四国の全駅制覇とお遍路を同時にやったら大変なことになった【愛媛・香川編】[PR]

「四国全駅制覇をしつつ、お遍路を同時に達成する」という謎の旅の続きに、新年早々でかけてきたpatoさん。今回の旅でも、旅の記録にアプリ「駅メモ!」を使用。前回の徳島・高知編に続き愛媛・香川編を配信させていただきます。(7ページ)

【6日目】1月7日 5:33

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これ夜かと思うでしょ、れっきとした朝ですからね。時間は5時30分。こんな早起きしなくともと思うのですが、始発があるのだから仕方がない。

 

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今日は早朝過ぎて誰もいない善通寺駅から旅をスタートします。昨日、ちょっとしたアクシデントから76番を取ってしまったので一気に先に進めます。列車に乗って次の札所近くまで行きましょう。

 

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6:15発 普通 高松行き

ここから一気に多度津まで移動します。

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次の札所はここ多度津駅からほど近いらしい。さっそく自転車を組み立てて移動を開始する。一晩休ませることかできたからか足の調子は良い。

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なんかSLが飾ってあった。やっとこさ夜が明けてきた。線路沿いを走り陸橋を超えたところに次の札所があった。

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【6:40】第七十七番札所 道隆寺(どうりゅうじ)御本尊:薬師如来 駅メモチェックインで取れる駅 多度津(JR土讃線)残り11

早朝過ぎて入れないかと思ったら普通に入れた。さすがに入れるけど誰もいないだろうと思っていたら、境内には犬の散歩をしている人がいて、まるで空き巣でも見るかのような疑いの眼差しをおよそ7分に渡って僕に投げつけてきた。途中から尾行されていた。たぶん僕からかなり怪しい空き巣的オーラが出ていたのだと思う。

このお寺にはおよそ255個の観音像がある。観音霊場として知られる各地の霊場の本尊としての観音像や水子供養の観音像、交通安全の観音像などありとあらゆる観音像があり、完全に観音像に特化した寺になっている。観音のことはこの寺に来れば大抵解決する勢いだ。なかにはけっこう綺麗な観音像もあって、あまりの美しさに家に置いておきたいな、などと思ってしまった。その思いが空き巣的オーラになったのかもしれない。

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夜明け寸前のお寺はなかなかいいものがある。空気が澄んでいて静かで、なんだか身が引き締まる思いがする。

次の札所もそこそこ遠い位置にあるっぽい。自転車で行けない距離でもないが、足への負担を考えて列車で移動することにする。もう一度多度津駅に戻り、そこから乗車することにした。朝早すぎるのか、それとも疲労が蓄積しているのか、駅への道中なんか意味不明にテンションが高まってしまい、ずっとさっきまでいた道隆寺にひっかけて「道隆寺が好きっ!」って意図も意味も不明な花より男子のワンシーンの物真似をしてた。

多度津駅に舞い戻ると、駅内のパン屋さんが営業を始めていた。そういえば朝ご飯を食べていないので、ここでパンを購入して朝ご飯にする。

 

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さんざん迷ってこれにした。美味しそう。

 

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うん、けっこうグロい。

7:19発 予讃線 普通 高松行き

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7:28 JR宇多津駅

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ここ宇多津駅は岡山方面に向かう列車の分岐となる駅だ。ここから枝分かれをして瀬戸大橋を通って岡山方面へ向かう瀬戸大橋線がある。もちろん、ここらで岡山に行って新幹線に乗って東京まで帰りたいところだが、そんなことは許されないって普通に考えれば分かるので、次の札所を目指す。

大きな通りを東に進み、看板の案内に従って細い路地を入っていく。どうやら次の札所はかなり細い路地の先にあるみたいだ。あまりに細すぎてバスとかは入っていけないみたいで、寺から少し離れた大通りに面したあたりにバス専用の駐車場があった。

そんな事情があるのに、僕がその細い路地を自転車で登っていると、ムリムリとバスが入ってきていた。どうもお遍路観光バスのようで、車内には過積載気味に婆さんがぎっしり乗せられていた。

運転手もさすがに無理、と思ったのか諦めてバックしていった。どうやらバス専用の駐車場の存在を知らずに直接お寺にアタックしようとしていたみたいだ。バスが切り返している時に、ブロック塀に当たりそう、かなり際どい! って状況になっていて、車内の婆さんが必死に拝みだしていた光景がちょっと面白かった。

