超初心者が一人で競輪場に行ってみたらレースもグルメも最高だった
そもそも賭け方すら分からない競輪未経験のライターが、神奈川県は川崎競輪場に足を運んでみることに。予想屋さんに教えを請いつつ、自腹で勝負してみました。結果は最後まで読んでのお楽しみですが、レースの臨場感に驚いたり、実は競輪場内の飲食店が安くておいしかったりと満喫できたよう。ちょっと敷居の高い気がする競輪場、いざ行ってみるとかなり楽しめる場所なんですね。
はじめまして。赤祖父と申します。
なんの関係もない子育てアピールで申し訳ございませんが、これは妻子を置いてちょくちょく出かける罪悪感が背景にあります。そんな出かけ癖の関係でご縁あって旅メディアのSPOTで記事を書かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
そして今回は唐突ですが、「競輪場」に何も知らない人間がいきなり一人で行って楽しめるのか実践してきました。もちろん今回も一人で出かけてきました。お土産には高いシュークリームとプラレールです。
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競輪ってどうなの?
さて、皆さんは「ギャンブル場」にどういうイメージをお持ちでしょうか? 怖い、殺伐としている、初心者お断り、地下労働…ざわ…ざわ…的な、要するに取っつきにくいというか、ストレートに言えば「ヤバい」みたいな印象を抱いている人が多いかもしれない。
いわゆる「公営ギャンブル」には、競馬をはじめ、競艇、競輪、オートレースがある。ぼく個人としてはダビスタ(競走馬育成ゲーム)で競馬のことは知識としてわかっている程度で、競艇や競輪などに至っては「意味はわからんけどハマったらヤバい、ヤバいものには最初から手を出さない」というサラリーマンスピリッツ全開の保身主義で全然やらなかったので、ルールもわからないし、どこでどうやって賭けるかもわからない……そんな感じで今まで過ごしてきました。
でもある日気付いたのです……!
そもそも人生は、四季報やネットの情報だけでどんな会社かもわからずに入社したり、ン千万もする家を買ってみたりと大きなギャンブルの連続である。であるのならば、公営ギャンブルなど人生を賭けたギャンブルに比べれば遊びに過ぎないではないか。怖くない怖くない……痛いのは最初だけ……というわけでこの機会にチャレンジしてみることに。とにかく何もわからない競輪の世界を覗いてみることにした。
今回訪れたのは川崎競輪場。川崎駅から無料の送迎バスが定期的に出ている。入場料はたった100円。嘘みたいな金額です。
川崎駅からの無料送迎バスに乗る前に出走表がもらえる。すでにバス車内も殺伐とした勝負師の世界の空気。若い世代やカップルも増えている競馬場と違い、競輪場に向かうバスには「女子供にゃ用はねぇよ!」的な殺伐とした雰囲気が漂っています。
……と思ったら「詩穂ちゃんおめでとう記念杯」の文字列に吹きそうになる(お金を出すことでレース名を付けられるとのこと)。詩穂ちゃん、よくわからないけどぼくからも「おめでとうございます!」と言わせてください。
川崎競輪に到着。競技場(バンク)を見ると気分が高揚する。想像していたよりも大きい。
基礎の基礎を予想のプロに聞いてみた
ガチで事前予習もなしに来てしまったので、そもそもの賭け方から探ることにした。とりあえずレースを眺めたり、他のオジサンたちの様子を観察したり、テレビの解説を聞いたりしていたが、まず何を言っているのかわからない。何を言ってるかがわからないと学びようがない。
仕方がないので予想屋さんに頼ることにした。予想屋とは競輪場ときちんと提携して場内に何人かいる「予想のプロ」で、1レース分の予想を100円で教えてもらえる。予想屋によって当てにいく人、穴狙いの人など予想の傾向があり、もちろん確実に当たるということは無い。しかし、年がら年中競輪を見ている人だから大いに参考になるだろう。
何人かの予想屋から予想を買いながら、さりげなく「初めてなので全然わからないのですが…」と言うと皆親切に教えてくれた。
※今回は親切に教えていただいたが、忙しそうなときはやめましょう。これも知らなかったのだが競輪場のガイダンスコーナーがあったり初心者向け講座を開いている場合もあるのだそう。初心者の人はそういったものの開催日を狙って来る方が良いかもしれない。
Q:初心者はまずどうすればいい?
