「山万ユーカリが丘線」に乗って街を見てみたら、リアルなシムシティだった。

千葉にある「山万ユーカリが丘線」をご存知でしょうか?そこで見えたのは、いち企業の街づくりでした。

 

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いつもお世話になっております。赤祖父と申します。

今回ご紹介するのは、路線図を眺めていて前々から気になっていた、千葉にある「山万ユーカリが丘線」という路線です。

 

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京成電鉄のユーカリが丘駅からラケットのようにぴょこっと出ているローカル路線。かわいい。
そもそも「ユーカリが丘」という駅名自体も、知らない人からすると「ナニソレ!? 制服が異様にハデな女子がたくさん出てくる学園モノのアニメの舞台?」って感がある。そんな勝手なイメージを持つのも悪いので、実際に行ってみた次第。

 

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京成線ユーカリが丘駅の北口。ユーカリといえばコアラの食べ物というイメージがあるが、やはりそのコアラの銅像が目立っていた。ただしこのユーカリが丘の「ユーカリ」の英語表記は「Eucalyptus」ではなくあくまで「Yūkari」のようだ。

 

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こちらが山万ユーカリが丘駅。街のインフォメーションセンターを兼ねている様子。

 

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ユーカリが丘街アプリ! 行政でアプリ作ったの……?

 

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駅前のショッピングセンターでもユーカリカードなる独自システムが。なんなのユーカリが丘……!?

どうもユーカリが丘、ただごとではない感じがある。

 

 

ユーカリが丘と山万グループ

そもそもユーカリが丘は、「山万」という不動産会社によって1971年から開発されたいわゆるニュータウンであり、都心で働くファミリー層をターゲットにしたベッドタウンのひとつだ。国土交通省が公開している「全国のニュータウンリスト」にも載っている。

 

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首都圏のニュータウンリストで、「規模(計画戸数)」を条件にソートしてみたが、規模がNo.1だとか、面積が大きいとかそういった特徴はない。ごく平凡な規模と言える。しかし他のニュータウンと大きく違うのは、その山万が当時から現在までずっと街づくりを手がけ続けているという点にある。

作りっぱなしで後は知らないよ……ではない、というのが全国的にも珍しく、最近は街づくりの見本として注目されているらしい。最近全国のニュータウンでは現在住人の高齢化と子どもの減少、建物の老朽化、地域コミュニティ機能の低下といった問題が指摘されているが、ユーカリが丘はそれらへの対策がすでに取られているというのだ。

詳細は公式サイト等を参照いただきたいが、いくつかピックアップすると以下の通り。これ全てをいち民間企業グループが一手に行っているって事実がスゴくないですか…!

●住宅(宅地・戸建・マンション)をただ単純に分譲するだけでなく、分譲数をコントロール(年200戸)して世代が偏らないよう考慮
●大型ショッピングモールのテナント管理
●保育園、子育て支援施設、老人福祉施設の整備、運営
●独自のホームセキュリティや地域パトロール
●公園や街路樹の整備、上下水道の設備工事
●地域住民の足となる新交通システム(ユーカリが丘線)の敷設、運営

要するに、ユーカリが丘という街は山万という超優秀なプレーヤーが手がけたリアルシムシティの街。そういう目線で見ると、この街はとてもSFっぽさがありワクワクしてしまう。

 

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ユーカリが丘駅前の様子。大型ショッピングセンターがあって買い物にも困らないし、屋根付き歩道でマンションの住人は雨が降っても大丈夫なようにできている。カンペキじゃないですか?

 

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駅前の超高層マンション群。ちなみに千葉で初めての高層マンションだとのこと。一戸建てのみならずマンション需要にも応えているのは、ライフスタイルの違いや変化に対応するためらしい。

 

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これが今回乗る「山万ユーカリが丘線」の軌道。都内のゆりかもめや日暮里舎人ライナーのようにゴムタイヤで走る「新交通システム」である。

 

 

ユーカリが丘線全駅を見てみる

というわけで手軽にユーカリが丘の様子を見て回るために、ユーカリが丘線の乗りつぶしを実践しようと思う。駅数は6駅、およそ15分間隔くらいに走ってるので、簡単に乗りつぶせそう。

 

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ユーカリが丘線の路線図。環状線のような路線だが、公園駅〜井野駅の間は一方通行なのが特徴的。

(注:「当駅」は撮影場所である「地区センター駅」)

 

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とりあえず始発である「地区センター駅」から乗り込んでみたものの「取材するなら一日乗車券があった方が便利だろう」と思って駅員さんに聞いてみたところ、ユーカリが丘駅以外では販売していないらしい。一日乗車券を買いに行くための乗車券を買うしかないのか……。

しかし、今回は「ユーカリが丘駅までタダで乗っていいよ」と融通を効かせてもらえた。(ありがとうございます!)

