「ごめんな」
もう、暗い影となってしまったミレイに話しかける。
「確かに、俺ダメだったわ。ミレイのしたいことも、行きたい場所も、好きな場所も、好きなものも、それは分かっていたんだけど実感できてなかった。でも、チェジュ島にきてわかった」
完全に日が落ちた。もう周囲は真っ暗だ。
「ミレイが好きそうなカフェを見つけた、好きそうなミカンを見つけた、好きそうな韓流ショップを見つけた、一緒に観たい絶景があった。何気ない場所で思い出す相手、それが愛なんだろうな。この島を巡ってそれが分かったよ。このチェジュ島にはそんな風景がいっぱいある。大切な誰かを思い出す風景が」
その言葉に、ミレイからの返答はなかった。ただ、予想外に後ろから声が聞こえた。
「いいんじゃないかな」
それは運転手の声だった。
驚いて振り返ると同時に、バッとライトが照らされる。その明かりにミレイの泣き顔が照らされた。
「彼はずっとミレイのことを考えていたよ、謎を解いてるときも、移動してるときもずっと。さっきの言葉に嘘はない」
「お父さん!」
「え? お父さん」
「旅行で訪れたチェジュ島をあまりに気に入ってしまってね、移住したんだよ。初めまして、ミレイの父です」
運転手は、いやお父さんはそう言って笑った。
「そしてこちらはお兄ちゃん」
ミレイはそう言ってコートの男を紹介する。
「い、いかついお兄ちゃんだね」
「そして、協力してくれた親戚のタケシ君とミヨコちゃん」
「ちーっす」
あのカップルの二人が大きなライトを構えて挨拶をした。
そして、ミレイがこちらに笑顔を見せる。
「わたしも、本当にキミのこと好きなのかなって分からなくなっちゃって、話も聞いてくれないし、別れたほうがいいのかなって思って、それで移住したお父さんを頼ってこの島に来たんだ。そしたらね、どこに行っても思い出すのがキミのことだった。あれ好きだったな、ああ、一緒に観たいなって」
「それでお父さんに言われたの。そういう気持ちになるのが愛だって。この島にはそんな誰かを思い出す景色がいっぱいあるんだって。それはなかなか気づいないかもしれないけど、もしかしたら向こうも同じかもしれない」
それで、確かめてみようってなったわけか。
「ごめんね、回りくどいことしちゃって」
「いいよ、俺も気づかなかった気持ちに気づけたから」
「よかった」
僕とミレイはそのまましっかりと抱き合った。
「さあ、我が家に行こう。明日はもっと案内する場所があるんだ。まだまだこの島の魅力はたくさんあるからね」
お父さんが手を叩きながら声をあげる。
「はい」
上空を、これから着陸するであろう旅客機がゆっくりと旋回していた。
この島には大切な誰かを思い出す景色がたくさんある。旅客機の窓からこの島を見下ろしている誰かにそう語りかけた。
おわり
おめでとうございます。全てクリアしました。
プレゼントの案内
クリアおめでとうございます!
見事、謎を解き明かした5名様にこちらの、トルハルバン石像(約20㎝)をプレゼント!
こちらのフォームよりぜひご応募ください!
※こちらの記事やフォームのURL、謎解きの答えなどを公開しないようお願い申し上げます。
こちらはクリア記念のツイートボタンになります!