【コロナの街とは言わせない】 落ち着いたら武漢、行ってみませんか?

※この記事は「楽しかった思い出の場所記事コンテスト」の応募作品です。
ライター :Yusho Nakayama


 

-プロローグ-

私、中山は祖父母が武漢在住で、武漢とは何かと縁があった。

夏休みになると1ヶ月近く武漢へと帰省しては帰国するという生活を小学校から大学に至るまで毎年やってきた。

小学生のころは「じいちゃんばあちゃんいるからいいけどなんでこんなクソ汚い片田舎に行かねばならないのだ」などと思っていたが、中国の成長とともに毎年変わりゆくまちなみ、武漢でしか食えないうまい飯、そして現地で出来た友達とのひと夏の思い出…今ではすべてが愛おしく感じるようになった。

武漢、ここが私のアナザースカイ。今回は「コロナの震源地武漢」ではなく、「私の思い出がつまった一つの街」として、武漢の魅力を伝えられたらと思う。これを見ていい街だなと感じてもらえたのならばこの上なく嬉しい。

 

-日本から4時間で到着-

武漢への玄関口は成田空港である。

成田空港からはANA、中国南方航空、春秋航空日本の3社が武漢との直行便を結んでいる。コロナ禍以前は合計で週12便もの直行便があった。

思えば小学生の時は直行便がなく、上海で飛行機もしくは夜行寝台列車に乗り継いでいったものだ。数年前、ANAの直行便が就航すると聞いたときは嬉しくて小躍りしたのをよく覚えている。

ANAを利用すると武漢に到着するのは深夜。中国の美しい夜景がよく見える。

到着するのは武漢天河国際空港。小さいときは滑走路一本に小さいターミナルだったものが気づいたときには第3ターミナルまで拡張されていた。中国の開発のスピードには毎回驚かされる。

(写真はメトロ)

武漢天河国際空港は市街地からはかなり離れている。到着してからは鉄道、メトロ、エアポートバス、タクシーなどを利用して市街地まで行くことが可能だ。市街地までは30kmほどの距離があるが、鉄道は15分ほどで片道約120円。値段バグってんだろ…

他の都市から高鉄(日本で言う新幹線)でアクセスするのもいいだろう。中心となる武漢駅は空港よりも比較的市街地に近い。価格も日本の約1/3ですので気軽に利用できる。

通は寝台列車でもいいだろう。日本ではほぼ姿を消した寝台列車だが中国では健在である。別途仲間と交流できる品により破格と言っていいほど安い。鉄にはぜひ乗ってもらいたい。

 

-何でも食べられる武漢-

武漢は中国東部の内陸都市であり、かつてより交通の要所だったため中国全土の食が集まる場所だ。

ぜひ行ってみてほしいのが粮道街。地元のおばちゃんが作ってくれる中国風の朝食は最高だ。そして何より安い。揚げ物は一つ20円ほど。美味しさ的にも経済的にもいくらでも食べられる。

夏の金柑の時期にしか飲めない金柑ジュースが大好きで毎日のように飲んでいたなぁ…

粮道街は本当にいい場所で私は実家から遠かったのにいとこに無理を言って送ってもらい、毎日のように通っていたものだ。

 

似たような場所でいうと户部巷も捨てがたいこちらは観光地として有名な場所であり、景観も店舗もよく整備されている。少し値が張る(といっても中国基準で、だが)がハズレはない。

漢街や江漢路といった繁華街での食事もいいだろう。とにかくどんな中華料理も揃っている。

武漢ではザリガニを食す文化がある。ビニールの手袋をして山盛りのにんにくが効いたザリガニを豪快に食らうのが武漢スタイル。ああ、おいしそうである。

もちろん武漢名物もある。熱干面と言われるゴマベースの汁なしの面が武漢名物であり、外せないだろう。一応刀削麺、麺、担担麺、炸醤麺と並ぶ中国5大面の一つだが知らない人も多いと思う。柔らかめに茹でた面にゴマペースト、肉味噌、ニンジン、ネギ、粉砕したピーナッツ、辛い謎の醤、パクチーなどを加えて当てて食べる。胡麻の香りで食欲そそる一品だ。まずいわけがない。

豆皮という湯葉で包んだおこわも有名だ。パリッとした皮にふわふわ、ねっとりとしたもち米のおこわ。これもまずいわけがない。

適当に道端で見かけた屋台飯も風情があっていいものだ。

スイーツも美味しい。ドリアンを使ったデザートなんて日本じゃ食べられないだろう。

こういった様々な食が楽しめる武漢。私は何より祖母の作る中華料理が一番愛おしい。ああ、もう一度食べられないだろうか…

 

-新旧のコントラストに飽きが来ない景色-

武漢の魅力といえばまちなみは外せない。幼い頃から毎年訪問していると新発見がたくさんある。

最もわかりやすいのは開発のスピードだ。毎年長江という川幅2kmあるバカでかい川を渡る橋が1本増えていたり、毎年新しい地下鉄路線が増えていたり、気づいたらバスがEV化していたり、無料の高架道路が出来たりする。

