四国の全駅制覇とお遍路を同時にやったら大変なことになった【徳島・高知編】[PR]
「四国全駅制覇をしつつ、お遍路を同時に達成する」という謎の旅にでかけます。今回の旅でも、旅の記録にアプリ「駅メモ」を使用。取材スケジュールも1度では取れず、記事も長いため、まずは徳島・高知のみを配信させていただきます。(読了時間目安 : 40分)
最終日
さて、最終日こそは高知県の全駅制覇を中心に動いていきたい。。編集部にぶん殴られるので。今日も高知駅からスタートだ。まだ暗い高知駅のホームから動きだす。
6:08 JR土讃線 窪川行
これに乗って土讃線の高知より西の駅を一網打尽にしていくつもりだ。列車が出発するとすぐに街並みが消え失せ、山間の閑散とした景色に変わった。どうやら小学校が全くない地域を通過したようで、ある駅で5人くらいの小学生が集団登校の隊列のまま列車に乗り込んできた。小学生たちは1駅だけ乗ってまた集団登校の隊列のまま降りていった。
四国の列車は基本的にそうなのだけど、単線の線路が延々と続いている。都会では多くの路線が複線で、上りの線路と下りの線路がそれぞれ存在する。単線の場合は上りと下りで線路を共用するので、上下線のすれ違いはホームが2面ある駅でしか行えない。結果、長い時間駅に停車して反対方向の列車を待つということが起こる。
特にこの通勤通学の時間帯はそれが多く、おまけに都市部である高知行きの列車が多くなる傾向にあるので僕が乗っている逆方向の列車は駅で待たされることが多い。駅に停車し、対向列車待ちで8分停車します、とアナウンスが流れる。こんなのザラだ。
駅に停車すると、なぜか僕の向かいに座っていたおっさんが立ち上がって体操を始めた。最初は伸びをしたりとかアキレス腱を伸ばしたりと軽やかなものだったのにどんどんとエスカレートしていく。ただ、停車時間が終わって列車が走りだすとさっと座席に戻って大人しく座る。
それからまた数駅進んで、同じように「対向列車待ちのため停車します」のアナウンスが流れると、また立ち上がって体操を始める。どうもおっさんの中で対向列車待ちの時は列車内で体操をする、と決まっているっぽく、また伸びから始まってアキレス腱を伸ばしてと一連のルーティンを繰り返す。ただ、今回はちょっと停車時間が長くて、長いと長いだけ体操がエスカレートするので最終的に隣の座席の背もたれに手をついてくっそ体を伸ばすという、列車内で邪魔な奴は殺して良いって法律ができたら真っ先に殺されそうな邪魔さを発揮した意味不明の体操にまでエスカレートしていた。
7:43 須崎
1時間半ほどすると須崎という駅に停車した。昨日暴走族に絡まれそうになったあたりの道路案内にまっすぐ行けば須崎みたいなのがあったので、おそらく昨日の辺りまで戻ってきたのだろう。ただ、この須崎、「発車まで24分間お待ち下さい」というちょっと尋常じゃない待ち時間が告げられた。これだけ待たせるなら一旦ここで終着とし、また新たに走らせた方がいいのではないか。
さすがに24分もあるので駅の外に出て色々と駅の周辺を観てみる。
駅を出てすぐの場所に「開運トイレ」なる少し派手なトイレがあった。かなりのパワースポットであるみたいなことが書いてあったのでここで開運しておいた。あとはあまり駅周辺には何もない感じだった。実は昨日の最後の札所の段階で高知駅に戻るかここ須崎駅に戻るか悩んだ。ただ須崎を悪く言うつもりはないけど、あまり聞いたことない駅なので宿泊施設の類はないだろうという判断を下し、高知駅へと舞い戻った。今この光景を見ると昨日の判断はつくづく正解である。
さて、それでも24分くらい経過したのでそろそろ列車が動きだすので戻ることにした。
僕はすごく楽しみにしていた。停車している間どんどん体操がエスカレートするおっさん、24分という長い停車でどこまでエスカレートしているのか。もう気が気じゃなかった。体操がエスカレートしすぎて正拳突きで窓ガラスを片っ端から破壊していたらどうしよう。もうワクワクが止まらなかった。はやる気持ちを抑えながらついに列車に乗り込んだ。
おっさん寝てた。