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【7:49】第七十八番札所 郷照寺(ごうしょうじ)御本尊:「阿弥陀如来」 駅メモチェックインで取れる駅 「多度津」(JR土讃線)残り10

四国霊場で唯一、時宗の霊場である。地元では厄除けうたづ大師と呼ばれて親しまれているようだ。細い路地を登りきったこの寺からは瀬戸内海と瀬戸大橋が一望できる。

 

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すげー沢山おみくじがある。どれにするか迷うが、たぶんどれを選んでも大吉はでない。というかその横にこんなものがあった。

 

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数字を引いて、その番号の引き出しに入っているくじを取るというストロングスタイルのおみくじだ。せっかくなのでこれにしよう。えいや! と数字を引いてそこに書かれた番号の引き出しからくじを取る。

 

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「吉」

わかっていましたからね。別に何とも思わない。今は出るべきではないのです。最後までずっと出なくて最後に出る。そういう星の下に生まれてきていますから。

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開運大吉地蔵なる縁起のいい地蔵があった。拝みながら「きっと最後に出るんっすよね、絶対ですよね」と念を押して確認しておく。これで大丈夫だ。最後に出る。

 

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次の札所に向けて坂出市方面に向かって走り出す。途中、「お遍路さんは旧道を通ってください」みたいにわざわざ指定されていたので、旧道を通っていく。途中、かなり久々に他のお遍路さんを見ることができた。

 

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アーケード商店街に行き着いた。本町商店街と書いてある。おそらく坂出の中心地の商店街だと思う。ただ、やはりどこの地方の商店街もだいたいそうなのだけど、かなり活気がない。朝早いからなのか、それとも元々そうなのかは知らないが、シャッターを閉ざした店舗が多い。

 

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活気を失った商店街とイオン、とい風刺画みたいな画像が撮れてしまった。皮肉が効いてやがる。

坂出の街を突き抜けて進んでいく。ここでついに僕の精神がちょっと異常な状態になりはじめた。こういった取材旅行の精神的負担はかなり大きい。これまでも様々な場所に行って過酷な思いをしてきたが、だいたい5日間も我慢すれば旅は終わりだった。それが今回は達成するまでに帰って来るなという指令により、もう6日目である。どうやら精神的な何かの許容量を超えてしまったらしく、完全に頭がおかしくなってしまった。早い話が限界を超えた。

その時は何とも思っていなかったのだけど、後から見返すと完全に頭がおかしくなっている。僕は、旅の途中に、面白いなと思ったものをカメラで撮るが、後から記事を書こうと見返した時、だいたい何を面白いと思ったのか、なぜそれを撮影したのか理解できるものになっている。そこから記事が書かれていくのだ。

ただ、ここからしばらくの間、撮影した画像が本当に意味不明になっている。完全に頭がおかしくなっている。何を思ったのか、どんな記事を書こうとしたのか、その意図が読めない。普通ならバッサリカットするところだけど、どんな精神状態だったのか皆さんにも分かってもらえるよう、その意味不明な画像たちを紹介していきたい。

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この一軒家のキャラに何を見出したのか、当時の自分の感情が分からない。

 

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ぼくはコイツで一体どんな記事を書くつもりだったのか。

 

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なんなんだ、一体。

 

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完全におかしくなっとる。なんだよこれ。

これがこのまま続くとそもそも寺院の画像までなくなってきて記事を書くことが不可能になると心配したのですが、この後、普通に正気を取り戻したみたいでちゃんと寺の画像が残っていました。

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【8:52】第七十九番札所 天皇寺(てんのうじ)御本尊:十一面観世音菩薩 駅メモチェックインで取れる駅 八十場(JR予讃線)残り9

お寺なのに変わった鳥居が本堂正面に鎮座し山門となっている。普通の鳥居の左右にも鳥居がついている構造で三輪鳥居と呼ばれている。大変珍しい鳥居で全国に3つしかないようだ。

僕が本堂にて思い出したかのように読者の皆さんの平穏で幸多い暮らしを祈願していると、剛の者っぽい人がやってきて、叫びながら三輪鳥居をあらゆる角度で撮影していた。やっと静かになったと思ったら、同じ人が2分後にまたやってきて、バルログみたいな声を上げて撮影していた。パッと見、360度全部の角度で撮影したんじゃないかと思うほどだった。あれはなんだったんだろうか。

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昨日、曼陀羅時で購入したミカンを食った。相変わらず甘くて美味い。前に進む活力になる。
元気を補充し、次の札所を目指して走り出す。

 

