四国の全駅制覇とお遍路を同時にやったら大変なことになった【徳島・高知編】[PR]

「四国全駅制覇をしつつ、お遍路を同時に達成する」という謎の旅にでかけます。今回の旅でも、旅の記録にアプリ「駅メモ」を使用。取材スケジュールも1度では取れず、記事も長いため、まずは徳島・高知のみを配信させていただきます。(読了時間目安 : 40分)

 

2日目 6:40 徳島駅

sikoku124

まさか2日連続で徳島駅からスタートすることになるとは思わなかった。さて2日目も方針は変わらず、明るいうちは寺を巡っていき、取れる駅は取っていくというスタイルでいきたい。本日13番目の札所から行くことになるが、入念な下調べの結果、13番札所の目の前にはバス停があるらしい。しかもそのバスは徳島駅から運行しているというんだから、それを使わない手はない。早速バス停に向かい、目当てのバスの到来を待った。

7:10発 徳島バス 寄居行き

sikoku125

意外なことに、バスに乗り込む面々のほとんどが白装束を着たお遍路さんだった。お遍路さんの間では13番は徳島からこのバス! と噂されているのかもしれない。

バスは朝焼けが眩しい徳島の街を20分ほど爆走し、そろそろ民家とか少なくなってきたなという風景になったところでお目当てのバス停に到着した。知らない地方でバスに乗ると、本当にその停留所に行ってくれるのか恐ろしく不安になるが、なんとか到着してくれて良かった。

 

sikoku126

7:39 一の宮札所前停留所

早速今日もカバンから相棒を取り出して組み立てる。今日も一日よろしく頼むぜ。

sikoku127

このバス停、「札所前」とついているのは伊達じゃないレベルで本当に12番札所の目の前だった。ただ、あまり歩道がない道なのに車が物凄い速度で走り抜けていくような道路を通るのでなかなか危ない。自転車で行く必要がないレベル。ものの数分で到着。今日はなかなか幸先が良い。当たり前だけど境内には先ほどバスに乗っていた面々が普通にいた。

 

sikoku128

【7:45】第十三番 大日寺(だいにちじ)、御本尊「十一面観世音菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「石井」(JRよしの川ブルーライン)

かなり鉄道から距離があるので最寄り駅が昨日、ヤンキーがたむろしていた石井駅である。

ここには色彩鮮やかな「しあわせ観音」という小さな観音像がある。なかなか奇麗なので一見の価値ありだ。賑やかな道路に面した場所ということで、比較的街中なので境内もコンパクトにまとまっている印象だ。

入念な下調べによると、ここから4つの寺は比較的距離が近い。地形も平らで難なく巡ることができそうだ。颯爽と愛機で走り出す。

 

sikoku129

気候の良さと季節の良さもあるだろうが、基本的に徳島の朝は気持ちが良い。透き通った空間がどこまでも続いているような錯覚を感じさせてくれる。川沿いを自転車で走っていて気持ちが良いのだ。

 

sikoku130

大日寺の裏手を流れていた川を渡り北上していくと、ゆるやかな坂道が目の前に現れてくる。こんなものは昨日の焼山寺の惨劇から考えれば児戯に等しい。坂道に入らない。サクサクと登っているとそれでもやはり汗は滲んでくるので立ち止まって上着を脱いだ。

 

sikoku131

脱いだ上着をリュックに詰めていると、先の方の民家に途方もない違和感を感じた。なんだあれ。近づいて見てみる。

 

sikoku132

なんで?

まるでそうであることが当たり前であるように庭先に置かれていて、完全に住宅地に溶け込んでいるのだけど、なんで置かれているのかさっぱり理由が分からなかった。そんな謎の住宅街をくぐり抜け、第十四番札所へと到達した。

sikoku133

【8:05】第十四 常楽寺(じょうらくじ)、御本尊「弥勒菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「石井」(JRよしの川ブルーライン)

明確な山門が存在していない感じだったので、この石碑が建っているあたりが山門代わりの入り口なのだろうか。上の画像をよく見ていただくと、両脇に生身の猫が配置されているのが分かる。まるで猫が寺を守る存在として君臨している感じだ。「よく来たなニンゲン、オヤシロサマはこの奥だ、粗相のないようにな」とか今にも人語を喋りそう。

 

sikoku134

猫が守りし山門を抜けて階段を登ると本堂がある。入念な下調べによると、本堂右側にアララギ大師という巨木があり、糖尿病などの予防に祈願されることが多いらしい。糖尿病はマジで心配なのでここはしっかりと祈願しておきたい。

 

sikoku135

本堂に上がるとそこにも猫がいた。ここは猫寺なのだろうか。

ちなみにこのお寺は88か所霊場の中でも唯一弥勒菩薩を本尊とする寺らしい。弥勒菩薩好きにも猫好きにも見逃すことができない寺だ。

さらに住宅街を駆け抜けて次の寺を目指す。ちょっと気を抜いたら迷ってしまいそうな細かい路地の連続で、こりゃあ気が抜けないぞと気合を入れていたんだけど、気を抜いたみたいで道を間違えた。気付いたら全然違う場所にいた。

sikoku136

こういったガチガチの生活道路を通っていくのだけど、誰もいない山道を通るよりは随分と精神的に楽だ。颯爽と軌道修正し、次の寺に到着する。今日はトントン拍子に進みすぎて怖いくらいだ。

 

sikoku137

【8:18】第十五番 国分寺(こくぶんじ)、御本尊「薬師如来」、駅メモチェックインで取れる駅「府中」(JRよしの川ブルーライン)

最寄り駅が石井から府中へと変わった。かなり移動してきた証拠だ。住宅街の中にありながらなかなか広い敷地を持ったお寺だった。境内を歩いていると、両手に大量の果物(でかいみかんみたいなやつ)を大量に持った近所のおばちゃんに呼び止められた。

