四国の全駅制覇とお遍路を同時にやったら大変なことになった【愛媛・香川編】[PR]
「四国全駅制覇をしつつ、お遍路を同時に達成する」という謎の旅の続きに、新年早々でかけてきたpatoさん。今回の旅でも、旅の記録にアプリ「駅メモ!」を使用。前回の徳島・高知編に続き愛媛・香川編を配信させていただきます。(7ページ)
【5日目】1月6日 7:20
雨が降らなくて本当に良かった。昨日は到着が夜遅くになったので気が付かなかったがどうやらここ伊予三島駅周辺を含む四国中央市は2010年公開の映画「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」(成海璃子主演)の舞台となった街のようだ。
この商店街も映画に登場してくる。
さて、この伊予三島駅前から次の札所の付近までバスが出ているそうなので、その始発に乗って移動する。始発が結構遅い時間なのでゆっくり休むことができた。このバスは1日に4本しかないのでかなり注意が必要だ。
7:43発 せとうちバス 新宮行き
バスは街中を抜けて山へ山へと向かっていく。このバスも次の札所である三角寺の近くに停まるわけではなく、どうやら三角寺入口という場所に停まるらしい。そこからは結構距離があるみたいなので、おそらくバスを降りてから山登りなんだと思う。ここまで旅が続くと周囲の状況からだいたいどの程度の山登りなのか察することが可能になってくる。
30分ほどバスに揺られ、途中、こんな細い道をバスが入っていくのかよと驚愕するしかないルートを経て、三角寺入口バス停に到着した。
8:15 三角寺入口バス停
ここから2.4キロほど山登りをするらしい。まあ、この程度なら昨日の「へんろころがし」を思えば短いし舗装道路だし、そこまで傾斜もきつくないし、たぶん簡単だろう、そう思った。
川のせせらぎに耳を傾けながら坂道を登っていく。朝の澄んだ空気が気持ちいい。
今日もファルコン号は頑張ってくれている。僕も頑張らなくてはならない。
道路の伸び方から推測するに、おそらく正面の山を登っていく感じになると思う。舐めていたけど朝っぱらからこれはまあまあきつい。
街を見下ろすような高さまで登ってきた。完全に体全体が悲鳴をあげている。ここまでの疲労が襲いかかってきて全身を締めあげているような感じがする。とにかくきつい。もう坂道は登りたくない。
三角寺まで残り1.0 kmの表示。こういう案内を設置する人はどういう気持ちで設置しているのだろうか。よしよし、ここであと1キロって言ったらやる気出しちゃうだろうな、あともう少し、がんばろう!とか発奮しちゃうんだろうな、そう考えて設置しているとしたら大きな間違いだ。
あと1キロもありやがんのか、ふざけんな。あと0.1キロになってから言え。正解はこれである。ここまで疲労がたまるとあらゆるものに対して苛立ちが隠せなくなってくる。
前方に建物らしきものが見える。ちょっとお、あれ寺じゃない。もしかしてもうついちゃった? 残り1kmの看板から500mくらいしか来てないけどもうついちゃった? 1kmと見せかけて500mなんてそういうウィットに富んだことしたわけ。喜び勇んで駆け寄ると、
見えていたのはただの民家で、その先にはやはり容赦ないワインディングロードが続いていた。何回か、ちょっとおあれ寺じゃない、民家でしたーというフェイントを喰らいつつ、なんとか愛媛県最後の札所、三角寺に到着した。
到着してからも大変で、容赦ない階段が何段も続いていた。完全に殺しに来ている。三角寺とは変わった名前だと思うかもしれない。なんでも大師堂の脇にある三角形の池が由来で、弘法大師がここに三角形の壇を築いて護摩の秘法を習得したことからきているらしい。この護摩壇のあとが三角池の中の島として残っている。
ちなみに愛媛県最後のこのお寺は「関所寺」と呼ばれ、行いが悪い人はこれより先に進めないとされていたらしい。僕は存分に行いが悪いのでここより先に進めない、終了! といきたかったが、多分そういうわけにはいかない。なんとも世知辛いものだ。
このお寺の階段はものすごく急勾配で、足が悪いお婆ちゃんとかにはかなり酷な階段で、僕がやってきたときもお婆さんがヒーヒー言いながら登っていた。
僕も体がバキバキなのでヒーヒー言いながら登っていると、上から降りてきたおじさんに話しかけられた。
「もしかして歩いてお遍路してるの?」
息が切れすぎていて返答するのも億劫なんだけど、笑顔でこたえる。
「いえいえ、自転車と公共の交通機関で回ってます」
おじさんは大変驚いた様子で
「それでもすごい! 化け物だ! モンスター!」
とちょっと大げさすぎるだろというくらい驚いていた。僕よりすごくて、歩いて回っている人って結構いるんで、モンスターは完全に言い過ぎ。
「御利益がある! 握手してください!」
と熱烈に握手を求められた。なんだか悪い気はしない。
恒例行事がやってきた。ここ三角寺のおみくじは50円と激安だ。他の寺院が100円や200円であることを考えるとディスカウントが過ぎる。価格破壊が起きている。ただし、50円玉しか使えないようだ。よくよく考えると50円玉が財布に入っている確率ってそんなに高くないのだから、やや難易度が高い料金設定ともいえる。