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やっと正気を取り戻したようで、普通の風景を撮影しだした。ただ、何の意図をもってこれを撮影したのかは分からない。

 

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と思ったらまた変な画像が。これをもってきて何を伝えたかったのか。なんなんだろう、本当に。

訳も分からぬまま闇雲に進み、1時間くらい移動して次の札所に到着した。

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【10:05】第八十番札所 国分寺(こくぶんじ)御本尊:十一面観世音菩薩 駅メモチェックインで取れる駅 国分[香川](JR予讃線)残り8

ここには奈良時代から現存する四国最古の梵鐘がある。この鐘には様々な伝説があり、中でも有名なのが、これを高松城の鐘にしようと当時の藩主が持っていくと、重くて動かないわ、途端に鳴らなくなるわ、城下町では疫病が蔓延するわ、もってきた藩主も病気になるわと大変なことになったらしい。それどころか藩主の枕元に毎晩のように鐘が現れて「国分に帰りたい」と泣いたそうで、慌てて国分寺に戻されるということがあったそうだ。鐘がそのまま剥き身で枕元に現れたのか、それとも擬人化されていたのか、その辺が興味深い。

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これが夜な夜な枕元に立つ鐘。

また、この寺の境内には「ミニ遍路コース」みたいなものもある。境内を囲む塀の内側をさらに囲むようにしてぐるっと88個の石像が置かれている。その石像には1番札所からの札所の名前が彫られている。それを見ているだけでこの旅の様々な場面が思い出されて感慨深い。

ここ国分寺でついに80番の大台にのった。残りはあと8つである。ミニ遍路で言うと、

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残りこれだけの石像だ。完全に終わりが見えている。やる気が出てきた。

もう当たり前のことなのでかなり省略して結果だけを伝える。

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「吉」だ。

さて、次の札所を目指すわけだが、どうやら次は「白峯寺」という名前の寺らしい。賢明な読者の方なら察したことだろう。「峰(峯)がつく寺はやばい」。過酷な山の上にあると自白してしまっているのだ。

調べてみたら、やはり白峯寺までの道のりは「お遍路最後の難所」と位置付けられていた。もちろん最後の「へんろころがし」もある。冗談じゃない。もう「へんろころがし」のエピソードは終わったはずだ。横峰寺で「へんろころがし」から逃げるのをやめ、自分に向き合って克服した。あれでめでたしめでたしだったじゃないか。いまさら蒸し返されても困る。

そもそも、せっかく「へんろころがし」を克服したのに、ここでまた挑戦して負けたらどうするのか。勝ち逃げができないじゃないか。なんとかして回避する手立てはないものか。どうにかして回避できないかと思案していると、電撃的にすごいことを思い出した。

「タクシー」

この旅では、前後編を通じて3回、タクシーを使うことが許されている。すっかり忘れていた。前編において、焼山寺で泣かされた時に一度、そのトラウマで「へんろころがし」への恐怖が沸きたち回避的に鶴林寺で使ったのが二度目、1回の使用権を残して後編に突入したのだった。ただ全く使っていないのですっかり忘れていた。

ここで使うべきじゃないだろうか。

むしろここで使わなかった場合、もう使う場所がないじゃないか。何せ最後の難所で最後の「へんろころがし」だ。ここで使わずしていつ使うか! よし、使おう。

そうと決まれば駅まで移動だ。この場所でタクシーを捕まえることは困難なのでとりあえず駅まで行けばなんとかなるだろうと考えた。

国分駅は国分寺駅からかなり近い。駅に到着して自転車を折りたたんでいるとスーツ姿の若者がたくさん駅にいた。無人駅の国分駅にこれだけの人がいるのはちょっと異常だ。何事かと思ったが、これはあれだ、成人式だ。これから新成人たちが高松まで移動していってそこで成人式をやるんだ。だからこんなに人がいるんだ。中にはお母さんが駅まで車で送り届けてあげていたりする光景も見られた。そんな中、むちゃくちゃヤンキーっぽいヤツがいて、そいつもお母さんに車で送り届けてもらっていたのだけど、

「タケル、お酒飲んでハメ外すんじゃないよ!」

「うっせえな」

って会話していた。たぶんタケルはハメを外す。それどころかタガとかまで外す。タケルはそれくらいヤンキーだった。

普段ならタクシーを捕まえることは難しそうだが、そういった事情で人が溢れていたので、ちょうど駅までやってくるのにタクシーを使った新成人のおこぼれをもらう形で捕まえることができた。