A:とりあえず新聞は買いなさい。そして、まずは選手の顔でもいいし出身でもいいし、興味のきっかけを作るといいかな。
無料配布の出走表しか持っていないぼくを見て、RPGの最初の街で「武器や防具は装備をしないと意味がない」的な説明をしてくれる人のような超基礎のアドバイスをしてくれた。新聞買います。しかし何でもそうだけど、面白さを見つけるためにはあくまでも自分なりのとっかかりを探すのが重要なのかもしれない。
Q:選手の出身地は大事?(なぜか実況や解説でもやたら選手の出身を言ってたので)
A:「ライン」を近い地方で形成することは多い。あと当然だが地元選手だと人気になる。よって、予想には結構重要な要素。
競輪では1団になっているカタマリを「ライン」と呼ぶそうだ。上の絵で言えば「人間ライン」「動物ライン」「変わった自転車のライン」という3つのラインがあることになる。逃げ(先行する戦い方が得意な選手)のすぐ後ろにぴったりつけることで空気抵抗を減らす、という自動車レースで言うところのスリップストリームの効果を得るために前を行く選手の後ろに付ける格好になるわけだ。
そして出身地だが、「九州勢」「関東勢」などはやはり重要なようだ。なぜならば九州勢は九州勢同士で、関東勢は関東勢同士でラインを組むことも多いらしい。またさらにここ川崎競輪場では、地元神奈川の選手は特別に勝利インタビューなどもされたりしていた。選手の格にもよるのだろうけど「地の利」もあったりして、無視できない要素だと感じた。
Q:なんで「ライン」ができるの? 八百長なの?
A:競輪の基本戦略であり醍醐味。先行、追込、捲り(まくり)といった選手の脚質や位置取りの関係で「結果的に」仮に組まれるチームのようなもの。グルになってるとかそういうわけではない。たぶん。
上記のように、お互いにメリットがあるからこそ組むのがライン、とのこと。競輪が面白いのはこの「ライン」がほかの「ライン」の進路を邪魔したりして勝敗に大きくかかわってくる点らしい。自分が居るラインがまず他のラインに対して有利にレースを進めることを狙いつつ、最終的には個人で優勝を目指す、という仕組みだ。なんとなく聞いていた「師匠を勝たせるために若手が犠牲になる」のような”上下関係”みたいな話とはちょっと違う印象。つまり皆自分が勝とうとして合理的に動いているだけ、ということだ。「ゲーム理論」みたいなものだろうか……。
Q:競輪はチーム戦だとか人間関係とか上下関係が重要だとか聞いたことがあるが本当?
A:昔はあったかもしれないが、今はそんなのは無い(らしい)。「ライン戦」という戦略上、結果的にチーム戦のようになるが、あくまで個人戦として皆勝とうとしている。
※この質問に関して別の予想屋さんは「あるよ!新聞のコメントとかよく読んでいけばそのうちわかる!」と言った人もいたのでよくわからない……。
マンガとかで強いライバルと一時共闘する燃えるシーンみたいなことを毎回やってるイメージなのだろうか。もっと派閥とかイジメとかみたいな、政治ドロドロの話かと思っていたが……。
まあこういうことは無いらしい、です。そうなのかどうなのかはマジでよくわかりません。個人的には無いんじゃないかと思います。
Q:新聞にある情報の「ギア」って大事?
A:ルールでは公表することになっている。皆が知ってる自転車のギアと同じ意味で、トップスピード重視か瞬発力重視かわかる。ただ少なくともご意見を聞いたオジサンはあまり気にしない、とのこと。
これは競馬で言う斤量(重りのハンデ)みたいなもので、気にする人はするし、しない人はしない要素なのだろう。個人的には気にならない。
Q:予想の要素が色々あるけど、結局皆「何を根拠に」予想してるの?
