2011年3月。あるCMが多くの人を元気づけたことをご存知だろうか。
それは意図していたものとは違ったかもしれない。もともとは違った狙いで作られたのかもしれない。少なくとも、制作時にあのような状況になるとはだれも考えなかったはずだ。けれども、作られたCMは、結果として多くの人を元気づけることとなった。
「祝!九州」と銘打たれたそのCMは、JR九州が2011年3月12日の九州新幹線鹿児島ルートの全線開業に向けて制作されたもので、開業前の3月4日より、九州内に限定してローカルCMとして放送された。
このCM、以前はJR九州のCMライブラリーやYouTubeの公式チャンネルで公開されていたが、いずれも公開終了してしまったため、視聴できない。その代わりに制作会社ティーアンドイーがアップロードする特別編180秒公開版の正規動画があるので、それを是非ともご覧いただきたい。
T&E JR九州 「九州新幹線全線開業CM」 特別篇 180秒ver
このCMは、マイア・ヒラサワの「Boom!」という軽快な曲に乗せて、JR鹿児島中央駅からJR博多駅まで、沿線の人々の様子を映したものだ。各地で手を振る九州の人々や、数々のパフォーマンスが楽しいし、九州各地の景色を楽しんでもいい。いろいろな楽しみ方があると思うが、僕にとっては、理由はわからないけれども、涙が出るのだ。
「なぜか感動する」
理由は分からないけど妙に訴えかける何かがある、そんなCMだ。
2011年3月といえば誰もが思い出さないわけがない。3月11日、東日本大震災。九州新幹線開業の前日に起きたこの大災害は日本全体を悲しみに包んだ。そういった状況に配慮し、テレビで流れていたほとんどのCMは公共CMに置き換えられてしまった。もちろん、このCMも例外ではなかった。従来の放送も九州内だけであり、おまけに1週間で放送中止、そんな状況にあって、のCMはひっそりと忘れ去られてもおかしくない、そんな存在だった。
けれども、誰かの手によってネットにアップロードされた動画がたちまち話題となった。「元気づけられる」「勇気がでる」「なぜか泣けてくる」などの感想が大きく拡散され、全国放送して欲しいという要望の声があがった。その声を受けて全国放送が行われ、またこのCMは多くの人に広がっていった。そして、CM自体が高く評価され、広告賞などの数々の賞を受賞することとなったのだ。
僕自身も、このCMには個人的な思い入れがある。僕は震災の直後に東京に移り住んだわけだが、それ以前は九州に住んでいた。そして、テレビCMで流れた「九州をウェーブでつなごう! 博多方面に見て左側を撮影するからみんな沿線にきてね!」という、このCMの撮影予告の呼びかけに答えて出かけたのだ。そう、まさにあの日、僕は新幹線に向かって手を振ったのだ。それだけでも思い入れが深いが、上京後もこのCMが心を支えてくれることとなった。
直接的に被災された方と比べるまでもなく僕の経験はたいしたものではない。何を大げさな、といわれるかもしれないが、それでも上京した僕はけっこう参っていた。
計画停電の噂も聞かれたので乾電池を山ほどもって上京したアパートは寂しいものだった。長さの合わないカーテンの向こうからはずっとサイレンが聞こえていて、その隙間から見た知らない町もなんだか妙に暗かった。店に行けば何も売っていない空の棚が居並んでいた。友達も知り合いもおらず、冷たいフローリングの床、殺伐とした空気の中で僕は参っていた。きっと寂しかったのだと思う。
当時はまだスマホをもっておらず、ネット回線も契約していなかったのでCM動画を見たのはまさに反響を受け、テレビで全国放送された時だったように思う。何かの情報番組の中でフルバージョンが流れた。
妙に勇気づけられ、泣けた。九州のことや当時のことを思い出してではないと思う。なぜこんなにも心を動かされるのかわからないが、とにかく頑張っていかないと、そう思い、様々なものがこみあげてきたのだ。
あれから、10年、なぜこんなにも心が動かされるかわからないが、節目ということで、令和の時代にこのCMを振り返ってみようと思った。いまだからこそ振り返ってみようと思った。実際に撮影された場所をこの目で見てみて、当時の状況と、それからの10年に思いを馳せてみたいと思ったのだ。もうそう思ったら「いくしかない」。思えば僕の10年はこんなことの繰り返しだった。
ということで、鹿児島中央駅にやってきた。鹿児島中央駅、もはや見慣れた風景だ。いつも鹿児島に来ると、SPOTというインターネットお出かけサイト界のヤクザみたいな存在により、いやいやながら日本縦断などをさせられるのだけど、今回は違う。聖地巡礼の旅だ。自分の意志と自分の腹、つまり自腹でやってきた。何も相談せずにやってきたので、これからの旅がSPOTに掲載される保証もない。それでも僕はやってきた。
ということで、この旅のルールを確認しておこう。いつもはインターネットお出かけサイト界のヤクザSPOT、略してヤクザの命令により理不尽なルールが制定されるが、今回はそうではないので、自分なりにやれる範囲のルールを制定しようと思う。
九州新幹線開業CM聖地巡礼の旅ルール
・動画の原典は前述した特別編180秒バージョンとする
このCMは複数パターンが存在する。15秒バージョンが5本、30秒バージョンが7本、総集編バージョンに、CMとしては異例の長さの180バージョン(放映用)などがあり、それらで登場する場面も微妙に異なる。それ以外にも特番などを含めると登場シーンはかなり多くなるが、今回は、前述のこのCMの制作会社T&Eが公開する「特別編180秒バージョン」のみを対象とする。ここに登場するシーンのみを対象とし、そのほかの映像もヒントには使わない。
・移動はレンタカー
感染拡大対策のため移動はレンタカーとする。公共の交通機関は使わない。また、聞き込みなどの地域住民との会話、飲食店の利用、ホテル宿泊は禁止とする。車中泊およびセルフレジのコンビニのみ買い物可能。
・深追いはしない
ヒントが過剰に少ないシーンや、そもそも10年の間になくなっているものもある。見つからない場合は深追いせず、次に移動する。全部を見つけるのではなく、どれだけ見つけられるかに重点を置く。
・明らかに民家な一軒家の場所は特定しない
迷惑をかけるかもしれないので
・期間は2日間とする
休みがそれだけしかとれなかった。
ということで、九州新幹線、聖地巡礼の旅、いってみましょう!