タクシーすごい。一気に坂道登る。速い。寒くない。なにこれ。ちょっと凄すぎるんですけど。あまりのすごさに車内で「タクシーはいいねえ、タクシーは心を潤してくれる。リリンが生み出した文化の極みだよ」とか訳の分からない独り言を呟いて運転手さんを困惑させていた。

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【11:00】第八十一番札所 白峯寺(しろみねじ)御本尊:千手観世音菩薩 駅メモチェックインで取れる駅 鴨川(JR予讃線)残り7

これをまともに登ってきたらどうなっていたんだろう、と恐ろしさすら覚えるレベルの坂道を登ってきて白峯寺に到着した。タクシーという選択は間違ってなかった。駐車場が満車レベルで混んでいて、境内にも沢山の人がいた。

さて、これでもうタクシーを使うことができなくなった。もう難所はないとはいえ、何が起こってもタクシーは使えない。それだけに慎重に進んでいかなければならない。と思った矢先にとんでもないことが起こった。

タクシーの運転手さんの話によると、ここ白峯寺から次の根香寺までは、そこまできつい登りもなければ下りもないらしい。連なった山々の尾根を横に移動していく感じになるらしい。多少のアップダウンはあるがそこまでではない、ただ、距離はそこそこある。そう言われて安心しきっていた。

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薄っすらと瀬戸大橋が見える。かなり高い位置にいることがわかる。このままこの高さを維持して横に移動していく。

 

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根香寺まであと8キロ、けっこうあるなあと思いつつ進んでいく。ちなみにずっと軽い上り坂だったので体力的に限界で自転車に乗れず、ずっと自転車を押して歩いていた。

 

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こういった道路を進んでいく。途中、先ほどの国分寺の裏手から延びていた「へんろころがし」ルートと交差するポイントに出た。そこにはトイレが備え付けてあった。

 

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僕もまあ、あまり気にするタイプではないけど、さすがにこれはちょっと利用できない。ドアがないじゃないか。いや、でも本格的に漏らすとなったら背に腹は代えられない。やはり利用するのだろうか。そんなことを考えていたら、ついにそれは起こった。忍び寄りつつあった死神が、ついに僕に到達した。

「ぎゃーーーーー!」

本当に悲鳴を上げた。まるで断末魔のような悲鳴を上げた。山奥で誰もおらず、民家もないので誰に届くわけでもないけど、僕の絶叫がこだまになって山々に響いていた。

単刀直入に言うと、足が攣った。そう、初日の夜になったアレだ。それも両足同時に。攣っただけででなくふくらはぎが肉離れみたいになって激痛が走るやつだ。それが両足同時にやってきて、途方もない激痛に道路上でのたうち回っていた。

しばらく悶絶した後、なんとか片足ずつ足をほぐして攣った状態からは解放されたのだけど激痛だけが両足に残った。初日になった時は片足だったので誤魔化しながら進めたけど、さすがに両足ともなると立つことすらできない。

「ついに限界が来たか」

道路上に座りこみ、そう呟いた。残念ながらこの足ではもう進めない。もうここにタクシーを呼んで駅まで乗せてもらい、すごすごと東京に帰るしかない。僕は負けたのだ。そう思った。

唐突にこの旅のこれまでのことを思い出した。2個前の国分寺でミニ遍路を見ながら色々と思い出に浸っていたので、心折れたここでまた思い出したのかもしれない。

焼山寺で泣いていた時、工事現場のおっちゃんが助けてくれた。
ネットで旅行記を読むのが好きというタクシーのおっちゃんに励まされた。
ウクライナ人を探した。
謎の外国人に臭い足をマッサージさせられた。
私の膀胱というパワーワードを披露するお婆ちゃんがいた。
ロープウェイで係りのお姉さん(かわいい)に心配された。
転んだ。
その傷をみた女の子に絆創膏を貰った。
高知の連続山登りで死にかけた。
風を受けて走ろうと上着を帆の形にしていたら転んだ。
高知の路面電車でカップルに嫉妬した。
四万十川に沈み、現代に蘇ったカッパみたいになった。
バスの中で乗客たちが歌い出して困惑した。
各県のヌシが助けてくれた。
峠越えで死ぬかと思った。
道後温泉で坊ちゃんトラップにひっかかった。
遍路みち看板トラップにもひっかかった。
ハシゴを登ったら怖くて降りられなくなった。
生徒会の黒幕みたいな読者さんに励まされた。
裏ルートを使ったら道なき道だった。
雨が降った。
付き合っているかどうかの議論を聞かされた。
へんろころがしに打ち勝った。
ロープウェイ降り場でお茶を出してもらった。
うどん屋がエミネムだった。
頭がおかしくなって変な画像をとりまくった。
タケルは絶対にハメを外すと思った。
大吉は出なかった。
そして、両足が攣り、旅を断念した。

