和歌山県・友ヶ島でノスタルジックな無人島キャンプを楽しもう!

友ヶ島のキャンプはこんな感じ!ラピュタの島と呼ばれる和歌山県の友ヶ島、行き方は船でのアクセスが一般的。名前は、紀淡海峡に浮かぶ地ノ島・神島・沖ノ島・虎島の4つの島から成り立つ島の総称です。本州にはないちょっと不便だけど特別な時間を、是非皆様も体験してみてはいかがでしょうか。

こんにちは、ライダー&ライターの高木はるか(@harukapyon_t )と申します。

ツーリング中の宿代を浮かせるために始めたキャンプにドハマリし、会社員をしながら隙を見ては各地でキャンプをしています。お気に入りのギアはmont-bellのコンフォートシステムアルパインパッドです。

今回はこの『天空の城ラピュタ』の舞台のような無人島、友ヶ島で1泊2日のキャンプに行って参りました。自分なりに見つけた友ヶ島の楽しみ方や面白かったポイント、そしてキャンプの注意点などをご紹介させてください。

1日目13:00 友ヶ島へ渡ろう!

愛車とともに、和歌山県和歌山市にあります加太港へやってきました。港までは南海電鉄加太駅から徒歩20分ほど。車やバイクが無い方も安心です。

ここから友ヶ島行きの船が出ていますが、バイクは乗せられないので駐車場でお留守番をしてもらいます。料金は原付き1台、1泊2日で400円でした。

友ヶ島とは

友ヶ島は、紀淡海峡(和歌山と淡路島の間)に浮かぶ小さな無人島郡。地ノ島、神島、沖ノ島、虎島の4つの島から成り立つ島の総称です。中でも沖ノ島には明治時代、紀淡海峡防御のため築造された砲台などが数多く残り、歴史を感じると共にジブリ映画に迷い込んだような雰囲気を味わえる最強のフォトスポットになっています。

無人島と聞くと「サバイバル」のイメージが浮かびますが、立ち入り禁止などのルールを守っていれば、危険な場所はほとんどありません。

船は9時、11時、13時、16時出発の4便。手荷物ひとつは無料ですが、それ以上を持ち込む場合は追加料金がかかる場合があるそうです。

ちょうど私の目の前で13時の船が出ようとしていますが、本日は土曜日でお客さんが多いため、13時半発の臨時便が出るそうです。慌てずバイクに無理やり縛り付けてある20kg近くあるリュックをおろします。

無人島キャンプの持ち物リスト

よくあるifの質問で、「無人島になにかひとつ持っていけるとしたら、何を持っていく?」という問いがあります。

私の答えはこう。

ひとつで足りるわけがないのです!

簡単に装備の説明をすると、

①ナタ、ノコギリ、火バサミ、革手袋
薪を作り、焚き火をするための道具。主に寒い時期のキャンプで使います。結構時間がかかるのと怪我の機会が増えるので、ある程度キャンプに慣れた人向けの装備です。

②マット
お気に入りのmont-bell「コンフォートシステムアルパインパッド」です。テントの中で寝袋の下に敷いて使う敷布団のような役割です。硬いところで寝ると腰が痛くなるし、特に寒い時期は地面からのぼってくる冷気をカットする意味もあります。

③お茶
この他にも食べ物、お酒、非常食、おやつも持っていきます。

④焚き火台
火が着いた薪が地面に直接当たらないよう、この上で焚火をします。特に芝生のサイトでは直火が禁止されているキャンプ場が多いため、焚き火をするなら用意しておきましょう。

⑤懐中電灯
友ヶ島へ行くなら懐中電灯は必須です。特にヘッドライトは、両手を使える&手元を照らせるのでとても便利です。夜のキャンプ場でも大活躍しますよ。

⑥ヤカン
お湯をわかせばラーメンが食べられます。持ち手が畳める登山用品を使っています。

⑦リュック
友ヶ島は路面がガタガタだったり階段が多かったりで、スーツケースやカートが役に立ちません。リュックが大正義です。

⑧ガスコンロ
火が使えばラーメンが食べられます。カセットコンロ用のガスが流用できるこのSOTOのコンロは、私が初めてキャンプをしたときからの相棒です。通常のガス缶はブタンガスが主成分ですが、気温が10℃以下になると寒さで火力が落ちるので注意です。