「あれ、兄ちゃんの自転車か?」

自転車置き場がなかったので駐車場の隅に停めていた僕の愛機を指差して言う。また自転車が小さいことを指摘されるのかと少しウンザリして、自分から率先して言うことにした。

「そうですよ。大きい僕からしたら不自然に小さい自転車です」

そう言うとおばちゃんはしかめっ面して

「そんなことないわー、かっこいい自転車やわ。あーかっこいい」

とか言いながらどこかに歩いていった。よく分からないけど初めて自転車を褒められた気がする。なんだか誇らしい。

sikoku138

ルンルン気分で自転車を走らせ、次の寺を目指す。次の寺も近いらしい。幹線道路と思われるかなり大きな道路をひた走っていたらすぐに到着した。

 

sikoku139

【8:33】第十六番 観音寺(かんのんじ)、御本尊「千手観世音菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「府中」(JRよしの川ブルーライン)

これまた街中にあるお寺でコンパクトにまとまっている。境内には夜泣き地蔵と呼ばれる地蔵もあり、夜泣きをピタリと止めてくれる御利益があるそうだ。御利益があったお礼によだれかけを奉納する風習があり、地蔵にむちゃくちゃよだれかけがかけられていた。どうしても夜泣きしてしまうというかたはこちらを訪れてみるのもいいかもしれない。

ここも駐輪場がなかったので駐車場の隅に自転車を停めていたのだけど、そこでデカいバイクを発見した。

 

sikoku140

XJR1300。すげー、でけー、かっけー、と物欲しそうに眺めていたら、持ち主の青年がやってきた。「バイク好きっすか」とか訊いてくるので別に好きでも嫌いでもないけど「好き」と答えると様々なバイク談義を聞かせてくれた。このXJR1300というバイクは昨年に製造中止になったらしく、もう新車では買えないバイクらしい。1300ccもあるので、そもそも400ccまでしか免許のない僕はこれに乗れない。どうやら彼はこのバイクでお遍路をしているらしい。

「でも自転車で回るのも憧れるっスよ」

と僕の自転車を見ながら言うので、じゃあここから交換してみっか、俺は構わないぜと喉元まで言葉が出かかっていたが、グッと堪えた。400ccまでの免許しかないからね。

バイク青年に別れを告げ、自転車で愚直に先へと進んでいく。よしの川ブルーラインの線路を超えてさらに北へ。ガチガチの住宅街を抜けるとそこに十七番札所があった。

 

sikoku141

【8:55】第十七番 井戸寺(いどじ)、御本尊「七仏薬師如来」、駅メモチェックインで取れる駅「府中」(JRよしの川ブルーライン)

弘法大師が訪れた際、水不足に悩む周辺の村のために掘ったら、一夜にして水が湧き出たという伝説から「井戸寺」と名付けられたらしい。ここの本堂は少し変わった作りになっていて、中に入ると売店みたいになっていてお守りやらお遍路グッズなどを販売している。

 

sikoku142

昨日の焼山寺の惨劇みたいになるのはこりごりなので、お遍路用の地図を200円で購入した。これで安心、と思ったが昨日のあの魔の45キロの道のりもこの地図では4キロくらいしかなさそうな感じで描かれており、けっこうアバウトな地図だからあまり信頼できないな、と落胆した。

地図を買う際、店番をしていたお婆さんに話しかけられた。

「お兄ちゃん、ウクライナ人か?」

これから僕が何歳まで生きるか分からないが、おそらく生涯において二度とされることがない質問だ。ウクライナ人なわけないだろ。ただまあ、お婆さんの話を聞いてみると、どうやら事情があるらしい。

なんでも、昨日の早朝、焼山寺の麓にある民宿の人がやってきて、ウクライナからのお客さんがスマホの充電器を忘れた、お遍路をしている外国人だからここ井戸寺にもそのうちやってくるから先回りして渡してくれないか、と届けにきたらしい。そう言ってお婆ちゃんに充電器を預けたそうだ。

ただ、お婆ちゃんはどれがウクライナ人か分からず、そもそも日本語が通じないらしいから話しかけるのも怖く、何人かそれっぽい外国人が来たが話かけられなかったらしい。けれども、そのウクライナ人が物凄く困っているだろうと反省し、どうかこの先のお遍路でウクライナ人を見かけたらここ井戸寺で充電器を預かっていると伝えてほしい、とのことだった。

「まかせといてよお婆ちゃん。きっと見つけてくるよ」

などと安請け合いしてしまったが、良く考えたらこれを引き受けてしまったことにより、今後お遍路中に外国人を見かけたら全て話しかけてウクライナ人か訊ねなければならない事態になってしまった。とんでもないことを引き受けてしまった。

さて、ここから来た道を南下し、よしの川ブルーラインの府中駅を目指す。昨日通った駅なので既に取っているが、次の札所は徳島市をかなり南下した位置にあるので、電車で移動することにした。

颯爽と自転車を漕ぎ、線路が近づいてくると、なにやら列車がプシュプシュ言ってる音が聞こえた。まさかもう駅に列車が来ているのでは。いくらこの路線は列差の本数が多いと言ってもすぐに次の列車がやってくるレベルではない。この列車を逃してしまうと次の列車まで相当なタイムロスだぞ。焦った。爆走して府中駅へと駆け込むと、悪い予感は的中していて、今まさに徳島行きの列車が出発しようとしていた。

「30秒で折りたたむ!」

列車に乗るには愛機を完全に折りたたみ、カバンの中に収納する必要がある。30秒だ! 30秒!と訳の分からないことを叫びながら懸命に折りたたんだ。人間やればできるもので、本当に30秒くらいで折りたたんでカバンに収納した。間に合う、行ける!

