真冬の北海道全駅制覇。クリスマスから始まった6日間の記録_PR

北海道の全駅制覇にライター・patoが挑戦。廃線・廃駅・運休路線を含めた道内の「駅メモ!」対象駅・559箇所すべてにアクセスします。極寒の大地で過ごした六日間。悪夢のような旅路の果てに見たものとは?(読了目安時間:50分)

5日目 5:30 留萌市

一晩で雪がとんでもないことになっている。夜のうちに除雪をしないと町が機能しなくなるのか、まだ暗いうちからブルドーザーがフル稼働して除雪していた。こうして人知れずの誰かの仕事で社会は成り立っているのだ。

さて、今日は懸念事項である宗谷本線、稚内を片付けたい。稚内は言わずと知れた日本最北端の駅だ。それゆえにめちゃくちゃ遠い。旭川からでも片道で250キロほど、往復では500キロになる。たぶん今日一日はここを取りに行くだけで終わってしまう。ゆえにこの5日目のページだけはスカスカの内容になる予定だ。稚内とはそれだけ遠いのだ。

昨晩は宿泊場所を求めてけっこう駅から遠い場所まで歩いたので、同じ道のりを歩く。本当に朝かよ、みたいな景色が続く。雪もすごい。というか、これだけ雪が激しいと稚内へと続く宗谷本線が運休してしまうかもしれない。

「宗谷本線はすぐ運休するよ」

昨日、網走で乗ったタクシーの運転手さんの言葉を思い出した。運休になったらいやだなあ、と考えながら留萌駅へと向かった。

闇に浮かぶ留萌駅。本当に朝なんだろうか。もしかして朝だと思ってるのは僕だけで本当は夜なんじゃないだろうか。完全に精神がすり減っているので、夜を朝だと勘違いしている可能性は十分にある。幻覚を見ている可能性は十分にあるのだ。

駅舎の中に入るとしっかりと朝っぽいので安心した。

ただ、雪がすごすぎて列車が埋もれてしまっていた。本当にこれ走るのか。

 

6:47 留萌本線 普通 留萌発 深川行

よかった。走るみたいだ。

なんとか乗り込み、発車を待つ。いよいよ発車時間! となってとんでもないことに気が付いた。

乗客が僕しかいない。

これまでどんなローカル線に乗っても乗客が僕だけ、という状態には陥らなかった。なんだか本当に幻覚を見ている可能性が出てくる。本当に、僕はこれから稚内にいけるのだろうか。地図に存在しない謎の駅とかに連れて行かれるんじゃないだろうか。

現実か、幻覚か、そんなことをずっと考えていたら途中の駅でめちゃくちゃ大量の野菜を持ったおばあさんが乗り込んできたので安心した。よかった現実だ。車内でめちゃくちゃ匂いのする揚げ物を食べ始めていた。うん、この匂いは現実だ。

 現実となると、この雪はいかんともしがたい。本当に大丈夫か。運休になるんじゃないの、これ。

 

7:49 深川駅(運賃 1,070円)

乗換駅である深川に到着すると、ずいぶんと雪は緩やかになっていた。ただ、北海道の場合は地域によって大きく天候が異なるため油断はできない。

こんな雪の中を走るのだからたいしたものだ。

北海道フリーパスを買わなかったことにより、毎回正規キップを購入し、凄まじい勢いで所持金が減ったので、ついにお金が足りなくなった。仕方がないのでお金をおろそうといったん駅の外に出た。そしたらすごい雪でまともに歩けず、雪国の人が見たら笑うやつ、みたいな感じになってしまった。駅前のわりと近い場所にコンビニがあったのでよかった。

 

8:11 特急オホーツク1号 網走行

とりあえずやってきた特急に乗る。やはり12月も29日となると完全に帰省ラッシュが本格化していて、札幌からの帰省客で車内は大混雑だった。指定席は満員だし、自由席も満員、それどころかデッキもぎゅうぎゅうで、満員電車みたいな状態で移動することになってしまった。