⑨折り畳み傘
急な雨はつらい。

⑩椅子
リュックに入れるため、小さめのものを選びました。

⑪ランタン
普段に家で防災用品として置いているものを持っていきました。広い範囲を照らせる光源がひとつあると、かなり快適にキャンプの夜を過ごせます。

⑫机
椅子と同様に小さめのものを選びました。机があるのとないのとでは、ご飯の食べやすさが全然違います。机の代わりになるような平らな台はなかなか見つかりません。(今回は運良く机代わりになりそうなベンチを見つけたので、結局使用しませんでした)

⑬寝袋
夜はまだ寒い日もあるので、マミー型のダウンのものを選びました。

かなりの大荷物になりました。

これでも厳選したのですが、人が1日宿泊するためには案外たくさんの物が必要です。実はひとつ大きな忘れ物をしていましたが、まあ、それは後ほどお話しします。

臨時便が出るほど乗客が多いはずなのですが、チケット売り場へ行くと、乗客は私のほかに若いカップルひと組しかいません。儲けが出ているのか心配になります。

天候が崩れると、迎えの船が来ない場合があるらしいです。台風の季節は特に気をつけたほうがいいかもしれません。

船に乗り込みます。

カップルは腕を組んでみたり、写真を撮ってみたりしながらもこちらをなんとなく気にしているようで微妙に気まずい…。友ヶ島から帰る最終便は16時半発なので、この時間からの日帰りだと2時間ちょっとしか滞在できないはず。

でも、船に乗って、無人島へ渡ったという事実だけでもいいのかも。ちょっとした冒険、楽しそうだなあ。

友ヶ島は小さい無人島なので名所をぐるっとまわるぐらいであれば3.3kmほど。普段バイクに乗ってばかりで運動不足なのが気になりますが、これぐらいなら苦もなくこなせるはず・・・!

友ヶ島汽船

住所:和歌山県和歌山市加太 加太港
運賃:大人 往復2,000円 こども 往復1,000円
お問い合わせ:073-459-1333
詳細:http://tomogashimakisen.com/

1日目14:00 友ヶ島上陸

いよいよ上陸です!

乗客3人のために船を出すことを不思議に思っていましたが、着いて納得。帰りの便には長蛇の列ができています。そのため大勢の人に迎えられる形で島に降り立ちました。

キャンプをする人は、島についたらまず受付。(友ヶ島ではキャンプ場外でのキャンプは禁止です。)桟橋を降りてすぐ右手に事務所があるので、住所、名前、人数などを記入。キャンプ場の利用はなんと無料です。有り難い~!!

受付をしていると、向かいに座っていたダンディな釣り人のお爺さまが

「ほら、リス。」

と指をさしています。

友ヶ島にはタイワンリスが住み着いて野生化しているそうで、ここでは餌をボリボリたべている。

しっぽがフワフワだあ~

お爺さまにキャンプ場の場所を聞くと「あっち」と教えてくれたので、向かってみると…

いきなり山登りですね。

キャンプ場へ行くには20kgのリュックを背負ってこの階段を登っていくしか ありません。友ヶ島は未舗装路や山道が多いためスーツケースやカートは役に立ちません。私はうっかりバイク用の革ブーツを履いてきてしまいましたが、靴底が柔らかいスニーカーを履いてくるほうがいいと思います。

ゼエゼエ息を切らして進んでいくと…

お!!

おー!! キャンプ場が見えました!

たった500mほどしか歩いていないはずなのに達成感がすごい!!!

おや?

「無人島でサバイバルするぞ!」と張り切って来ましたが、テントが思ったよりもたくさん建っていました。サバイバル感が出ない予感を胸に抱えながらも、まずは活動拠点となるテントを設営したいと思います。

キャンプ設営と忘れ物

ここでひとつ、皆様にご報告があります。

冒頭で「ひとつ大きな忘れ物をしていました」とお話しましたが、それはなんと、テントです。勘のいい方は荷物の写真を見た時点で気がつかれたかもしれません。

キャンプをするのに!!!テントを忘れる!!!!! 私が大馬鹿者ですよ。ほんと。

加太港へ向かう道中で気がついたのですが、すでに3時間ほど走ったあと。取りに帰ると最終船にも間に合いません。そこで、向かったのはホームセンター。

2.7m×2.7mのブルーシート2枚と、PPロープを購入。あとは……

ここ(高いポイントと低いポイントの2箇所でロープを張れる木などがある平らな地面)で、

こう(ロープを高いポイントから低いポイントに向かってピンと硬く張る)して、

こう(ブルーシートを被せ、接地する箇所にペグを打ち、風で吹き飛ばないように押さえる。地面にもブルーシートを敷く)!!