体操しすぎて疲れて寝てた。そこはせめて普通の体操くらいはしていて欲しかった。
列車が動きだす。途中、「安和という駅あたりで見えた海の景色はものすごく美しかった。
そのまま列車は窪川駅へと到着した。
8:47 窪川駅
ここ窪川駅は土讃線の終着駅であり、ここから宇和島を経由して愛媛へと向かう予土線、さらには土佐くろしお鉄道中村線の分岐駅である。土佐くろしお鉄道のほうは終着駅の宿毛まで、予土線のほうは県境の西ヶ方まで取れば高知県の全駅を取ったこととなる。重要な起点となる駅だ。
この窪川駅、全駅制覇的にも重要な拠点だけど、もう一つのお遍路的にも重要な駅で、駅からちょっと5分くらい歩くと37番札所がある。
本尊が5つある盛り沢山な内容になっている。これまでの寺で御本尊が勢揃いしてくるところが何となく今までのボスが総出になってくるラストダンジョンっぽい感じがする。なかなか総決算感がある。
さて、ここまでで今回のお遍路は終了である。次の金剛福寺はここから100キロほど離れた場所にあり、歩きで3泊4日はかかる88か所霊場において最長の距離を誇る区間となっている。ここを取りに行くだけでどんなにがんばっても1日かかってしまうので、駅が取れなくなってしまう。よってお遍路はここ37番で一旦打ち止めとして、後編と繋ぎたい。
駅を取りに行くために窪川駅へと舞い戻る。あそこは重要な拠点の駅なのでそこで作戦を練らなければならない。
ここは四万十町と呼ばれる最後の清流四万十川が流れる街だ。駅が近いだけあって比較的繁華街らしく、ドラッグストアなんかがある。予想以上に栄えている。
クラブ大都会。なかなか皮肉が効いてやがる。
そんなことを考えながら窪川駅に戻る。ここで一つの決断をしなければならない。ここは分岐駅なので宇和島方面へと延びる予土線を取りに行くか、土佐くろしお鉄道を取りに行くか悩ましいところだがどちらを先にこなすか決断しなければならない。考えた結果、1日に6本と本数が少ないので逃したら大変なことになるという理由で予土線を先に取りに行くことにした。
9:40 JR予土線 宇和島行き
ホームに待機していた列車、なんか変わったカラーリングだなと思い、正面に周ってみた。
新幹線だった。
そういやこれ、インターネットで見たことがある。たしか数年前に見た時は、「新幹線のない四国が新幹線に憧れて偽新幹線を作るwwwwww」みたいなテンションで、画像を見て切ない気持ちになった覚えがある。でもさ、やっぱ実際に見てみないと分からないものだ。こうして表層だけをなぞって誤解したままの印象を抱いているってことあるんだな。これ別に新幹線のこと僻んで作った電車じゃないだろ。
この新幹線風の車両、別に新幹線に憧れてエセ新幹線を作ったというわけではなさそう。実際には「ホビートレイン」という位置づけで趣味に関する列車を走らせよう、という試みのようだ。どちらかというと遊び心の方が大きいのではないか。
このホビートレインはプラレールが提供する車両だ。もちろん0系新幹線を模しているが、正確には0系新幹線のプラレールを模しているということだ。決して四国に新幹線がないから切ない新幹線もどきを作ったわけではない。
車内にはプラレールが展示されている。子供が喜びそう。全部見回したところ、現存する新幹線のプラレールは全部あった。だからといって新幹線に憧れて僻んでいるわけではないと思う。あと実際に0系新幹線で使われていたシートも設置しているらしい。でも憧れているわけではないと思う。
エセ新幹線が走り出す。なんか無理矢理新幹線デザインにしたからか窓枠の形が変で気になる。でも別に僻んでいるわけじゃなさそう。
さてこの列車は愛媛県の宇和島まで行くのだけど別に宇和島まで行く必要はない。今回は高知県の駅を全て取ることが目的なのでそこまで行かなくていい。県境の西ヶ方まで取れればいい。
ただ、僕のリサーチによると西ヶ方まで行ってしまうと、帰って来る列車がなく大幅な時間ロスをしてしまう。ここは西ヶ方より手前の駅までいき、そこであの徳島でも猛威を振るった「レーダー」を駆使して西ヶ方の駅を取ろうと思う。そうすればスムーズに帰って来る列車に乗れるのでタイムロスがない。
