ようこそ茂野水族館へ。
ここは1匹も魚を飼育していない、ちょっと変わった水族館。
茂野水族館では飼育された生き物ではなく、実際の海の中の営みを観察する水族館です。
「何言ってんだこいつ」と思った方、ちょっと待ってください。僕も思っています。
この記事は、実際に僕が海に潜って撮影した生き物を紹介していき、「なんとなく水族館を回ってる気分になってくれればいいな」と思って書いております!
(チャレンジングな記事にしてみたので、よろしければSNS等でご意見ください)
茂野水族館は野生の生き物だから、もしかしたら隠れちゃうかもしれないし、ちょっと見づらいかもしれないですが!
早速ご案内させていただきます。
ということでようこそ!
館長でSPOTライターの茂野です。
ダイビングのインストラクターや水中カメラマンを本業としています。
いきなりアウトドアな感じで登場してすいません。
最近はオンライン会議ツールZOOMの背景を海にして、ダイビング器材を背負って登場するくらい自宅待機が板に付いてきました。
みなさんも自粛期間を楽しもうといろいろ工夫されてはいると思います。
でも、やっぱり出かけたいし遊びたい!
僕も一緒です。
だから普段知らない生き物を知ってもらって気分だけでも水族館気分に。
カワイイ生き物を見て癒されてほしい。
こんなカワイイ生き物や、
こんな口の中にタマゴをくわえた不思議な魚の生態などが展示されていますよ。早速ご案内しましょう。
目次
伊豆半島につきました
はい、みなさん。伊豆半島に着きましたね。
ええ、着いたんです。インターネットはすごいですね。
今回はこの伊豆半島沼津市にある大瀬崎というダイビングスポットで見れる生物を紹介していきます。
みなさんの目の前に広がっているこの海は、日本一深い駿河湾です。ちょっと変わった生物やカラフルな生物などいろんな生物が生息しています。
環境省認定の水質の綺麗な海岸にも選ばれ、伊豆半島を代表するダイビングポイントです。
駿河湾越しに見る富士山もとっても綺麗なところです。
さっそくご案内しましょう。
入り口付近、1番最初に展示しておりますのは伊豆半島のアイドル「クマドリカエルアンコウ」です。
大きさにして1センチくらいの非常に小さな子ですが、魚なのにヒレが手のような形をしていてよちよち歩く姿やその美しい色合いが大人気。
めっちゃ可愛くないですか!!
この魚に出会えるのは秋の時期だけ。
僕はどうしても会いたくて2週間も毎日この大瀬崎の海に潜ったこともあります。
1年を通してクマドリカエルアンコウが発見されるのは3〜5匹ほど…!
広大な海の中から1センチ程度のクマドリカエルアンコウを探すのは砂漠で米粒を探すようなもの。
みなさん、本当に会えてよかったですね。
隣の展示はタツノオトシゴの仲間、ハナタツです!
水族館や写真で見たことないって人もいるかもしれませんが、東京から近い神奈川や伊豆の海にはタツノオトシゴの仲間は結構いるんです。
こんな見た目をしていますがヒレもあって立派な魚です。
尻尾をくるんと巻きつかせて体を支えている様子がすごくカワイイ!!
伊豆の海って意外とカラフルなんです。
まるで金魚のような鮮やかなオレンジ色のこの魚たちの名前は「キンギョハナダイ」!
目の上に紫のアイシャドウのような色が入っているのが特徴です。
キンギョハナダイがひらひら泳いでいる奥を覗くと……
大きなウツボがうっとうしそうに顔を出しています。
ウツボというと黄金伝説の無人島生活で濱口がモリで戦っているイメージがありますが本当はとっても臆病……
人間が近づくとすぐに奥に隠れちゃうんです。
伊豆半島にはウツボは多くて岩陰なんかを見るとよくいます。
他にもサクラダイという魚も展示させていただいております。
サクラダイを見れるのは世界でも日本だけ。
日本の海はとっても豊かで、日本でしか見れない、固有種と言われる生物が多くいます。
このサクラダイも日本固有種の1つで伊豆を代表する魚。
ピンクの美しい体にある白い模様が桜の花びらが舞う様子に似ていることからサクラの名前が付けられています。
次は独特な形をした「カミソリウオ」というお魚!
カミソリウオは水中のゴミや、揺れる海藻に擬態しています。
泳ぐことなく波にゆらゆらしながらいる姿は魚だと全然気づけない擬態名人なんです。
不思議な生き物の生態コーナー
さて、ここからはちょっとした企画展。
伊豆半島の魚たちのちょっと変わった求愛方法や子育てなどをご紹介していきます。
こんな恋愛は嫌だ。メバルの驚くべき求愛方法
どこにでもいる変哲もないこの魚、名前を「メバル」と言います。
あんまりスーパーなどで売っていることはありませんが煮付けにすると非常に美味しく釣り人の間では人気です。
特にカワイイ見た目でもないこの魚ですが求愛方法がすごいんです。
下の水槽(写真)が求愛シーンなんです。
何してるかわかりますか…?