あっというまに青くてかわいいテントの完成!!一晩ぐらいならなんとかなりそう。

このテント、木や柱などロープを張る場所さえあれば誰でも作ることができます。手持ちのテントがない状況でどうしても外で寝なければいけないような緊急時、覚えておけば役に立つかもしれません。

ちなみにペグも忘れてきたので、代わりに竹を使ってみました。金槌で打ちましたが、地面が柔らかかったおかげで案外丈夫に刺さってくれました。(あくまで緊急手段なので、基本的には真似しないでください。)

自分で発生させた緊急事態を解決したついでに、明るいうちに焚き火用の薪を集めておきました。サイト内のいたるところに流木や伐採後の木が落ちているので、薪に困ることはまずなさそうです。

友ヶ島では直火は厳禁です。山火事の元なので。焚き火をする方は必ず焚き火台を使用しましょう。

ひと仕事終え、時刻はまだ15時過ぎ。これから島内を探検してみます!

1日目15:15 第3砲台跡を目指す

友ヶ島には明治時代の貴重な砲台跡や、弾薬庫、軍関係者が暮らしていたという建物の跡が残っており、倒壊が少ない場所ならば中に入れます。廃墟巡りの雰囲気も味わえるのではという期待もあり、かなり楽しみです。

まずは第3砲台跡を目指し、時計回りにぐるっと島をまわる計画。

ひとつ気をつけておきたいのですが、友ヶ島は水道が通っていないので水の持ち込みが必須です。

島内に水道や井戸はありますが、すべて非飲料水。

万が一忘れてしまったときは、船着き場の前に自販機があるのでそこから調達することもできます。ただし真面目に観光すると山道をたくさん歩くことになるので、日帰りであっても必ず飲み物を持ってくるべきだと思います。

トイレは島内に4箇所あります。

水洗ですが和式で、循環式のため流すと濁った水が流れます。においは全く気にならないのですが、抵抗がある方は覚悟しておいたほうがいいかもしれません。私は全然平気です!!トイレがあるだけで幸せ!!!

準備が整ったら出発です!

と、30秒ほど歩いたところで右手に鳥居を発見。いきなりですが寄り道をしてみます。

荷物の大部分をテントの中に置いてきたのでリュックがとても軽くなり、さっきまでとは違って平和に階段をのぼることができます。

荷物を減らすためにも、一番最初に拠点を作る作戦がオススメです。

この神社は友ヶ島不動明王。昭和55年に開創されたそうです。先程までのにぎやかなキャンプ場からはうって変わって、厳かな雰囲気。境内は山桜が満開でした。

確かにここには神様が住んでいそう。無事に過ごせるようご挨拶をし、第3砲台跡への道へもどります。

第3砲台までは900mなので余裕かと思いきや、舗装路に慣れた脚にはかなりハードです。

途中には深淵に覗き込まれているような気持ちになる洞窟が。小走りで逃げました。

何者かが鳥を仕留めたような跡も発見。なんだかんだここは無人島。大自然の力を感じます。

そういえば第3砲台跡へ向けて出発してからは、誰ともすれ違っていません。友ヶ島から加太への最終船は16時半発。日帰り客はこの時間にはもう船着き場へ向かっている頃と思われます。

あ。この島、ほとんど人がいなくなっている。

急にゾッとしてきました…。

弾薬庫に到着!

20分ほど歩き、友ヶ島で一番の人気スポット第3砲台跡の弾薬庫に到着です!

ラピュタの島と呼ばれる所以にもなったこの場所、よく紹介されているので写真だけは見たことがあるという方も多いかもしれません。

たった一人で訪れたそこはシンと静まり返っていて、暗く、そして外と比べてヒンヤリ冷えています。左胸で心臓が縮こまり、プルプル震えているような感覚がしてきました。想像以上の孤独感と誰かに見られているかのような居心地の悪さ……

懐中電灯をつけて中に入ってみたもののこれ以上進めない…怖い!!