ここまで思い起こした時、ある感情が沸き上がってきた。

「最後だけおかしい。まだ負けてない」

いいから立てよ、立って進め。それしか能がないんだから。進めよ。内なるそんな声に突き動かされて立ち上がってみると死ぬほど痛いけど立つことができた。そして、全体重をファルコン号にかけたまま体を傾け、足を前に出すと、比較的楽に進むことができた。もちろん激痛はある。

「いけるじぇねえか、なに負けたふりしてるんだ」

またそんな内なる声が聞こえた。

尺取り虫みたいな足取りで進んでいく。だいぶコツを掴んできた。要はお婆ちゃんが押している乳母車みたいなヤツの要領で、全体重を預けて自転車を押せばいい。そうすれば足に負担があまりかからず進める。いける。

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しばらく進むと、道は下り坂になった。そうなればこちらのもので、自転車に乗ってしまえば何もすることなく進んでいく。全く足に負担がかからない。いける。いけるぞ。

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【12:29】第八十二番札所 根香寺(ねごろじ)御本尊:千手観世音菩薩 駅メモチェックインで取れる駅 鬼無(JR予讃線)残り6

あの状態からいけるものなんだな。それでももう足が動かない。境内での移動でまで自転車を使うわけにはいかないので、壁や手すりを駆使して這うようにして進んでいく。

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なんてことない階段だけど、今の状態では地獄の階段にしかみえない。

この寺の周りには「牛鬼」と呼ばれる怪物の伝説が残されている。弓名人がこの怪物を退治しようと山に入ったが、牛鬼は現れない。そこで根香寺に願をかけたところ見事に牛鬼が現れ矢を命中させて退治することができた。そのときに切り取った牛鬼の角がここに保管されているらしい。

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これが牛鬼らしい。すごいフォルムだな。こんなのに山の中で出くわしたら腰抜けるわ、って思っていたら

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いた。本当にそのまんまのフォルムだ。

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さて、問題は次の札所である。できることなら足を使うことなく移動したい。ここは山の上なのでここからは下山していくことになる。つまり、ある程度は位置エネルギーを使っていける。問題は山を降りきった後だ。結構な距離がある。この足の状態でいけるとは思えない。

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そうなると、山を降りた後になんとか頑張って高松築港まで移動し、そこから電車に乗って一宮駅まで行くべきではないだろうか。もしかしたら山を降りたあとに高松築港までいくバスとかあるかもしれない。それならなおのこと良い。この手法が最良な気がする。

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かなり高い位置から下っていく。下りは全く足に負担がかからないから良い。

山を降りきった後もしばらくはその勢いで進んでいくことができる。ただその勢いすらなくなると、やはり尺取り虫みたいになって自転車を押していかねばならない。フラットな道路なんだけど、すごくきつい。

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足も痛いけど、お腹も減っているので昼食にしようとうどん屋に立ち寄った。なんかうどんの大盛りの上に「三玉」という設定があるらしく、調子ぶっこいてその「三玉」をオーダーしてしまった。

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常軌を逸した量のうどんが出てきた。なんだこれ。パーティーで皆で食べたりするうどん?全部食べたら気持ち悪くなってしまった。

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食事を終えて、店の向かいにあったイオンに立ち寄ることにした。こういた地方のイオンの場合、最寄りの大きな駅とショッピングバスで繋がっている場合がある。それどころか人の流れが完全にイオンに牛耳られ、路線バスがイオンを中心に走っていることだってありえる。それに乗れれば足に負担をかけることなく高松築港までいけると考えた。

僕の希望は虚しく、バスの類はないようだった。あったかもしれないが、あまり動けないので見つけることができなかった。ただ、気になる看板があって

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運試しだワン!抽選会でお客様に大変迷惑をかけたとお詫びの掲示がしてあったのだけど、何をしでかしたのか書いてないので物凄く気になった。

仕方がないので自分の力で移動していくしかない。尺取り虫でなんとか移動しつつ、高松駅周辺までやってきた。

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成人式をやっていた。別に荒れる成人式ってわけでもなさそうで、暴漢に襲われることもなかった。いまごろ、タケルもハメ外しよるかなあ、とか考えてた。

