を用意しなければならなくなる。月間運賃売上高900万円(当時)の同社に、そんな大金を用意するのは不可能に思えた……。
さまざまな金策もうまくいかず、もはや残された時間は数日。だが、その状況で奇跡が起きる。同社が副業で販売していた「ぬれ煎餅」に突然、全国から大量の注文が殺到したのだ。そのニュースがテレビで報じられたことにより、さらに爆発的な売り上げを達成。銚子電鉄は倒産の危機を乗り越えたのであった……。(要約終了)
今回はそんな【銚子電鉄】の全駅をご紹介。
「ぬれ煎餅」だけじゃない、銚子電鉄沿線の魅力をお伝えします。
第一の駅・銚子駅
銚子電鉄は路線全長6.4キロ、全部で10駅というこじんまりとしたローカル線です。しかしJR銚子駅のホームの端にあるその始発駅からすでに、ただならぬ気迫が漂っています。
銚子駅という駅名の上についた「絶対にあきらめない」の文字。これは2015年10月から始まった、駅名に自由な愛称をつけられるネーミングライツの取り組みによるもの。
「絶対にあきらめない ちょうし駅」という愛称をつけたのは千葉県内の塗料メーカー「株式会社BAN-ZI」と塗装メーカー「株式会社REPROUD」。
「株式会社BAN-ZI」に伺ったところ、同社が銚子電鉄・外川駅の展示車両修復を支援したことがきっかけとなり、同社の理念、また銚子電鉄や沿線で暮らす若者へのメッセージとして、この愛称をつけたとのことでした。
さて、続いては【銚子駅】の周辺をご紹介。この駅のオススメはなんといっても「ぬれ煎餅」と「漁港」の二つ。
銚子駅を出ると、すぐ目の前にぬれ煎餅のお店があります。
また駅に併設された観光案内所もあり、そこで銚子市にある有名店のぬれ煎餅を一度に味わえるお得なパックも販売されています。
それぞれのお煎餅メーカーと、実食してみての一口コメントは下記の通り。
上段左端:久保木米菓(ゴマが香ばしい)
上段左から二番目:柏屋米菓手焼本舗(一番しっとり)
上段左から三番目:銚子電気鉄道(マイルドな味で食べやすい)
上段左から四番目:手焼きあられ せんべい処 福屋(みそのような複雑な味)
下段左端:株式会社イシガミ(歯ごたえしっかり)
下段左から二番目:横山米菓(お米っぽいオーソドックスな味)
下段左から三番目:海風(一番分厚く、食べごたえがある)
箱の中のパンフレットによれば、ぬれ煎餅の元祖は「柏屋米菓手焼本舗」とのこと。お店は銚子駅から自転車で10分ほどのところにあります。
(レンタサイクルは観光案内所や近隣のサイクルショップで借りることができます!)
さて、こちらが「柏屋米菓手焼本舗」さん。店内は撮影禁止でしたが、おいしそうな醤油の香りがたちこめていました。
お店の庭先のベンチでさっそく購入したお煎餅を試食すると……やっぱりおいしい!
ちなみに9時〜11時30分、13時〜14時30分に行くと「焼きたて」を食べることができるので、もし行ってみるときは参考にしてくださいね。
もうひとつ、銚子駅周辺で外せないのが銚子港。銚子駅から自転車で15分ほどで到着します。
銚子港の周辺には新鮮な魚を取り扱う飲食店や鮮魚店がたくさんありますが、なかでもおすすめなのはこちらの干物屋さん。
その日の朝に獲れた魚を半日から一日干すことで旨味を倍増させています(天気と風向きにより干す時間は変えているとのこと。西風だとよく乾くそうですが、取材当日は南風でした)。
驚きなのはその安さ。下の写真を見ていただきたいのですが「右列のメヒカリ7匹:250円」「左列上段:イワシ1匹30円」「左列中央:メイタカレイ1匹80円」「左列下段:サヨリ1匹50円」で、これだけ買っても490円でした。
買って帰った干物を軽く炙ってやると、こんな感じに。旨味が増した干物は驚くほどジューシーで柔らかく、しみじみビールに合いました。
第二の駅・仲ノ町駅
次の駅は「パールショップともえ なかのちょう駅」です。この愛称をつけたのは千葉県内に遊技場チェーンを展開する株式会社カクタ。
同社は銚子電鉄にこんな熱いメッセージ(銚子電鉄HPにリンク)を送っています。
そんな【仲ノ町駅】のすぐ近くにあるのが、しょう油メーカーのヤマサ醤油株式会社の工場。
駅を出てすぐに看板があり、その案内に従って進むと工場見学者用の受付に到着します。
なお工場見学は平日のみに行われ、事前予約が必要です。土日祝日は「しょう油味わい体験館」や「売店」のみの見学になりますが、これらは予約不要。展示やお土産物が豊富で、かなり楽しめます。銚子電鉄を旅する際の楽しい途中休憩になるでしょう。
同社のしょう油の味を試食で比べたりできます。とくに最高級品「ソヤノワール」の旨味はすごいです!!