もしかしたらお遍路の寺院が提供するおみくじには「大吉」が入ってないんじゃないか。だから出ないんじゃないか。そうだ、きっとそうだ。そういう伝統なんだろう。そう納得しかけたら、後から来たおばちゃんが50円玉ない、とわざわざ両替までして引いてあっさりと「大吉」を出していた。いやはや、これはとんでもないことですよ。
自転車に乗り込み、次の寺院を目指す。ここ三角寺で愛媛県の札所は終わり、次からはいよいよラストの県、香川県の寺院となるが、次の札所である雲辺寺は山深い場所にありすぎて住所的には徳島県に存在することになっている。香川を突き抜けて徳島まで行っちゃうのだからとんでもない山奥であることは想像に難くない。
雲辺寺はお遍路の寺院の中で最高の標高を誇る場所に建っている。もちろんそこまでの道のりは「へんろころがし」であるが、横峰寺で自分に向き合い、「へんろころがし」を克服した僕にとってもうそれは畏怖の対象ではない。それどころか、雲辺寺までの道のりはロープウェイがあるので、全然怖くない。
とりあえずロープウェイ乗り場を目指すべく、まず街まで降りて行って駅を探し、そこから列車に乗って移動することにした。
あれだけ苦労して登ってきたのに下るとあっという間である。物凄い速さでバス停も通り抜け街まで降りてきた。目の前には「紙のまち」と書かれたアーケード商店街が現れた。ここ四国中央市は紙の街として有名だ。街中には製紙工場が数多くある。そんな事情もあって書道ガールの舞台にも選ばれたのだろう。
せっかくなので中を通ってみるが、朝早いからなのか、それとも元々そうなのか分からないが、ビッシリとシャッターが閉まってひっそりとしていた。こんなにひっそりとしているのにアーケード内には比較的愉快な音楽が流れていて、そのアンバランスさがなんか不安にさせてくれた。
9:44 JR川之江駅
川之江駅にやってきた。香川県と愛媛県の境になる駅だ。自転車をカバンに収納し、香川方面の列車に乗り込む。さらば愛媛県。本当に本当に長かった。死ぬほど長かった。
列車内で県境を超え、ついに最後の県、香川県入りとなった。いよいよ終わりが見えてきた。残された寺院の数は23個だ。駅メモによると香川県の対象駅は100個ちょうどらしい。路線図にすると以下のようになる。どうせ私鉄の琴電も対象駅だろうから最初から記入しておいた。
これで100ピッタリなので廃路線や廃駅の類は存在しない。正真正銘ここに書かれている駅を取れば香川の全駅制覇となり、同時に四国の全駅制覇を達成する。なんだかドキドキしてきた。
そして、香川県入りしたので僕の所持する「でんこ」の中で香川っぽい「でんこ」に担当を変える。あまり香川らしい「でんこ」を所持していないのだけど、熟考した上でこの「でんこ」にすることに決めた。
つむぎ。ミステリアスでマイペースなでんこ。人生相談から恋のお話までなんでもござれのみんなの相談役。
なかなか頼りになりそうなプロフィールだ。この「でんこ」になぜ香川感を感じたかというと、やはり香川といえば「うどん」しか能がない感じなので、もちっとしたうどん感満載の衣裳である「つむぎ」を香川担当に任命した。ただそれだけだ。
さて、列車に乗っている時間はそう長くはない。2駅ほど移動して豊浜駅に到着した。おそらくここが雲辺寺ロープウェイの最寄り駅だ。
ここからロープウェイ駅までかなり山道を登ることになるのだろうかと不安になったが、実際にはそこまででもなかった。途中、萩原寺というかなり立派なお寺を横目に見つつ、山間へと入ってく。走ってみて思ったが香川県はかなり池が多い。そこかしこにある。おそらく慢性的な水不足に対する備えなのだろうと思った。
もちろんではあるが、「山麓駅」とついているがロープウェイの駅は駅メモの対象駅ではなかった。駅メモさんは是非ともこのロープウェイの駅も対象駅にして香川の駅メモユーザーを震え上がらせて欲しい。
さて、このロープウェイで登っていけば雲辺寺に行けるわけだが、乗り場の様子がなにやらおかしい。徳島県で太龍寺を訪れた際もロープウェイを使ったが、その時はぶっちゃけると修行僧みたいな人とお遍路さんと観光目的の老人しかいなかった。服飾が地味になりがちでブラウンやグレーの色彩が乗り場を埋め尽くしていた。
しかしながらここ雲辺寺ロープウェイはどうだ。ショッピングピンクやら赤やら、ものすごく色とりどりの色彩を身に纏った人々が乗り場にいる。家族連れとか若いカップルが沢山いる。というか、この人たちスキーウェア着ている。スノボウェアみたいなの着ている。おまけに子供はソリとか持っている。スキーウェア着てソリ持ってお遍路かな、と不思議で仕方がなかった。
画像中の赤で囲んだポイントが浮かれポイントである。完全にスキーウェア的なの着ているし、なんかウサギとシロクマの人形みたいなものまである。完全に浮かれている。反面、青で囲った部分は、浮かれていないポイントである。お遍路さんのカバンを持っているので、この人は浮かれずに雲辺寺に巡礼している。このように浮かれと非浮かれが共存している混沌とした何かが乗り場に蔓延していた。
ロープウェイの料金は往復で大人2,060円。だいたい毎時間00,20,40分に運行している。
やはりロープウェイ内は混沌としている。超満員でぎゅうぎゅう詰めなのだけど、半分は浮かれていて、半分は浮かれていない。不思議なカオスは物凄いスピードでつき進み、いとも簡単に山々を超えていった。っというか、ここのロープウェイはちょっと怖いくらいにスピードが速い。普通に進んでいる分には感じないが、支柱の部分を通過すると、その速度が実感できて、あまりのスピードに驚いてしまう。かなりの距離を進んで山を何個も超えてくのでスピードが速いのだと思う。