が、ここまで来たら諦めるという選択肢はありません。怯える心臓にムチを打ち、気温差から急激に冷たくなってきた手で懐中電灯を握りしめ、歩を進めます。

 

カツーン……

 

自分の足音が響く。

 

「ヒッ」

 

思わずでた声すら反響してびっくりする。いや、本当に中は真っ暗なんです。

この奥に私がいるのが見えますか?第3砲台跡の弾薬庫はすべてこの暗さ。持ち物のご紹介の際「懐中電灯は必須」とご説明したのはこのためです。

弾薬庫内は不思議な構造をしていて、4つある部屋が全部奥でつながっており、更に奥には回路状の細い通路が通っています。

 

奥の通路は本当に狭くて、人が一人やっと通れるような広さです。人間用の通路というよりは換気のために作られていると聞きました。

歩きまわっているうちに徐々に暗闇にも慣れ、記念撮影をする余裕も出てきました。

まるで映画のワンシーンに紛れ込んだような気持ちが味わえます。

それにしてもこんなしっかりと建物が残っているとは思っていませんでした。こんな景色を独り占めできただけでも友ヶ島へ来た甲斐があった気がします。

さあ、まだ砲台跡の見学が残っています。

砲台へは一度地下のトンネルを通らなければいけません。また暗いのね…。再び懐中電灯が活躍です。

もう暗いのは勘弁して…なんて弱音を吐きながらも、遠くに見える明るい光へ向かいます。

ゆっくり歩くのは怖いので走り抜けたいところなのですが、見ての通り暗い道なので、足元はちゃんと確認しながら歩いたほうがよさそうです。

水たまりとか段差とか石とかが急にあります。

通路の途中に弾薬庫のような大きな部屋がありました。ここは特に空気が冷たく、埃っぽく、そしてすごく古い気がします。

足音が反響するので、つい忍び足になりながら入ってみます。

天井に窓のような穴がありましたが今は完全に塞がれています。後で調べたところによると、弾薬を砲台へ上げるための穴だそうです。

隅々まで歩いてみると、天井のない謎の通路や人ひとりがやっと通れる通路など、地上から見てもわからなかった不思議な空間が広がっていました。

そして砲台跡へ

急に広い場所に出てきました。ここが砲台跡です。大きいなあ…。

奥に同じような砲台があり、ここも合わせて合計4つの砲台があります。

突き当りまで進んだ4つ目の砲台が一番草に覆われていて、砲座の丸い穴に水が溜まって池のようになっています。

先程の弾薬庫と同様にこの砲台跡も、写真を撮るにはかなりいい雰囲気の場所です。

ここも人気な場所ですが、日帰りのお客さんが帰ったあとなら独り占めできました。

それにしても戦争のために作られた施設が廃墟となり、そこが観光地化した現代。

本当に平和な時代に生きているんだなあと有難くなってきました。

1日目16:30 島の西側を散策する

第3砲台跡から出るとすぐ近くに展望台があるようです。展望台へ向かう階段をのぼるとすぐに視界がひらけて海が見えました。

淡路島がすぐ近くに見えています。

真ん中に浮かんでいる小さい島が友ヶ島の島郡の中のひとつ、神島です。奥へ続いているのが同じく友ヶ島郡の虎島。

大きなエンジン音が聴こえ、野奈浦桟橋のあたりから船が出ていくのが見えました。加太港へ帰る最後の船。これで今晩本州へ帰る道は絶たれました。

心細さはもちろんありますが、「いよいよここからが本番だぞ」という胸の高鳴りを感じます。

ここからは山を下り、島の西側へ行ってみましょう。

無人島では野生動物に注意

実はさっきからずっと気になっていたのですが、草むら、木の葉、崖の下、いたる所からガサガサと何者かが動く音が聴こえてきます。

この島にはマムシもいるらしいので穏やかじゃありません。

そんなことを考えている間にも変わらず音は聴こえる…というか、むしろ増えてきている。ちょうど最終船が出ていくのを見たばかりなので心細くなってきました。

 

今もすぐ近くの木の上、枝から枝へ飛び移るような音がする…! まさか、猿。猿はまずい。

 

慌ててキョロキョロすると、ちょうど岩陰へ隠れる黒い影が見えました。

あれは…

リスだ!しっぽがフワフワだあ~~!!

島の入り口で見て以来です。こんな山の中にもたくさんいるんですね。タイワンリスは夕方になると餌を求めて活発に動くらしく、この後もいたるところで見かけました。

旧海軍聴音所跡へ

ここから一度細い脇道に入ります。

これから向かう旧海軍聴音所跡ですが、何のために作られた建物なのか、その役割が判明したのは2002年頃だということです。それまでは何のために作られた建物かはわからないかったらしく、長年放置されていたようです。

先程までの道に比べると獣道っぽさがあるというか、秘密基地へ向かうような雰囲気。路面は滑って歩きにくいものの、道端にお花は咲いているし、すぐ横は海で開放的だし、楽しいお散歩のような道でした。

お、見えてきました!