目次
1日目 11:00 JR鹿児島中央駅
鹿児島中央駅は新幹線の南の終着駅なのでこのように線路が終わる光景が見られる。実は、新幹線でこれが見られる駅はそう多くはない。終着駅の先に車両基地があったりするため、終着駅より先に線路が続くことが多いからだ。
九州新幹線の場合、途中の熊本に車両基地があるため、鹿児島中央駅より先には線路がない。だからこのようにブツリと線路が終わる。ちなみに突き当りの壁は商業施設の壁になっている。
SceneNo.001
さて、最初のシーンはこれだ。CMは鹿児島中央駅のホームの映像から始まる。ホームに詰めかけた多くの人々の満面の笑顔を捉えている。おばちゃんの笑顔が特に良い。
問題は、この映像がホームのどの部分かという点だ。よくよく画像を解析してみると、特徴的な屋根が映っていることがわかる。
赤で囲った屋根の形はなかなか特徴的だ。おまけに端っこが映っているのでホームの端から撮影していることがわかる。この屋根を撮影するには1号車である必要があるので、少なくとも鹿児島中央駅では1号車の左側(進行方向から見て)に備えられたカメラで撮影していることがわかる。
ちなみに、鹿児島中央駅新幹線ホームの右側(新幹線の進行方向から見て、この画像では左側)の壁と屋根はこのような形状をしており、あのように屋根が見えることはない。
全てを統合すると、あの屋根の見え方をするのは14番線から眺めた場合のみなので「14番線に入っていた1号車の車窓から左側を撮影した映像からCMが始まる」といえる。
その位置から見た光景がこちら。CM撮影時は七色の横断幕がホームに掲げられているが、写真中の赤で囲った部分の屋根が見えている。
ついでに新幹線の進路を確認しておく。九州新幹線は鹿児島中央駅を出発してすぐにトンネルが出現する。このトンネルは地図によるとけっこう長いので、抜けた先は鹿児島の市街地が終わり、いっきに山間の風景になっていると予想される。
CMでは駅を出てから何カットか市街地の風景があるので、この駅とトンネルの間の短い区間に何シーンか存在すると考えられる。
SceneNo.002
CMの2カット目がこれ。おそらく新幹線の高架と同じ目線に屋上があるビルだ。その上にキャラクターの着ぐるみがいて手を振っている。どういったキャラクターなのかはちょっとよくわからない。
とにかく、鹿児島中央駅を出たあたりの、新幹線の左側部分を捜索してみる。
このビルが怪しい。
駅から車で2分ほど、新幹線高架の脇に佇むビルだ。ただ、地上からだとその屋上の構造が分からない。CMの画像を見るに、もしこれがそのビルであるならば、屋上にもう一つ段がある形で壁があるはずだ。ただ、それが確認できない。まさか勝手に屋上に上がるわけにもいくまい。
ただ、この丸で囲った部分が完全に一致しているので、おそらくこのビルで間違いないだろう。
ダメ押ししておくと、CMに登場するビルの後ろに見えるマンションも大きなヒントになっている。
窓の構造からみるに、赤で囲ったマンションがそのマンションだ。10年の間にこのマンションの手前にもマンションが建ち、ちょっとわかりにくいけど1つ奥にもこれより高いマンションが建っていて、まったくもって見え方が変わっているが、マンション自体は10年前と変わっていない。
SceneNo.003
次のシーンがこちら。これは簡単だ。まず、武一丁目、三丁目というのぼりが見える。検索してみると、武一丁目は鹿児島中央駅周辺の地番のようなので、この公園も駅からほど近いこの場所にあるはずだ。駅からトンネルまでの区間で、新幹線高架の左側にある公園となると、その候補は1つしかない。
この西郷屋敷跡でビンゴだ。ここは明治になって西南戦争までの4年間、西郷隆盛が住んだ屋敷の跡だ。屋敷跡は公園として開放されており、遊具なども存在していた。
完全にビンゴだ。
ちなみにCMでは新幹線高架から公園を見下ろす形で撮影されているが、現在ではこの構図で撮影することは難しい。
新幹線高架と公園の間に真新しいマンションが建っている。そこそこ新しいマンションなので、おそらくこの10年の間に建設されたものだ。これがあるので現在ではCMのような構図で公園を見下ろすことは難しい。時間の流れを感じる。
SceneNo.004
次のシーンがこちら。いきなり難易度が上がりやがった。
土手みたいな場所で家族が手を振るシーンだ。傘を持っているので、撮影時は雨が降っていたのだろう。これはあまりにヒントがなさ過ぎて難しすぎる。このシーンでも頭を抱える難易度なのに、さらに、次のシーンはもっと難解だ。
SceneNo.005
難易度が高い。あと、奥さんと思われる人が持っている傘がATフィールドみたいで気になる。
2枚のカットに共通しているのが、植物しかヒントがないという点だ。10年という時間の経過を考えるとこの植物たちもまったくあてにはならない。刈り取られてごっそり景観が変わっている可能性すらあるのだ。
ただし、この光景は都市部ではなく、下手したら民家も怪しい場所であることだけはわかる。つまり、トンネルの先であることは間違いなさそうだ。とりあえず、トンネルの先に向かう。
鹿児島中央駅を出てすぐのトンネルはけっこうな長さがあり、そこを抜けると一気に山間のカントリーな風景に変わる。この山間部を走るというのがなかなかの曲者で、しばらくはトンネル、山間、トンネル、と細かく繰り返されることになる。つまり、トンネル以外の露出する場所にこの風景がある可能性が高い。