いよいよ山頂に到着するぞ、というところで浮かれの正体と思われる物体が車窓から見えた。
これ完全にスキーのリフトでしょ。これ完全にスキー場でしょ。なるほどねー、なんでスキーウェア着た人がいるんだって不思議だったんだけど、答えは簡単だった。スキー場があるからだった。
調べてみると、どうやらこのロープウェイの山頂駅の先には、札所である雲辺寺と同時にスノーパーク雲辺寺というスキー場があるらしい。やはり、88カ所霊場最高の標高だから、冬になると結構雪が降るみたいだ。昨日行った3番目の高さの横峰寺でもあれだけ積もっていたのだから、きっと普通にスキーできるくらいに積もるんだろう。
山頂駅に到着すると、左に行けば雲辺寺、右に行けばスノーパーク、という浮かれと非浮かれが完全に分かれる分岐点が登場してくる。浮かれの方は家族やアベックでワイノワイの「僕、雪だるまつくっちゃうもん!」と坊ちゃんも得意顔だ。「ははははは、お父さんも手伝うぞー」「もう、パパったら!」という温かい家庭みたいな会話が見られる。反面、非浮かれの方は黙って黙々と雲辺寺へと向かっていく。修業とはこうも辛いものなのだ。僕も静かにそちらに向かった。
浮かれるポイントは一切ない。予想した通り、なかなか雪深い。境内はかなり広く、あちこちに石像があった。ただ、スキーができるほどの積雪ではないので、おそらく浮かれスノーパークのほうは人工雪も併用しているんじゃないだろうか。
とんでもない駅が取れてしまった。住所的には徳島県にあたるので駅メモチェックインでどこが取れるのか楽しみにしていたが、まさか「三縄」が取れるとは思わなかった。前編の徳島編で登場してきた駅で、分かりやすく路線図を持ってくるとこうなっている。
徳島の駅が取れたとしても香川県寄りの坪尻とかそのあたりかと予想していたが、まさか三縄が取れるとは思わなかった。どれだけ深い山奥に来たのだろうか、どんな位置関係なのだろうか、と少し不思議な気分になった。しかしまあ、これはチャンスなので、ここからレーダーを使えば徳島と香川の県境の駅が取りやすいと考え、しっかりと県境の駅「讃岐財田」をとっておいた。
ここ雲辺寺の本尊である千手観音菩薩の坐像は、秘仏として扱われ開帳のサイクルも特に決められていない。つまり一般人が拝観するにはかなり難易度が高い像と言えるのだ。そんな雲辺寺の千手観音像が2018年1月から3月まで東京国立博物館にて開催されている特別展「仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-」にて公開されている。またとない機会なので時間がある人は是非とも観て欲しい。なかなか見られるものじゃない。
お寺とは雪が似合う。像や堂に雪が降り積もる風景は、厳かな気分にさせてくれる。なんだか妙に心が落ち着いてくるのだ。
一般の世界とは隔絶された静の世界がある。自然と自分に向き合うことができる、そんな気分だ。と、厳かな気分になっているところ申し訳ないが、時間がないので下りのロープウェイに向かわなければならない。
ロープウェイ乗り場の近くには毘沙門天の像がある。なかなか立派な像なので是非ともおさえておきたいところだ。また像の周辺は展望台になっていて、かなり風景が良いらしい。あいにくこの時は雲がかかっていて良い景色をみることはできなかった。
下りのロープウェイ乗り場に到着すると、係りの人が「おつかれさまでしたー」とお茶と和菓子を出してくれた。試食という名目で全ての客に出しているようだ。温かさが体の奥まで染みわたる。
行きのロープウェイもそうだったが、ロープウェイ内にはゴンドラを操作しているお姉さんがいる。そのお姉さんがマイクを使ってちょっとした観光案内をしてくれる。帰りの便のお姉さんもしっかりと香川県の情報をアナウンスしてくれた。
その情報によると、香川県は深刻な水不足に対する備えとして、県内に14,000のため池を有しているらしい。多いとは思ったがそこまでだとは思わなかった。画像でもかなりの数の池を見ることができると思う。この数は兵庫県、広島県に次いで全国3位である。ただし、香川県は最も面積の小さい都道府県である。そのため、面積あたりのため池密度としてはぶっちぎりの1位であるようだ。うどんだけじゃなかった、香川県。
さて、そんな素敵な情報をアナウンスしてくれたお姉さんであったが、なぜか「グエッ!」と喉から変な音がしたのをマイクが拾ってしまっていた。しかも、お姉さん、自分でその怪音に笑ってしまったらしく、アナウンスしないといけないのに笑いが止まらない、という状況になっていた。
麓駅に到着し、そろそろお昼時だし、香川だし、うどんでも食べますかなと考えていたら、ロープウェイ乗り場の横にうどん屋があったのでそこに入ることにした。店内に入って驚いた、なぜか結構な爆音でエミネムがかかっていた。うどん屋とエミネムが上手に繫がらなくてちょっと混乱してしまった。
美味い。これならたぶんエミネムも納得するはず。