左の口が開いている方がオスで右の横向きの方がメス。
突然ですが、ご来館中のお客様にクイズです。
…
…
…
正解は
…
…
2番!
オスがメスの顔におしっこをかけているんです!!
えっ!?
て思うかもしれませんがオスのメバルはメスの鼻先に向けて放尿をします!
メスはその放尿を受けて自分にふさわしいオスかどうかを判断し、オッケーの判断をしたら交尾になります。
メバルのナンパ方法はメスの顔におしっこをかけることなんです!!
人間で考えるとやばいですね……
僕はこれ以上に最低のナンパをする生き物を知りません。
しかもこの放尿してる時のオスの表情……
どんだけ気持ち良さそうな顔してるんだろう。
右のメスの無表情でちょっとこわい…!
こんな旦那に出会いたい。魚類界のイクメン代表!
またもなんの変哲もないこの魚、黒い点が尻尾の上にあることから「クロホシイシモチ」という名前が付いています。
クロホシイシモチは何がすごいってオスのイクメン度合いが半端ないんです。
なんとオスは1週間タマゴが孵化するまで飲まず食わずで命をかけて子育てをするんです。
というのも……
なんとオスは自分の口の中でタマゴを育てます……!!!
お腹の袋の中で子育てするカンガルーもビックリ!
口いっぱいにタマゴを入れるので物理的に食事をすることができないんです。
すごすぎます。
これなら自分が他の魚に食べられない限り、タマゴを守ることができます。
ちなみにどうやってタマゴを口に入れるかというと……
オスとメスが寄り添いあって
交尾をしてメスがタマゴを生みます。
その瞬間オスは背後に回り込み
パクッと一口でくわえます。
この間、わずか数秒。本当の一瞬に終わります。
ここからオスはタマゴが孵化する約1週間、飲まず食わずでタマゴを守り続ける生活をします。
こう考えるとオスって大変だなって思うかもしれませんが苦労するだけ価値があるんです!
クロホシイシモチはオスの方が産卵子育てにおいて圧倒的に大変です。
なのでメスの方から求愛してきてオスがお気に入りのメスを選ぶんです。
すごくないですか……?
羨ましくないですか……?
僕もモテるためには育児や家事を練習しようかと思いました。
ハゼとエビが一緒に住む!?海の中の共生の話
この魚は「ネジリンボウ」というハゼの仲間です。
ネジリンボウは砂地の地面に巣穴を作って隠れ家として生活をしています。
しかし、その地面の巣穴を自分で作っているわけではありません。
実はエビに掘ってもらっているんです!!
よーく観察していると、せっせと巣穴からエビが出てきて穴を掘っている様子が見ることができます。
ネジリンボウは一見、他人に自分の家づくりをさせる怠惰な魚に思えますが実はきちんと役割があるんです。
このエビはテッポウエビといって砂を掘るのが得意なエビです。
そのため目が退化してしまい非常に目が悪い。
なのでネジリンボウがテッポウエビの目になってあげて、敵がくるのを教えてあげたり、餌となる海藻を運んできたりします。
このように全く違う種がお互いに助け合って足りないことを補いながら生きることを共生といいます。
海の中の共生というとクマノミとイソギンチャクの話が有名です。
クマノミはイソギンチャクに守ってもらう代わりに、クマノミの食べ残しなどがイソギンチャクの栄養になるという。
水中には、このハゼとエビのようにたくさんの共生があります。
多くの生物が敵から身を守るために助け合っているんです。
海の中でステイホームする魚たち
自宅にこもっているのは僕ら人間だけじゃありません。
共生の話で出てきたクマノミもイソギンチャクのおうちに籠っています。
イソギンチャクは毒を持っていて他の魚は入ってこれないクマノミだけの安全な場所なんですね。
居心地の良い家を見つけるとそこで一生を過ごすクマノミもいます。
空き缶の中にタコがいるのが見えますか?
ギロっとした目で缶の奥からこっちを睨んでいます。
ここまでいくと自宅待機もプロレベル……!
すごく快適そうなんですが缶の中はコーヒーの匂いがしないんですかね。
最後は空きビンに住む「ミジンベニハゼ」の夫婦。
ちょっと深い水深25mくらいにおうちがあります。
人間の捨てた缶とかビンが海の中にあるのは、ちょっと複雑な気持ちになりますが、生物たちはたくましく、しっかり利用して安全な隠れ家としています。
それにしても、このミジンベニハゼは目が緑色でクリクリしていて本当にかわいい。
おわりに
ということでもう出口になりました。
今回は伊豆半島の茂野水族館にお越しいただき、ありがとうございました。
海の中には不思議な生活をする魚たちやクスッと笑ってしまうエピソードがたくさん!
これからも他のエリアやカワイイ生き物たちをご紹介していきます。