ここで問題となるのは、新幹線が露出する場所だ。基本的には山と山の谷間でわずかに露出するので、そこを探すとなるとなかなか難しくなる。なぜなら並行して走る道路がないからだ。
例えば、このように一瞬だけ露出する新幹線目指して、ぐわーと山道を迂回して移動していく。その際は山登りであることが多い。そこがダメだった場合は、また大きく迂回して山道をひた走り、次の露出ポイントを目指す。これが予想以上に時間がかかる。下手するとこれだけで一日が終わるレベルだ。ただ、それでも行くしかない。
とてもじゃないが、新幹線を追い求める旅とは思えない光景が広がる。こういったカントリーな場所をひた走り、わずかな露出ポイントをみつけていく。
このように、山の中に突如として新幹線が現れ、またトンネルに消えていく。こういった場所を探していくわけだ。
そこの景色を確認して、CMと一致しているか確認する。ちなみにここはぜんぜん違う。そして次の露出ポイントまで移動していく。
もちろん、大部分は山道をひた走るので、とんでもないカントリーな風景の中を走っていくことになる。
本当にこれは新幹線を追い求める旅なのだろうか。遭難するんじゃないだろうか。眼前に広がる進むべき道には舗装すらない。様々な疑問が心の中に浮かんできては消えていく。本当にこの先に新幹線があるのだろうか。
こんなことを繰り返すこと2時間半。ついになんか怪しい一帯に躍り出た。
なんか怪しい。
この丸で囲ったあたりの植生が、あのシーンの植物に似ている気がするのだ。さっそく向かってみる。
土手みたいになっている地形は似ているのだけど、問題は、その土手の角度だ。新幹線から見てやや角度がありすぎる。後ろの植物の感じは似ているけど、やや土手が低すぎるようにも見える。ちょっと怪しい感じだ。いずれにせよ、ヒントが少ないので決め手がない。
このATフィールドの場所に関してもかなり難しい。
地形的にはここがやや似ていると思う。ただ、決め手がないし、なんとなく違う気もする。CMの場所はもっと草が生えて荒れている。2時間半も探したけれども、上記の2点以上に似ている場所は見つけ出せなかった。仕方ないので次のシーンの捜索に移る。
SceneNo.006
つぎはこれ。
これはけっこう簡単だ。どう見ても新幹線の上を通る跨線橋だ。
新幹線の上を通る道路は実はそう多くはない。トンネルなどで下を通したほうが楽だからだ。新幹線の線路は高い位置にあることが多いし、設備も大きくなるので、一般の線路より上を通されることが少ない。現に、鹿児島中央駅からここまで僕が見た限りでは新幹線の上を通る橋は1本もなかった。
ただし、どうしても上を通したほうが楽になってくる場面がある。それが駅周辺だ。
駅周辺は道路が複雑に入り組んでいることが多いため、無理にでも上を通したほうが良い場面が出てくる。おまけにもともと在来線が通っていてその上を通る跨線橋があった場合、駅周辺は在来線と新幹線の距離が近く、ひとくくりにできる。そのまま新幹線の上を通したほうが良いというパターンが生まれてくる。つまり、このシーンは駅の近くである可能性が高い。次の新幹線停車駅である「川内駅」周辺が有力だ。一気に移動する。
まだ、あの高難易度シーンに納得がいっていないので、どこかにピッタリの風景があるのかもしれないと新幹線の高架を見守りながら「川内駅」へと移動していく。
川内駅へと近づくと、山間の風景が終わり、建物が増えてきて街並みを形成し始めた。そして前方にうっすらと目的のものが見えた。
わかりにくくて申し訳ないが、明らかに新幹線の上を通る跨線橋が見える。完全にビンゴだ。本当に新幹線の上を通る道路が駅の近くにあった。ここまで予想が当たると爽快感すらある。
目的の跨線橋は本当に川内駅の近くにあった。駅の駐車場に車を停め、歩いて跨線橋をのぼる。画像で見るとたいしたことないかもしれないが、もともと高い位置にある新幹線の高架を跨ぐ橋なのでなかなか高い。そこに上る道なのでけっこうな傾斜だ。完全に息が切れる。
ゼーハーいいながらもなんとか頂上にたどり着いた。
完全にビンゴだ。
CMと比べると柵の大きさが違うけれども、この場所の柵はけっこう新しいので、たぶん10年の間に作り替えられてたのだろう。ただ、壁面の角度やタイルが一致しているのでこの場所で間違いないだろう。当時はここに人が並んで手を振っていたのだ。
1日目 15:40 川内駅(鹿児島県薩摩川内市)
SceneNo.007
次のシーンがこれ。なにやら楽しそうに踊っている人たちがいる場面だ。これはもう簡単だ。どう見ても駅のホームだ。おそらく川内駅だろう。
川内駅は新幹線とJR在来線、肥薩おれんじ鉄道が乗り入れる駅だ。少し高い位置にある新幹線ホームから在来線ホームを見下ろすことになるはずだ。おそらくこの映像は新幹線ホームから見下ろした在来線ホームだ。さっそく駅に向かう。
ここだ。
地上から撮影しているので少々分かりづらいが、赤で囲った部分が在来線ホーム。奥の白い建屋が新幹線ホーム。ここから踊っている人々を見下ろしていたに違いない。と、考えて、「まてよ」っとなった。これはおかしい。絶対におかしい。
在来線ホームを見下ろすには青で囲ったあたりから撮影する必要があるのだけど、そうなると建屋が邪魔になるはずだ。窓枠とか柱が映像に映っていなければおかしい。この建屋がこの10年の間に新設されたことも考えたが、これはホームを覆う建屋だ。開業時はホームが剝き出しでしたってことはないと思う。
つまり、CMが撮影されたのはこの場所ではないということだ。この駅のどこかに、新幹線の建屋がなくて、おまけに在来線ホームを見下ろせる場所があるはずだ。さらに駅の中および周辺を徘徊する。