あまりの混雑に大人しそうな感じの青年とかなり密着することになってたんだけど、その青年がずっと聞こえるか聞こえないか微妙な細い声で

「殺すぞ」

「殺すぞ」

「殺すぞ」

って言ってたのでめちゃくちゃ怖くて、「はやく旭川についてくれ」と十字を切って祈っていた。

 

8:32 旭川駅(運賃1,260円)

やっぱりさ、旭川駅はむちゃくちゃかっこいいんですよ。イオンもあるし。

なんとか運休することなく、稚内行きの特急が出るようなので安心してホームに踊りでる。特急はやや遅れているようだったけど、すぐにやってきた。

 

9:00 特急宗谷 旭川発 稚内行

稚内は異常に遠いので、特急でもここから3時間40分の乗車となる。往復で7時間を超える。さっきの特急みたいにめちゃくちゃ混みあっててずっと座れなかったら死ぬ、しかも隣に殺人鬼みたいなやつが来たら死ぬ、と心配していたけど、あまり混雑していなかった。よかった。

稚内への道中は、見事に雪。雪、雪、雪、だ。というか雪景色しかない。

雪がすげーやべーことになっている。

気候もクルクル変わって、快晴だったかと思うと曇ってきて、吹雪いたりする。あまりに目まぐるしく変化するのでちょっと精神がついていかない。

 

3時間40分。

ずっと雪景色を眺めていたら沸々と怒りみたいなものが湧いてきた。

そもそも、僕は日本縦断をしたときにこの路線の駅は全部取っている。それはしっかりと駅メモに記録されている。なのに、なんでまた取りに来なくてはならないのか。以前の記事で取ってるので省略しますねーでよかったんじゃないか。2回目取りに来るか? 例えば、自治体がおひとり様1つまでとして餅を配ったとしよう。僕が一度貰ったくせにマヌケ面ぶらさげて2回目を取りに来たらどうだろうか。「いやいや、あなたはいちど取ったでしょ、お餅」と自治体の職員に止められるはずだ。なのに宗谷本線にはそれがない。いやいや、あなた取ったでしょ、と止める職員が必要ではないか。そもそも、餅を配る自治体もおかしい。餅は老人を殺す。殺すのだ。そんなものを配っていいのか。

「餅は老人を殺す」

「殺す」

「殺す」

ってブツブツ呟いていたら、隣の席に座っていた婦人が、めちゃくちゃ驚いた顔でこちらを見ていた。

 

12:40 稚内駅(運賃 7,780円)

チェックインした駅 神居古潭(廃駅)、近文、伊納、納内、南永山、永山、北比布、比布、北永山、和寒、蘭留、塩狩、和寒、南比布、東六線、剣淵、北剣淵、士別、下士別、多寄、風連、瑞穂、東風連、名寄、日進[北海道]、北星、南美深、美深、智北、智恵文、紋穂内、初野、恩根内、咲来、天塩川温泉、豊清水、音威子府、筬島、佐久、天塩中川、歌内、雄信内、糠南、問寒別、安牛、上幌別、南幌延、幌延、豊富、下沼、勇知、兜沼、徳満、稚内、南稚内 抜海(457/559駅)

やっとついたー! ついについに到着したー!

日本最北端の駅、もっとも北にある駅。

本当にここは苦しかった。精神的にかなり苦しかった。3時間40分、延々と雪を見る時間が辛く苦しいものだった。意味不明に怒りだして本当に苦しかった。けれどもそれともおさらばだー! と思ったら、普通にとんぼ返りして同じ時間だけ乗車しないといけないのだった。これはもう悪夢ですよ。

日本最北端の駅、稚内駅。

日本最北端の駅、稚内駅。

北の南の終着駅、稚内駅、枕崎駅。

ここぞとばかりに最北端の駅であるアピールがあります。

ちょっと撮影し忘れたんですけど、中には最南端の駅である「西大山駅から3,095.0 km」なんて看板がありました。まさかいないとは思いますけど、西大山から3,095 km全部普通列車でここまで来る人とかいるのでしょうか。さすがにいたらちょっと狂人なんじゃないかなって思いますよね。

 