小さいけどガッシリとした立派な建物です。

聴音所というのは、敵の潜水艦が近づいていないかどうか、海の中の音を聴いて見張る役目を持つ設備です。敵から見つかりにくいよう、先ほどの砲台跡とは違って壁に石が埋め込まれていたり屋根に木が生えていたり、景色に溶け込んでいます。

さっそく建物に入ります。

これはトイレですかね。

間違いない。

こういう設備の構造は時代が変わっても基本的には同じなんですね。

部屋へ入ってみると、中は荒れつつも当時の面影を残すカウンターらしきものや2階に上がるための入り口、はしごなどがありました。

天井に既視感があると思ったら、子供の頃に習っていたピアノ教室の天井が似た感じの素材でした。

防音とか吸音とか、そういった意味があるのでしょうか。

窓から差し込む陽の光で部屋全体が明るかったため落ち着いて観察をすることができるので、私のような小心者にはおすすめの場所です。

時刻はもうすぐ17時。暗くなる前にテントに帰りたいので、名残惜しいですが先へ進みましょう。

1日目17:00 友ヶ島の西端へ

来た道を戻り、更に西へ向かいます。

さほど時間をかけずに池尻キャンプ場まで来ることができました。ここは2019年6月現在キャンプ禁止になっている場所です。

昨年の台風の影響で相当荒れているのかと思っていましたが、見たところコンディションはかなり回復しているようです。

池尻キャンプ場の北側には大蛇がいるとかいないとかいう伝説を持つ蛇ヶ池という池があり、池沿いに島の北側へ抜ける道があります。この道沿いに北へ進みます。

第2砲台跡に向けて少し北上

池沿いの道には生活感というか人間が暮らしていた痕跡が見られます。

この島が栄えていた頃は旅館や海の家が何軒か営業していたらしく、今は廃墟やたくさんのゴミが残されています。砲台跡とはまた別の趣を感じます。

山の中を歩いていたときよりも、こうして中途半端に人の形跡が残っている場所の方が、誰かに見られているような気がして怖かったです。

この富士屋別館さんは廃業からあまり時間が経っていないようで、廃墟群の中でも人の気配がまだしっかりと残っていました。

第2砲台跡到着

この付近には第2砲台跡、第1砲台跡、それから友ヶ島灯台があります。もう夕暮れが近いので、この3箇所を回って本日の散策は終了ということにしましょう。

友ヶ島の砲台達は結局戦時中は一度も使われることがなかったそうですが、特にこの第2砲台跡は終戦の際、アメリカに爆破されてしまったという不憫な施設です。爆破の影響もあり、崩壊や風化が大きく現在は立入禁止です。

かなり大きく立派な施設なので入れないのは残念です。

第2砲台は島内で唯一海岸に配置されているため、素人の私から見ても砲台らしさというか、当時ここで防衛をされていた方の視点を想像しやすい場所でした。

友ヶ島に配置された6つの砲台はこんな感じにぐるっと一周を見張れるようになっていたそうです。

よく見ると淡路島や加太にもたくさんの砲台があったことがわかります。

本州付近をこんなにもたくさんの目で海を見張らなければいけない時代があったなんて。先程第3砲台跡でも思いましたが、本当に平和な時代に生きることができて有り難いですね…。

