阿蘇外輪山裾野の渓谷沿いに広がる黒川温泉は、年間100万人もの観光客が訪れる人気の温泉地です。
その人気の秘密は日本の原風景のような風情ある街並み。街全体で景観を統一しており、どの宿へ行っても黒川の自然と調和した美しい露天風呂や施設を楽しめます。さらに、泉質のバラエティも豊富。歩いて回れる温泉街なので、ゆったり湯めぐりと散策を楽しむ旅はいかがでしょう?
※現在新型コロナウイルスの影響で、旅行の計画を建てるのが厳しい状況かと思いますが、自宅でゆっくり記事を読みながら終息した時の楽しみにしていただければとの思いで公開させて頂きます。今後の旅の計画の参考にしていただければ幸いです。
目次
■旅のスタートは風の舎(かぜのや)で
黒川温泉に着いたらまずは風の舎を目指しましょう。黒川温泉街のちょうど真ん中くらいの位置にあります。
温泉街のマップや地域の紹介冊子などが揃っており、観光に必要な情報はここで入手できます。
湯めぐりをする人は入湯手形(1,300円)を、食べ歩きをする人は湯る~っとクーポン(500円)を買っておくことをおすすめします。
入湯手形は1300円で黒川温泉にある3宿の露天風呂が外来利用できるお得なパスポートです。温泉巡りの必須アイテム! 入浴時間は8:30~21:00と長めなのもうれしいところです。(※旅館によってはメンテナンス等により入浴時間が異なる場合があります。)
湯る~っとクーポンは、温泉街の加盟店でソフトクリームや飲み物などと引き換えられるクーポン。6枚つづり1冊500円。通常よりも20~30%お得に利用できます。(※2020.3時点の情報です。今後クーポンの料金や内容が変わる可能性もあります。)
傘の貸し出しもやっています。500円のデポジットを払って傘を借りて、返却すると500円戻ってくるシステムです。旅行先で傘を買うと荷物になってしまうので、このようなサービスはありがたいですね。
風の舎
住所:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6594-3
TEL:0967-44-0076(黒川温泉観光旅館協同組合)
営業時間:9:00~18:00
定休日:無休
黒川温泉のおすすめ湯
さて、入浴手形を購入したら早速湯めぐりへ出かけましょう。
阿蘇の奥地にある黒川温泉。中心には田の原川が流れ、約30軒の旅館が集まる自然豊かな温泉街です。高速や駅、空港からも離れており、また街全体で景観を統一しているため、これぞ「秘湯」といった昔懐かしい温泉街の情緒に浸れる場所です。
春には花が咲き乱れ、夏には緑が輝き、秋は紅葉、冬は雪景色が美しい黒川温泉。四季折々でまったく違う風情を見せてくれます。人気の温泉地で年間を通して観光客でにぎわっていますが、2月と6月は比較的空いているそうなのでねらい目です。
情緒ある雰囲気に加えて、炭酸水素塩泉、単純硫黄泉、硫酸塩泉、塩化物泉と泉質のバラエティが豊富なのもポイントです。風の舎でもらえるパンフレットに各宿の泉質やおすすめの巡り方が記載されているので、自分の体調や好みに応じて湯めぐりのプランを考えてみましょう。
1.旅館奥の湯
坂を登った先にある「旅館奥の湯」。内湯、露天風呂、洞窟風呂、温泉の蒸気を活用したサウナ……と外来でも利用できる施設が充実しており、いろんな温泉をゆっくり楽しめる場所です。
庭先では温泉の蒸気を使った蒸し卵が作られており、温泉地らしい風情に満ちています。
脱衣所。大きな鏡やドライヤーが用意されています。
男女別の内湯。写真は女性用の内湯です。シャンプー、リンス、ボディソープ完備。シャワーが設置してあるので、頭や体も洗いやすいのがポイントです。