 

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JR高松駅だ。香川のJR路線の中心になる駅だ。ここから徒歩3分くらいのところに高松築港駅はある。そちらは琴電路線の中心となる駅だ。そこから一宮駅まで移動する。

 

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13:42 琴電 高松築港駅

13:45発 琴電琴平線 一宮行き

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14:06 一宮駅(琴電琴平線)

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電車で座っていたら少し足がマシになってきたので歩いて移動することにした。どうせこの駅にまた戻ってくるので自転車は駅の自転車置き場に置いた。

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【14:12】第八十三番札所 一宮寺(いちのみやじ)御本尊: 「聖観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「一宮」(琴電琴平線)残り5

ここには地獄の釜と呼ばれる小さな祠があるらしい。この祠に頭を入れると境地が開けるという言い伝えがあるが、悪いことをしている人が頭を入れると抜けなくなるという、映画ローマの休日に出てくる真実の口みたいなことが伝えられていた。僕がいれたらレスキュー呼んでもダメなレベルで抜けなくなりそうなのでやめておいた。

ここからはあまり足に負担をかけずに進めそうだ。まず、先ほどの一宮駅に舞い戻り、高松築港方面の電車で舞い戻る。そして、瓦町で琴電志度線に乗り換える。そうすれば次の札所の近くまで行けそうだ。ちなみに次の札所は山の上にあるが、麓の駅からバスでいけるらしい。

14:22発 琴電琴平線 高松築港行き

14:38 瓦町駅(琴電)

14:46発 琴電志度線 琴電志度行き

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15:01 琴電屋島(琴電志度線)

rosen26屋島までやってきた。駅を出て正面に見える山が屋島という山で、その上に次の札所がある。札所どころか新屋島水族館とか観光施設もあるらしい。そこまで登っていくのは大変だけど、バスが出ているらしいのでそれを待つ。

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駅を出たところの駐車場みたいな場所にバスが来るらしいので待つ。30分くらい待っていたらバスがやってきた。

バスは結構過酷なドライブウェイみたいな場所を登っていく。自動車専用道路らしいのでひそかに目論んでいた帰りだけ自転車に乗るという手法が使えない。帰りもバスに乗るしかないようだ。この自動車専用道路とは別に歩き遍路みちもあるが、そこは完全無欠の山道なので自転車が使えない。

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バスが到着した。山の上に大きな駐車場があって、そこに売店だとか食堂だとか、水族館まである感じだ。もちろん、お目当ての札所もある。

【15:56】第八十四番札所 屋島寺(やしまじ)御本尊:「十一面千手観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「琴電屋島」(琴電志度線)残り4

鮮やかな朱色が印象的な境内だ。屋島とはあの那須与一の扇の的で有名な場所だ。そういった関係から源平合戦屏風、源平盛衰絵巻物など源平合戦に関する数々の宝物を収蔵した宝物館もある。また、蓑山大明神と呼ばれる四国狸の総大将「太三郎狸」の像と鳥居が並ぶ場所もある。

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他にもいろいろな見所があるが、帰りのバスの時間もあるので急がなければならない。ということでどうせ出ないけどこれをしておく。

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「吉」である。「吉」の下に「GOOD」って書いてあるのがちょっと笑える。いや、確かにそうだけどさ。

急いでバスを降りたところに戻り帰りのバスに乗車した。

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16:13 琴電屋島駅

また先ほどの琴電屋島駅に戻ってきた。次はここから1駅くらい先の場所にある札所だ。また山の上にあるらしいが、今度はケーブルカーがあるらしい。とりあえずそのケーブルカー乗り場を目指すことにする。

足が動かない状態で移動するので、できることなら道を間違えたり大回りしたりというロスは避けたい。地図を見ながら移動しているけど万全を期してその辺を歩いている老人に道を尋ねる。

「すいません、ケーブルカー乗り場にいきたいんですよ、この道であってますかね?」

僕がそう言うと老人は怪訝な表情を見せた。

「そんなものはない」

「いやいや、ないはずないですよ。ちゃんと地図にも乗ってるし」

「ないものはない!」

むちゃくちゃ怒ってらっしゃる。なんでそんなことを言うんだろう。いくらなんでもケーブルカーがないなんて嘘に決まっているじゃないか。ネットにだって載っているのに。ただ、老人は怒りながら先ほど登っていた屋島を指さしているので、もしやと思い調べてみたら、話が噛み合わない理由が分かりました。