第1砲台跡へ

残る目的地、第1砲台跡と友ヶ島灯台へ行くには、また海沿いの細い坂道を上ります。

ここは一段と足元が乱れています。

第1砲台跡は友ヶ島のほぼ西端に位置するため野奈浦桟橋から遠く、焦って向かうと怪我をしそうで危険です。時間に余裕がある時にゆっくり見に行くほうがいいと感じました。

あっ…あった。第1砲台跡です。

門がちょっとだけ開いているあたり罠に誘われているようでソワソワしますが、ここは一般公開エリアなので安心して入っていきましょう。

これまでの砲台跡では窓はポッカリと開いていましたが、ここでは窓ガラスがしっかりはまっていて、ドアも鉄製で頑丈そうです。

第1砲台も他の砲台と同様にいくつか砲台があり、それぞれをトンネルで行き来できるつくりになっているようですが、門は閉ざされていました。

海が見えました。夕陽だ。タイムリミットの日没が眼の前まで迫っていることを意味します。

淡路島に沈む太陽のオレンジ色の光に視界が染められ、だんだん冷たくなってきた風を身体全体で受け止める。

海には大きさとりどりの船が忙しそうに行き来しています。その様子を違う世界軸から眺めているような気分になるぐらい、淡路島が遠く感じました。

第1砲台跡のすぐとなりにある友ヶ島灯台からも夕陽は見えます。

明治5年(1872年)に建てられ現在も稼働中というこの灯台は、150年近くもの長い時間、この景色を、何を思いながら見守ってきたのでしょうか。

と、気がつけば太陽はほとんど隠れてしまっていました。キャンプ場までの2kmを急いで戻ります。

よく見るとこの路面、車のタイヤが通れそうな間隔にコンクリートで舗装されています。無人島のため車は走っていないはずですが、なぜでしょうか。

歩いているとどこかから、無人島の夕方には全く似合わない陽気な音楽が聴こえてきました。海辺で日焼けをした男たちがタオルを振り回しながら歌っているような、そんな感じの曲。

いやいや、こんな場所でこんな音楽が流れているわけがないでしょと思いながら進んでいくと、幻聴でもなんでもなく島唯一の宿泊施設、ログハウス風の外観の海の家(うみのや)さんから聴こえる音楽でした。

ビアガーデンのような佇まい。今日も利用客がいるらしく、明るい建物内で何人か動いている人影が見えます。海の家さんでは海鮮BBQが楽しめるそう。キャンプに抵抗がある方はこちらに泊まると楽しそうですね。

そして隣接してたくさんの廃墟と車。さっきの舗装路を走っていたのはこれですね!!

釣り人でいっぱいの野奈浦桟橋を経由し、なんとか真っ暗になる前に青くて可愛いテントへ帰り着くことができました。

1日目19:00 無人島キャンプの夜を楽しもう

お腹も空いたことなので焚き火と夕ごはんの準備。調理用品は重くてかさばるので、今回はカップ麺で済ませます。

お湯を沸かしている間に昼間に集めておいた木をのこぎりで切り、いい感じのサイズに整えます。

着火剤代わりに帰りながら拾った松ぼっくりと海岸に落ちていた竹を使いました。両方とも普通の木に比べて燃えやすいのですが、その代わりに燃え尽きやすく、煙もよく出ます。

よく乾燥していたみたいであっという間に着火できました。

はあ~!!しみる!!疲れた身体にラーメンがしみる!!!

昼間に疲れていれば疲れているほど、外で食べる夕ご飯がおいしくなるのがキャンプです。無理に料理をしなくても、手軽なインスタントラーメンで十分すぎるほど幸せな気持ちが味わえます。

日本で一番おいしいと思っている蒙古タンメン中本のカップ麺も、野外で食べることでその旨味は私調べで通常の10倍ほどに膨れ上がります。これぞ幸福。

そして今晩のお楽しみは家から持ってきたサングリアとクラッカーとパテ。サバイバルをする!と張り切っていた割には、おしゃれなお酒とおつまみのセットを持ってきました。

気温が下がってきたのでサングリアは火にかけて温めて飲みます。心がポカポカします。

暗くなったキャンプサイトにはポツポツとテントの光が灯り、まるで小さな村のよう。

頭上には数え切れないほどの星が空に広がっています。月も星もずっと空にあるのに、こんなにたくさんあるなんて普段の生活ではまったく気が付きません。街は明るすぎるんだな。

 

電気がない生活は絶対に不便だけど、便利で心地よい生活に首まで浸かりきってしまうと、野生の勘みたいなものが鈍ってしまうような気がします。こうして時々ちょっと不便な場所に来ると、少しだけ頭がシャキッとするのです。

楽しい時間はあっという間。 そうこうしているうちに焚き火が弱ってきたので、テントに入って寝ることにしました。

ブルーシートでできたテントの中は見かけによらず広いんです。荷物はすべて持ち込むことができたし、脚はちゃんと伸ばして寝ることができます。

入り口をロープで縛れば天井がしっかり空気を閉じ込めてくれているので、テント内がほんのりと暖まります。寝袋に入るとすぐに意識がなくなりました。どこでも寝ることができるのは、私の特技なんです。

2日目8:30 友ヶ島の朝

顔に太陽の光が当たるのを感じた。爽やかな風も吹いてくる。

目を開けて真っ青な天井を見て思い出した。そうか、テント忘れたんだった…。

 

ブルーシートは想像のはるかに上をいく快適さでした。運良く風が弱い夜だったのと、ブルーシートをしっかりと地面に固定していたのがよかったようです。

時計を見ると8時半。むしろ寝過ぎです。ちこくちこく!