お腹も満たされたし、次の札所に向かって走り出す。若干の下りなのですいすい進んでいくのだけど、なんだか足に違和感のようなものを感じた。それは疲労とは違う感じで、なんだか脳からの命令が上手に足に伝わっていないような感覚だった。まあ、すぐにどうこうというわけではないけど、足が動かなくなってリタイアは嫌だな、と思いつつ騙し騙し先へ進んでいった。
周囲はかなりフラットな田園風景みたいな場所で、そこにポツンと寺があるが、なぜか寺だけは山にある。いきなり鬼のような階段を登らされることになる。香川は地形的にこういう山が多い。徐々に山になるのでなく、突然ポコッと山が登場してくる。高い場所から見ると平地の上にお椀を逆さにしてかぶせたような山がポコポコ存在する。このお寺もそんな山の一角にあるようだ。
普段なら特になんてことはない階段で、ぶーぶー文句言いつつも登るのだけど、足に謎の違和感を抱えている現状では、かなり慎重に登らなくてはならない。片足だけでなく、両足に違和感がある。これは下手したら深刻なことになるのかもしれない。
さて、久々のアレである。
そろそろアレが出るべきである。確率論から言って出ないといけない。アレはかなり近いところまで迫ってきているはずだ。こい!
ズンズーン、こい! こいこい! おりゃああ!
「真」
なんでやねん。もっとこう「吉」とか「凶」とかじゃないのか。なんで「真」なのか。と思ったのだけど、どうやらこれは判定じゃないらしく、格言みたいなものだった。その続きに判定があった。
これもう絶対に出ないでしょ。アレ、絶対に出ないでしょ。こんなのおかしいよ。
でもね、ここでやっとこさ気付いたんですけど、じゃあここで例のアレが出たとして、やったー出たーめでたしめでたし、これって本当に幸福なんですかね。ずっとアレが出ないのって僕の運がないからって思いがちですけど、じつはそれって反対なんじゃないでしょうか。そう、僕は運があるからアレがでない。
ここで出たってまあ、記事としては中途半端っすよ。もっとこう終盤に出ると盛り上がるわけでしょ、記事としては。だから僕の持つ強運がちゃんと終盤に出るようにしているんじゃないか、天がそうしているんじゃないか。そう思うんです。それこそ僕は斎藤佑樹くらい「持ってる」男ですから、下手したら最後の88番目の寺まで出なくて、最後の最後に出る、これだと思うんです。申し訳ないけどそういう星の下に生まれてきてしまっているんでしょう。
だから、ここから最後までは絶対にアレを出してはいけない。そして最後に決める。これですよ。最後に出たアレをみて、会社の給湯室でこっそり記事を読んでいるOLなんかがですね、「素敵」ってなるんですよ。これですよ、これ。
さあ、アホなこと言ってないで先を急ぎましょう。なんだか空模様が怪しいし、両足も怪しい。
あくまでも個人的感覚だけども徳島→高知→愛媛→香川と遍路して進むごとに遍路道の案内標識が少なくなっているような気がする。徳島では過剰と言っても良いくらい案内があり、交差点では3系統の案内標識が同時に存在しているとかあった。けれども香川に入ってからかなり少ないような気がする。そういった事情もあって道を間違えたのか何なのかよく分からないが、70番札所の近くまできてしまった。この交差点からほど近い場所に70番札所がある。まだ68番と69番を終えていないので行くわけにはいかない。
川沿いを進んでいく。やはり足がおかしい。そのうち動かなくなりそうな気がする。それよりもさっきから68番神恵院と69番観音寺の案内標識がずっとセットになっていることが気になる。必ず「神恵院・観音寺 あと2km」とか書かれている。この二つの札所はそんなに近いのだろうか。
驚いたことに、同じ境内に2つの札所が同居していた。よくよくみると山門にも2つの寺名が書かれている。つまり、ここに来れば一気に2寺消化できるということだ。完全に2寺抜きだ。境内には本堂が2つ、大師堂も2つある。
では、なぜこんなことになったかというと、お寺のこういった不可思議な現象の多くは明治初年の神仏分離令が原因で生まれていることが多い。簡単に言うと神と仏をごっちゃにした神仏習合はやめて、神は神、仏は仏、神社は神社、寺は寺、と区別しなさいという命令だ。
この寺院がある琴弾山の山頂に琴弾八幡宮があり、神仏習合でその中に神恵院があり、遍路の札所として機能していた。しかしながら分離令によって八幡宮と神恵院は分離され、ふもとにあった観音寺の中に神恵院が移された。こうして1つの境内に2つの札所、という状況ができあがったようだ。
境内には堂が軒を連ねている。
境内にはカフェと売店を兼ねたハイカラなお店も存在する。食事もとれるらしい。お、なんかクソ寒いのに半袖半ズボンな人がいるぞ。けっこう危ない人なのかな、と思って近づく。
思いっきりマネキンなので腰が抜けそうになる。本当にこういうのは驚くのでやめてほしい。
さて、一気に2寺抜きを決めて、次は先ほど近くを通った70番札所を目指さなければならない。ただ、同じ道を戻っていくことは精神的負担が大きいので別のルートから行くことにする。そこで道を間違えたらしく、観音寺駅周辺の方に向かってしまった。少々遠回りになるルートだ。ここらで本格的に足がおかしくなった。いうことをきかない。動かせという命令が脳から足に届いているはずなのに、動かない。そんな状態で自転車を漕いでいるものだからなかなか遅い。どれくらい遅いかというと。
婆さんの自転車に抜かれる。