「しょう油ソフトクリーム」や「ぬれ煎餅焼きそば」なんてメニューも食べられます。
さて、もう一度「なかのちょう駅」に戻ります。銚子駅からここまでは自転車で来たので、改めて切符を購入。
有人駅である「なかのちょう駅」には、銚子電鉄の擬人化グッズが飾ってありました。
銚子電鉄は自社の電車の擬人化を進めており、たとえばこの電車は……
こうなります。
で、こういう風に活用されています。
また、同駅には銚子電鉄の車両基地があり、入場券を購入すると予約なしで見学できます。
こんな感じの入場券を買うと……
自由に車両基地に入れます。鉄道好きの子供も大人も大興奮ですね!?
第三の駅・観音駅
次の駅は「金太郎ホーム かんのん駅」です。この愛称をつけたのは千葉県にある賃貸マンション施工会社、株式会社 金太郎ホーム。
この駅の名物は、なんと言ってもたい焼き。駅構内に立派な販売ブースがあります。しかし……
なんと、2017(平成29)年に閉店! 新店舗はこの先にある犬吠駅に移転したとのことでした。
第四の駅・本銚子駅
気を取り直して向かったのは本銚子駅。こちらの駅名はなんともノリノリのアゲアゲ(死語)です。
こちらのネーミングライツは千葉県内の製薬メーカー、株式会社京葉東和薬品のもの。電話で確認したところ、このゆかいな駅名を考えたのは同社の社長さんということでした。
さらに本銚子駅の駅舎はこんな童話風の建物。実はこれ、2017年に放映された日テレ系「24時間テレビ」の企画で、タレントのヒロミさんによりリフォームされたものでした。(リフォームされた駅舎の詳細はこちら・銚子電鉄HPへリンク)
電車はジブリの「となりのトトロ」に出てきそうな木々のトンネルを抜けてやってきます!
第五の駅・笠上黒生駅
さて、いよいよ銚子電鉄でも1、2を争うほどインパクトのあるネーミングライツの駅がこちらの笠上黒生駅。
元の名前はそれほど変わったものではありませんが、これが……
なんだかとっても髪の毛に良さそうな駅名に! しかも隣にはこんな広告まで。
もう髪に悩む人は行くしかない! というネーミングセンスですね。こちらの駅の愛称をつけたのは、東京都でスカルプケア商品を企画・開発する株式会社メソケアプラス。
同社が銚子電鉄に送ったメッセージ(銚子電鉄HPにリンク)によれば、決して会社や商品の宣伝のためでなく、より多くの人に銚子電鉄に興味を持って欲しいという願いからこのネーミングが生まれたということでした。
実際、私が銚子電鉄の記事を書こうと思ったのはこの「変な駅名」がきっかけでしたから、まさに狙い通りの効果を発揮していると言えるでしょう。
第六の駅・西海鹿島駅
お次の駅は「にしあしかじま駅」。ある意味、ローカル線の真髄を味わえる駅と言えるかもしれません。
(なお、取材後の2018年4月1日より同駅には「みんなの夢 銚子電鉄 あしかじま」という愛称がついたとのこと。ぜひ、現地で確かめてみてください!)