急いでホームに駆け込もうとすると、知らないオッサンに話しかけられた。

「すいません、そういう自転車ってどこで売ってるんですか?」

どうやら僕が自転車を折りたたんで収納する様子を見ていて、こいつは便利だと欲しくなったらしい。

「むちゃくちゃかっこいいし、便利だし、欲しいなって思いまして、どこで売ってるんですか?」

愛機を褒めてくれるのは嬉しいんだけど! 列車が! 出ちゃう! しかも向こう側のホームやんけ! 陸橋を渡らないといけない!

「ビックカメラで買いました!」

とおじさんに言い残してホームに駆け込み、死に物狂いで階段を昇って陸橋を渡る。間に合った。その光景を見ていた運転手さんがちょっと待ってくれている感じだった。なんとかセーフだ。

9:14発 よしの川ブルーライン 徳島行き

自転車担いで陸橋ダッシュは死ぬかと思った。徳島につくまでずっとハアハアと荒い呼吸で新手の変質者みたいになってた。

sikoku143

9:28 徳島駅

三度徳島駅に帰ってきた。

入念な下調べによると、じつはここ徳島駅から南に向かって、次の札所に近いところまでいくバスが出ているはずだった。ただ、そのバスは9時25分発なので、28分着の列車では完全に間に合わないことも分かり切っていた。それでも3分の違いだし、もしかしたらバスが来るのがちょっと遅れて乗れるかも、とバス停まで行ってみたが、やはり出発したあとだった。

ということで、次の札所の近くまで列車で移動することにする。

9:51 JR牟岐線 特急むろと 牟岐行き

sikoku144

徳島県を海岸沿いに南へと進む牟岐(むぎ)線に乗り込む。この路線は「阿波室戸シーサイドライン」という名称もつけられており、文字通り海沿いを走っていく。

それにしても特急に乗れることがうれしい。ここから18番札所の最寄りである南小松島駅を目指す。もちろん、駅メモでのチェックインもぬかりなくやっていく。

おおよそ10分くらいだっただろうか。あっという間に南小松島駅に到着した。特急、早い。

sikoku145

sikoku147

チェックインした駅
阿波富田、二軒屋、文化の森、地蔵橋、中田、南小松島

10:01 南小松島駅

徳島駅から特急で10分来ただけなので、景色が思いっきりカントリーってわけではなく、周囲に民家も多いし、商店もある。全然街だった。駅自体の利用者もかなり多い感じがする。

sikoku148

駅前ロータリーの隅に湧水を汲める場所がある。どうやら無料で汲めるようで、地元の人がひっきりなしにペットボトルやらポリタンクを持ってやってきていた。

 

sikoku149

徳島は水が美しいのである。

 

sikoku150

駅舎の中に観光案内所みたいな場所があるのだけど、ここにいる人が狂ったように親切。ちょっと、札所の道を聞いただけなのに、あれももってけ、これももってけ、とやりすぎだろというくらいにむちゃくちゃ観光パンフレットくれる。おかげでここ小松島市は源義経、弁慶に関する伝説が数多く残る場所だと知ることができた。

さて次の恩山寺はこの駅から内陸に入っていった場所にあるらしい。ただ内陸と言ってもそこまでの登り坂ではないようだ。市街地を抜けて一気に行ってしまおう。天気も良く、気分は上々、青い空の下を颯爽と自転車を走らせた。

sikoku151

10:31 第十八 恩山寺(おんざんじ) 御本尊 薬師如来

かなり手前に形だけの山門があり、そこから少し登った場所に駐車場がある。本堂へはそこからさらに階段を昇っていく。駐車場の片隅に自転車を停めていると、オッサンに話しかけられた。なんでもお遍路アンケートと言うか、どこかから委託を受けて交通量調査のお遍路版みたいなものをしているらしい。

どこからきましたか、どんな目的で、みたいな普通の質問を受けて、東京、贖罪、と無難に答えていく。いつの間にかアンケートではなくて雑談みたいな感じになっていたのだけど、話題は僕の自転車に及んだ。

「すごいかっこいい自転車じゃないの」

「いやーそんなことないですよ。小さいですよ」

僕もそうやって謙遜するんですけど、オッサン、むちゃくちゃ褒めてくれる。たぶんアンケートに答えてもらった手前、ちょっとおだてないといけないと思っている。すごい褒めてくる。

「いやいや、小さくないよ、大きい」

いくらなんでも大きいは嘘だろ。さすがにお世辞が行き過ぎている。一気に嘘くさくなりやがった。けれども、褒められて悪い気はしない。ルンルン気分で本堂へと向かった。

sikoku152

本堂で参拝した後、さあ次の札所を目指しましょうかね、と歩きだすとベンチで外国人男性が足のマッサージをしていた。どうやらここまでの旅路で足が疲れてしまったようで、苦悶の表情で自分の足を揉んでる。発見してしまったのなら仕方がない。井戸寺のお婆さんとの約束を果たさなければならない。

「どこから来たんだね? ウクライナ人かね?」

みたいなことを一生懸命英語で伝えるんだけど、全然通じない。すごい怪訝な顔してる。なんだこいつ、自転車ちいせえ、みたいな顔で見られている。

「いや、ウクライナ人が充電器をホテルに忘れたみたいで、持ち主をずっと探しているんだ」

みたいなことを英語で伝えるのだけど全く伝わってないみたいで、なぜか足を揉まされた。なんでやねん。なんか間違って伝わったっぽい。すげえ恍惚の表情してやがる。なんで俺、こんなことしているんだろうと思いつつ見ず知らずの外国人の足を揉んでいた。傍目にはすごいシュールな光景だったと思う。しかも新開発の生物兵器かってくらい足が臭かった。