列車は「最後の清流四万十川」を見下ろす形で進んでいく。ここから見ても分かる。川が綺麗。
ずっと清流を見ながら進める贅沢な路線だ。あっという間に西ヶ方より2つ前の半家という駅に到着した。半分の家と書いてハゲと読むみたいだ。随分と残酷な駅名だ。
10:29 半家
チェックインした駅 若井、家地川、打井川、土佐大正、土佐昭和、十川、半家、江川崎、西ヶ方
オンラインの友達が多かったのか2個先の西ヶ方どころかその先の愛媛県の駅まで勢い余って取ってしまった。これで予土線の高知県部分はコンプリートした。あとは土佐くろしお鉄道中村線を残すのみだ。
あと20分ほどでやってくる戻る列車で若井駅まで戻り、そこから土佐くろしお鉄道に乗り換える。あとは宿毛(すくも)まで乗ってコンプリートとなる。半家から宿毛まで行くわけか。ハゲたり毛を宿したり忙しいなと思いつつ駅からの風景を眺める。
いくつかの民家があり、すぐ近くに川があるっぽい。きっと四万十川だ。ずっと車窓から眺めていたけど最後の清流とやらを間近で見ていない。せっかく近くまで来たんだから間近で見てみよう。いつの間にか歩きだしていた。
高い位置にあった駅なので結構長い階段を降りていきます。すると比較的大きい道路に出るので川に降りられるポイントを探します。すると見るからに川に続いてそうな脇道が!
この道は川まで続いているのだろうか。まるで少年に戻ったかのように坂道を駆け下りた。
川だ!
これが最後の清流、四万十川。
めちゃくちゃ澄んでいる。なんという透明感。
こんな澄んでる川だったら近くで見たい、それどころが手ですくってみたいとか思うじゃないですか。魚とかいるのか、川辺の生き物とかいるのかな、そう思うじゃないですか。やはりここまできたら近づいて見てみたいって思いますよね。きっと思いますよね。
よっしゃー近づいちゃうぞーって画像中央の、ちょっと黒い土部分に足を踏み入れたんですよ。そしたらですね、見た目には結構しっかりした土っぽい感じに見えるじゃないですか。でも実際には柔らかい泥みたいなのが堆積していて表層だけが乾燥して固まっている感じらしく、足を踏み入れた瞬間ですよ。
ズモモモモモモモモモ
めちゃめちゃ沈み込むのな。え、底なし沼!?みたいな感じで膝くらいまで埋まった。もう靴と靴下とズボンがぐしょぐしょ。最後の清流? しらねえよ。
ズボンはなんとか眠る時用の半ズボンがあったんで履き替えたんですけど、靴はびちょびちょで、かっぽんしゅっぽんと情けない音を出しながらハゲ駅に舞い戻りました。高知は南国で暖かいといえども11月です。半ズボンのやつなんていませんから季節感のない小学生みたいになっています。それどころかでかい荷物もって半ズボンですから裸の大将みたいになっています。
靴を乾かしながら列車を待ちます。
なんかやってきた。
なんだこりゃ。
かっぱうようよ号と書いてある。どうもこれもホビートレインの一環らしく、今度は精巧な造形のフィギュアで有名な海洋堂とコラボした列車で、カッパをモチーフにしたものらしい。まさしくカッパだらけの列車というわけだ。
カッパだらけの列車に、なぜか半ズボンでデカ荷物をもって、靴からカポカポと音がする現代に蘇った後にちょっと現代に染まったカッパみたいな男が乗り込んでくる。乗っていた乗客はほのかな緊張に包まれた。
車内では四万十川とカッパみたいなジオラマが展示されている。さすが精巧な造りだ。
なぜか座席にカッパが2体いる。さすがにあのカッパの間に座る勇気はないわ。というか仲間と一緒でちょっとテンションが高くなっている大学生がワンチャン! ワンチャン! 言いながら座る以外であそこに座れる人間がいるのだろうか。
と思ったら途中から乗ってきたすごい怖そうなオッサン、絶対に甘いものとか食べなさそうなオッサンが普通にカッパの間に座ってたのでビックリした。照れくさそうでもなく、困惑するでもなく、不動明王のように微動だにせず鎮座しておられた。
11:39 若井
