四国の全駅制覇とお遍路を同時にやったら大変なことになった【愛媛・香川編】[PR]

「四国全駅制覇をしつつ、お遍路を同時に達成する」という謎の旅の続きに、新年早々でかけてきたpatoさん。今回の旅でも、旅の記録にアプリ「駅メモ!」を使用。前回の徳島・高知編に続き愛媛・香川編を配信させていただきます。(7ページ)

【3日目】1月4日 6:00

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お遍路の朝は早い。まだ夜が明けてないレベルの早朝だが松山駅へとやってきた。ここJR松山駅は中心地である松山市駅に比べてひっそりとしている。駅前にある謎の「駅前スタジアム」という派手な看板以外は静かなものだ。その派手な看板も早朝ではさすがに消灯していて本当の闇が駅前を覆っていた。

次の札所は「へんろころがし」という地獄のルートを通るが、そこをバスでクリアしてしまおうという作戦だ。ここ松山駅から久万高原行きのバスに乗れば、「へんろころがし」をパスでき、次の札所の近くまで行けるらしい。

sikoku2-1196:30発 JR四国バス 久万高原行き

こんな早朝から高原と呼ばれる山奥まで行くのなんて僕くらいのものだろう、と思っていたら意外にも他に2名の乗客がいた。お遍路ではなさそうだ。バスはどうやらここから1時間くらい走行するらしい。

バスが松山市の街中を走行する間も忘れずに駅メモチェックインをしていると、不可解な駅が取れた。


伊予立花駅

石井(愛媛)駅

森松駅

いずれも現存しない駅である。路線図一覧にもない。この駅メモは、廃線や廃路線の一部も対象駅となっているのでおそらくその類だろうと調べてみると、やはり廃路線だった。これは伊予鉄の支線として立花駅から森松駅まで国道33号線に沿う形で重信川の北側を通る路線だったが、昭和40年に廃線となった。偶然ではあるが、この廃線を取れたことは大きい。
ちなみに「伊予立花駅」は駅メモ上では現存する「いよ立花駅」とは別駅扱いになっている。

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バスはどんどん山奥へと入っていった。これは完全に「へんろころがし」ですわと言いたくなるレベルで山深い場所に入っていき、なんとか次の札所近くの停留所に到着した。

sikoku2-1237:33 久万中学校前停留所

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今日も相棒ファルコン号を取り出し、颯爽と次の札所に向けて走り出す。ちょっと道が分かりにくかったので、本当にこっちで合っているのか誰かに聞きたいなーって思っていたら道路沿いに地元の人がいる感じだったので近づいてみた。

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「すいませ-ん、大寶寺に行きたいんですけどこっちの道で……」

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本当にこういうのは腰が抜けそうになるからやめてほしい。なんの目的があってこんなことするんだ。

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ちょっと引いちゃうくらいの山深い場所まで来てしまった。おまけにすげえ寒い。あちこちの水たまりに氷が張っているので完全に氷点下だ。

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お、いまいち道が分からなくて不安だったけど、どうやら正解だったようだ。ここからさらに脇道に入っていけば次の札所、大寶寺があるらしい。

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奥へと進んでいくと完全無欠の山道で、急に道路幅が狭くなって左右に背の高い樹木が立ち並ぶような登り坂を通ることになった。ただでさえ寒いのに日光が全く入ってこないので恐ろしいほど冷える。おまけにちょっと進むとどんどん道が酷くなってくる。

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これ絶対にシシ神様とか出てくる道だろ、これからシシ神様に会いにいくんだろ、そんなことを呟きながら進み、大寶寺へと到着した。

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【7:59】第四十四番札所 大寶寺(だいほうじ)御本尊 「十一面観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「見奈良」(伊予鉄道横河原線)

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山門の左右には巨大なワラジが飾られている。これを100年に1回作り直すとかなんとか聞いたような気がするのだけどどこで聞いたのか思い出せないので実際のところは定かではない。ただ、本当に100年ごとに作り替えているなら、このワラジは80年くらい経っていそうなくらい年季が入っている。作り替えの時は近い。