かなりやばい状況なのだけど、慢性的というわけでなく、散発的に起こる現象なのでまだまだ先には進めそう。先のことは完全に動かなくなってから考えよう。
観音寺市はこのアニメとコラボしているみたいだ。このようにそこかしこの看板にこのアニメのキャラが描かれている。思いっきりアニメキャラが描かれたタクシーも走っていた。
ここ本山寺には、88カ所霊場の中で4つしかないといわれる五重の塔、そのうちの1つがある。結構楽しみにしていたのだけど、残念ながら改修中だった。
こんな状態。
また、本尊に馬頭観音を祀っているのは88カ所霊場の中でここだけだ。そのためか本堂の近くには馬の像がある。
けっこう街中にあるためか境内には多くの人が見られる。おじいさん4人が仁王門の近くでわいのわいのと井戸端会議をしていて、血圧がいくらだとか塩分濃度がとか、CTが、みたいな話をしていたのだけど、その中の一人の爺さんが突如として「ガチャでSSRがでた」とか言い出して、何のゲームだか知らないけどたぶんスマホゲームですよね。随分お若いなあ、と思った。
ここから次の札所は少々距離がある感じなので、最寄りの本山駅に向かう。これまでも札所である寺の名前と最寄り駅の名前が一致しているというパターンは数多くあったのだけど、だいたいそういう時は本当に駅と寺が近い距離にあった。これは地味に助かるのだ。今の足の状況ではあまり長い距離を移動したくないのだ。
14:43発 普通 岡山行き
あとの展開を考えると、ここから寺院を取りつつ東に移動していくので詫間より北にある駅は取れない可能性が高い。よってレーダーで海岸寺まで取っておいた。ちなみに詫間より一つ先の駅である、津島ノ宮駅は大変変わった面白い駅だ。
この駅は1年のうち2日間しか稼働しない。8月4日、5日の津島神社の大祭の日しか営業せず、そのほかの日は全ての列車が通過してしまう。休止中の駅をのぞくと日本一営業日数の少ない駅といえる。この駅に降り立つ難易度はかなり高い。通過の際か、こうやってレーダーで取る手法しかない。
列車に乗って少し休憩ができたからか、足の調子が良い。これなら次の札所にいけそうだ。地図を見るとやや等高線の間隔が狭い。ちょっと登りだと思うが、たぶんそこまでではないだろう、そう舐めていたら大変な目にあった。
駅から寺の入り口まで、そうたいしたことはなかった。多少の登りではあったけど、ここまできたら別にそれくらいではヒーヒー言わない。なんだよ、楽勝だったじゃん、と山門をくぐってからが本番だった。
とてつもなく長い階段が行く手を阻む。ここまでずっとお遍路をしてきて感じたけど、自転車をこぐ、歩く、山を登る、階段を登る、これらすべて使う足の筋肉が違う。これらそれぞれの行動が極限に達すると、自転車は無理だけど歩ける、みたいな状況になる。そして、階段上りが最初に限界が来る。限界までの値が低い。つまり最も負担がかかる動作なのだ。
「だめだー、しぬー」
とか言いながらこのクソ長い階段を登りきると
新たな刺客が待ち構えている。殺す気か。
「もうだめだー、階段に殺されるー」
と心の声ではなく実際に声に出して言いながらもなんとか登りきると、
さも当たり前であるかのように次の階段が。なんかヤンキーっぽい人が、飼っているダックスフントみたいな犬を散歩させて階段を登らせていたのだけど、ここで犬の心が折れていた。キャンキャン言って登るのを拒否し、ヤンキーに抱きかかえられて登っていった。
ひどすぎて逆に笑えてくるくらい階段攻勢。どこまで続いているんだ。天すらも超えようというのか。
どうも本堂まで600段くらいの階段があったみたいだ。なんとか辿り着くことはできたけど、ここで完全に足が死んだ。ちなみに下の入り口から何百円か払うと車に乗せてくれて裏ルートで中腹くらいまでワープできるサービスをやっている。金払ってでもそっちにするべきだった。
さて、ここから東に抜けて善通寺市の方に行くことになる。じつはそこではボーナスステージが待っている。なんでも次の72番曼陀羅寺から76番金倉寺までは比較的狭い地域に密集して札所があるらしい。つまり、あまり苦労することなく一気に札所を取れる可能性がある。これ完全にボーナスステージでしょ。
ただ、やはり72番曼陀羅寺までは隣の市にいくわけなので、おそらく峠みたいな場所を通過しなければならない。ボーナスステージに行くまでに少し苦労する可能性がある。現在の足の状況で峠越えができるかどうかが問題だ。まあ、悩んでいても仕方がないので行ってみることにする。
峠越えにビビっていたが、行ってみると比較的立派な道路がかかっていた。これなら峠越えもあまり苦しくない。何事も案ずるより産むが易しなのだ。もちろん、登り坂はきついけどこんな良い道路だったら苦しくはない。
どんどん日が落ちてくる。急がなければならない。暗くなってから寺院を巡ることはあまり得策ではない。
88カ所霊場の中で元も古い歴史を持つと言われ、創建は推古4年(596年)のようだ。当時は世坂寺という名称であったが、その後、弘法大師が唐から持ち帰った曼陀羅を安置したことから曼陀羅寺という名称に改められた。
境内にこんなものがあった。ボタンを押すとさやかな声で案内してくれるらしい。自分でさわやかって言いきるのもすごいし、そもそもその表現が必要なのか甚だ疑問だけど、ちょっとドキドキしながらボタンを押してみる。
ポチッ!