次の寺は、ここからまた南下しつつ海沿いの線路の方に向かえば行けるらしい。入念な下調べの賜物である。近いようなのでそのまま自転車でいく。けっこう緩やかな下り坂だったので難なく行けた。全ての旅路がこうありたいものだ。

sikoku153

ちょっと洒落た橋を渡るとすぐに十九番札所が現れた。

 

sikoku154

【10:48】第十九番 立江寺(たつえじ)、御本尊「延命地蔵菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「立江」(JR牟岐線)

本堂の中ほどに売店と休憩所を兼ねたスペースがあるのだけど、そこにかなり高齢の姉妹と思わしき3人が座っていた。年老いてから三姉妹でお遍路旅行をしている感じで、仲睦まじい感じなのだけど、一番姉っぽい人が休憩所に置かれた自販機で飲み物を買おうと立ち上がった時、異変が起こった。

「お姉ちゃん、また飲むの?」

「さっきも飲んだじゃん」

「いいじゃない。私の喉だもの。乾けば飲む」

「私の喉」というあまり聞きなれない言葉にちょっと浜崎あゆみを感じた。その言葉に少し驚いているとさらにパワーワードが続く。

「そう言ってすぐトイレ行きたいとか言い出すんだから」

「そうそう。その度にトイレ探すの大変。何もないところで言い出すもの」

「いいじゃない。私の膀胱だもの。出したいときに出す」

なんか微妙に名言っぽく言ってるけど出したいときに出す宣言はお漏らし宣言に近い。とりあえず僕もトイレに行っておこうと思った。いいじゃない、僕の膀胱だもの。

一旦は内陸へと入っていったが、またこの寺に来ることで海沿いの鉄道沿いに復帰した。駅メモでチェックインしてみると、「立江」という駅が取れた。どうやらかなり近いっぽい。駅メモは最寄りの駅までのだいたいの距離も表示されるので実はこういう複合的な移動手段を用いる旅においてはかなりの威力を発揮する。(同じ駅に短時間に連続でチェックインすると周囲の駅の距離が表示される)

 

sikoku156

チェックインした駅
立江

一応、駅がどんなものか見に行くと、おもいっきり工事中だった。

sikoku157

通学需要がかなり高いらしく駅の横には高校生のものと思われる自転車が沢山停めてあった。家からここまで自転車でやってきて、ここから列車に乗って通学するのだろう。

 

sikoku158

あれ、自転車のカゴの中に何かある。なんだろう、と近づいてみる。

 

sikoku159

数学Iの教科書だった。忘れていったのだろうか。自転車のカゴに教科書を忘れるというシチュエーションが良くわからないが、今頃数学教師に怒られていやしないかと心配になる。

さて、ここから20番の鶴林寺を目指すわけだが、事前の下調べによるとこの鶴林寺に至るまでの道、かなり険しい難所らしい。この行程もまた「遍路ころがし」と呼ばれて恐れられているらしい。ハンッ、まるで遍路ころがしのバーゲンセールだな。

昨日の焼山寺の惨劇のような思いはまっぴらごめんなので、残り2回となったタクシーを使うことを決意する。駅の横にタクシー会社の営業所があったのだけど、そこの軒先に置かれたタクシーが何故か朽ち果てていて怖かったので別のタクシー会社を召還した。

電話して5分ほどでタクシーはやってきて、てきぱきとトランクに自転車を積み込む。ここは楽させてもらいますぞーと意気込んで後部座席に座ると、タクシーの運転手さんが思いっきりヤクザみたいな風貌だった。怖い。

「すいません。鶴林寺までお願いします」

そう告げるが返事はない。ただ黙ってタクシーは走り出す。助手席のところに運転手さんの名前と写真が掲示されているのだけど、その写真もザ・指名手配みたいな感じで怖い。

車内の沈黙が重い。何かご機嫌なトークで押した方がいいのか。それともヤクザっぽい運転手さんにあわせてシャブっぽい話をしたほうが良いのか。困惑していると、運転手さんの方から語り掛けてきた。

「今日はええ天気やなあ」

きた。これを糸口に会話を弾ませるしかない。なあに、運転手さんも風貌は怖いけど話してみるといい人、って感じのはずだ。いける。

「そうですね。むちゃくちゃ天気いいですね。僕なんか昨日まいっちゃいましたよ。焼山寺にいったんですけど残り45キロのところを間違えて4.5キロって記載しちゃって、途中でこれ絶対におかしいぞってなって絶望したんですけど、あの時は天気も少し悪くなってきて、日も落ちてきて本当に怖かったですね。体も疲れてきちゃうし。シャブとかあれば疲れ知らずでいけたかもしれませんけど、ハハハハハハ」

どや。これは鉄板やろ。面白エピソードに加えてちょっと保険でシャブの話も混ぜてある。これで金曜夜のクラブくらい会話が盛り上がるはず。

「…………」

なんで会話が続かねえんだよ。

ずっとこんな感じで沈黙が流れて、運転手さんが散発的に一言発する。それを受けて僕が膨らませるんだけど、そこからが続かない。最後の方は運転手さんも話すことがなくなって「テレビ買いたい」みたいなどう膨らませるべきなのか分からないこと言ってた。

さて、車窓から流れる景色、完全に山登りのそれになってきた。ハッキリ言ってタクシーを選択したことが大正解としか思えない。焼山寺の惨劇が緩やかだけど超絶ロングコースの山登りとするならば、こちらの鶴林寺は距離はそこまで長くないが傾斜がきつい。まともに行っていたら多分ここで今日の旅が終わっている。むしろ旅自体がここで終わっている。