ここ大寶寺は1156年に後白河天皇の脳の病気が治るように祈願され、実際に治ってしまったことから今でも病気平癒を願って訪れる参拝者が多いらしい。ただし、その道のりは険しい。ここは山門なのだけど、僕はバスを使ってパスしたけど実際には泣く子も黙る「へんろころがし」であり、それらを経て山門まで到着したとしても、ここからがさらに長く、本堂まで過酷な地獄の道が続いている。

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本堂までくるとけっこう足がプルプルしてくる。ちなみに、今日こそは大吉を出そうとおみくじを探したが、ここにはそういったチャラチャラしたものはない感じだった。それにしてもかなり体力を削られてしまった。

次の札所を目指す。次の岩屋寺までは約13キロとなかなか遠い。おまけにここからさらに山深い場所まで入っていくようだった。山道13キロはなかなかハードだ。

うひい、とか唸りながら自転車で地獄の登り坂を登っていくと、前方にトンネルが見えた。

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何度も言わせてもらうが、トンネルとは峠が終わる合図である。やっと坂道が終わる。歩道が狭いトンネルで、おまけに車が物凄いスピードで追い越していくので恐怖でしかなかった。それでもトンネルを抜けると期待通り下り坂が待っていた。オッス! 最高!

位置エネルギーの申し子となり一気に坂を駆け降りる。テンション上がって大声でゆずの夏色とか歌っていた。くっそ寒いのに夏色。

坂を下りきると、ちょっとした集落みたいな場所に出た。事前のルート調査で次の岩屋寺までは道なりにひたすら真っすぐ、と分かっていたはずなのに、なぜかこの集落の交差点で右に曲がっていってしまった。

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うっひょー、とか叫びながら間違ったルートの下り坂を進んでいく。間違いに気づくまで20分くらい爆走していたように思う。何かおかしいな、でもスマホを出して確認するのは面倒だな、そう考えていた。この考えは絶対に良くない。少しでも違和感を覚えたらスマホを出して現在地を確認すべきである。結果、自分が犯した大きな過ちに気づくことができたのだ。完全に道を間違えた愚かな自分に気が付くのだ。うん、やっとここで20分間違った道を爆走していることに気が付いた。

劇場版バトルロワイヤルの序盤で、最初に学校を飛び出して屋根で待ち伏せし、ボウガンでクラスメイトを殺そうとしたけど、矢を外してしまい、おまけに屋根から転落してしまって焦る出席番号1番の赤松のモノマネで「うわー、なにやってんだ俺!」とか叫びながらUターンする。来た道を引き返すって行為はかなり精神的負担が大きく、おまけに長い下り坂を引き返しているわけだから、死ぬほどの登り坂で本当に死ぬかと思った。

「なんで真っすぐって理解していたのに右折してしまったのだろうか」

来た道を引き返しながらそんな疑問が湧き上がるが、それは問題の交差点に舞い戻った時に理解することができた。僕らが進むべきルートは遍路道を案内する看板によって案にされているのだが、その看板に原因があったのである。なんで真っすぐって分かっているのに右折するんだよ、バカかよ、っと思うかもしれないがこれを見れば僕は悪くないと皆さんに分かっていただけるはずだ。まずこちらをご覧いただきたい。

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まず、これが問題の交差点での風景である。まっすぐ行くとこの道路を進むことになる。正規のルートだ。

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そしてこちらが右折ルート。間違って進んでしまったほうのルートだ。こいつのせいで往復40分くらいの時間をロスしている。体力もロスしている。

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問題の看板がこれ。矢印で「次の岩屋寺はこっちやで」と案内してくれている。とても親切な看板だが、こいつが諸悪の根源である。そう、完全に看板の角度がおかしいのだ。分かりやすく位置関係を図にしてみる。

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ここで問題となるのは、看板の矢印がどちらの方角を指しているのかという点である。ズームにしてみると良く分かるが、この看板は少し傾けて設置されている。角度がついているのだ。

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看板には正面からみて右向きの矢印が描かれている。これで正規のルートを指し示す場合、看板を以下のような角度で設置しなければならない。

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しかしながら、画像を見ていただいてもらって分かるように、実際の看板は斜めに設置されている。この角度が問題となるのだ。計算してみる。まず、先ほどのこの画像