せっかく精神と時の部屋みたいな修行をくぐりぬけて稚内駅までやってきたのですが、その駅を堪能する時間はほとんどない。

先ほど乗って来た列車がそのまま13時発の旭川行きになるのだけど、それを逃すと次は5時間後だ。さすがに、へー、ここが最北端かーでは5時間持たない。ということで、駅建物から出ることなくそのままさっきの列車に乗り込むことになった。

ほんと、何しに来たんだろ。

 

13:01 特急サロベツ4号 稚内発 旭川行

またあの雪の3時間半が始まる。

ただ、帰りはまあまあ楽で、行きと違って必死に駅メモチェックインをする必要がない。なんならずっと爆睡していてもいいくらいだ。ここはいっちょ思いっきり寝てやろうかとも思ったけど、先ほど怒り狂った影響なのか、目がさえて眠れなかった。

雪、雪、雪である。

 

茫然と眺めていたら、また沸々と怒りが沸いてきた。

そもそも旭川から3時間半かけて稚内まで行く人とはどんな人だろうか。おそらく観光目的であれ、帰省目的であれ理由がある。稚内には3時間半と7,000円以上の運賃をかけていくだけの理由があるのだ。見たかった観光施設かもしれないし、心安らぐ実家があるかもしれない。遠距離恋愛の彼女がいて、数か月ぶりに稚内駅で会い抱き合うのかもしれない。そこには理由がある。稚内に行く理由がある。

それがどうだ。僕には理由がない。稚内について駅建物から出ずにとんぼ返りだ。なんだこれ。一万歩譲って「駅メモで駅を取るという理由があるじゃないか」というかもしれないが、僕は以前、この稚内までの駅は取っている。駅メモにも記録されている。なのにどうしてこんなことになるんだ。

稚内までは以前の記事で取ってるので省略しますねー、でよかったんじゃないか。2回目取りに来るか? 例えば、自治体がおひとり様1つまでとして餅を配ったとしよう。僕が一度貰ったくせにマヌケ面ぶらさげて2回目を取りに来たらどうだろうか。「いやいや、あなたはいちど取ったでしょ、お餅」と自治体の職員に止められるはずだ。なのに宗谷本線にはそれがない。いやいや、あなた取ったでしょ、と止める職員が必要ではないか。そもそも、餅を配る自治体もおかしい。餅は老人を殺す。殺すのだ。そんなものを配っていいのか。

「餅は老人を殺す」

「殺す」

「殺す」

そんなことをブツブツ言ってたら、隣の席に座ってたラッパー目指してるんだけどいまいちなりきれていない感じの若者が、イヤホン外してこっちを見ていた。

 

16:48 旭川駅 (運賃 7,780円)

何度も言わせてもらうが旭川駅はかっこいい。デザインも構造も素晴らしい。よくぞこんな素晴らしい駅を作ったものだ。

イオンも直結しており、とても便利だ。

 

17:30 特急ライラック38号 旭川発 札幌行

ここからはさらに特急に乗って札幌まで行き、道中の取りこぼし駅を取る。さらに札幌では取り逃していた地下鉄と路面電車を取る。完璧なプランだ。なんとなく終わりが見えてきた。いけるいけるぞ。

札幌まで行く特急列車の車中は気を抜くわけにはいかない。

なにせこの部分の駅を取らなければならない。気を抜くと絶対にミスをし、戒めとして常連たちが巣食う居酒屋に行く羽目になるので、なんとしてもそれだけは避けなければならない。

車内ではテンションが上がっちゃってる若者の集団がいて、集団の中で「平成最後の」というワードがツボにはまったらしく、ことあるごとに「平成最後の特急列車!」とか言いまくってた。

「じゃあ俺は、平成最後の泥酔」

「平成最後の札幌!」

「平成最後のすすきの風俗いっちゃう~?」

と、これから遊びに行くであろう札幌の夜遊びにテンション爆上げだ。けっこうな大騒ぎで展開されるその会話を車内の乗客の誰もが疎ましく思っていたのだけど、僕はある一つの疑念を胸に抱いていた。

 

彼ら、もしかして12月31日で平成が終わると思ってない?