シーン
ふっざけんな! 何も言わねえじゃねえか。何回押してもうんともすんとも言わない。もう何が何やら。
境内ではみかんを200円という激安価格で販売していた。価格破壊が起きている。あまりに安いので思わず購入してしまった。苦しい坂道などで食べて活力にすることとしよう。
密集地帯だけあって、先ほどの曼陀羅寺からかなり近い場所にある。そのかわり結構厳しい勾配の坂を登ってきた。
出釈迦という名称は、弘法大師の幼き頃の伝説からきている。7歳だった弘法大師は、将来仏門に入って人々を救いたい、釈迦如来よ姿を現してくれ、もし叶わないなら命を捨ててこの身を諸仏に捧げる、と宣言し、断崖絶壁から身を投げたという。すると本当に釈迦如来が出てきて、弘法大師を受け止めて命を救った。そんなことがあって、釈迦が出てきたということで出釈迦という名称になったようだ。
弘法大師が身を投げたその断崖絶壁は捨身ヶ嶽と呼ばれ、この寺よりさらに50分ほど山を登った場所にあるらしい。見てみたいけどそこまで行ったら足が死んで僕が身を投げてしまうことになる。その場合、たぶん釈迦は出てこない。
山の中の札所ではそうでもないけど、比較的住宅地の中にある札所では、良く見る組み合わせというものがある。なぜか、やや年配の夫婦と、その20代半ばくらいの娘さん、この3人組が異様に多い。なぜなのかは分からないけど、こういった三人組は車で街中の札所を巡っている姿をやけに見かける。先ほどの曼陀羅時とここ出釈迦寺でも2組の親子が車で巡っていた。
このお寺は真新しい石像が多い。最近になっていろいろ作っているような感じだ。なるほどねーと見ていると目の前にある物体が現れた。
出た。
今度こそ。今度こそ爽やかな声が聴ける。きっと聴ける。
ポチッ。
シーン。
ふっざけんな! 何も言わねえじゃねえか。
え、なにこれ、ペテン? それとも僕が悪いの?
押し方が悪かったのかと思い何度も押すのだけどピクリともしやがらない。ほんとどうなっているんだ。もしかしたらモスキート音みたいな感じで爽やかな声が流れているのか。さらに境内の奥へと進む。
なぜだか知らないけど全くピントが合ってないが、アレだ。アレをアレするためアレしなければならない。
いくぜ!
「小吉」
うろたえるな! 言っただろう。ここでは出ない。絶対に出ない。今は盛り上げる期間だ。むしろ出なかったことを喜び、さすが! と称賛の声を贈るべきだ。決してうろたえてはいけない。
そんなに登ってきたつもりはなかったのに、けっこう登っていたみたいで眺めが良い。まだ日が落ちるまでは時間がありそうなので次の札所を攻めたい。
曼陀羅時で購入したミカンを食べた。甘くて美味い。
境内は背の高い塀で囲われ、立派な山門がある。もうすぐで5時になるということで今すぐにでも閉められそうな雰囲気が漂っていたが、なんとか入ることができた。境内にはやはり両親と20代半ばの娘というあの組み合わせの親子連れがいた。
さて、この甲山寺周辺は実は弘法大師の故郷らしい。このあたりは遊び場だったようだ。この辺りに札所が密集しているのは、そういった事情なのかもしれない。
見てしまったからにはやるしかない。
ピラッ
大丈夫。まだ時ではない。機が熟していないだけだ。
出る時には門を閉められるところだったので本当にギリギリだった。まだいけそうなので次の札所を攻める。ちょっと距離があったし、足がかなり動かない感じだったけど、なんとか日が落ちる前に到着することができた。
むちゃくちゃ規模がでかい寺だった。そもそも駐車場から言って他の寺とは規模が違う。
こうやってちゃんと料金所を設けてきっちり駐車料金を徴収している札所はたぶんここだけ。ほかの寺院の駐車場はそもそも無料か、有料だけど自己申告制、というところばかりだ。境内の敷地もすさまじく広く45,000平方メートルあるらしい。山奥とかでなく、街中でこの規模はかなりすごい。訪れる人もかなり多い。
それもそのはずで、この善通寺は75番目の札所であると同時に、真言宗善通寺派の総本山であるそうだ。さらには弘法大師生誕の地でもある。あと五重の塔もある。これだけ盛り沢山だったらこの規模も納得だ。
あまりにも広すぎて何が何やらという思いで境内を歩いていると、とんでもないものが行く手を阻んだ。
あ。
なんだろ、この案内板ってこの周辺の寺院でフランチャイズ展開でもしているのだろうか。とにかくまあ、見たからには押さなければならない。
はいはい、どうせ何も起きないんでしょ、と半ばあきらめて押すと、普通に案内音声が流れた。さすが総本山。ちゃんとしている。ただ、その声は別に取り立てて爽やかというわけでもなく、あくまでも普通だった。