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もう一度この画像に戻るが、ここに赤と白の道路ポールが写っているのがわかるだろうか。このポールは市販品であり、おそらくサンセルフ社のソフトコーン(アスファルト用)であると推察される。その大きさはカタログによると760mmだ。ポールの大きさと比較することにより看板の位置と大きさが画像解析により算出される。だいたい交差点の端より2160mmの地点に、また道路から245mm外れた場所に看板杭の中心が来る。看板の大きさはW=460mm、H=280mmと計算できる。

詳細は省略させていただくが、あらゆる距離を測定し、三角関数より看板の角度を計算すると、横軸道路(routeB)に対して看板の角度は39.8°であった。39.8°の矢印を分かりやすく図に書き入れるとこうなる。

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これはもう右を指し示されていると勘違いしてもおかしくない。問題は観測者をどこに置くか、ということになると思う。正式なルートから来た方向に観測者がいる場合、看板を正面から見ることになる。これでは右折と勘違いしやすい。しかしながら、右側の道路に観測者がいた場合、正規のルートを案内されているように見える。看板、前から見るか横から見るか、という問題だ。

そう、この看板の角度は完全にトラップだ。そういう気持ちで見ると、この看板のこの人物も

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「右折やで」

そう言っているように見える。これはもう完全に遍路トラップと呼んでしまっても過言ではない。昨日の坊ちゃんトラップといい、愛媛はトラップだらけだ。

気を取り直して真っすぐ進み正規のルートを進んでいく。下り坂が終わり、また登り坂になってきた。感覚的におそらくもう何個か峠を越えなければならない感じだ。完全無欠の登り坂になり、ヒーヒー言いながら進んでいると、また例の看板が出現してきた。

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これもうトラップであることを隠そうとすらしてないでしょ。もう右に曲がれって言っているようにしかみえないでしょ。でもこれも画面奥に向かって真っすぐ進むのが正解なんですよ。悪意を隠そうとすらしていない純粋な悪ですよ、これ。愛を知らずに育った類の悪役ですよ。だいたい右折って川の中ですからね。完全に殺しにきているとしか言いようがない。

sikoku2-144魔のトラップに怒りつつ、ひーひー言いながら登っていると前方にトンネルが見えた。何度も言いますけど、トンネルとは峠の終わりです。登り坂の終わりです。最高の気分で坂道を下り、数々のトラップと戦いつつ、ついに岩屋寺に到達したのでした。相変わらず到着してからも本堂までは地獄の登り坂で、完全に息が切れていた。

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【9:39】第四十五番札所 岩屋寺(いわやじ)御本尊 「不動明王」 駅メモチェックインで取れる駅 「見奈良」(伊予鉄道横河原線)

ここはちょっと圧巻の札所だった。標高700mのかなり山深い場所に立つ寺だけれども、ここまでくる価値がある。そう言えるほど圧巻の景色が待っていた。

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超巨大な岩山の中腹辺り、まるでくりぬかれたような場所に岩屋寺は存在する。この巨岩のスケールは完全に規格外で、恐ろしさだとか人類の無力さだとか、そういった畏怖の感情が沸いてくる。

sikoku2-147sikoku2-148ちょっと圧巻の光景だ。看板の角度が39.6°だとか細かいこと言っている自分がとてもちっぽけなくだらない存在に思えてくる。

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きた。本日最初のおみくじだ。ちょっと年季の入った自動おみくじ機があった。これはズガンと大吉を決めるオーラみたいなものを感じたな。そろそろくるわ。

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いくぜ!

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さて、本堂の横に謎の階段みたいな物があり、岩山をくりぬいた場所に上がれるようになっているのを発見した。少し怖いけど頑張って登ってみる。

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ハシゴがギシギシ言っていてすごく怖いんですけど、この先になんかすごいものがあるに違いないと登っていきます。

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特に何もなかった。金がいっぱい落ちているだけだった。

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得に何もなかったな、と降りようとすると、登りはそうでもなかったのに、下りはめちゃくちゃ怖かった。一生降りられなくなるかと思った。高いところに登って降りられなくなってレスキューを登場させる猫の気持ちがちょっと分かった。