あった。
赤で囲った部分、ホーム上の極めて限定的なスペースで人々が踊り、それを青で囲った場所から見下ろしていた。そう考えるのが妥当だろう。ついでにいうと、緑で囲った部分のコンテナまで一致している。完全にここだ。
SceneNo.008
さて、次のシーンはこれだ。野球少年などがワサワサといるそこそこ広めの場所。おまけにアスファルトで舗装されているようだ。これはたぶん駐車場だろう。アスファルトがかなり濡れているので、当時はまあまあの勢いで雨が降っていたようだ。それでいてこれだけ人が集まるのはすごい。
こういった広いスペースはそう多くはない。新幹線から見える位置の駐車場を地図で確認してしらみつぶしにしていけばすぐにみつかりそうだ。
けっこう簡単に見つかってしまった。
今でも当時と同じように月極駐車場として使われているようだ。当時も駐車場だったと考えると、撮影の日は利用者に呼びかけて車を移動させてもらってスペースを作ったのかもしれない。
後ろの倉庫の壁の色と、窓の形状、ブロック塀の高さが完全に一致しているので間違いない。ここに野球少年たちがいて手を振っていた。
SceneNo.009
次のシーンはこれ。これはたぶん川の堤防だ。それもけっこう大きい川のようだ。この辺でこれだけ大きい川といえば川内川しかない。川内川はここからそう遠くなく、ちょうどこの駐車場から延びる道路を進めば行けるようなので移動してみる。
ここだ。
おそらくCM撮影時は川の堤防工事が終わったばかりだったのではないだろうか。コンクリートが新しい。十年が経過してすっかりと汚れてしまい、かなり印象が異なるが、コンクリートの形状からここで間違いないと思う。あと、この画像にはないけど、CMに一瞬だけ映る階段の手すりの形状も一致していたので間違いない。
ここまで調べてみてわかったことは、件のCMはきっちりと時系列に沿ってカットを繋げているという点だ。つまり、鹿児島中央駅から博多まで、進行方向から見て左側の車窓を映しているのだけど、見栄えがいいからと前後を入れ替えたりはしていない。きちんと流れに沿って繋げられている。これは大きなヒントだ。前後は入れ替えられていてめちゃくちゃな順番ですと言われたら一気に難易度が上がってしまう。
SceneNo.010
次のシーンがこれ。プールに水が張ってあって色とりどりの装飾が浮かべられているとても華やかなシーンだ。おそらく川内プールだろう。夏休みともなると子どもたちでいっぱいになる薩摩川内市の人気のスポットらしい。このCMの撮影は2月の真冬なので、本来なら営業しておらず水も張っていないと思われるが、撮影のためにスタンバイしたのだろう。よく見ると水着姿の人がいるので、2月だということを考えるとまあまあに狂気的だ。
地図で確認すると、川内プールもしっかりと新幹線の左側にあることがわかる。おそらく確定だろう。ここで、CMのカットは時系列順に並んでいるという事実が効いてくる。つまり、川の堤防のシーンとプールのシーンが並んでいるので、その間の景色はCMに登場しないことが確定する。わざわざ確認しながら進まなくても良いわけだ。これはかなり効率的だ。
川内プールに到着した。冬なので、もちろん営業はしておらず、その入り口も固く閉ざされている。人の気配もない。ひっそりとしている。
フェンス越しにプール内を確認する。しっかりと水が張られていた。冬だから水は張らないはず、撮影用に張ったんだとドヤ顔で解説したけど、普通に冬でも水、あった。水、張られていた。
とにかく、向こうに新幹線の高架が見えるので、このプールで間違いなさそうだ。
SceneNo.011
次のシーンがこれ。建物の屋上にやぐらっぽいものが組まれており、その上で消防士っぽい格好の人が何かのパフォーマンスをみせている。
冷静に考えると、この建物、少し形状がおかしい。民家の屋上にしてはその面積が小さい。おまけにいくらなんでも民家の屋上にやぐらを組んだりはしないだろう。そう考えると、これは消防局とかじゃないだろうか。消防局の訓練用のやぐらみたいなものだと考えれば、そこに消防士がいてパフォーマンスしていることも合点がいく。
ということで、薩摩川内消防局を調べて行ってみたが、ちょっと違う感じだった。こういった形状の建物もなかったし、なにより、新幹線の高架から遠いし、周囲の風景も違う。どうしたものかと悩みながら、何度も何度もこのシーンを再生する。すると、大きなヒントが映し出されていることに気が付いた。
これ、ENEOSの看板だろ。ガソリンスタンドだろ。つまり、新幹線高架の左側にあるENEOSを探していけばこの謎のやぐらに到達できる可能性が高い。心配なのは、10年前のENEOSが今も変わらず営業しているかという点だけだ。ガソリンスタンドは地下タンクの耐久年数の問題などでけっこうあっさりと商売をやめてしまったりすることがある。もう存在しない可能性もある。そこだけが心配だ。とにかくENEOSを調べていくしかない。
ENEOSあった。
新幹線高架との位置関係も申し分ないENEOSだ。10年間、商売を続けてくれていてありがとう。たぶんここで間違いない。その周囲の建物を捜索し、謎のやぐらを探す。
新幹線高架とENEOSの位置関係から考えて、ここしかないという位置に薩摩川内水道局があった。これじゃないのかな。
この部分じゃないの、あのヤグラ。
ただまあ、よく見ると構造も色も若干ちがうように見える。つまり決め手に欠けるのだ。仕方がないので、さらに詳細に検討するため、別のコマのCM映像を引っ張ってくる。