実は先ほど登ってきた屋島にも12年くらい前までケーブルカーがあったみたいなんです。ただそれはもう廃止されていてなくなってしまった。僕は次の札所、隣の山のケーブルカーのことを聞いていたのですが、老人はその廃止されたケーブルカーのことだと思ったようです。もしかしたら思い出とかあったのかもしれませんね。だからちょっと怒っていたのかも。

なるほど、屋島には廃止ケーブルカーがあるのか。なるほどなるほど。どうでしょう、駅メモさん、廃駅が駅メモ対象駅になっているわけですから、廃ケーブルカー駅も対象駅にして、香川の駅メモユーザーを震え上がらせませんか。是非ともよろしくご検討ください。

さて、なんとか次の札所に向かって進みだす。もう完全に足が動かないどころか激痛がすごい。でもケーブルカーの営業時間である5時15分までに到着しないと自力で登ることになり、さらに大変なことになるので歯を食いしばって進んだ。

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16:42 八栗ケーブル 八栗寺登山口駅

なんとか営業時間に間に合った。八栗寺登山口駅という名称がついているが、やはり駅メモの対象駅ではない。駅メモさんには是非ともこのケーブルカー駅も対象駅にして香川の駅メモユーザーを震え上がらせて欲しい。

ケーブルカーは15分間隔で運転している。往復料金は930円。

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16:45発 八栗ケーブル 八栗山上駅行き

ケーブルカーは効率よく斜面を登っていくため、一般的な構造の車両ではなく車内は階段状の構造になっている。一番前が良い景色だろうと一番前に陣取る。

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このような斜面を登っていく。結構スピードが速い。このケーブルカーはペットを連れ込めるのか一番後ろの席にいた家族連れが犬を抱いていた。その犬、ケーブルカーが動き出した瞬間に何かに驚いたのか狂ったように吠えて暴れ始め、ケルベロスみたいになっていたので驚いたし恐怖だった。個人的にはバイオハザードで犬がガラスを突き破って襲ってきた時くらいの恐怖があった。

なぜか頂上までのあいだ、車内にずっとお経のような悲しい、気が滅入る音楽が流れていた。全ての人がテンションを落としてしまうような、そんな音楽が流れていた。これから寺に行くからという配慮での選曲かもしれないが、もうちょっとなんとかならなかったのか。

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【16:56】第八十五番札所 八栗寺(やくりじ)御本尊:「聖観世音菩薩」 駅メモチェックインで取れる駅 「古高松」(JR高徳線)残り3!!

八栗寺は五剣山の8合目に建てられている。この五剣山の頂上からは讃岐の国はもちろんのこと、阿波の国や海を超えて備前の国など、八つの国が見渡せたことから、元々は八国寺という名称だった。その後、弘法大師は唐に留学する前になぜか8つの焼き栗を植えた。留学を終えて寺に帰って来ると、焼き栗なので芽が出るはずないのに芽が出ていた。こういった事情があって八国寺から八栗寺に改名したらしい。正直に言うと、これまでのお遍路で様々な弘法大師エピソードを聞いたけど、このエピソードだけはなんか弘法大師がトチ狂った感がある。何をどうやっても焼き栗を植えるという発想にはならない。それも8個も。どうしちゃったんだ。

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よし、下山だ。

最終の下りケーブルカーに乗って山を降りる。なぜか帰りはややポップな音楽が車内に流れていた。参拝前と参拝後で緩急をつけている感じだろうか。

ケーブルカー駅に帰ってきて、そこから下り道を通って最寄りの八栗駅に行く。

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17:31 八栗駅(琴電志度線)

ここの駅員のおばちゃんがむちゃくちゃ親切で穏やかな人だった。これなら琴電いるか?とは言われないと思う。ここから次の札所である志度を目指す。

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17:45発 琴電志度線 琴電志度行き

なんだか奇妙なラッピングの電車がやってきた。なんだよこれ。こんなラッピング、いるか?

列車内には留学生っぽい外国人が沢山乗っていた。一瞬、別な国の電車に乗ってしまったかと思ったくらいだ。もしかしたらこの近くに国際色豊かな大学があるのかもしれない。

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18:00 琴電志度駅(琴電志度線)

rosen27ボーっとしていて駅名表示板を撮影し忘れていたので、駅舎の画像でお茶を濁しておく。

この琴電志度駅の近くに次の札所があるそうなので、もう日は落ちてしまったけど取っておく。変なルートを通ってしまっておまけに迷ったものだから10分くらいかかってしまったが、なんとか到着できた。

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【18:15】第八十六番札所 志度寺(しどじ)御本尊:十一面観世音菩薩 駅メモチェックインで取れる駅 琴電志度(琴電志度線)残り2!!