総本山すげーと色々と見ていたらどっぷりと日が暮れてしまった。これ以上は寺院巡りできないのでここからは駅を取りに行く。
現状ではこのように駅を取得している。ここからは寺院を取りつつ駅を取得していくことを考えると、善通寺駅から右上に移動してくことになる。
そうなると、この赤で囲った部分は今後、寺院巡りに全く関与してこない駅になる。これは放っておくと絶対に取れない駅なので、これを夜のうちに取ってしまう。具体的には善通寺駅から琴平駅まで移動、金刀比羅宮で有名な駅だ。そこでフレンドリーファイヤーを駆使し、塩入、黒川の駅を取る。そこから琴電に乗り換えて、円座まで取る。なぜ円座までかというと、その次の一宮駅の近くには随分と先の方だけど札所がある。札所を取りに必ず行くのだからいつかは絶対に取れる。だからその手前の円座までをとっておく必要があるのだ。これは何も円座までいかなくとも、フレンドリーファイヤーで取れた時点で引き返せば良い。よし、この作戦だ。
闇夜の中、善通寺駅までやってきた。どこかで「寺の名前と駅名が同じ時、両者はかなり近い」ってドヤ顔で宣言したけど撤回するわ。善通寺と善通寺駅、けっこう遠かった。あと駅名表示のネオンが場末のバーみたいだ。
18:26 JR土讃線 普通 琴平行き
18:33 JR琴平駅
1駅しかないのであっという間に到着した。ここ琴平にはかの有名な金刀比羅宮がある。
ここより南方面の土讃線の駅をまともに取ろうと思うとかなり待ち時間があるし、戻ってくる列車のことも考えると大幅なロスになる。レーダーで一気に取ってしまった。夜の時間になってさすがにオンラインの電友が減っていたので射程が狭くなっていたが、ギリギリ黒川まで取れた。雲辺寺で讃岐財田をとっておいたことがこんな場面で活きた。あれがなかったら乗って取りに行かなければならないところだ。
金刀比羅宮の御膝元の駅だけあって琴平駅は和風で重厚な内装になっていた。外観もちょっとした神社なのかと思うほどだ。四国内のJR駅の売店はほぼセブンイレブンが担っている。ここ琴平駅もセブンイレブンが売店として入っているが、イメージを壊さないようになのかモノクロのセブンイレブンだった。
これが駅舎。ここから徒歩3分くらいの場所に琴電の琴平駅がある。そちらまで移動する。
大きな鳥居があって、向こうの方では提灯に灯りがついていて賑やかな雰囲気がしている。たぶん、向こうの方に金刀比羅宮があるんだと思う。このすぐ脇あたりに琴電琴平駅がある。JRの駅に比べて駅舎は小さい。
列車に乗り込んで驚いた。なんかいる。
なんだよこれ。ちょっと薄汚いし。
たぶんこれ列車のラッピングにもなっているキャラで、琴電のマスコットキャラクター的な扱いのやつなんだと思う。それで、そのキャラと一緒に乗車できるよ! というサービスではなかろうか。ただ、あまりに薄汚いし、その意図も良くわからない。これじゃあ頭のおかしい乗客がデカいぬいぐるみ持ってきて忘れていった、みたいじゃないか。
あまりにも薄汚いのでちょっと調べてみたら、やはりこれは琴電のキャラクターだった。青色でオスの「ことちゃん」とピンク色でメスの「ことみちゃん」とペアで、イルカをモチーフにしたキャラクターらしい。
そこで「なぜイルカ?」という疑問が沸き起こる。香川県を走る琴電とイルカ、申し訳ないがあまり関係ないように思える。そこでさらに調べてみると、どうやら琴電は経営不振から民事再生法を適用されたという暗い過去があるようだった。このキャラはその悲しき過去に由来している。
民事再生法適用の際、それまでの経営において駅員や運転手の横柄な態度やサービスの悪さが地域住民から反感を買った。不満が一気に爆発した形だろう。「琴電、いらない」「鉄道はなくなると困るけど、琴電はいらない」という声が挙がったようだ。地域住民からそんな声があがるとはよっぽどのことである。そこで「本当に琴電がいるか? いらないか?」と喧々諤々の議論をしたことから、「いるか?」から「イルカ」になったらしい。なかなかヘビーな誕生秘話だ。ここまでの過去を背負ったマスコットキャラがこれまでにいただろうか。誰にも言えない悲しい十字架を背負っていて途中で闇堕ちする主人公みたいだ。薄汚いどころの話じゃない。闇とか暗黒とかそのもの。ダークヒーローじゃないか。
そんなことを考えていたら、レーダーを駆使して円座駅まで取れたので、その3つ手前の「畑田」という駅で降りることにした。
疲れているのか駅メモ画面のスクリーンショット撮り忘れが増えてきた。しっかりしなければならない。さて、問題の畑田駅だが、見事に何もない駅だった。
完全なる闇。すげえな、魔界の闇みてえだ。