第七の駅・海鹿駅
気を取り直して、次にあるのが「あしかじま駅」。こちらの駅は関東地方最東端の駅になります。
以前の愛称は「東の端」を意味する「とっぱずれ あしかじま」だったそうですが、現在は新たなネーミングライツに切り替わっていました。
第八の駅・君ケ浜駅
銚子電鉄で1、2を争うインパクト抜群な駅名といえば、やはりこの駅でしょう。
今にもUFOが出現しそうですが、元の駅名はこんな感じです。
この愛称をつけたのは東京にあるIT企業、株式会社MIST solution。IT企業と銚子電鉄にどんな関係が……と思いましたが、寄せられたメッセージ(銚子電鉄HPにリンク)によると「銚子も東京も同じ関東圏! つまり仲間!!」というビッグなビジョンで実現したネーミングライツでした。
また、銚子電鉄の駅構内に置かれていた「銚子スポーツ」という新聞(?)によると、どうやら銚子はフシギ現象に縁が深く、市民のUFO目撃率は50%を超えているという噂も。そんなところからUFOで有名なロズウェルの名がつけられたようです。
第九の駅・犬吠駅
さて、早いもので銚子電鉄の旅も残り二駅となりました。到着したのは犬吠駅です。
銚子電鉄の駅の中でも最大規模を誇る犬吠駅のネーミングライツは、「OTS(ワン、ツー、スマイル) 犬吠埼温泉 いぬぼう駅」というもの。
看板からもわかる通り、旅行会社である沖縄ツーリスト株式会社のネーミングです。さすが旅行会社だけあって、社名の略称にしてキャッチコピーである「OTS(ワン、ツー、スマイル)」の「ワン」を犬の鳴き声に見立て、さらに地元の温泉名も加えるという手のこんだものでした。
さて、ここには先ほどの観音駅から移転した鯛焼き屋さんがあります。
また駅構内には、沿線最大のお土産コーナーもあります。
もうひとつの犬吠駅の目玉は写真ギャラリー(有料:150円)。中では「ぬれ煎餅」焼きを体験できる他、銚子電鉄の沿線風景写真やジオラマを見ることができます。
さて、犬吠駅の近くには絶景で有名な犬吠埼灯台や犬吠埼温泉があります。
犬吠埼灯台は駅から歩いて10分ほど。てっぺんまで登れますが、99段ある「らせん階段」がツラいです。
これが灯台最上部にある展望エリアからの眺め。絶景ですが、風がものすごく強いので気をつけてください!
またお腹が空いたら、犬吠駅の目の前に回転寿し店があります。
もちろん醤油は「ヤマサ醤油」。地魚の桜鯛とアナゴをいただきました。
第十の駅・外川駅
楽しかった銚子電鉄の旅もいよいよ終わり。終着駅はこちらの「外川駅」になります。
有終の美を飾るネーミングライツは……「ありがとう とかわ」。千葉県内の工務店、早稲田ハウス株式会社が名付けたものです。
同社が寄せたメッセージ(銚子電鉄HPにリンク)によれば、両社を結びつけたのは「ありがとう」という言葉。どちらの会社もお客さまに「ありがとう」と言っていただけるように長年取り組んできた姿勢に共感したということでした。そのおかげで駅周辺は「ありがとう」でいっぱいです。
そんな外川駅で見逃せないのが、ホーム端で展示されている「デハ801」。1950(昭和25)年製造の車両ですが、2017(平成29)年に修復されたばかりなのでピカピカです。
内部は自由に見学可能。木製の床がなんともノスタルジックな気持ちにさせてくれます。
銚子電鉄の旅、長らくのお付き合いありがとうございました! 沿線に広がる風景や車両そのものの空気感すべてがゆったりとしており、肩肘張らない旅行先として最高ではないでしょうか? 犬吠駅周辺にはたくさんの温泉もありますので、ぜひ銚子電鉄を使って訪ねてみてくださいね。
おまけ
無人駅が多く改札もIC乗車券に対応していない銚子電鉄では、電車の中で車掌さんが切符を確認しています。どこの駅で何人乗ってもしっかり顔を覚えてチェックされるスゴ技に、感心してしまいました。
〜終わり〜