さて、なんとかハシゴを降り、次の札所を目指しますかな、と先ほど登ってきた地獄の登り坂を下っていった。

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郵便屋さんが来ていた。岩屋寺まで手紙を配達するのだけど、バイクが入れるのはここまでらしく、地獄の登り坂を郵便屋さんが登っていた。これは大変な仕事ですよ。

さて、次の札所である浄瑠璃寺を目指すわけだが、どうやら松山市方面に山を下っていった場所にあるらしい。距離がそこそこある感じだが、おそらく下り坂なのでそこまで苦しくはない。ただし、どうルートを検討しても1つ前の札所、大寶寺までは同じルートを通らければならないようだった。

これは性格の問題なのだろうけど、僕は基本的に帰り道が嫌いだ。どんなルートであっても一度通った道をもう一度通ることは精神的負担が大きい。ものすごく退屈なのだ。だから、少し遠回りになっても別のルートを使って帰ったりする。そんな事情もあって大寶寺まで全く同じルートを通ることが苦痛で仕方がなかった。

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同じルートを引き返す。これは魔のトラップの場所で本日既に体験している。かなり苦しい。先ほどは天国の下り坂だった同じルートが地獄の登り坂に変貌している。本当に同じルートを通るしか道はないのだろうか、もっと地元の人しか知らないみたいなルートはないのだろうか。誰かに道を尋ねたい、そう切望するが、こんな山道に人がいるわけがない。人っ子一人いやしねえ。

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と思ったら、民家の軒先に人影が。なんか農作業の休憩をしているっぽい。しめた! 本当に他に道がないのか尋ねることができる。なんて幸運なんだ。喜び勇んで近づいた。

「あのーすいません。浄瑠璃寺までの道を……」

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だからこういうのは腰が抜けるから本当にやめて欲しい。むちゃくちゃ迫真の演技で佇んでいやがる。思わず叫び声をあげてしまったわ。

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同じルートを通っていても向いている方向が違うので行きでは気が付かなかった景色に気付いたりする。かなり下の方に集落がある風景。なかなか良い景色だ。

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地獄の登り坂を登っていると前方にトンネルが見えた。やった! TOUGE NO OWARIである。

なんとか、早朝にバスを降りた地点まで戻ってきてそこからさらに山を下っていく。

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しばらく進んでいくと、ここから下りると浄瑠璃寺だよ、という地点に出た。ここからのルートは本当に楽しかった。程よい下り坂に、エキサイティングなワインディングロード、道幅が結構狭いので車の類はほとんど通らない。まるで僕のためだけに作られた下り坂のようだ。かなり気分良く進むことができた。

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こういうルートが延々と続くのですごく面白い。ずっと下りなので一度も漕がずに行くことができた。それでも前の札所から3時間くらいかかってしまったわけで、完全に足プルプルになっていた。

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【12:39】第四十六番札所 浄瑠璃寺(じょうるりじ)御本尊 「薬師如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「森松」(伊予鉄道森松線:廃線)

四国88か所霊場の46番目の札所であるが、松山市内にある8つの札所をめぐる8ヶ寺巡りの最初の札所でもある。つまり、ここから松山市内となり、市内には8つの札所があるということだ。多少無理してでも今日中に8つ一気に行ってしまいたいものだ。

松山市内と言ってもまだかなり郊外なので非常に落ち着いた雰囲気の中に寺がある。境内も落ち着いていて、樹齢1000年以上ともいわれる巨木が圧巻の佇まいで鎮座している。

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静かでほとんど人の気配がない。ただ、寺の周りを近所のおばさんっぽい人が掃除していたのだけど、なぜかBOOWYの「イメージダウン」を口ずさみながら掃除していた。なぜなのだろうか。掃除するのはイメージアップでしょ、と思いつつダウンダウンダウンのところは軽くはもってこっそりと一緒に歌っておいた。

次の札所は近いようだ。というかここから始まる松山市内8か寺巡りの札所はそれぞれの距離がまあまあ近い。これは今日中に全部いけるかもしれない。

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道路脇に小さな城があった。なかなか精巧な作りの城だけど、なんでこんなところにあるのか分からなかった。そろそろ民家とかも増えてきて、松山の町まで帰ってきたんだなと思い始めたころに次の札所に到着した。

