観光列車「おれんじ食堂」に乗ってきた!人生最高レストランは列車にあり!?

「はやく目的地に着かないかな〜……」

なーんて、旅の移動に飽きちゃったりすることは、きっと誰にでもあると思います。

でも移動時間の過ごし方次第で、旅はもっともっと濃厚になります!!

この世には、ただの移動を濃密な楽しい時間に変えてくれる素晴らしい発明があるんだから、積極的に活用していこうよ!!

そう。その発明とは、観光列車!!

こんにちは!3度の飯よりレストラン列車で食べる飯が好き、ライターのウエチンです。

九州といえば、「ななつ星」「ゆふいんの森」を始め、JR九州のたくさんの魅力的な観光列車があることは、旅行好きの皆さんならご存知かもしれません。

でもですね……実は、九州にはJR以外にも、魅力的な観光列車があるのです!!

そんなJR以外の観光列車の中でも、特に大好きなレストラン列車に乗ってきたので、めちゃくちゃ激推ししたいと思います!

それがこちら……

肥薩おれんじ鉄道の、おれんじ食堂です!!

美しすぎる車両は、レジェンド水戸岡鋭治様のデザイン!

熊本と鹿児島を結ぶ九州西海岸沿いを走る肥薩おれんじ鉄道。東シナ海&不知火海の両方を車窓で楽しむことができる、のどかな地域密着型の路線です。

そんな肥薩おれんじ鉄道が誇る観光列車、それが、おれんじ食堂

数多の観光列車のデザインをを手掛ける水戸岡鋭治さんによる、二両編成のとっても可愛い走るレストランです!

車内で販売しているポストカードまでも可愛い。

おれんじ食堂は、モーニング、ランチ、スイーツ、サンセットと、いくつかプランがあるのですが、私が今回楽しんだのは、プチスウィーツ+サンセットコース

雄々しい外海の東シナ海を見ながらスイーツを頂き、島々に囲まれて穏やかな不知火海に沈む夕日を見ながらお夕飯を頂く、なんとも贅沢極まりないコースです!

(※季節や新型コロナウイルスの感染拡大状況によって、都度都度プランが違いますので、行きたいとなった時にご確認ください)

と、言うわけで、鹿児島の川内駅から出発し、熊本県の新八代駅まで、およそ3時間半かけてのんびり移動してきました〜!

乗車の前に、鉄印を貰う。

まずは鹿児島県・川内駅で、おれんじ食堂とご対面!

上から見ても隠しきれないそのオーラ。柵でお顔を隠していらっしゃるあたり、平安時代の御簾の向こうの姫君のよう……くぅぅ!奥ゆかしい!!

JRのホームの先、はしっこに、肥薩おれんじ鉄道のホームがございます。

み、見えたー!!

この小さな改札口こそ、大いなる幸福への入り口……!しかし、ここで逸る気持ちをグッと押さえ、忘れずにやらねばならぬことがございます。

鉄印をもらわねば!!

鉄印とは、2020年から始まった全国各地の第三セクター(JRから派生した地域密着型の鉄道会社)の企画!全国40社のローカル線で、オリジナルデザインの鉄印を頂けるのです。

御朱印帳ならぬ鉄印帳で集めます。

おれんじ鉄道の鉄印はこちら!

好きすぎて2日連続もらいました。

列車内から見ることができる、海に沈む美しい夕日がデザインされています!そう。私は今から、この景色を見るのだ!!鉄印によって、さらに楽しみが加速します!!

いざ乗車!

いよいよ、おれんじ食堂とご対面です!!
ご覧ください、この美しい色のボディ。まるで太陽の光を受けてすくすく育ったナスのよう…!

そう!この色は、ただの紺色ではなく、紫混じりの「ナス紺」と呼ばれるもの。周囲の風景と溶け込むように考え抜かれた絶妙なカラーリングなんです。

ヘッドには、上品なナイフとフォークがあしらわれたおれんじ食堂のロゴが。見ると、「ああ、私はいまから、三ツ星レストランで特別な体験をするんだ」と、身体の底から喜びが湧き上がってまいります。

いよいよ車両の中へ。一歩足を踏み入れると、そこは、地元愛が刻まれ抜かれた最高の空間が広がっています。

 

まずは1号車、「ダイニング・カー」!