外に出てみると、すでに他のキャンプ客は活動をしています。

朝食はカロリーメイトチョコレート味とほうじ茶ラテ。

このカロリーメイトは災害時の備蓄食として自宅に置いているものです。賞味期限が迫っているので、キャンプのたびにこうやって少しずつ食べて入れ替えをしています。

サバイバルをしているような気持ちが高まるので、野外活動中のカロリーメイトは結構好きだったりします。

 

そろそろ朝イチの船が動き始めるので、日帰りの観光客が上陸するはずです。なるべく人が少ないうちに残りのスポットを観光し、お昼の船で加太へ戻ってランチを食べたいと思います。

 

友ヶ島ではゴミは持ち帰りが鉄則。なくさないように全てゴミ袋に入れます。全ての道具をリュックに詰め直すと、食べ物の分が減っているとは言えかなり重い。これを背負って山道を歩くのかあ…。

今日はゆっくり歩くことにしましょう。

 

2日目10:00 友ヶ島最後の探検

今日は島の東側へ行き、第4砲台跡へ行ったあと、虎島付近まで行ってみようと思います。

張り切って出発!!

 

…と思ったら。

なんということでしょう、東側へ向かう唯一の道が倒木により通行止めになっていました。

(2019年6月時点では、この通行止めはまだ続いています。お気をつけください)

東側に行くことができないのは残念ですが、昨日は時間が足りずに立ち寄らなかった第5砲台跡に向かうことにします。

第5砲台跡へ

すでに加太港と友ヶ島を船が何往復かしているようで、野奈浦桟橋の周りにはピクニックをしている人、写真を撮っている人、ハイキングへ向かう人など、たくさんのお客さんが集まっています。

ふと見上げると桟橋の近くにも鳥居が。

急な階段を息を切らして登り切ると狛犬と祠。一晩無事に泊めていただいたお礼をしておきました。

祠から第5砲台跡までは10分ほどですぐに着きました。

荷物の重みで肩甲骨のすぐ下の、大胸筋鎖骨部というあたりの筋肉が痛くなっています。リュックの重みで肩が背後に引っ張られるのを支え続けてくれている、大胸筋鎖骨部。あと1時間ぐらいなので頑張ってほしい。

第5砲台は他の砲台よりも小規模です。あまり保護整備はされていないみたいですが、崩壊が少ないので比較的自由に中を歩いて見て回ることができます。

弾薬庫は丸っこい小部屋で日光が燦々と降り注いでいるし、砲座のようなところには雑草を通り越して立派な木が生えて、のんびりとした雰囲気です。

ここが今回の友ヶ島での最後のスポット。11時を過ぎ、お腹も空いたことなので本州へ戻ってお昼ご飯を食べることにします。

友ヶ島を楽しむ4つのポイント

まだ午前中だというのに加太港へ向かう船はぎゅうぎゅうです。

大きい荷物の人たちは宿泊をした人。小さい荷物の人たちは午前中だけで帰る人でしょうか。時間的には第3砲台跡を見て帰ってきたぐらいかな。

加太港に着くまでに、個人的に感じた友ヶ島を楽しむためのポイントをまとめておきましょう。

①動きやすい格好で、日差しと虫への対策を!
→島内はすべて未舗装路で、軽い山登りのような道です。特に蛇ヶ池の周りは小さい羽虫がいっぱいいたので、虫よけスプレーとかがあると便利だと思います。

②懐中電灯は必須!
→特に第3砲台跡は、一部真っ暗な場所がありました。外から眺めるだけでも十分きれいかもしれませんが、実際に中を歩いた方が空気を肌で感じることができます。スマホのライトでは光量が足りないと思うので、ホームセンターなどで懐中電灯を買っておくのがおすすめです。

③水はたくさん持っていこう!
→今回は1泊2日で島内を歩き回り、1.5リットルの水を消費しました。特に夏、熱中症になっても病院はありません。荷物はなるべく減らしたいところですが、水だけは絶対切らさないようにしましょう。

④できればキャンプしよう!
→船が動いていない早朝や夕方の時間帯は、人気の第3砲台跡も混みません。運が良ければ独り占めできるかもしれません。灯りがほとんどない中波の音を聞きながらするキャンプは格別でした。

ただしトイレが循環式だったり、水道がなかったり、本州のキャンプ場に比べると設備が整っていないため少しハードルは高めです。初めてのキャンプにはあまり向かないと思われるので、すでに何度かキャンプをしたことがある方におすすめです。

2日目12:00 加太の街を行く

さて、そんなことを考えている間に船は加太港へ着きました。駐輪していた愛車に、ちょっとだけ軽くなったリュックを積んで町に向かいます。

実は加太港の周りはレトロな町並みが続く、素敵な雰囲気の地域なのです。

オジバ商店でかわいいランチ!