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【12:50】第四十七番札所 八坂寺(やさかじ)御本尊 「阿弥陀如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「森松」(伊予鉄道森松線:廃線)

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今までにはない変わった門構えが出迎えてくれた。境内に入ると、これまた変わったものがあって「閻魔堂」と呼ばれる天国と地獄を表現したものがあった。画像の左が地獄で右が天国。短いトンネルをくぐってそれぞれの世界を堪能できる。ちなみに地獄ルートの床はトゲトゲですごく歩きにくい。

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ちなみにこの寺の本尊は阿弥陀如来なのだけど、本堂の地下には全国から奉納された阿弥陀如来像が8000体あるらしい。

sikoku2-169sikoku2-170sikoku2-171さて、次の札所もまあまあ近いようだ。松山市内に入ってからとんとん拍子に進んでいく。

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田園風景の中をひた走る。

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途中渡った川が完全に干上がっていた。大きな川なのにほとんど水がない。四国の瀬戸内海側はあまり雨が降らず、慢性的に水不足と聞く。この旅において雨に降られるとちょっと困ってしまうが、こういう光景を見ると雨が降ってほしいとも思える。複雑な気分だ。

けっこう大きな道路をひた走っていると、怪しげな車が僕に横付けし、スピードを落として並走してきた。何事だろうか、恐喝でもされるのかとビクビクしていたらウイーンと窓が開いて話しかけられた。

「patoさーん! お遍路頑張ってください! 本当に小さい自転車乗ってるんですね!」

どうやら前半の記事を読んでくれた方のようで、自転車で僕だと分かったようだ。運転席の人なのであまり顔は見えなかったが、なんとなく生徒会を裏で操ってる黒幕的存在みたいな感じの人だった。

なぜか後部座席にはおっぱいの大きな女が乗っていて、そちらの窓もウィーンと開いて、身を乗り出すようにして応援された。

「がんばってー!」

ギャルの応援に気をよくしてこちらも手を振り返したら

「ぎゃ! 手振ってきた! きもい!」

とか言われた。なんなんだよこのおっぱい。応援してんならおっぱいのひとつでも出せよ。ほれ出せよ。

「じゃあ先は長いですけど頑張ってください! 応援してますんで!」

黒幕的存在はそう言って走り去っていった。そんなに応援しているならその車に乗せてくれよ。折りたためばこの自転車も乗るし。あとの寺院、全部一緒に巡ろうよ。そんな訳の分からない応援を受けて突き進む。

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【13:25】第四十八番札所 西林寺(さいりんじ)御本尊 「十一面観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「森松」(伊予鉄道森松線:廃線)

もう完全に市街地ともいえる場所にある。境内は人も多く、特に家族連れの姿が目立つ。お寺の横を小川が流れているのだけど、水がむちゃくちゃ綺麗だった。

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【13:47】第四十九番札所 浄土寺(じょうどじ)御本尊 「釈迦如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「鷹ノ子」(伊予鉄道横河原線)

境内入り口に正岡子規の歌碑がある。浄瑠璃寺から、車で巡っている老夫婦と札所で一緒になっていた。僕は自転車移動なので遅いのだけど、老夫婦は一つ一つの札所で丁寧に時間をかけて納経とかしているので、結果として札所到着が同じタイミングになる。

老夫婦が「疲れたわいね」「今日は道後温泉行くぞ」「楽しみだわ」みたいな会話をしていたので、本気で「坊ちゃんトラップに気をつけろ、全裸で廊下に出ることになるぞ」とアドバイスしようかと思った。

さて、次の札所もまあまあ近いらしい。市街地を通り抜けて進んでいく。途中、久々に「こんなところを入っていくのかよ?」というルートが現れた。

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なかなか難易度が高そうなルートだ。かなり細かいルートを潜り抜け、市街地だからと油断していたらなかなかの登り坂を経てついに次の札所に到着した。やっとこさ50番の大台に到達だ。

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【14:10】第五十番札所 繁多寺(はんたじ)御本尊 薬師如来 駅メモチェックインで取れる駅 久米(伊予鉄道横河原線)