実は、入浴手形で外来利用できる温泉は、宿によっては「露天風呂だけ」「脱衣所が簡素」「洗い場にシャワーがない」ということも多いのです。奥の湯は脱衣所も内湯も使いやすいので、湯めぐりのスタートや締めくくりにしっかり体や頭を洗いたい時にぴったりです。
混浴露天風呂は川に面しており、藁ぶきの屋根がしっとりとした情緒を添えています。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。硫酸塩泉は肌の蘇生効果に特化しており「若返りの湯」とも言われています。
混浴エリアには露天風呂だけでなく、洞窟風呂や川風呂もあります。
洞窟風呂は静寂に包まれた空間です。日ごろの疲れや雑念を忘れさせてくれそう。
川風呂はより川に近い位置に作られており、遠くに滝が見えます。流水音が心地良く響いています。
女性専用の露天風呂もあります。
男女別の蒸し風呂。温泉の蒸気で蒸された天然のミストサウナです。通常のサウナよりも少し温度が低めで、ゆったりと利用できます。
蒸し風呂の外には水風呂があります。交互浴好きはたまらない充実の設備ですね。
敷地内は四季折々の草花が咲いています。湯上りはゆったりと散策してみてはいかがでしょうか。取材日は雨の日でしたが、木や花に水滴が輝いている様子もすてきでした。心が穏やかになるような風景です。
奥の湯
住所:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6567
電話番号:0967-44-0021
URL:https://www.okunoyu.com/
2.いこい旅館
温泉街の中心エリアにある「いこい旅館」。数軒の旅館が立ち並ぶ通りにあります。
いこい旅館の前にある公衆電話。黒川は温泉街全体で景観の統一がなされているため、公衆電話の佇まいもこんなに風情があります。日常を忘れて「秘湯」の世界観に浸れるのが黒川温泉の魅力ですね。
いこい旅館の混浴露天「滝の湯」は「日本名湯秘湯百選」に選ばれました。打たせ湯のある半露天です。泉質は単純温泉。柔らかい肌触りの湯あたりしにくい泉質で、のんびり温泉に浸かっていられます。
日差しが竹林から差し込んで、幻想的な雰囲気を醸していました。
奥には開放感あふれる露天風呂が。こちらにも打たせ湯があります。
また、女性用のみ、竹につかまって入る「立ち湯」があります。深さは1.5メートルで、肩までお湯に浸かれます。足をぶらぶらできる浮遊感がなんとも爽快。
お宿の前に囲炉裏があるので、入浴後はここでほっと一息。炭火の香りがどこか懐かしい気持ちにさせてくれます。
宿で販売している温泉卵を食べたり、牛乳を飲んだりしてもいいですね。特にこの「阿蘇小国ジャージー4.5牛乳」、甘くさっぱりとした味で湯上りにぴったりでした。阿蘇の牛乳はおいしいです。
無料で利用できる足湯もあります。街歩きに疲れたらここで一休みさせてもらってもいいかもしれませんね。
いこい旅館
住所:熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉川端通り
電話番号:0967-44-0552
URL: http://www.ikoi-ryokan.com/
3.山の宿新明館
明治35年創業の老舗「山の宿新明館」。田の原川に掛けられた橋を渡った先の、昔懐かしい風情の建物が迎えてくれます。「日本秘湯を守る会」の会員宿です。名物はなんといっても手掘りの洞窟風呂!
洞窟風呂は本館裏手の岩山をくりぬくように掘って作られました。先代が10年もの歳月をかけてミノと金槌で……!