この駅で降りたのは僕ともう一人、かわいい感じの女性だけだった。こんな住宅しかない駅で見たこともない怪しいオッサンがまるで私を尾行するかのようにして下車した! レイプされる! などと身の危険を感じたのか、美女はホームから全速力のダッシュで闇の中へ消えていった。電車を降りて10秒くらいで消えていった。よほど身の危険を感じたらしい。
目的の駅まで取れたので、あとは逆方向の列車を待ってそのまま善通寺駅まで戻り、そこで本日の旅を終えようと思った。ただ、逆方向の列車がなかなか来ない。調べてみると20分待ちくらいだった。この何もない駅で20分は結構きつい。ただ闇の中で震えながら棒立ちし、20分待った。
19:33発 琴電琴平線 琴電琴平行き
やっとこさやってきた電車に乗る。今日はとにかく疲れた。あと足の違和感が心配すぎる。なんとかもってくれよ、とマッサージしながら乗車していたら、めちゃくちゃ電車が揺れた。震度7を体験できるやつくらいに揺れた。ロデオかよってくらいに揺れた。ちょっと笑ってしまうくらい左右に揺れる電車、荒々しすぎるだろう、おかしいだろと周りの乗客を見るけど、慣れているのか平然といった顔をしていた。頭おかしい。
ただ、僕の正面に座っていて大きなカバンを持っているカップルは、観光でやってきていたのかあまりの揺れ方に「揺れ過ぎじゃない?」「やばくない?」「死ぬの?」と会話していた。やはり僕の感覚は正しい。この電車は揺れ過ぎだ。平然としている香川の民がおかしいのだ。というか、ここまでの激しい揺れ、いるか?
激しくシェイクされながらなんとか琴電琴平駅に到着し、また歩いてJR琴平駅に戻ってきた。ここから善通寺駅に戻る。駅舎に入ると、待合所みたいな場所で大学生っぽい男女が入り乱れて雑談していた。なぜか大学生は4人以上集まるとむちゃくちゃ声がデカくなる生態がある。その生態にのっとってむちゃくちゃ大声で話していた。
「それでさ、この間教授のハゲチャビンがさー!」
とか話している。どうやら話の内容的に、みんな離れ離れになって都会の大学に通っていて、今日は久しぶりに集まったので近況報告みたいな感じだった。なぜ駅でやるのかは分からない。お互いに自分の大学のダメなところを言い合っていた。いつの間にか一番ダメな大学が優勝、みたいな空気が形成されつつあった。
「うちの大学なんてさ、この間同じサークルの奴が強盗で捕まったから。しかも俺、そいつに4000円貸しててさ、返してもらえるのか心配だよ、無理に催促したらまた強盗するかもしれないし」
という、エピソードを惜しげもなく披露したタケシが優勝だと思った。
20:18発 快速サンポート南風リレー号 高松行き
しかし、なんで若者が駅の待合室に集まっていたのかな、列車に乗る雰囲気でもなかったし、って考えて気が付いた。そうだ明日は成人式だ。だから都会から帰ってきた若者がいるんだ。それで成人式前日にちょっと昔の仲間で集まって近況報告、でも、琴平周辺に集まれるような店がないから駅の待合室でやっているんだ。コンビニもあるし集まりやすい。そういうことなんだろう。たぶんそうだ。
明日はこの地方の成人式なのか。旅の途中で荒れる成人式に巻き込まれたりして暴漢に襲われたら嫌だな、そう考えていたら降りるべき善通寺駅を通り過ぎていた。
1駅乗り過ごしてしまった。まあ来てしまったものは仕方がない。明日の朝一番で行く予定だった、次の札所、76番金倉寺にいってしまおう。どうせ駅から近い。
自転車を出すのも面倒なので歩いて移動する。すぐに到着した。
けっこう規模が大きく、ちゃんとした駐車場があるお寺だった。やはりこの辺一帯は弘法大師ゆかりの地なので、寺が密集していて規模も大きい。ただこのお寺はもう時間が遅すぎるので完膚なきまでに閉鎖されていて一切入れない感じだった。あと暗すぎて何が何やら分からなかった。ろくな写真も撮れず、戦場カメラマンが最後の瞬間に撮った、みたいな画像になってしまった。
もう列車を待つのも面倒、自転車を組み立てるのも面倒なので、そのまま善通寺市まで歩いて戻る。どこかでご飯を食べたかったのだけど、そういった店がなかったので、仕方なくスーパーで惣菜を買うことにした。
この二つしかなかったので、これだけ食べてこの日の旅を終わりとした。明らかにひもじい。
まとめ
総評:衝撃の2寺抜き、生誕の地周辺のボーナスステージとかなり寺を獲ることができた。残すは12寺、いよいよカウントダウンを始めて良い頃合いだ。駅に関してもあと71駅で四国全駅制覇を達成する。こちらも終わりが見えてきた。ただし、足の違和感がかなり心配なのでしっかりといたわりながらなんとか最後まで駆け抜けたい。
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