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比較的高台にあるので松山城や松山の街を望むことができ眺めが良い。松山8寺巡り5番目の寺となる。残りはあと3つ。時間はまだ午後2時なので今日中にいけそうな気がしてきた。

ちなみに、こうやって山門の画像を撮るときはなるべく人が映りこまないタイミングを狙っているのだけど、団体なのか何なんか、かなり長蛇の列が山門を通過していてそのタイミングがなかなか来なかった。

急いで次の寺院に向かう。

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途中、山の上に巨大な仏像が建っていた。すげえ、山の上に巨像ってなんかリオデジャネイロみたいだ。かっこいい。どうやらこれ、次の石手寺の一部らしく、弘法大使の像らしい。正確には日中友好弘法大師像という名称のようだ。

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拡大してみるとよくわかるが、この弘法大使像は横を向いている。どうやらこの向きにも秘密があるらしく、なんでも体は中国の方角を向き、顔はインドの方角と仏教となじみの深い国々を向いているようだ。像自体の大きさは16メートルだが、山の上に建っているので高さとしては日本一という主張らしい。

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【14:36】第五十一番札所 石手寺(いしてじ)御本尊 「薬師如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「久米」(伊予鉄道横河原線)

今日訪れたここまでの寺院はかなり静かな環境だったのだけど、ここ石手寺はかなり賑やかなことになっていた。寺の前の通りは交通量が多いし、商店も沢山あって賑やか。道後温泉が近いこともあってかなり観光客が多い感じがした。もちろん、お正月だということもあると思う。

sikoku2-181出店とかあって賑やか。かなり人でごったがえしている。

境内には仲見世通りみたいなものもある。どうやらこの寺は境内の建造物のほとんどが国宝や重要文化財に指定されており、それら目当ての観光客も多いようだった。

sikoku2-183浮かれた雰囲気なので当然ながらおみくじがある。この雰囲気の中で大吉が出るような気がした。

sikoku2-184「末吉」

これもう最後まで大吉出ないんじゃないか。そんな気がしてきた。

さあて、次の札所だが、同じ松山市内と言っても海の方までいかなければならず、けっこう距離があるようだ。昨日、道後温泉でみたあの石碑の先にある寺院だ。まともに行くと自転車で2時間くらいかかるかもしれない。市街地であることを考えると信号等でもう少し時間がかかるかもしれない。

なので、とりあえず石手寺近くの道後温泉を経由し、市内中心部まで戻ることにした。

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松山市内の路面電車は、こういったレトロな車両も走っている。「坊ちゃん列車」というらしい。

sikoku2-186途中、猫が沢山いる場面に遭遇した。なんでこんなところで列をなしているんだろうと思ったら、僅かな暖かさを求めて日の当たる場所にいるっぽい。猫もよほど寒いみたいだ。というか松山市内、猫が多い気がする。

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昨日は松山市到着が夜遅くだったのであまり見えなかったが、山の上に松山城が見えた。美しい城である。この城は完全に松山市の地理的中心に鎮座しており、この城山と城を中心に松山の街は発展している。

大手町駅まで移動して列車の到来を待つ。どうやら次の札所は伊予鉄高浜線の終着駅である高浜駅からまあまあ近いらしいので、そこまで一気に列車で移動することにした。

15:32発 伊予鉄高浜線 高浜行き

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15:52 伊予鉄高浜線 高浜駅

一気に海の近くまでやってきた。この駅の向かいにはフェリー乗り場があり、瀬戸内海の離島へと行く便が出ているようだ。離島といってもかなり近い島が多いので、高校生などが通学に使っていたりもするようだ。

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ちなみに正面に見える山のような島が興居島(ごごしま)といってけっこう大きい島らしい。おそらくこの島の裏側にDASH島がある。

ここから海岸線を歩いて次の札所に向かう。この鉄道を使うルートは正規のルートではないのでルート案内は期待できない。自分でしっかり地図を確認しながら進んでいく。

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かなり日が傾いてきた。夕暮れの海岸と海に浮かぶ島々、なんだかとても絵になる気がする。