謎のやぐらの向こうに「酒」と書かれた看板が見える。この看板が薩摩川内水道局の前にもあった。
10年の経過で看板が新しくなり、色合いもフォントも変わっているけど同じ位置に「酒」の看板ある。これで謎のやぐらは薩摩川内水道局で確定だと思う。
ただ、そうなると、なぜ水道局の屋上に消防士がいてパフォーマンスしているのかという問題が出てくる。いくら新幹線から撮影するからといっても、いい位置にやぐらあるやんけと消防士がドヤドヤと水道局に押し掛けてきて屋上を占拠とは考え難い。そんなもん、もはやテロじゃないか。
ただ、この薩摩川内水道局の建物を眺めていたら答えみたいなものが見えてきた。
ちょっと手前の小屋が邪魔で分かりにくいのだけど、この水道局、赤で囲ったあたりの下の構造が大きなガレージになっている。こんな大きなガレージはあまり水道局には必要ないというレベルだ。もしかしたらなんだけど、これは消防車や救急車が待機するスペースだったんじゃないだろうか。消防局にありがちな、大きめのガレージがある構造、水道局の建物はその構造によく似ている。
つまり、10年前、ここは消防局だったのだ。それが何年かして、先ほど見に行った大きな消防局に移転、空いた建物に水道局が入ったのではないだろうか。そう考えると屋上で消防士がパフォーマンスしていたことも説明できるし、水道局らしくないこの建物の構造も説明できる。うん、たぶんきっとそうだ。
さて、やぐらの謎も解明できた。はりきって次のシーンいくぞ。
SceneNo.012
またクソ難易度が高いシーンきたな。何のヒントもないじゃないか。ただ草が生えているだけだ。
ただ、後ろに映る道路との間に柵みたいなものがないので、公園というわけでもなさそうだ。といっても草が伸び放題でもないので、ある程度は管理された敷地なのだと思う。こういった敷地は10年経ってもこの状態で放置されている可能性は低いと思う。もう別の何かになっているのではないか。
一応、新幹線の左側を監視しながらこのような空き地を探してみたが、見当たらなかった。あまりに難しすぎる。
SceneNo.013
次のシーンはこれ。全てのシーンがこうであってほしい。ヒント山盛りだ。なんらかのビルにカラフルな傘が飾られている。この7色のカラーリングが九州内の7つの県を示しており、九州が一つになることを示している。CM内でも随所にみられるカラーリングだ。
そして、横断幕にしっかりと「鶴丸会館」と書かれている。調べてみると次の「出水駅」の近くにあるレストランらしい。宴会や披露宴にも対応するなかなか大きな施設のようだ。こうやって確実に場所が判明すると一気に移動できるので助かる。ここまでかなりの時間を費やして捜索してきたが、動画的にはまだ21秒部分である。全部で180秒あることを考えると気を失いそうになるくらい先が長い。
鶴丸会館に到着した。なかなか歴史のありそうな重厚な佇まいだ。新幹線の位置関係から考えて、この会館の裏側が撮影スポットだろう。
うん、このアングルだ。間違いない。というかこの建物、なかなか奥行きがある。かなりの広さがあるレストランみたいだ。
完全に一致だ。ちなみに、横断幕は「鹿児島-青森 全線開通」となっており、九州新幹線だけでなくこれによって鹿児島と青森が結ばれたことを祝っている(10年前は北海道までつながっていない)。なかなかグローバルな視点だ。
1日目 17:30 出水駅(鹿児島県出水市)
SceneNo.014
次のシーンがこちら。けっこう背の高いマンションだ。タワマンだろうか。
こういってしまうとなんだけど、出水市はそこまで高いビルが多いわけではない。これくらい背の高いマンションでおまけに新幹線の左側となるとかなり絞ることができる。おそらくここ鶴丸会館からポツリと見える出水駅前のマンションに間違いない。
CMと比べて色合いが違う感じもするが、おそらく光の加減だろう。バルコニーの構造、タイルと手すりが一致しているので間違いない。新幹線から見た時の角度も完璧だ。きっとこのマンションだろう。10年経過してもなんか新しいマンション、みたいないい外観をしている。
次のシーンに移る。
SceneNo.015
出水市のシーンは答えが分かりやすくてよい。このシーンも、どこかの工場なんだろうなあと見ていたが、よくよく見ると横断幕に「マルイ農協」とかいてある。ついでに指摘させてもらうと、皆さん、作業着を着ており、仕事中に「お、新幹線がとおったぞ」と忙しさの合間を縫って横断幕を準備してくれた感じなのだけど、そう考えると一人だけ鳥の着ぐるみの人のテンションが異質だ。この人だけ仕事中じゃない。完全に新幹線に狙いを絞っておちゃらけている。空気読めない人みたいになっている。なんなんだ、この人。
調べてみると、マルイ農協はここ出水市に本拠を置く企業で、“ひな”の生産、飼料の製造、鶏卵・鶏肉の生産、処理加工、販売、物流と養鶏のことならなんでもやる会社らしい。なるほど、だから鳥の着ぐるみか。あの人も遊んでいるわけじゃなかった。たぶん、広報活動用に会社に着ぐるみがあるんだ。そう、広報の人だ。決しておちゃらけているわけではない。失礼した。
そんなマルイ農協が出水駅から近い場所にあるようなので、そこに向かってみる。
マルイ農協あった。飼料などを保存しておく塔だろうか、そういった工業的な風景が広がっていた。なかなか大きい工場みたいだ。けっこう日が傾いてきてしまってエヴァのワンシーンみたいな写真が撮れてしまった。