その際に岩の運搬に使われた「ばいすけ」という竹かごが展示されています。一輪車などなかった当時、ひたすら砕いた岩を担いで搬出したそうです。
さて、その洞窟風呂はこちら。女性専用と混浴があります。中は予想以上に広く、全長は30メートルも! 冒険気分をくすぐられるつくりです。洞窟内は湯気が立ち込めてミストサウナのよう。お肌もしっとりうるおいます。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。
一番奥にある混浴露天の「岩戸風呂」も外来利用できます。
時期によりますが、「洞窟風呂」は混雑しやすいので入浴は比較的空いている夜の時間帯がねらい目です。
山の宿新明館
住所:熊本県阿蘇郡南小国町字満願寺6608
電話番号:0967-44-0916
URL:http://www.sinmeikan.jp/
4.やまびこ旅館
のどかな田園風景に囲まれた「やまびこ旅館」。趣のある茅葺の門が迎えてくれます。
看板犬のうめちゃんがいました。
外来利用できるのは「仙人風呂」。大小2つの露天風呂があり、日替わりで男女入れ替え制です。
脱衣所。看板がいい雰囲気です。
こちらは大きいサイズの「仙人風呂」。黒川温泉でも随一の規模感です。コバルトブルーに輝くような温泉の色が印象的です。
泉質はナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。皮脂を乳化して洗い流してくれる炭酸水素塩泉の効果と、塩化物泉の保湿効果で、さっぱりと汚れを落としつつ保湿もしてくれるうれしい泉質です。
小さいサイズの「仙人風呂」はこちら。こちらは大きいサイズの「仙人風呂」より深めで、肩までしっかり浸かれます。
やまびこ旅館
住所:熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺6704
電話番号:0967-44-0311
URL:http://yamabiko-ryokan.com/
5.旅館山河
温泉街から少し外れた山の中にひっそりと佇む「旅館山河」。「秘湯を守る会」の会員宿で、全国の温泉・秘湯ファンから根強く愛されている宿です。
ロビーでは暖炉が赤々と燃え、柱時計がゆっくりと時を刻んでいます。外の緑としっとりと落ち着いた館内のコントラストが美しく感じられました。
四季折々の草花が施設内を彩っています。
日帰り入浴で利用できるのは、混浴露天「もやいの湯」と女性専用露天「四季の湯」の2つです。
混浴露天「もやいの湯」
女性専用露天「四季の湯」。黒川の自然と調和した趣ある露天風呂は、日常の疲れをすっかり洗い流してくれるようでした。「四季の湯」の名前の通り、雪景色や紅葉など四季折々でさまざまな景観を見せてくれます。
泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩温泉。ほんのり青みがかった透明な湯です。
敷地内を流れる沢や苔、植物の織り成す風景に心が安らぎました。元の自然を生かしつつ、ほどよく人の手を入れて、訪れた人がリラックスできる雰囲気を作ってくれているお宿でした。
旅館山河
住所:熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺6961-1
電話番号:0967-44-0906
URL:https://www.sanga-ryokan.com/
■地元ならではの共同浴場2湯
温泉旅館のイメージが強い黒川温泉ですが、実は昔ながらの共同浴場も残っています。素朴な風情にほっと心が和みます。
1.地蔵湯
黒川温泉のちょうど真ん中くらい。地蔵堂という神社の向かいに共同浴場「地蔵湯」があります。ここが黒川で最初に湧いた湯とも伝えられています。
200円というお手頃な値段で利用できます。入り口前の料金箱にお金を入れると、自動ドアが開くシステムです! この自動システム、温泉王国大分でもよく見かけました。入浴手形の利用はできないのでご注意を。
中は男女別の内湯があります。脱衣所と浴室が一体となったシンプルな構造です。泉質は硫黄泉でお湯はけっこう熱め。地元民で通う人もおり、昔から地域で愛されてきた場所です。
出口はこのタイプ。一度出たら戻ってこられないので忘れ物がないよう注意しましょう。
共同湯 地蔵湯
住所:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺地蔵湯
営業時間:8:00~19:00
※入浴手形利用は不可。200円。
2.穴湯
べっちん坂を下りた先の静かな川沿いに共同浴場「穴湯」があります。入り口で100円を入れて中に入ります。
穴湯は混浴です。一応女性専用の小さな脱衣所はありますが、かなり簡素なつくりです。私は中の様子を見てお湯を触ってみるだけで入浴はしませんでした。
泉質は単純泉。昔ながらのいかにも共同湯という風情の温泉でした。