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というか、なんか雲がすごいね。

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進んでいくと、商店の軒先に怪しげな小屋が設置されていた。僕の経験上、この手の小屋は大型犬を入れていることが多い。しかもかなり獰猛なタイプで、見かけた人間全てに吠えるケルベロスのような犬であることが多い。嫌だな、怖いな、吠えられたら嫌だな、と抜き足差し足で近づき、そういえば犬って見知らぬ余所者に対して吠えるって聞いたことがある。良く知っている人間にまで吠えて居たら犬だって疲れちゃうからね。それならば、さも地元の人間のような顔をして通過すれば吠えられないんじゃないか、そう考えて、さりげなく「この間の町内会がさ~、そうそう、ほら角の山田さんのとこの、あそこの倅がね」とか意味不明なことを呟きながら地元感を演出し、小屋へと近づいた。

僕の演技力の勝利なのか、真横くらいに近づいたのに吠えない。まあ、いくら賢いっていっても犬なんてこんなもんですよ。人間様の知恵に勝てるわけがない。どーれ、僕のこと地元の人と勘違いして警戒心を解いている間抜け面でも拝ませてもらいましょうかね。完全なるドヤ顔で小屋を覗き込んだ。

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なんで小屋に発泡スチロールが入ってんだよ。なんで青森りんごセンターなんだよ。どうなってるんだ。犬が入っていると思って神妙に演技していた僕がピエロみたいじゃないか。

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松山観光港の横を通り抜ける。実は、先ほど乗ってきた伊予鉄高浜線は、終着駅の高浜駅からここ松山観光港まで延伸する計画があるらしい。ただ、その計画が全然進まず、現在は高浜から観光港までシャトルバスで対応している状況のようだ。一応、高浜線の路線案内には観光港が高浜線0番目の駅として掲載されていたりもする。既に駅扱いだったりするみたいだ。ただ駅メモの対象駅ではなかった。

これまでの旅で培った知見として、海の近くの寺は高い場所にあることが多い。今いる場所は完全無欠に海の近くなので、おそらく次の寺院はある程度の山の上にある。ここから正規の遍路ルートではなく寺院の裏口に通じるような裏ルートで山登りをしていくつもりなのだけど、その裏ルートの入り口が分からない。地図によると交差点の近くにあるはずなのに、一向に見つからない。

間違えているのかと心配になって何度か行ったり来たりするのだけど、それでも見つからない。こりゃ裏ルートは諦めて正規のルートから行くべきか、でもそれだとかなりの遠回りになってしまう。どうしたものかと思案していると、実はさっきから目の前にその入り口が存在していたことに気が付いた。こんなとこにろにあったのか。

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これ。

こんなもの分かるはずないだろ。というかどれだけ人が通ってないんだ。完全に植物が覆い茂っている。これバイオハザードでなんかギミックを動かして女神像の向きを変えて、女神像が持つ蝋燭の炎を植物にあてて焼き払わないと通れないやつでしょ。

それでも進まないとしょうがないので草木をかき分けて進むのだけど、かなり強固な蔓が密集していて全然進めない。おまけにこのルート、長い。なんとか進み切って上から見てみるとこんなルート。

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自分でもどうやって突破したのかよくわからない。とにかく、全身が謎の植物の種子や花粉でえらいことになった。

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こんな明らかに数年は誰も通っていない裏ルートを通って大丈夫なのだろうか、そんな不安が沸き上がってくるが、ちょっと進むと普通のルートになったので安心した。ただ、その安堵もつかの間のことで、さらに進むとすぐに衝撃的なルートが登場してきた。

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これトトロに会いに行く時の道だろ。普通の山登りでもきついのに、さらに植物をかき分けて進まなければならず死ぬかと思った。たいして長い距離ではなかったけど20分くらいは登っていたと思う。時代が時代だったら山賊が出てきて身包み剥されそうな山道を経て、なんとか次の札所に到達できた。

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【16:32】第五十二番札所 太山寺(たいさんじ)御本尊「十一面観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「高浜」(伊予鉄道高浜線)