もう完全に日が落ちていたけど中に入れるようなので中に入った。暗くて良く分からなかったけど、要所要所にライトが設置されていて夜間でも大丈夫なようになっていた。ここ志度寺には88カ所霊場で4つしかない五重の塔があり、おまけに閻魔堂とよばれるものがあり、そこには閻魔様がいる。

暗くて良く分からないが、境内の中央には堀があり、そこが三途の川を表しているそうだ。その川の北側があの世で南側がこの世となっている。境内には三途の川で死者の着物を奪う奪衣婆(だつえば)がいる奪衣婆堂もある。閻魔もいて三途の川もあってと、志度寺は境内に死後の世界を作っている感じがする。どうも境内で一旦あの世に行って最後に閻魔堂で蘇生されるというストーリーがあり、今までの自分をリセットする、という意味があるようだ。暗くて良く分からなかったけど。

閻魔様がいる寺って結構珍しいんじゃないかなって考えつつ暗い境内を徘徊していたら、近所のおばちゃんが散歩していて、そのおばちゃんが仲間内での罰ゲームなのかなってレベルできっついパーマあてて、それがガサッと暗闇から出てくるもんだから閻魔様かと思った。全然関係ないけど、ここ志度寺の隣には平賀源内の墓がある。

さて、長かったお遍路もついに残すところあと2つ、長尾寺と大窪寺のみとなった。ここまで86個巡ってきたことになる。長尾寺は琴電長尾線の終着駅である長尾駅の近くにあるので問題ない。問題は大窪寺で、どうやら結構な山深い場所にあるらしい。途中のルートは「へんろころがし」というほど険しいわけではないが、結構距離があるようだ。

まあ、何にせよ今日はもう日が暮れたのでアタックは明日になる。足の調子次第だがおそらくゴールできることだろう。

また全駅制覇の方も佳境だ。

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残りは33駅。しかもバラバラに残っているわけではなく、徳島へと行くJR高徳線の香川県内部分の駅と、琴電長尾線のみ。長尾線は長尾寺を取りに行く時にクリアできるので、あとは高徳線を取りに行けば準備万端だ。

高徳線の駅を取りに行くべく、先ほど降りた琴電志度駅を通り過ぎて、JRの方の志度駅に向かう。琴電とJRの駅はかなり近い。

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18:38 JR高徳線 普通 引田行き

県境の駅一個手前の引田駅までしか行かない列車だが、まあその辺はレーダーを使えば何とかなるだろう。射程が広いので引田まですら行く必要がない可能性もある。

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19:10 三本松[香川](JR高徳線)

sikoku2-453rosen28琴電長尾線の駅たちがレーダーに引っ掛かってきて射程が消費されるというハプニングがあり思いのほか苦労したが、なんとか三本松という駅で県境の讃岐相生までをとることができた。

あとは高松まで引き返して残りの駅を取るだけである。この駅に到着した時には逆方向の列車が隣のホームに来ていて時間ロスなしで引き返せるかと思ったが、乗り換え時間1分だったので走ったけど間に合わなかった。この闇の深い三本松駅で30分くらい待つことになってしまった。ただただジッと待っていた。
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20:57 JR高松駅

三本松から1時間ちょっとでJR高松駅まできた。昼間は自転車で前を通っただけだったので初めてホームに降りたつ。ここ高松駅はどん詰まりの行き止まり駅なのでホームの構造が変わっている。全てのホームが終端なので、上の画像で剛の物っぽい人が撮影している付近の場所で全てのホームが繋がっている。

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こんな感じで行き止まりになっていた。

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さて、ここから高松で最も栄えていると言われる琴電の瓦町という駅まで移動し、この日の旅を終了とした。いよいよ明日は最終日。きっちりとゴールを決めたい。

まとめ
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総評:ついに残すは2寺と15駅となった。全駅制覇の方は琴電長尾線に乗るだけなので達成はそう難しいことではない。問題は、最後の大窪寺である。おそらく20キロくらいの山道移動を強いられる。普段なら頑張ってやれないこともない距離だが、なにせ足の状態が過去最高に良くない。あまりの激痛に本当にリタイアを検討したほどだ。つまり、朝起きてからの足の状態が明暗を分けるといっても過言ではない。泣いても笑っても最終日。ついに最終決戦が始まる。

 

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