共同浴場 穴湯
熊本県阿蘇郡南小国満願寺6541
営業時間:7:30~19:00
■黒川温泉の街歩き
黒川温泉街は歩いて楽しめるのが魅力です。紹介してきた温泉も旅館山河は少しだけ離れていますが、すべて歩いて回れる範囲内です。九州の温泉街はスポットが点在しているところが多く、車でないと回りづらいところも多いのですが、黒川温泉は車なしでも充分に楽しめるのが魅力です。
温泉街の真ん中を流れているのが田の原川。
田の原川に寄り添うように続く「川端通り」が温泉街のメインストリート。飲食店やみやげもの屋が軒を連ねています。湯めぐりと合わせてお店めぐりも楽しみましょう。
白玉っ子
湯上りにちょっと甘いものが食べたい時は、白玉っ子がおすすめです。こちらは湯る湯る白玉セット918円。白玉にきな粉、黒蜜をかけたものと抹茶、お漬物のセットです。
阿蘇産のもち米を石臼で挽いた粉を100%使用して作られた白玉は、つるつるもちもちした食感です。
白玉っ子
住所:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6600-2
電話番号:0967-48-8228
URL:https://www.siratamakko.com/
カフェ&レストほかり
「ちょっとのんびり休憩したいな……」という時は、カフェ&レストほかりがおすすめです。先ほどご紹介した白玉っ子の2Fにある隠れ家的なカフェで、窓側の席からは目の前を流れる田の原川が見えます。
黒川温泉は人気の温泉街なので、川端通りのお店はどこも人で賑わっています。
このカフェは2Fにあるせいか、喧騒から少し離れたゆったりした雰囲気がありました。窓から見える黒川の緑に心癒されます。
カフェ&レストほかり
住所:熊本県阿蘇郡南小国町満願寺6600-2(白玉っ子2F)
Instagram: https://www.picuki.com/profile/cafe_rest.hokari
湯るっとクーポンで利用できるスポットいろいろ
湯めぐりの合間には水分補給が欠かせません。湯る~っとクーポンは、温泉街の加盟店でソフトクリームや飲み物などと引き換えられるクーポン。6枚つづり1冊500円。通常よりも20~30%お得に利用できます。湯めぐりをする人は街歩きのお供に買っておくといいかもしれません。(※2020.3時点の情報です。今後クーポンの料金や内容が変わる可能性もあります。)
杉養蜂園では、湯るっとクーポン2枚でゆず蜜ドリンクと交換できます。蜂蜜の甘みと柚子の酸味、湯上りの水分補給にぴったりな飲み物ですね。
土産物屋の「湯音」でも、湯るっとクーポン2枚でコーヒーかソフトドリンクと交換できます。
小腹が減ったら「わろく屋」のからあげ串。こちらはクーポン3枚で交換できます。昔はコロッケと交換でしたが、2020年3月現在は唐揚げと交換です。肥後赤鶏を使った唐揚げはジューシーで肉の旨味がしっかりしていました。
川沿いの足湯
川沿いに100円で利用できる足湯もあります。街歩きの合間に足が疲れたらここで一休みしましょう。
川のせせらぎがいいBGMでした。
■ちょっと足を延ばして「そば街道」へ
歩いて楽しめる黒川温泉ですが、もし車があれば「そば街道」まで足を運んでみてはいかがでしょう。「そば街道」は6軒のそば店が立ち並ぶ山道で、黒川温泉の中心エリアから約13キロ、車で20分弱の距離にあります。
水のおいしい南小国町は、約30軒の蕎麦店が点在するそば処でもあります。おいしいおそば屋さんを地元民にいろいろ聞いてみたところ、多くの方が「そば街道で食べるのがおすすめ」と教えてくれました。
私が訪れたのは「花郷庵(かごうあん)」。
ざるそば800円。私はお腹がいっぱいで食べられませんでしたが、舞茸の天ぷらもおすすめらしいです。
打ちたて、茹でたてのおそばは、食感も香りも最高でした。店舗は築100年の農家を改築して作られており、梁や柱の佇まいにくつろいだ気持ちになれます。温泉にゆっくり浸かっておいしいおそばをゆっくりと味わう、最高に贅沢な時間の過ごし方ですね。
花郷庵
住所:熊本県阿蘇郡南小国町赤馬場戸無(そば街道)
TEL:0967-42-0193
URL:http://www.kagoan.jp/
■その他熊本観光いろいろ
黒川温泉の立ち寄り湯と街並みを紹介しました。
熊本全体で観光プランを建てるなら、こちらの記事がとても参考になります。
黒川温泉から足を延ばして、杖立温泉や高森町へ行くのもいいでしょう。黒川温泉から杖立温泉は車で約25分、高森町は約60分程度です。
■さいごに
黒川温泉のおすすめ5湯と共同浴場2湯を紹介しましたが、他にも魅力的な温泉がたくさんあります。黒川温泉のすごいところは、世界観が統一されていること。どのお宿へ行っても日本の原風景のような趣ある世界観に浸れるのがすごいところです。ぜひゆっくり散策へ出かけてみてください。
それではよい旅を!