タクシーに乗っているのに車窓からの景色だけで昨日のことを思い出して震えがくる。完全にトラウマだ。それでも何とか自分の気持ちを奮い立たせる。鶴林寺に到着すると、なぜか運転手さんがチョコレートくれた。

sikoku160

【11:13】第二十番 鶴林寺(かくりんじ)、御本尊「地蔵菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「新野」(JR牟岐線)

やはりほとんどの人が車で来るようで駐車場は混みあっていた。この寺は山の山頂にあるらしく、かなり眺めが綺麗らしい。ただ僕が見た限り、寺の周りは鬱蒼と木々が生い茂っていて眺めが期待できる場所はなかった。ただ見落としているだけだろうか。

 

sikoku161

sikoku162

それでも本堂へと通じる道などは森林浴気分で心地が良い。

 

sikoku163

鶴林寺の名前の通り、本堂の両脇を鶴が固めていたりする。

ここ鶴林寺は標高550メートルほどの鷲が尾という山の山頂に位置する寺だが、どうやら次の太龍寺も山頂に位置する寺らしい。おまけにここより高い山の山頂のようだ。まるで山頂のバーゲンセールだ。太龍寺に至るルートも険しく、おまけに車で行ったとしても途中までしか行けないらしい。これまたなかなかの難所として鎮座していた太龍寺だが、近年は山のふもとから一気に登るロープウェイが完成し、比較的楽になったようだ。とりあえず、ここからロープウェイ乗り場までは10キロほど、おまけに下りばかりのようなので自転車で移動する。

ブレーキがぶっ壊れるんじゃないという急斜面を駆け下り、川沿いを爆走してロープウェイ乗り場を目指す。途中、いくらか民家が点在していたが、それでもやはりほとんどが人っ子一人いない完全無欠の山道で、昨日のトラウマが蘇りそうになるがそれでも先に進んでいく。

sikoku164

【12:21】太龍寺ロープウェイ 山麓駅

いちおう駅と言う名称がついているので駅メモの対象かと思ったが、チェックインしても取れなかった。どうやらロープウェイ駅は対象外らしい。駅メモさんには是非ともこの麓の駅と山頂の駅を対象駅にして徳島の駅メモユーザーを震え上がらせてほしい。ここが対象になったら取るのめちゃくちゃ苦労する。

前述したように、次の太龍寺は車で行くことも困難な寺である。よって車遍路をしている人もここに車を駐車してロープウェイで行くようだ。駐車場がかなり広かった。

sikoku165

空にワイヤーが張り巡らされていることからも分かるように、ロープウェイはこの山を越えて一気に行くっぽい。想像していたよりスケールでかい。なんでもロープウェイとしては西日本最大の長さらしい。

運行は朝9時から17時までで、20分おきのダイヤのようだ。鶴林寺攻略でタクシーを召還しなかったらここに来たときには確実に5時を超えている。つくづく先ほどのタクシーの選択は正しい。

運賃は往復で2470円、片道で1300円となかなかお高め。利用客はかなり多く、券売所は長蛇の列になっていた。行列に並んで様子を見ていたのだけど、当然のことながらみんな往復で購入していく。ほとんどの人が車で来ているので当たり前といえば当たり前だ。そんな中、僕は堂々と片道切符を購入する。

「え? 片道ですか?」

片道を買う人があまりいないっぽくて係員さんも困惑していた。

よくよく考えると、せっかくロープウェイで高い山の上まで運んでくれるのだ。せっかく稼いだ位置エネルギーをまたロープウェイに乗って消費してはもったいない。太龍寺から山を降りてその位置エネルギーをふんだんに使うべきである。おまけに太龍寺の次の寺のことも考えると、やはり片道で行ってそこから山を降りた方が効率が良い。ここは絶対に片道切符だ。自信がある。

sikoku166

やってきたロープウェイがこれ。100人くらい乗れるらしい。

 

sikoku167

ぐおおおすげえ。川と山を一気に越える。

 

sikoku168

ゴンドラ内に一か所吹き抜けてなっている場所があって真下が見えるようになっている。ガラスも何も入っていない完全なる鉄格子だけなので結構怖い。

 

sikoku169

山の上に建てられた鉄塔を経てさらに先に進む。ちなみにこの鉄塔、ロープウェイの支柱としては世界最大らしい。そんなことをゴンドラ内でアナウンスしてくれる係員の女性(かわいい)が言っていた。鉄塔を通過するときはめちゃくちゃ前後に揺れる。ちょっと怖い。

 

sikoku170

山を越えて終わりと思っていたらもう一つ山が現れた。またさらに山を越えるらしい。この辺の山間は二ホンオオカミがいた、みたいなことを係員の女性(かわいい)が説明していた。

 

sikoku171

もう一つの鉄塔を超えると、いよいよ終着駅が見えてきた。

 

sikoku172

ついたー!

降り際に係員の女性(かわいい)が話しかけてくれて、どうやら一人だけ片道切符だったのを覚えていてくれたみたいで、

「大丈夫ですか? 降りる道はかなり険しいですけど」(かわいい)

と、すごい心配そうな顔してくれました。

「大丈夫です! こいつがいるんで!」

担いでいた自転車のバックを指差す。

係員さん(かわいい)は何言ってんだこいつ、みたいな顔していた。(かわいい)

sikoku173

【12:53】第二十一番 太龍寺(たいりゅうじ) 御本尊「虚空蔵菩薩」、駅メモチェックインで取れる駅「新野」(JR牟岐線)

ここまで来るのめちゃめちゃ大変だ。この山頂の駅も駅メモの対象駅にして徳島の駅メモユーザーを震え上がらせるべきである。いかがですか?駅メモさん!

