久留米の屋台を食べ尽くす
福岡の屋台といえば、中洲などが有名だろう。店舗数も多く、たくさんの観光客が訪れる日本有数の屋台街だ。 しかし、一晩では食べ尽くせないし、屋台初心者は少し入りにくい。そこでオススメしたいのが久留米の屋台だ。 実は福岡の屋台街より古い歴史を持つ店も多くあり、店舗数は少ないが、メニューのバリエーションでも他の屋台街に負けていない。 現在は10〜12店舗ほどが営業している。
※この記事は「SPOT 旅に出たくなる記事コンテスト」の入選作品です。
ライター : ちゃの
夏は旅の季節だ。旅の際一番楽しみにしているものはなんだろうか。
美しい景色や、独自の文化、素敵な人々との出会い、そしておいしい郷土の味、旅に出ればたくさんの楽しみがあるだろう
そんな旅の楽しみを一気に味わえるものがある。
それが屋台だ。
ビールはすすむし、スタミナはつくし、夕涼みになるし、実は夏こそ屋台なのだ。
そんな屋台を食べ尽くしたいと思う。
久留米の屋台文化
福岡の屋台といえば、中洲などが有名だろう。店舗数も多く、たくさんの観光客が訪れる日本有数の屋台街だ。
しかし、一晩では食べ尽くせないし、屋台初心者は少し入りにくい。そこでオススメしたいのが久留米の屋台だ。
久留米にも屋台街がある。
実は福岡の屋台街より古い歴史を持つ店も多くあり、店舗数は少ないが、メニューのバリエーションでも他の屋台街に負けていない。
現在は10〜12店舗ほどが営業している。
久留米を旅する
久留米市は福岡県南部に位置し、福岡でも有数の都市の一つだ。新幹線も止まるので間違いない。
観光名所も多く、慈母大観音で有名な成田山や久留米市を一望できる高良神社などもある。
食文化も豊かで、米、野菜、フルーツなどなんでもある。
また、焼き鳥店舗数が日本一でも知られる「のんべえ」の街でもある。
現在の豚骨ラーメンの元祖とも言われる久留米ラーメンも、伝説のアイドル聖子ちゃんもここで生まれている。
今回はそんな久留米の屋台を食べ尽くそうと思う。
中洲の全店は無理でも、久留米の12軒くらいならいけそうだ。
夜になるまで久留米を観光したり、ほぼ24時間営業の温泉に入ったりして、お腹をすかせ、夜になるのを待った。
夜まで残る夏の暑さが、ビールをさらに美味しくさせるはずだ。
小頭町公園エリア
まずはJR久留米駅を出発し、普段は2−3軒の屋台が並ぶ小頭町公園にやってきた。
屋台は基本的に月曜から土曜が営業で、多くの店は日曜日が休みだ。
雨の日などの天候が悪い日、ご店主の気分がのらない日も休みなので気をつけてほしい。
この日はみんな気分がのらなかったのか1件しかあいていなかった。
唯一あいていた「おしん」さんに入った。
ここは女将さんが一人で切り盛りする店だ。
常連さんらしきおじさんが、パっときて、パっと帰っていく。
店内のテレビではソフトバンクホークスの試合が流れ、いかにも福岡という感じだ。
屋台に入り、女将さんにオススメを聞くと「うちは、ホルモン」と言われた。
福岡にはもつ鍋などホルモンを食べる文化があるので、屋台でもホルモン焼きは人気だ。
暑いし、うまいし、ビールがすすむ。
ちょっと辛めの味付けでビールにあう。テーブルにある一味をかけると、よりピリリとして美味しい。
今なら福岡の遠賀川が全部ビールでも飲み尽くせそう。
美味しくておかわりしたい気持ちをぐっと抑えて、次の店に向かった。
次は銀行通りへ
食べ尽くすと息巻いていたのに、さっそくお店が1軒しか空いていなかった。
これはまずい。
そう思い、さらに屋台が多い通りへと移動することにした。西鉄久留米駅からのびる明治通りにやってきた。
屋台は大体の店舗が、夕方5時から準備を始め翌朝の3時近くまで営業している。