都市の新陳代謝が早いぶん、古い建物が否応なく目立つ。欧米のように旧市街と新市街が分離しているのではなく、一つの大きい都市に古い部分と新しい部分がモザイク状に入り乱れている姿は見ていて飽きない。

このようなカオスなまちなみがどこへ行っても楽しめ、イチオシのポイントであるが、これではスポットの紹介にならないので何個かおすすめスポットも紹介しておこう。

 

辛亥革命博物館で歴史を学ぶ

武漢は辛亥革命でかの中華民国建国が出来た場所である。市内には辛亥革命の資料を取り揃えた辛亥革命博物館が2011年にオープンした。

日本語の説明はないため少々ハードルは高いものの、歴史好きにはたまらないスポットだろう。

 

宝通寺で仏教を感じる

武漢市街地内の一角にあるのが仏教寺院の宝通寺だ。

石段を登り、小さな森を抜けると寺が目の前に現れる。

歴史の深い宝通寺。寺院の中の建物はカラフルに彩られ、日本の質素な仏教寺院とは異なる趣がある。

もちろんここは武漢の中心地。近くに大型ショッピングモールや高層マンションが立ち並んでいるのが見て取れる。

市内で手軽に昔の雰囲気を味わえるおすすめスポットだ。

 

東湖・森林公園で都市緑地を楽しむ

都市緑地が豊富なのも武漢の魅力。特に東湖、森林公園は専用のサイクリングロードがあり、レンタサイクル用の自転車がそこら中に転がっており気軽に利用可能だ。

都市の中なのに素晴らしい風景に巡り会えるのでぜひ訪問してみてほしい。

 

武漢大学で桜を楽しむ

武漢は中国屈指の学生の街である。

大学の数は中国国内第1位、大学生は100万人以上おり、世界で最も大学生の大いまちである。

その中でもトップの名門、武漢大学は桜の名所だ。1939年、駐留していた旧日本軍の士気を上げるために植えられたことに始まり、国交正常化以降に田中角栄首相から送られた桜も多い。

筆者は季節が合わず、桜の季節に見に行ったことはないものの日中友好の印である武漢大学の桜はぜひ訪れてほしいスポットである。

漢街や江漢路でショッピングを楽しむ

武漢の繁華街といえば漢街や江漢路だ。「有名ブランド誘致しまくればええやろ」のノリが実に中国らしい。武漢らしさは薄いもののよく整備されていて快適なのでショッピングしたいときにおすすめだ。

長江の渡しで人々の生活を感じる

武漢の中心を貫く世界で3番目に長い大河、長江は1964年にロシア人の技師を呼んで作った長江大橋ができるまでは渡しという船で川を渡っていた。

この船を利用した移動、今でも現存しており、多くの人が利用している。

10分ちょいの短い船旅だが、船上からは両岸の発展を感じられる。昔の人々の生活に思いを馳せながらの船旅もよいだろう。

長江大橋から夜景を楽しむ

武漢の夜景は当局の指導で統一されている。複数のビルのライトを同期させた統一感のある夜景が楽しめる。

夜景は長江沿いであればどこでも楽しめるが、おすすめは長江大橋の上。橋の上であればよく見える上、ここであれば武漢のシンボル黄鶴楼のライトアップも間近で見ることが可能だ。

 

-郊外も楽しめる-

武漢郊外にも様々な楽しめる場所がある。

武漢周辺の高速道路はよく整備されており、渋滞も少なく快適に利用できる。車でお出かけといった事もできるだろう。

一度中心部を抜ければ素晴らしい景色に出会えるのも魅力の一つだ。

そのへんのおじさんに頼んで船に乗せてもらった時の写真である。乗船を快諾してくれたおじさんに感謝。こういった人の優しさも魅力の一つだ。船上で食べる新鮮な蓮の実が美味しかったことを鮮明に覚えている。

その場のノリで食材交換をするおじさん。車で1時間も走ればこういった田舎らしいスローライフを満喫することもできるのだ。

今回は郊外でおすすめできるスポットを何件か紹介しよう。

 

世界で最も大きいダムのサンシャダム

武漢のある湖北省には世界最大のダムであるサンシャダムがある。

軍事的な要所であるため間近で見ることは不可能であるが、専用の展望台があり観光が可能である。ダムカードを集めるようなダムに興奮する人にはおすすめしたいスポットだ。

 

歴史好きにはたまらない赤壁

武漢近郊には三国志の赤壁の戦いで有名な赤壁古戦場がある。赤壁古戦場はよく整備された観光地となっているので、歴史好きの人は外せないスポットだろう。

 

 

と、このように大抵のものはあるけど悪くいえばどれも目立たず、「ザ・器用貧乏」のまちが武漢である。

どうだろうか、いたって普通のまちなのではないだろうか。普通の人が住む普通のまちなのだ。どうか武漢出身の人に対して偏見を持たないでほしい。そしてこの記事で「行ってみたいなぁ」と思ってくれるのであればそれ以上の幸せはない。

東京から4時間、安ければ片道1万円台。カチュウの武漢で強く生きた人々のいるまちへ是非訪れてみてほしい。

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