おそらく何年も使われていないであろう裏ルートを登っていったら、寺の裏側に出てしまった。表に出るにはどうしたらいいか分からず、道に迷ってしまって訳の分からない植え込みみたいな場所からヌッと出ると、タイミング悪いことにそこに観光バスで来ていたお婆さんの集団と出くわしてしまった。客観的に見た場合の登場の仕方が完全に山賊のそれだ。

お婆さん視点で見ると、予想だにしない場所から汚らしいオッサンが出てくるのである。一部のお婆さんは驚きのあまり「アヒイ」とか声あげているし、一部のお婆さんは僕のことを仏の遣いか何かと勘違いしたのか、必死に拝んでいた。

さて、この寺には聖徳大師堂というものがある。法隆寺の夢殿とおなじ聖徳太子像が祀られているらしい。四国の霊所はちょくちょく聖徳太子が出てきて何かをしていたりする。

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きた。たぶんそろそろ出る。

sikoku2-202ガチで出なくてそろそろ本格的に凹んできた。僕としてはちょっとやれば大吉が出て、いやーやっと出ましたわゲハハハとやるつもりだったんですが、まさかここまで出ないとは。まあ、次だよ。次こそはきっと出るよ。

さて、次の札所もここからさほど遠くなく、おまけに駅の近くにあるらしい。つまり、札所を取った後に列車に乗って松山市に舞い戻ることができる。結構近そうで、自転車を出すのが面倒だったのでそのまま自転車を担いで徒歩で移動した。

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本格的に日が暮れていく。とにかく、次の札所で53番目の札所となり、残り35となる。いよいよ終わりが見えてきた。おまけに次で松山8カ寺巡りも終了となる。松山の札所を全部取りきれば次は今治なので鉄道で一気に移動することができる。なんとなく希望の光のようなものが見えてきた。

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【17:12】第五十三番札所 円明寺(えんみょうじ)御本尊 「阿弥陀如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「伊予和気」(JR予讃線)

画像を見ていただいても分かるように、17時を超えてしまったので強固に門が閉じられていた。別に門の横から入れそうな雰囲気ではあったが、立ち入り禁止みたいな看板があったので入るのを止めておいた。ここは入念な下調べによると見所の多い寺院だっただけに残念だ。

この寺は、キリシタン禁制の時代、隠れ信者の礼拝を黙認していたという歴史がある。そのため、寺でありながらキリシタン石塔と呼ばれる塔があったり、聖母マリアが彫られた灯籠があったりする。

また本堂の鴨居にある「左甚五郎作の龍」と呼ばれる彫り物は、行いが悪い人が見ると目が光るという言い伝えがある。僕なんかが見たらたぶん目が潰れるくらい、超新星爆発くらい光り輝き、目が、目が、となるはずである。是非とも試してみたかったが、まあ入れないものは仕方がない。

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円明寺から伊予和気駅はかなり近い。普通に歩いているとすぐに駅に到着した。小さいけどなかなかオシャレな造りの駅だ。ここから鉄道に乗って松山市へと戻る。もう、松山市の札所は全て取ったので、明日は今治市の札所を攻める。つまり、もう松山には戻ってこないで、取り残した駅を全て取っておかねばならない。

sikoku2-20619:16 伊予鉄 松山市駅

ネオン輝く松山市駅に戻ってきた。言うまでもなく、ここは伊予鉄の中心となる駅である。ここから取り逃している伊予鉄2路線の駅を取りに行く。単調な作業だが、終点近くの駅まで行き、そこからフレンドリーファイヤーで終点の駅まで取る。そして反対方向の列車で戻ってきて、もう一つの路線に乗って同じことを繰り返す。

特筆すべきことは何もなく、淡々と乗車。伊予鉄の駅を全て取ったところで3日目の旅程を終了とした。3日目のまとめはこちら

rosen12
matome2

総評:1日で松山8カ寺巡りをクリアできた。これはかなり大きい。さらにバスを利用して地獄の「へんろころがし」をパスできた点も良かったと思う。こういった取材においてはじめて読者の方に声をかけられたが、こちらからに要求するわけにはいかないので今後はそのまま車に乗らないっスか、とかおっぱい揉みます?みたいな申し出をして欲しい。いよいよ愛媛編もクライマックス。明日で愛媛県内の札所巡りと駅取得を達成したい。あと、大吉を出したい。

 

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