3分ほどバイクに乗り、着いたのはこちら。オジバ商店さん。古民家をセルフリノベーションしたお店だそうです。

 

「こんにちは~」

 

と入った玄関から、おばあちゃんの家へ帰ったような安心感に包まれました。

店内は混み合ってるようで

 

「ちょっと待ってくださいね」

 

ということで玄関まわりを観察していたところ、かわいいティーカップのセットを見つけました。

値段がついている。

 

売ってるの!?しかも安くないですか?!

残念ながらバイクで来ているので割れ物は持ち帰れませんが、かなりお買い得に見えます。

 

「おまたせしました!」

 

店内に案内していただくと、暖かい日ということもあり中庭が開放されていて、ポカポカと陽当たりが良い気持ちいい席が並んでいました。

縁側の席にしてみました。日替わり定食(750円)を注文して店内をブラブラして待つことにします。

昭和と現代が混ざりあい、なぜか心が落ち着く不思議な空間です。

いくつかのお店や作家さんが出店しているシェアショップということで、様々なジャンルのこだわりを感じる商品ひとつひとつを手にとって見ていると、時間を忘れてしまいそうでした。

と、パタパタとお盆を持った店員さんが来てくれました。

 

「おまたせしちゃってごめんなさいね!」

か…かわいい!!

これが750円、嘘でしょう?!

 

いろんなおかずを少しずつ。これはめちゃくちゃ女子受けがいいんじゃないでしょうか。

急にテンションが上がってきました。

 

…?!れんこんのはさみ揚げおいしい!!!

 

どのおかずを食べてももれなくおいしいし、ボリューム感もいい感じです。

なにより外食してこんなにバランスよく食事摂れるの、普通に考えてすごくないですか…。

 

お会計を済ませてお店を出ようとすると、玄関横のスペースで写真展をしていました。

毎月テーマを決めて展示をしているのだそう。暖かい写真ばかりでほっこりできたので、お近くの方は是非見に行ってみてください。

オジバ商店

住所:和歌山県和歌山市加太249
電話:090-2597-7181
営業:土日 10:00〜17:00
instagram食べログ

旅の最後は淡嶋神社へ

お腹がいっぱいになったところで、この旅のしめくくりに淡嶋神社を参拝します。

元々淡嶋神社は先程までいた友ヶ島の島郡の中のひとつ、神島に祀られていましたが、仁徳天皇によって加太に移されたとされているそうです。

仁徳天皇は16代目の天皇で4世紀に在位されていたと考えられているため、これは相当に歴史の長い神社ということです。

 

淡嶋神社というと人形供養で全国的に有名なのですが

こんな感じで境内には2万体とも言われる人形が所狭しと並べられています。

 

日本人形に限らずありとあらゆる人形がジャンル分けされ、きれいに並べられているところは圧巻…!

見て回っている間にも人形を持って来る方がいらっしゃって

 

「おばあちゃんが嫁入りの時に持ってきて、それ以来ずっとあったんだよね」

 

なんて話されているのが聞こえました。

 

そう言えばそういう人形、私の実家にもあります。こうして供養してくださる神社があるということを、覚えておきたいと思います。

こうして友ヶ島・加太1泊2日の旅は幕を閉じました。

 

無人島でキャンプができると聞いたときは、危険いっぱいの宿泊を想像していましたが、友ヶ島はしっかりと整備され、安心安全に無人島の気分を味わえる最高の島でした。

もちろん自然いっぱいの島なので、ゴミの持ち帰りやキャンプ場以外でのキャンプの禁止など、守るべきことはあります。しかしそれはどんなキャンプ場で宿泊したとしてもマナーとして守ることですので、特別厳しい決まりではありません。

友ヶ島、加太に共通して言えるのは、普段とは時間の流れ方が違うノスタルジックな空間に、日常を忘れて五感全部で浸ることができるということです。

アウトドアが初めての方は日帰りで人気スポットを、アウトドアに慣れた方は宿泊して島全体をぐるっと。本州にはないちょっと不便だけど特別な時間を、是非皆様も友ヶ島・加太で体験してみるのはいかがでしょうか。

 

それでは、読んでくださってありがとうございました。

また日本のどこかでお会いしましょう!