A:人による。選手の強さを端的に表した「得点」もあるし、最近の調子を表す直近成績、それにどれだけ車券に絡んだかわかる「連対率」という要素もある。でも配ってる出走表だけじゃなくてとりあえず新聞買え。
すみません、新聞買います。
全然関係ないけど、席を取ってるのか忘れ物なのか判別しかねる。
実際に賭けてみる
基礎の基礎は教えていただいたが、結局根拠に乏しいので与えられた情報と知識の範囲でやれる方法で賭けてみることにした。
- 予想屋さんの予想にそのまま乗っかる
- 予想屋さんの予想を軸に、少し組み合わせを拡張してみる。例えば1-2、1-3だとしたら2-3も買ってみるなど
- オッズ表を眺めて、なんとなく買ってみる
残念ながら各選手の戦歴や近況など、予想に使える情報を何も持っていないのでこれ以上やりようがなかった。
ちなみに予想屋さんの予想はこういう感じ(左上の数字の羅列)で渡される。さっぱり読み方がわからない。マークシートの書き方はなんとか解読できた。買い方によって2種類あるので注意。
買い方は3連単(1・2・3着を着順に当てる)からワイド(1・2・3着に入る2名を当てる。順番はどうでもOK)まで、当てやすさと配当の種類は様々。予想屋さんの予想は配当の良さとのバランスなのか、3連単や2車単(1・2着を順番に当てる)が中心の様子。
また実際に馬券ならぬ車券を買う自動券売機も、購入代金を先に入れた後にマークシートを入れるという手順なので注意(買うときにマゴマゴしていて他の方に教えてもらいました……)。
レースの臨場感はやっぱりスゴイ!
競輪のレースは金網のすぐ先に選手がいるほどの近さで観戦可能。迫力と臨場感が半端ない。
なおレースの妨げになる可能性があるためレースの写真撮影は禁止だそうだが、選手に「○○!おい!頼むぞおい!」とかだけでなく「○○~~~お前バカ野郎~~~~!!」などと絶対聞こえてる距離で罵声を浴びせるファンもちらほらいて、そっちはいいのかよとも思ってしまった。
競輪はバンク(コース)を2,000mほど走るために何周かして決着するそうで、川崎競輪場の場合は5周が基本。最後の1周半で鳴らされる打鐘(「ジャン」と呼ぶらしい)の全力疾走パートと、それまでの「ライン」の形成や駆け引きのコントラストがドキドキする。これは初心者でも本気で楽しい。あと気付いたのは、お金を賭けたレースと賭けてないレースでは賭けたほうが一層燃えること。100円でもいいので賭けてから見ると全然違う!
ゴール前の迫力とスピード感はヤバい!!(写真は無いので想像してください)
ギャンブルめしは安くて美味しい!
ところでせっかく競輪場に来たらやっぱり楽しみたいのはグルメ。勝負師たちのグルメは、ウマイと定評を聞くではないか。川崎競輪場内も多くのお店があり、どの店も魅力的だった。
定食系メニューに強い「みよし食堂」。既に多くのお客さんで賑わっているが、レース中だけテレビに視線が集中する。
牛もつの煮込み(400円)。ギャンブル場といえば煮込み! みたいなイメージがあるが、やはり並の居酒屋以上の絶品。競輪やらなくても飲みにくるのもアリだと思う。
豊富なメニュー量にワクワクする「ナインカラー」。ここで気になったのはこれ。
なんと、カツ丼ではなくコロッケ丼(350円)。簡単に言うとカツ丼のカツがコロッケになったようなものである。食べたことありそうでなかった味……!
こんな感じで美味しいものが一通り、それも良心的な価格で揃っている。「ギャンブルめし」はギャンブルどころか「アタリ」な店ばっかりな印象である(キレイにまとまったので座布団ください)。
まとめ:競輪場は楽しい!!
競輪の世界を垣間見てすっかり楽しくなってしまったが、競輪は実は全国で見るとほぼ毎日開催しているらしい。また後から知ったが車券もネットで購入できるし、知ってみると敷居が低いなという印象を抱いた。
最後に、初心者が実際に自腹で勝負した戦績は以下のとおり。
- 第4レース 800円賭けて520円バック
- 第8レース 1200円賭けて980円バック
- 第9レース 1200円賭けて全部はずれ
- 第10レース 1500円賭けて1240円バック
投資4700円、回収2740円
差額1960円の負け!
がーん
結構勝ってた印象があったのにトータルだとやっぱり負け…性格出ますね…人生はギャンブル…確かに自分にはこういう地味な負けがお似合いなのかもね……。
とは言え、丸一日ドキドキワクワクしながら楽しんだ結果がマイナス2000円ということであれば「むしろコスパ良いかも」と思ってしまった。もちろん賭ける金額が大きくなればそのブレ幅も大きくなるのだけど、健全におこづかいの範囲内で遊ぶ分には「アリ」なのではないでしょうか。皆さんも、身近に競輪に詳しい人が居たら連れて行ってもらうと良いかも知れません(もちろん一人で行ってもいいけど)。
おわり