ロープウェイ降り場から少し歩いた場所にかなり迫力のある石碑がある。このお寺はかなり敷地が広く、各種施設を巡れるように一連のコースが作られている感じだ。大半の訪問者がロープウェイからやってきてロープウェイで帰っていくので同じ順路を辿る。それを意識して作られている。

sikoku174

もうだいぶ慣れてきたけど、自転車担いでこのレベルの階段はそうとうきつい。太ももの筋肉がブチブチ切れているような感覚がする。

 

sikoku175

テーマパークでアトラクションを巡るように本堂に行って大師堂に行って納経所にいってとコース設定がされているが、僕はロープウェイでは帰らないので途中でそのコースから外れる。コースを外れると、間違える人が多いのかしきりに「この先はロープウェイではありません! 引き返して!」と看板で警告される。ここまで引き返せ引き返せとしつこく言われるとまるで悪いことしている気分になってくる。
sikoku176

しばらく下ると山門が登場してくる。ロープウェイを使わずに正規のルートでくると最初にこの山門に出合うのだ。逆を言えば、ロープウェイ往復をしている限りこの山門にお目にかかることはない。

 

sikoku177

森林の中を蛇行するコンクリ―トロードをひたすら下っていく。位置エネルギー万歳!

1キロくらい下ると太龍寺の駐車場が現れ、そこから舗装されたアスファルト道路が伸びている。その道路を完全に位置エネルギーを満喫し風と一体になりながら下っていく。たしか「ゆず」とか歌ってた。

sikoku178

うおおおおおお、おれは自由だーー!

 

sikoku179

うおおおおおおおおおおおおおお!

転んだ。今回も。

完全にこの自転車の許容速度超えてたと思う。蟹座のクロス※みたいにバラバラになるかと思った。

※漫画、聖闘士星矢の話です。

sikoku180

【14:13】第二十二番 平等寺(びょうどうじ)、御本尊「薬師如来」、駅メモチェックインで取れる駅「新野」(JR牟岐線)

完全に山から降りてきて平地になってすぐに二十二番札所へと到達した。若干距離はあったが位置エネルギーの申し子となっていたのであまり苦ではなかった。ここ平等寺は多くの人に平等に救済をという願いをこめてつけられたお寺らしい。

小汚い僕とは対照的にBMWで乗り付けた親子連れがいて、お父さんとお母さん、大学生くらいの娘という3人が境内を歩いていた。完全にハイソな親子連れで、住む世界が違っていて、絶対に娘がバイオリンだかをバルコニーでやってるのをこの草刈正雄みたいなお父さんがソファーで聴いてる。そう想像していた。あとむっちゃ毛が長い猫がいる。僕が強盗にでも入らない限り絶対にこの親子とは接点がない。すごい格差だ。平等なんてない。なんて考えていたら娘さんが僕のとこに駆け寄ってきてくれて絆創膏をくれた。転んだ時に腕から血が出ていたからだと思う。全ての人に等しく平等に救済があるお寺、なのである。

さて、ここからは駅メモを見る限り駅が近いようなのでまず駅に行く。つぎの札所がなかなか遠いようなので列車でいくのだけど、ここで少々戦略的なお話をさせていただきたい。

14:19 新野駅

sikoku181

平等寺からほど近い新野という駅にきた。ここからさらに南下したいが、その列車は1時間くらい待ちがあるようだ。その間に作戦を練る。

sikoku182

まず、もうここまでくるチャンスはないので、この機会に牟岐線の駅を全部取得しておきたい。さらには海部駅から接続する第三セクター、阿佐海岸鉄道阿佐東線の駅も取りたい。終着駅の甲浦は住所的には高知県になる駅だが、ここを逃すと二度と取れないのでしっかりと取りたい。

しかしながら、次に目指すべき二十三番札所が途中の日和佐駅にある。

sikoku183

つまり、これから来る南行きの列車に乗り、日和佐駅で降りる。そこから二十三番札所を取り、また日和佐駅に戻って南行きの列車に乗る。この間30分。この路線はそこまで本数が多くないので、30分後の列車を逃すとかなりのタイムロスになる。駅で降りて30分で札所にいけるか。速攻で自転車を組み立てて行って速攻で戻ってきて畳む。ギリギリな気がする。

 

15:23 JR牟岐線 海部行き

sikoku184

本当に間に合うだろうか。ドキドキしながら乗り込む。

 

sikoku185車窓から海が見えた。徳島の札所は内陸が多かったので、この旅で初めて海を見たような気がする。海とはどこで見てもいいものだ。

 

15:44 日和佐

sikoku186

sikoku188

チェックインした駅
阿波福井、由岐、田井ノ浜、木岐、北河内、日和佐

よし、急げ! 小走りに電車を降りて改札を抜け、恐ろしい速さで自転車をトランスフォームさせる。よし、できた。だああああああ、反対側の出口からでてるじゃねえか! 目指す札所は反対側の出口だ。ありえない凡ミスに間に合わないことも覚悟したけど札所は思った以上に駅近で、条件の良いマンションみたいな立地だったので難なく到着することができた。これなら余裕で間に合う。

sikoku189

【15:51】第二十三番 薬王寺、御本尊「厄除薬師如来」、駅メモチェックインで取れる駅「日和佐」(JR牟岐線)

阿波の国(徳島県)の札所はこれにておしまいである(正確には66番が住所的には徳島県だが)。境内にはラジウムを含んだ霊水(肺病に効くとされている)や司馬遼太郎の「空海の風景」に登場した石碑などがあり見所沢山だが、そんな時間はない。列車が来る。