階段の形状、新幹線からの角度を考慮すると、おそらくこの塔が撮影場所だろう。そっかあ、ここに鳥の着ぐるみの人がいたのか、と妙に感慨深かった。
SceneNo.016
SceneNo.017
SceneNo.018
SceneNo.019
CMはここから数カット、特定が難しそうな高難易度の田園風景が続く。ただし、若干のヒントはあるので、それを手掛かりに捜索を進めていく。ちょうどいいことに出水駅から先はそれっぽい田園風景が広がる地帯だったので、おそらくここだろうと目星をつけていく。
まず、この広大な田園風景のシーン。一見すると手掛かりがなさそうに見えるが、目を皿のようにしてみると、「祝」と「!」の文字の間に異質な形状の建物が見える。これはおそらく「出水市ツル博物館クレインパークいずみ」だ。ホームページで確認すると建物の形状が一致している。
出水市は日本一のツル渡来地として有名で、秋から冬にかけて1万羽近くのツルが飛来する。ツルが重要な観光資源であり、町のシンボルでもあるため、それに関連した施設も数多く存在する。
ツル博物館との位置関係から考えるに、このあたりの位置がずらーっと人が並んでいた場所になると思う。
この道路は電線があるので、人が並んでいる場所より少し奥、ポツポツと車が停まっている道路だと思われる。もう1本だけ新幹線よりの道に人が並んで手を振っていたのだろう。
このシーンはあまりに情報量が多い。わけのわからない黄色いキャラがいるし、それを撮影している人もいる。撮影は2月なのにこいのぼりまで飾ってある。そして、この少し右側に「結婚します」という紙を持ったカップルもいる。情報が多すぎ。そんな情報過多の場面において最も重要なのは橋の存在である。橋があるということは川がある。この場所と規模、田園風景という状況から考えて、用水路的な川が存在するはずだ。その辺に目星をつけて捜索してみる。
あった。
やはり用水路があった。
奥にポツリとツル博物館が見えるので、一連のシーンはほぼ同じ場所を映していることが分かる。へえ、ここに謎の黄色いキャラがいたのか、ここに鯉のぼりが、と10年経っても全く変わらない景色に感動すら覚えた。
この2カットはほとんどヒントがないように思える。けれども、特徴的な二本の道路がとっかかりになる。手前と奥、かなり近い距離に並行して道路が走っている。こういう形状の場合、その真ん中には用水路的な川が通っている。
完全に一致する地形を見つけた。ここで間違いないだろう。この道路上の場所が上の2つのシーンの場所だ。
高難易度シーンもなんとか見つけることができて大満足だ。
1日目 18:09 新水俣駅(熊本県水俣市)
SceneNo.020
次のシーンがこれ。「祝!新水俣」とテロップが入っている。このCMは時系列順に並んでいることが確定しているので、次のシーンは新水俣駅周辺であることが分かる。つまり、ここ出水から一気に水俣市まで移動できるわけだ。ありがたい。
また、このシーンは川が映っており、その川がゆったりとカーブしているように見える。そして川の向こうには学校が見える。新幹線の左側でそのようにカーブし、学校がある地形を地図から探すと、新水俣駅手前の水俣川がこれに一致する。一気にそこまで移動することにした。新幹線の左側を監視せずに進める区間は本当に貴重なんだ。
水俣川に到着した。川が静かに流れる落ち着いた場所だ。ここではけっこう高い位置に新幹線の高架が通っている。川沿いはちょっとした遊歩道みたいになっており、その先に問題の場所があった。
完全にここだ。全く変わっていない。CM映像の右下部分の斜面がこの斜面にあたる。
この位置からだと少しわかりにくいけれども、その奥には水俣第一中学校があるので地理的条件も一致している。完璧だ。
SceneNo.021
次のシーンがこれ。はっきり言って楽勝っぽい。地形がかなり特徴的だからだ。このような大きな崖みたいな場所はそう多くはないはずだ。ただ、地図では「ここは崖です、かなり段差があります」みたいな表記はないので分からない。やはり新幹線の左側をくまなく崖を探していくしかない。
それっぽい場所に躍り出た。
この崖がめちゃくちゃ似ている。下を通る道路があり、高い場所を国道3号線が通っている。そこを隔てるように民家の裏に崖があった。高さといい、壁面の模様といい、溝みたいな形状、上部の柵までほぼ一致している。ただ、崖自体はかなり似ているのだけど、周囲の状況が決め手に欠ける。
CMによると、この崖の前面にはかなり立派な三角屋根の家がある。落ち着いてみるとめちゃくちゃ大きな家だ。こんな大きな家を見落とすはずはないのだけど、この崖の前面にこのような家は存在しない。こんな立派な家をそうそう取り壊す理由も見当たらない。つまり、ここではない可能性がある。別の場所にさらに似たような崖がありそこが撮影場所なのかもしれない。そう考えた瞬間、あることに気が付いた。
実はこの場所、10年前は着工もしていなかったであろう、新たな「芦北出水道路」の建設が進行中だ。どうやら崖の上部の国道3号線をまたぎ、さらに新幹線高架の上を通って出水市まで行く高速道路が建設中のようで、かなり大きな橋脚が建造されていた。
あの大きな三角屋根の家は、この橋脚のために立ち退いたのではないだろうか。位置的状況から考えても、きっとそうだと思う。だから、やはりこの場所で間違いないのだろう。崖は変わらないのにその周囲が変わる。10年の月日の重みを感じた。
SceneNo.022