窪川駅より1駅前の若井駅に到着した。ここで土佐くろしお鉄道に乗り換える。駅の周りにはなにもなかった。
ただ、駅の近くの畑で一人でビニールハウスを解体しているおじさんがいたんだけど、モリモリ解体していて僕が列車を待ってる間に綺麗に終わってたので驚いた。
12:13発 土佐くろしお鉄道中村線 中村行
列車がやってきたので乗り込む。列車は問答無用の山の中をつき進んでいった。
いよいよコンプリートが近づいてきた。ただ、完膚なきまでに何もないゾーンを進んでいるようで時折スマホの電波が怪しくなり、駅メモ!チェックインが難しい場所が何個かあった。ここは駅メモユーザーとしてかなり注意が必要な場所だ。
13:09 中村
チェックインした駅 荷稲、伊与喜、土佐佐賀、土佐白浜、有井川、土佐上川口、海の王迎、浮鞭、土佐入野、西大方、古津賀、中村
いよいよあと7駅となった。ここで最後の乗り換えを行う。
13:30発 土佐くろしお鉄道宿毛線 宿毛行
そういえば今日は一回も自転車だしてないなと思いつつ、車窓からの景色を眺める。ちなみにこの沿線には39番札所があるのだけど、足摺岬の38番札所をクリアしていないのでまだいけない。後編は足摺岬からスタートかなと漠然と考えていた。
そして、ついに列車は宿毛駅へと到達した。
ついについに最後のチェックインを行う。
ドーン
マスターオブ高知を獲得した。
これにてお遍路&全駅制覇【徳島・高知編】を終わりとしたい。旅のまとめはこちら。
路線(徳島)
路線(高知)
なぜ僕は全駅制覇だけでなくお遍路までやり始めたのだろうか。自転車をこぎながら何度も自問自答した。きっとそれはあまり意味のない行動だったのだろう。とても愚かな行為なのかもしれない。
昨今では、「勝ち組」「負け組」「情報弱者」「コスパ」「効率」そんな言葉が横行し、人々はなるべく無意味な行動をせず、上手に効率よく生きていこうとしている気がする。
「損をしないように生きる」
根底にはこの考え方がある。そうあることが最も賢い生き方なのだ。確かにそれは間違いではないのだろう。無意味なことをしたり、非効率的なことをするのは愚かしく損なことなのだだ。誰だって賢くスマートに生きたい。それは当たり前のことだ。
ただ、無意味なこと、愚かしいこと、「損」の中ににも大きな意味があるんじゃないか、少なくとも僕はずっとそう考えて生きてきた。無意味だと思われるものもやりとおした先には必ず何かがあった。本当の意味で無意味なことなんてこの世にはきっとない。
お遍路をしたから鉄道で巡るだけでは決して見ることのできない景色を見て。決して出会うことのない人に出会った。全駅巡りをしたから、お遍路だけでは見えない景色を見て決して出会うことのない人に出会った。苦悩し、涙し、喜び、転び、川にはまり、絶望した。きっとそれらのことは貴重な何かになるはずなのだ。
僕はアマゾンやヒマラヤに行くことが冒険だと思っていた。けれども、冒険はどこにだって転がっている。四国の裏路地にだって転がっている。長い下り坂を自転車で駆け下り、山道を自転車担いで登っていく、効率よく駅を取るため緻密な計算をする、それらは全て僕にとって大冒険だった。きっと僕らの日常の傍には大冒険が転がっている。ただ、その脇にはきっと「損」がある。効率的な道を歩いていたら何も出会えない。損をして普段とちょっと違う遠回りの道を行く。そこには新しい何かがある。
損を許容し、愚かしいことをする。それが日常の中の冒険へと繋がっているのだろう。
冒頭で、僕は「四国は好きか」という質問に「本音を言えば好きでも嫌いでもない」そう答えた。けれども今はその答えも変わっている。もう答えも決まっている。けれどもあえていまその答えを言うことはしない。4つの県全てを周り、全ての寺院を巡り、全ての駅を取った時にもう一度答えたいと思う。
僕の愚かな旅はまだまだ続く、今から楽しみで仕方がない。
無意味で愚かな、四国の路地裏で繰り広げられる僕の大冒険、愛媛、香川編につづく!(たぶん)
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