 

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地区センター駅からユーカリが丘駅方面の風景。新交通システムの高架が景色に入るといかにも先進都市って感じがしませんか……!

 

 

 

DSC02529こちらはユーカリが丘駅で撮影した「こあら2号」。小さめの車両とユーカリにちなんだコアラのキャラがかわいい。

 

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車両側面。路線の形状と一方通行という特徴上、車両の先頭はユーカリが丘駅で入れ替わるわけです。

 

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車両はこあら1〜3号まであるようで、ユーカリが丘駅には顔ハメ看板も。

 

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しかしユーカリが丘線、なんと車内は非冷房……! 今どき逆にレア。鉄道ファン的にはある意味嬉しいが、利用者は絶対クーラー付けろって思ってるでしょうね。(夏に撮影したので窓が開いてます)

続いてユーカリが丘線の全駅(少ないので)をまわって見てみることに。

 

 

 

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まずはこちらが「公園駅」。シンプルな駅名すぎて改名の話もあったらしいのだが、この名前で住人には馴染んでいて結局改名は白紙になったそう。

 

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ユーカリが丘駅方面の風景。高層マンションが霞んで見える。ユーカリが丘線は、この公園駅からラケット形状をした一方通行の環状線のかたちをとる。

 

 

 

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続いてやってきたのは女子大駅。駅舎に併設されているのは明らかに元コンビニだが、今はコインランドリーになっていた。女子大…! 女子大……!! というだけでワクワクしてやってきたのだが、実際来てみたらどうかというと……。

 

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駅前の風景はこんな感じで、ほぼ何も無かった。元々は和洋女子大学がこの地に移転することを見越して女子大駅と名付けたようなのだが、実際は移転されず、和洋女子大のセミナーハウスがあるだけ、とのことだ。

 

 

 

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次の中学校駅はユーカリが丘駅から最も遠い位置にあり、そして住宅街が近いこともあり利用者もユーカリが丘駅に次いで多い駅とのこと。ここは女子大駅と違って実際に中学校も近くにある。

 

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中学校駅から次の井野駅まで歩いてみる。家々が並ぶ典型的な住宅街だ。

 

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途中にあった公園。よく見るとブランコは老朽化して外してあり、草もぼうぼうだった。メンテナンスされている公園と使われていない公園とがあるのかもしれない。

 

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ユーカリが丘線はこのあたりは高架ではなく家よりも低い位置を走っている。

 

 

 

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中学校駅から歩いて20分弱、最後に訪れたのは井野駅。急に普通にありそう(?)な駅名である。利用者数はユーカリが丘駅、中学校駅に次ぐ3位とのこと。この駅からは公園駅→地区センター駅→ユーカリが丘駅と繋がることになる。なんとこれで全駅制覇! をあっさりと達成してしまった。

 

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山万ではユーカリが丘を「千年優都 ユーカリが丘シティ・ミレニアム」というテーマで街づくりを手がけ続けているという。他のニュータウンと呼ばれたベッドタウンが、住人の高齢化やライフスタイルの変化で元気が無いと言われる事例が全国に見られる昨今、ユーカリが丘は街としての元気さを持続しているように見えた。

公式サイトによると2年間で276世帯増加子供の数も4年間で44%増加しているとのことだ。山万グループのシムシティの達人っぷりを見せつけられた感があるし、いち企業がここまで街をまるっと造っている事例をSF以外で初めて見たので、そういう意味での未来も感じた。

 

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個人的な話だが、色々な街を見ている中では自分に子供がいるとどうしても「永住する街探し」という目線が出てくる。そういう意味でここユーカリが丘は普通にイイのでは…とちょっと思った。もうしばらくジックリと考えつつも、こあら号に冷房が付くことを祈っております。

(おわり)