次のシーン。仕事中に抜けてきたっぽいおじさんが傘を振るシーン。これも映像の感じから同様の崖上の光景である可能性が高い。つまりここからそう遠くない場所だ。さらに、後ろに見える建物はその形状からガソリンスタンドのように見える。ガソリンスタンドでこのカラーリングは、ENEOSだ。ENEOSはいつも僕らにヒントを与えてくれる。そう考えると、右上に見える看板も「45分車検」って書いてあるように見える。やはりENEOSに違いない。
ただ、崖の上など周囲を捜索してみるが、肝心のENEOSが見つからない。ここではない場所なのだろうか。別の場所に似たような崖があって、そこにENEOSがあるのだろうか。そう考えて移動しようとした瞬間、ある事実に気が付く。
実はこのおじさん、とても特徴的な場所に立っている。そう、フェンスが金網状のものから柵状に切り替わる境目なのだ。
同じ崖の上に同様のフェンスの境目が存在する。やはりおじさんが手を振っていたあのシーンは同じ崖での撮影だったのだ。ただし、その背後のENEOSは、フェンスの後ろに建設中の橋脚が見えることからも分かるように、橋脚の建設のために立ち退きしている。だから見つからなかったのだ。
変わらない場所もあれば、劇的に変わる場所もある。やはり時間とは流れているのだ。10年とはそんな時間だ。
SceneNo.023
次のシーンがこれ。めちゃくちゃ風船持っている。
ヒントがありそうでなさそうな、かなり高難易度な場所だ。ヒントは畑と道路とガードレール、こんな場所、日本には無限に近いくらいある。そしてなによりも予想以上に調査に手間取ってしまったのですっかり日が落ちてしまった。画像を見る限り、かの場所には街灯がなさそうなので、いまごろすっかり闇に包まれているはずだ。さらに難易度が高い。
ただ、ここまで調査してきて一つ、気づいたことがある。CMに登場するシーン、実際に場所を特定してみると駅の周辺であることがあまりに多い。駅の前か後に集中している印象だ。
これは2つの要素が関係していると考えられる。まず、駅周辺はやはり人が集まりやすいし、その街の特徴をあらわした場所が多い。結果的にCM映えのある絵をとりやすいので撮影場所が駅周辺に集中する。
そしてもう一つの要素が最も大切だ。新幹線の速度だ。このCMの撮影秘話として有名な話だが、当時の撮影時、本来の速度よりかなり遅く新幹線を走らせて撮影してみたそうだ。それでも速度が速すぎて上手に撮影できなかったようだ。仕方がないので、さらに遅い速度で撮影したが、そうなると運行スケジュールに遅れが生じる。そこで、山の中やトンネルなど、撮影に関係なさそうな場所で速度を上げ、遅れを取り戻したらしい。これによって集中的に撮影されている場所と飛ばされている場所に明確に分かれているのではないだろうか。もっとも速度を落とすのが駅の前後になるので必然的に駅周辺のシーンが多くなる。
つまり、この謎の場所も駅の前後である可能性が高い。ということで、駅周辺の場所を捜索したが、完全に日が落ちてしまったので見つけることはできなかった。仕方ないので断念した。
SceneNo.024
次のシーンは新八代駅である。
一気に新八代駅まで移動した。ただ、周囲は完全に闇に包まれているのでこの日は就寝となった。一日目の捜索はこれでおしまい。朝日が昇ったら捜索を再開する。
2日目 6:00 新八代駅(熊本県八代市)
朝日が昇ってきた。
めちゃくちゃお腹が減ったのだけど、ルール上、飲食店禁止、コンビニもセルフレジ以外が禁止、となっているのでちょこちょこ通りがかりのコンビニを覗いているけど、いまのところセルフレジは確認できない。本当にお腹が減ってきた。
さて、CMのこのシーンだが、これは新幹線駅横の「がめさん公園」だろう。新幹線新八代駅開業にあわせて同時に整備された公園で、かなり広い。野外コンサートができるステージまであって多目的に利用できる公園だ。
CM撮影時、公園では撮影に合わせたイベントが開催されていたらしい。イベントMCまで参加した盛大なものだったようで、めちゃくっちゃ人が集まっていることが分かる。
その公園がここだ。遊具とステージの位置が一致している。どうやら地元の人のランニングコースになっているようで、薄暗い早朝からまあまあ人が多い。
新八代駅と公園の位置関係がこうなので、駅に入る前に減速したタイミングで見下ろすようにして撮影していることがわかる。こういう広大な公園は分かりやすいのでガンガン撮影して欲しいところだ。
SceneNo.025
次のシーンがこれ。クッッッッッッソ難易度が高い。
まいったな。またノーヒントだ。
あえて絞り出すようにしてヒントを探すと、おそらくこれは道路ではなく、畑か田んぼの真ん中じゃないかという点と、畑を区切る段差があるという点だけだ。
それにしても、この女の子3人組のテンションが高い。アフロのカツラをかぶりマントまでつけて畑の真ん中で大ハッスルだ。僕なんかは、そこまでのテンションにならないし、なったとしてもアフロまでかぶったのに新幹線が来なかったらどうしようと考えるタイプだ。すごすごとアフロ姿のまま畑から撤退する絵図ばかり考えてしまう。そんなの地獄じゃないか。そういう意味では、何も怖いものなんかない、と言わんばかりの3人組、それが気持ち良い。この場所、なんとしてでも特定したい。
新八代駅を超えた一帯は、かなり広い田園地帯が広がっている。新幹線高架の左側に絞ったとしても、その捜索範囲はかなり広い。おまけに、新幹線と道路が並行している区間がほとんどないので、ギザギザに捜索していく必要がある。めちゃくちゃ大変だ。そして、この三人組の景色に当てはまりそうな場所が無限に近いくらい存在する。