そのため、きちんと閉店時間が決まっている銀行前にお店を出す店が多い。
「屋台に行きたかったら銀行を探せ」が、屋台探しのコツだ。
今度こそ食べ尽くすぞという気持ちで、片っ端から入っていこうと思う。
まずは目の前にあった屋台に入った。ここの屋台には名前がない。屋台にはそういう店も結構あるそうだ。
ここは優しくておしゃべり好きなご主人がやっているお店だ。
オススメは久留米ラーメン。2軒目にしてもう締めみたいになってきた。
ここのラーメンは、豚骨なのにさっぱり味なのが特徴だ。
これなら、バテやすい夏でも軽く食べられる。
屋台は普通にお店で飲んでから来る人も多いので、さっぱり食べてもらえるように工夫しているそうだ。
隣のお店にハシゴ
お店と違って、気楽にハシゴできるのも屋台のいいところだ。
というわけで、すぐ隣の「満洲屋」さんへ。
暖簾にラーメン、餃子と書かれているので少し身構える。
私の胃は、オススメは餃子で、オススメは餃子でと祈っている。
オススメは何ですか? と聞くと、ご店主が「うちは餃子の店なので、餃子です」と言ってくれた。
やった。餃子です。餃子食べましょう。
私の胃が隅田川の花火大会くらい大規模に喜んでいる気がした。遠くで花火の音がする。
福岡の一口餃子といえばカリッと焼かれているものが多いが、ここのお店の餃子は珍しくモチモチの皮だ。
手作りのモチモチ皮から肉汁がじゅわーっとあふれだす。
幸せも一緒に溢れだし、胃に収まる。おいしくて2人前食べた。
そして襲ってくる満腹感
おいしい餃子を食べて、次の店に向かう。
餃子で一度お腹がリセットされた感じで、今ならなんでも食べられそうだ。
マリオの星も本当は餃子だったんじゃないかと思う無敵ぶりだ。
次も、三井銀行前の名前のないお店だ。
以前は奥様が郷土料理だご汁の屋台をされていたそうで、おでんなどのメニューも充実している。
こうなれば何でも来いという感じになってきた、ただしラーメン以外で。
オススメはラーメンだった。30分前にも食べた久留米ラーメン。
ラーメンってこんなに短時間で食べるものだっけか。
しかも、量が多い。これ締めの量じゃないだろ。
すごくおいしい、先ほどの店舗と同じくさっぱりしている。
ご店主に聞くと豚骨でも足と腕の部分だけを使っているらしく、臭みがなくあっさりしているそうだ。
お腹がいっぱいなのに、ぺろっと食べられる。
最後のお店へ
久留米の屋台は少ないから全店舗食べ尽くそう、と思っていた私と、餃子2人前食べた私を、今は殴りたい。
制覇という楽しみはまた次回の旅にとっておくことにして、最後に本当の締めを食べに行こうと思う。
ここ「淡海」さんでは、オススメの本格カレーを味わうことができる。
屋台とは思えないクオリティで、久留米でも有名なのだ。カレーのスパイシーな香りはやっぱり食欲を誘う。
バターで炒めたキノコライスに、辛口でスパイシーなカレーが合う。おいしい。
こんなに食べて飲んできたのに、余裕で入る美味しさだ。
ブルースやロックが好きなマスターのリズム感ある調理を見ながら、コクのあるカレーの世界に酔いしれることができる。
夏はやっぱりカレーとビールだ。
屋台、そこにしかない出会い
おいしい料理を食べながら、まったり飲んでいると、夜も深まり常連さんたちも集まり始めた。
なかには「飲めも、食べもせんでもいい?」とご店主の顔だけ見にくるお客さんもいる。
それすら許される暖かい雰囲気が久留米の屋台にはあるのだ。
人との出会いに、おいしい料理。これ以上旅に望む物があるだろうか。
幸せなひと時は、夜とともに深まっていく。
明日になって酔いが覚めれば、きっとこの出会いは、真夏の夜に見た夢みたいな出来事だ。