 

sikoku190

本堂までつづく石段の隅に一円玉が置かれていた。そういえば、ここにくるまでの何個かの寺でもこういった光景を見たような気がする。なんだろうこれ。

調べてみると、どうやらこれは「厄除け坂」と呼ばれる風習のようだ。階段の1段を年齢に見立てていて、厄年にあたる段が踊り場になっていたりスペースが開いていたりする。女性の厄年と男性の厄年に対応した階段であることもあって、厄年にあたるひとは一段づつ1円玉を置いて行って厄除けとするようだ。ちなみに僕はガチガチに厄年なのでやろうと思ったが、そんなに1円玉持っていないのでやらなかった。最近では厄年関係なく、自分の年齢に該当する段に1円玉を置いたりもするようだ。

駅まで舞い戻る。思ったより時間を食わなかったので次の列車まで結構時間がある。日和佐駅の札所側はそのまま道の駅と直結していて賑やかだった。

sikoku191

足湯がある。

 

sikoku192

特産品を販売する物産館もある。この物産館、非常に興味深くて、日和佐駅の駅舎も兼ねた施設なのか、

 

sikoku193

物産館内でJRの切符も売っているという。ただ、中に入ってみても切符売り場みたいな雰囲気は皆無でいったどこで切符売っているんだよと怒りすら覚えてくるんだけど、勇気を出して絶対に切符なんて売ってないだろうって雰囲気のお土産物売り場のレジのおばちゃんに話しかけると

sikoku194

sikoku195

レジ裏の端末を操作してガチで切符を売ってくれる。ちゃんとJRで使ってる本物の切符だ。すごい。

sikoku196

次の札所を指し示す石碑が道路脇に建っていたのだけど、なんと次の二十四番までは90キロくらいあるらしい。どうかしている。

map1

次の札所は県境を超えて高知県に入り、室戸岬の先端にある。途中まで列車でいけるが、そこから列車はない。歩きで行った場合、海岸線をずっと2泊3日くらいで歩き通してやっと到達する距離らしい。とんでもない。どうやってあそこまでいくか、それを考える前にどちらにせよ終着駅まで行かなければならないのでやはり南に向かうことにした。

16:22 JR牟岐線 特急むろと 牟岐行き

sikoku197

特急に乗れることが嬉しい。

特急ってやつは本当に早くて、あっという間に到着してしまう。まるで夢でも見ているかのようだ。

14:36 牟岐

sikoku198

ここで少し乗り換え待ちがあって、さらに先に進む列車を待つ。

 

sikoku199

ちなみに牟岐駅前はそこそこ南国風。

16:49 JR牟岐線 海部行き

ここまでくるとかなり乗客もまばらになってくる。景色も海か山かトンネルかという感じになってくる。昼間の疲れが重くのしかかってきて極度の睡魔に襲われるが、駅メモの旅は基本的に列車内で眠ることは許されない現代の奴隷列車みたいな旅である。駅ごとにチェックインしなければならないからだ。命を奪いに来るレベルの激しさの睡魔と戦いつつ、なんとか海部に到着した。

17:04 海部

sikoku200

sikoku201

sikoku202

チェックインした駅
山河内、辺川、牟岐、鯖瀬、浅川、阿波海南、海部

ここからさらに乗り換えて阿佐海岸鉄道阿佐東線に乗る。2駅しかない短い路線だ。どうやらこの路線は第三セクター方式で運営されている路線らしく、周囲の人口を少なく、おまけに路線も短く、周辺の高校の統廃合で定期利用客も減少し開業以来ずっと赤字の路線らしい。既に限界に近く、もっとも廃止に近い第三セクター路線ではと噂されるほどだ。

ぶっちゃけると、2駅くらいしかない路線ならとあるアイテムを使えば乗らなくても取ることができるのだけど、それじゃあ味気ないし、もしかしたらもう乗る機会がないかもしれないから乗ることにした。

sikoku203

さきほど乗ってきた列車を横目に見ながら線路を渡ると、阿佐海岸鉄道のホームがある。乗り換え便利。しばらく待っていると列車がやってきた。

17:12 阿佐海南鉄道阿佐東線 甲浦行き

sikoku204

さすがというかなんというか客が僕しかいなかった。貸し切り状態だ。すげえ寂しい列車だ。千尋が銭婆に会いに行ったときの列車みてえだ。

 

sikoku205

車内では阿佐鉄ギャラリーと称して鉄道写真の掲示が行われている。写真を見ていて妙なことに気が付く。

 

sikoku206

車内中に電飾が張り巡らされている。大仁田厚の有刺鉄線みたいに張り巡らされている。もしかしてこれはイルミネーションでもやるつもりなのか。どこか暗いところでパッと車内の電飾を点灯させてロマンティックに彩る。大変素晴らしいサービスだけど、今は僕しか乗客がいないことを忘れてはならない。ということはもしイルミネーションをやられた場合、僕の反応に全てがかかっているのだ。無反応ではあまりに悲しい。「わあ、綺麗」とでも言うべきなのか。いや、それじゃあまりにとってつけた感じだ。「天の川みたーい」とでも言うべきか。冷静に考えてオッサンの独り言としては怖い。ちょっと遠回りして「織姫と彦星が出会えるといいね」とでもいって天の川を連想させるか。いやいや、織姫はあまりに狙いすぎかもしれない。ロマンティックに媚び過ぎだ。譲歩して許容されるとするなら彦星までだろう。そう彦星でどうだろうか。パッとイルミネーションが点灯する「彦星!」これだ。

いつ点灯するかいつ点灯するかとドキドキし、彦星待機していたが、点灯することなく終着駅に到着してしまった。どうやら車内イルミネーションは期間限定のイベントみたい。僕の彦星を返してほしい。

(阿佐海南鉄道のイルミネーション列車は4月(ピンクLED)、8月、12月のようです。トンネルが多い路線なので昼間でも綺麗だそうです)

 