 

例えば、「平成最後の泥酔!」とか言ってる彼、とてもじゃないが泥酔しないように自重するタイプには見えない。毎週泥酔してそうだ。平成が終わる5月までにあと16回くらい泥酔しそう。ただ、12月31日で平成が終わると勘違いしている場合、今日は29日なのであと2日だ。最後の泥酔と宣言してもおかしくない。

「平成最後のすすきの風俗」と言ってる彼も、めちゃくちゃ行きそうな感じだ。5月まであと2,3回はこうして特急に乗ってすすきの行きそう。

もし彼らが本当に12月31日で平成が終わると勘違いしていて、年越しカウントダウンを経て平成31年という表記を見たら、どう思うのだろうか。彼らにとって来るはずのない平成31年が来るのだ。まるで終わらない悪夢だ。終わらない平成、安いSFの世界みたいだ。

「俺は昨日したオナニーが平成最後かな、ギャハハハハ」

そう言った彼はやはり5月までにあと100回はしそうだし、下手したら年内でも2回くらいはしそうな感じだった。

 

18:55 札幌駅(4,290円)

チェックインした駅 砂川、奈井江、茶志内、美唄、峰延、光珠内、豊沼(464/559駅)

死ぬほど精神が摩耗していますが、ここで取っておかないともう取る機会がないので地下鉄に行きます。

なぜか知らないけどめちゃくちゃ歩いた。JRの改札を出てから迷宮のような通路を抜けて、下手したら1駅分くらい歩いてるんじゃないのって行程を経て、やっと東豊線の乗り場に着いた。

 

19:10 札幌市営地下鉄 東豊線 

なんかすごいラッピング車両きたけど、2往復かけて東豊線の全駅にチェックインし、豊水すすきのという駅で降りた。(運賃:一日乗車券830円)

チェックインした駅 月寒中央、福住、美園、豊平公園、学園前[北海道]、豊水すすきの、 北13条東、東区役所前、環状通東、元町、新道東、栄町[北海道](476/559駅)

これで地下鉄はコンプリート。そのまま地上に出ます。完全に疲労が凄まじく、早く宿に入って眠りたいのですが、もう1路線あります。そこまで歩いて行きます。

 

20:30豊水すすきの駅

道に迷ってしまってけっこう歩く羽目になってしまったし、積もった雪が凍っていてツルツル滑る状態になっていた。雪国の人に見られたら笑われるあれだ。

 

20:45 札幌市電 すすきの駅

この路面電車はループ形状の路線だ。こういうのは本当に助かる。端まで行って帰ってきてまた別の端に行って、さらに中心まで戻るというスタイルの地下鉄はかなり厳しいものがあるけど、ループ形状は戻る必要がないので精神的に楽だ。

やってきた路面電車に乗り込む。日本全国、路面電車の車両はどこも似ている。特に車内の雰囲気はどこも一緒だ。電車は札幌の街を縫うようにして走っていった。

途中、ロープウェイ入口という停留所があった。どうやら夜景が綺麗な藻岩山に登るロープウェイらしい。この停留所から無料シャトルバスを使って15分ほどで「もいわ山麓駅」というロープウェイ駅に行けるようだ。調べてみたが、やはりロープウェイ駅は駅とついていても駅メモ対象外だ。駅メモは是非ともこのロープウェイ駅も対象駅にして札幌の駅メモユーザーを震え上がらせて欲しい。

ちなみに、本日は強風のためロープウェイは運休、と車内でアナウンスされた。

 

21:43 狸小路駅(運賃200円)

チェックインした駅 すすきの、資生館小学校前、東本願寺前、山鼻9条、中島公園通、行啓通 静修学園前、山鼻19条、幌南小学校前、石山通、東屯田通、中央図書館前、電気事業所前、ロープウェイ入口、西線16条、西線14条、西線11条、西線9条旭山公園通、西線6条 西15丁目、中央区役所前、西8丁目、西4丁目 狸小路(500/559駅)

といったところで、5日目は終了。ついに500駅到達。残り59駅となった!

まとめはこちら。

取得駅数 108駅(総数500駅)
移動距離 721 km(総距離 2,746 km)
運賃 23,210円(総金額79,990円)
制覇路線 宗谷本線、函館本線(小樽~旭川)、地下鉄東豊線、札幌市電

 

>残り59駅!6日目につづく!

 

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