見てください、この開放的な空間!ホテルのカフェレストランをイメージして作られたこの1号車は、すべての席から、バッチリ海を眺めることができる作りになっています。

ウッディな椅子やテーブルは、沿線の「ミズメザクラ」という木が使われています。とことん貫かれる地元愛、好き。そういうの、もっとください!!

1号車には、沿線の焼酎ががずらりと並んだ棚も。

沿線のものだけでこの種類、さすが九州というオーラが……!私は下戸なのでぶっちゃけよく分かりませんが、これ、種類多いですよね?多いに違いない!!

1号車には、こんなサービスカウンターもございます。

沿線のレストランから提供されたお料理が、ここで美しく盛り付けられて私たちの目の前に届けられるのです。また、スープなどは、ここで温めてから出してくれます。お弁当ではなく、ちゃんとした食器に盛り付けられたお食事を、温かいものは温かく、冷たいものは冷たい、そんなベストな状態で頂けるのも、レストラン列車の醍醐味!特別感がすごいんだから!!

どんなお料理かは、後ほどたっぷりご覧頂きますが、その前に隣の2号車をご覧ください。

このラグジュアリーな空間が、「リビングカー」と呼ばれる2号車です!

「えっ……!」

と思わず声が出てしまうくらい、素敵…!ホテルのロビーをイメージして作られたこの空間もまた、全ての席で海を楽しめる作りです。

ちなみにこのおれんじ食堂は、当日に空席があれば、区間運賃+座席指定料金で、お食事無しでの乗車も可能です。食事がない場合はテーブルは出入りがしやすいように折りたたまれています。こういう細かい機能的な工夫もたまらないポイント!!

また、1号車2号車ともに先頭部分にはお子さん用の特別席も。運転手さんと同じ風景を眺めながらの移動は、電車好きのお子さんにとっては忘れられない思い出になるはず……!

お子さんがいらっしゃらない日だったのでちょっと座ってみたかったんですが、サイズ的にかなり無理がありそうなので諦めました。私だって見たかった、運転手さんと同じ風景をっ!!

 

さて!車両も堪能したところで、いよいよ出発です!

車両や食だけじゃない!?駅にはまさかのプライベートビーチが!?

出発して15分ぐらいすると最初の大興奮スポットがやってきます。それは……薩摩高城(たき)駅

傾斜が激しい場所なため、かなり斜めって停車。降りやすいようにステップを付けてくれます。

観光列車はもちろんご飯も素晴らしいんですが、すばらしいポイントはその道中の駅にもあるんです。

中でもこの薩摩高城駅には、美しい東シナ海を楽しむための展望スポットがあるのです!

そしてこの展望台はですね……おれんじ鉄道の社員さんによる手作りなんです!

もともとはただの無人駅だった薩摩高城駅。小高い丘を越えた先には絶景の海があると言うことで、何とかお客さんに楽しんでもらいたいと思った社員さんたちが、薮を切り開き、階段を作り、遊歩道を整備してくれたものなのです。さらには植林までもしたのだとか!

よーく見ると、歩道や階段には、古くなった線路の枕木が再利用されています。手作りとは思えないクオリティー!!

ベンチも手作り!

そんな社員さんたちのハイレベルなDIYで観れるようになった風景がこちら!

海、青っ!!この日は天候に恵まれ、穏やかに輝く海を思う存分楽しむことができました。このビーチ、実は薩摩高城駅からしか行くことができない、いわば駅専用のプライベートビーチなんです。

もちろん、ビーチの整備も、石をハート型に並べてくれたのも、すべて肥薩おれんじ鉄道の社員さんたちとのこと。お陰で、乗車して15分強で、こんなに美しい風景を堪能することができました。

なお、薩摩高城駅以外にも、水戸岡鋭治さんデザインの阿久根駅や水俣駅、鶴がたくさんお出迎えしてくれる出水駅など、沿線には魅力的な駅は他にもあり、途中下車して楽しむこともできます!

景色とスウィーツのマリアージュを観てください!!

薩摩高城駅の絶景を堪能した後は、いよいよおやつタイムです!

この日のスイーツは、薩摩川内市の人気スイーツ店、ル・プレジールさんが提供してくださったもの。地元で取れたいちごが「これでもか!」と使われたケーキです。

美しいケーキと東シナ海の青い海がコラボした風景をご覧ください!

これぞレストラン列車でしか堪能できない風景!!ただでさえ最高に美味しいスイーツ、より一層美味しさ増し増しで舌に迫ってきます!!