17:23 甲浦駅

sikoku207

sikoku208

sikoku209

チェックインした駅
宍喰、甲浦

ここ甲浦はギリギリ県境を超えていて高知県に属する駅だ。ただし、この先は全く線路が繋がっていない。高知県の全駅を取ろうとしてこの駅だけ残ったら地獄だろうなと思いつつ駅を出てみる。

sikoku210

見事に何もない。人類が滅んだあとの世界みたいになっている。ここまで何もないとは思わなかった。いままで色々な終着駅を見てきたけど、ここほど闇が広がっている終着駅はなかったかもしれない。どうやらこの駅に何かあるというわけではなく、本来はこの路線を室戸の方まで延伸し、高知市まで繋げるつもりだったらしい。ただ、海部、甲浦と徐々に延伸したが、途中で力尽きてしまい、こんな状態になったみたいだ。

さて、ここから少々戦略的なお話をさせていただきたい。今いる場所と次の札所はこういう位置関係だ。

map2

24番は室戸岬に存在していて、ここからも70キロくらいは距離がある。自転車で行ったとしてもかなり時間がかかることが予想されるし、なにより日が落ちてきたのでこれから旅立つことはあまり得策ではない。たぶん闇に呑まれてしまう。

実はここ甲浦からは室戸岬を経由して室戸市へと行く路線バスが存在する。ここまで来てみて分かったが日に数本とかひどいダイヤではなく、けっこう潤沢にダイヤが組まれている。今現在でもちょっと待てばバスが来るっぽい。

これに乗って行ってしまえばいいのだけど、大切なことを一つ忘れている。

「あくまで全駅制覇」

全ての駅にチェックインしないと編集部にぶん殴られるのでしっかり駅を取っていかねばならないのだけど

sikoku209

全然取ってない。お遍路に夢中になりすぎて虫食い状態。これはまずい。編集部にぶん殴られる。これを残して高知県入りしている場合じゃない。

そこでね、考えましたよ。ここから室戸岬にアプローチするのもきつい、徳島の全駅を取らなければならない。編集部に殴られたくない。この3つを一気に解決する方法、それは逆から室戸岬にアタックすることなのです。

map3

高知県側からのほうが駅から距離も短くアタックしやすそう。おまけに、あっち側からアタックするということはそこまで列車で行くわけで

sikoku211

こうやって大回りして全部取る。これが最善に違いない。これしかない。

そうと決まったら今乗ってきた列車でガンガン引き返しつつ、虫食い状態の駅を取得していかなければならない。

17:38 阿佐海南鉄道阿佐東線 海部行き

17:49 再度海部駅へ

18:28 JR牟岐線 徳島行き

21:03 徳島に到着

sikoku212

sikoku213

チェックインした駅
桑野、阿波橋、見能林、阿南、阿波中島、西原、羽ノ浦、阿波赤石

三度か、四度目か、それくらいの頻度で徳島駅に帰ってきた。しっかりとここまで取りこぼした駅を取得できた。ここから頑張れば最終の列車で高知方面へと行けるっぽいのだけど、もう一つやりのこしたことがある。制覇状況を良く見てほしい。徳島駅から西に行く路線の駅は全て高知に行く時に取れるので良しとすると、いっこだけやべーのがいる。

sikoku214

「阿波大宮駅」

超序盤戦で取れなくて、いつか取れるだろう、いつか取れるだろうと放置していた駅。香川県との境になる駅がここまで取られることなく残されていた。これを取らずに高知入りすると非常に気持ちが悪い。これを今から取りに行く。

特急に乗ってしまうと目当ての駅より先に行ってしまって香川県の奥深くまで行ってしまって帰ってこれなくなる可能性があるので、普通列車に乗るしかないのだけど、もうこの時間の普通列車は目当ての阿波大宮の手前、板野にいく列車しか存在しない。まあ、とりあえず板野にいくしかない。

 

21:33 JR高徳線 板野行き

sikoku215

もう一つ手前の「板野」までしか行けないわけで、「阿波大宮」を取ることはできないのだけど、僕には勝算があった。さっきもちょっと触れた、駅まで行かなくても駅を取れる可能性があるアイテムの存在だ。

それがレーダーと呼ばれるアイテムなのだけど、これを使うと行かなくても1駅隣の駅とか取れてしまう。大変便利で貴重なアイテムなので、僕は何かのきっかけでもっらたやつを大切に保管しておいたのだ。

 

駅に行かなくても取れた。GOOD!

ちなみにこのレーダー、駅メモ上で他のプレイヤーと契りを交わして「電友」と呼ばれるフレンド状態になり、そのフレンドがオンライン状態になればなるほど射程が増えていく。沢山の電友がオンライン状態であるのなら何駅も先まで取ることができ、ちょっとした短い路線なら乗らなくても制覇できることもある。ただ、僕はガチで電友がいなくて射程が短いので、あまりこの技は使わない。レーダー残量も少ないのでこういったどうしようもない場合にのみ使っていきたい。

sikoku218
懸念だった阿波大宮をとることができ、徳島制覇に向けて大きく前進した。これで残りの駅は明日、高知に向かう時に取る駅だけになった。徳島制覇はもうすぐだ。引き返す列車で徳島駅へと舞い戻り、二日目を終了とした。

2日目まとめ

sikoku219

総評
徳島の札所を全て制覇(66番以外)し、徳島の駅も全制覇の目途が立った。徳島のお遍路行程は長く苦しい旅路であった。特に「遍路ころがし」と呼ばれる部分は最強にころがしであり、その名に恥じないころがしっぷりを誇っているので、こう言った場所では積極的にタクシーや公共の交通機関を使っていくべきである。明日はいよいよ高知入りとなる、気を引き締めて頑張りたい。ちなみにウクライナ人は見つからなかった。

 

 【次のページ】3日目

 

「駅メモ!」と一緒に旅にでかけよう!
アプリをダウンロード