ちなみに、このお皿が乗っているランチョンマットやコースターはゴム製。置かれたお料理が、列車の揺れで落下するのを防いでいるんです。そういう細かい工夫も楽しいポイント!

 

道中のホスピタリーティーもめっちゃ手厚い!とことん推せるおれんじ食堂

鹿児島から熊本までを、ゆっくり3時間半。どんなに車両が豪華でも、駅が素敵でも、絶対に飽きるよね?って思う方もいると思います。

ところがどっこい凄いんですよ!車内アナウンスやスタッフの皆さんのお話が面白すぎて、知的好奇心が満たされまくりなんです。

例えば……

薩摩川内市は、時代劇で使われる鎧兜の9割を作ってるところで、工場の見学も無料でできるんだそうです。

長島では名産の巨大かんきつ類であるボンタン(文旦)の皮を混ぜたエサで育てたブリがいるんだとか。その名もボンタンぶり!ボンタンを食べて育つと、臭みが少ない美味しいブリに育つそうです。

鶴がたくさんお出迎えしてくれる出水駅。この周辺は、冬に鶴がめちゃくちゃ飛来してくるスポットで、なんと飛来数は日本一なのだとか!

個人的に一番感動したお話は、水俣市の話です。かつての公害病・水俣病の反省から、その負の歴史を払拭すべく、かなり努力を積み重ねているのだとか。ゴミの分別も厳しく、なんと23種類に分けて捨てるのだそうです!その甲斐あって、ついに水俣の海には珊瑚が戻ってきたと!海に潜りたくなっちゃうじゃないですか!

他にも、「なんか変わった木がいっぱい生えてるところだな〜…」って思って窓の外をキョロキョロ見ていたら、スタッフさんがさっと近寄ってきてくれて、「このあたりは観賞用の樹木を育てる農園が多いのです。車で移動していると、トラックで木ごと引っこ抜いて運ぶ様子が見れたりすることもあるんですよ!」と教えてくれました。なんてよく気のつく方なんだ…

そんなホスピタリティが、何より嬉しく、楽しい!それが観光列車の醍醐味なのです!!

旅のクライマックスには、絶品グルメととんでもない絶景が…!

いよいよ旅もクライマックスにさしかかります。鶴であふれる出水駅を見学している間に、とても列車の中とは思えぬテーブルセッティングが!

この日のサンセットコースは、鹿児島県と熊本県の県境にある「湯の鶴温泉」の「鶴の湯迎賓館 鶴の屋」さんご提供のメニューをいただきます!

まずは前菜、「旅の愉しみを飾るプレリュードBOX」!

地元の食材をふんだんに使った料理が盛りだくさん!中でも私がめちゃくちゃ興奮したのはこちら。

MINAMATAの畑! 土まで食材で表現されている、舌だけでなく目でもSNSでも楽しめるお料理!好き!!

スープやお肉料理など、列車の中にいて、移りゆく景色を見ながらコース料理を味わえるなんて、「こんなに幸せでいいのだろうか……」と一周回って不安になってきました。

だって、玉ねぎのスープは、ほのかに甘くて香り立つコンソメが最高だしーー

ストレス無く、阿蘇の美味しい水を飲んで育った阿蘇び豚のお味も最高だしーー

「小さな驚き」と名付けられたライスコロッケは、美味しいだけでなく中のチーズがビヨーンと伸びて、いやいや小さいで済みませんよ?この驚きは!って感情的にも昂ぶって最高だしーー

列車に乗っただけなのに、最高以外の語彙を消失するような体験ができるなんて、前世の私は一体どんな徳を積んだの……!?と、時空を超えていろいろ我が身の幸せと美味しいお料理を噛み締めているとですね……

これですよ!!

穏やかな不知火海に沈む夕日!

海に映るオレンジロードは、まさにおれんじ鉄道の鉄印にデザインされたものを同じ!

この日は、スタッフさん曰く、「年に数日しかない最高の夕日」とのことで、とんでもなく美しい風景を、じっくりたっぷり楽しむことができたのでした。

もちろん、天候によってはここまでの夕日に巡り合うことは無いかもしれませんが、それを差し引いても、お料理、そしてスタッフさんたちのホスピタリティが天井知らずの肥薩おれんじ鉄道・おれんじ食堂。

いろいろカオスな事態が落ち着きましたら、お出かけの候補の筆頭にぜひとも入れてください!!