いろいろな場所を捜索し、導き出した結論がこちら。たぶんここだ。
こちらはアフロも装備していない状態なのでズカズカと畑に入っていくわけにはいかないので遠くからの撮影になるが、丸で囲ったあたりの段差がCM映像とよく似ている。決め手はないがこの辺なんじゃないだろうか。たぶんきっとそうだろ。もうそれでいいよ。アフロかぶってないし。
SceneNo.026
次のシーンがこれ。厳しい。本当に厳しい。こういった道路があって、用水路があって畑がある。そんな場所はこの辺一帯に無数に存在する。ただ、カメラの角度がアフロのシーンに比べてかなり下に向けている感じがするので、新幹線高架に近い場所なのだと思う。そうじゃないとここまで見下ろした絵にはならない。
唯一のヒントがピンクの旗を持ったおばさんの後ろに積み上げられた石だ。これだけがヒントだが、これが10年後もそのまま残っている保証はどこにもない。というか、1年もしないうちに片づけられそうな雰囲気すらある。かなり厳しい。
高架下を調べていくが、やはりここ10年でかなり景色が変わっている印象だ。同じく田園風景ではあるのだけど、別の田園風景みたいに感じてしまう。
そして、この高架付近の道路ってやつがなかなか曲者で、突然に細くなったり、予想外の場所で曲がったりする。
なんの脈略も、予告も、伏線もなしに、いきなり行き止まりになることもある。工場のサビみたいなものが染み出してきてかなり絶望感が溢れる行き止まりを演出してくれる。バイオハザードみてえな行き止まりだ。
四苦八苦しながらくまなく調べたが、やはり石は片付けられてしまったのか、該当の場所を見つけることができなかった。
SceneNo.027
次のシーンは川だ。ここは少々印象的なシーンで、川のほとりの畑の部分から人々がズラーっと列を形成していると思ったら、川の中にまでボートを浮かべて列が延長されている。川はいい。なぜなら地図で調べるだけだし、10年後も変わらず川でいる可能性が高いからだ。
ある程度の大きさの川がある新幹線の左側、となると捜索対象はかなり限られる。順番にそれを調べてつぶしていく。
これが大鞘川(おざやがわ)だ。新幹線との位置関係、川の広さともに申し分ないが、たぶんここは違う。川の堤防の様子が大きく違うからだ。
CM映像の青で囲った部分に着目すると、畑の部分から土手まで人が並んでいるのだけど、その人の配置から段差がほとんどないことが分かる。ほぼフラットだ。ここは土手や堤防といった形状ではないと考えられる。それに比べて大鞘川の土手はかなり段差がある。おもいっきり堤防だ。
さらに、赤で囲った場所に見える大きな建造物が決め手になるが、この位置からはそれが見えない。
CMと同じ構図になるようにしてみても、その背景が大きく異なることが分かる。だからこの川は違う。
次に向かったのが、ここから少し離れた場所にある氷川だ。
氷川に到着した。あまりにでかすぎる。
もともと大きな川のようなのだけど、新幹線とクロスする部分は河口付近にあたるため、さらに広くなっている。水位が低く沼みたいになっている場所もあり、あまりにCMのイメージと違う。船だって浮かばなさそうだ。もちろん、目印の建物も見当たらない。ここも違う。
その氷川からあまり遠くない場所にある「ひろぎ遊水地」に向かってみた。ここは八間川が注いでいるが、正式には川ではなく遊水地になっている。川より少し広くなっている場所だ。遊水地ということで候補から外していたが、その遊水地が川に見えていただけかもと思い、向かってみた。
完全にここだ。ここだったか。
まず、ここは遊水地ということで、川のように高い土手や堤防がない。先ほど述べた、フラットな地形に該当する。なるほど、遊水地だから堤防がなかったのだ。
大きさや形もそっくりだが、なにより、おそらく水門だと思うけど、その形状が一致している。
目印の巨大建造物も確認できた。ちなみにこれは八代農協の施設だと思う。10年前に比べてちょっとサビがきている。
ということで、川だとばかり思っていたシーンは遊水地だった。
遊水地で撮影をしていたら、ちょうどいいタイミングで新幹線が通った。六両編成の「つばめ」だろう。10年前の人々と同じ位置に立って手を振った。
SceneNo.028
次のシーンがこれ。ビニールハウスの上に人が乗っている。よく見るとハシゴまで持ってきていることがわかる。どういうテンションなのだろうか。
まあ、人が乗っても大丈夫なのだから、かなり頑丈なタイプのビニールハウスなのだろう。ビニールハウス前に置かれた燃料タンクが決め手になりそうだ。
遊水地を越えた一帯は相変わらず田園地帯が広がっており、ポツポツとビニールハウスが見えた。
おそらくこのうちのどれかで撮影されたのは間違いなさそうだ。ただ、僕は素人だからよくわからないのだけど、ビニールハウスはどれくらいの周期で建て替えたり、移動させたりするものなのだろうか。10年前のビニールハウスがそのまま残っている可能性はどれくらいあるのだろうか。あまり可能性が高くないような気がする。
ダメだ。見える範囲すべてのビニールハウスを調べたが、どれもこれも人が乗れる頑丈な構造ではあったが、CMのシーンのような並び、燃料タンクに一致するものはなかった。この10年で大きく変わってしまったか、もしくは何かを見落としたかだ。仕方がない。あまり深追いせずに次のシーンに移ることにする。
SceneNo.029
また難易度が高いのがきた。いくらなんでもノーヒントすぎる。地形からこの場所を特定するのはほぼ不可能に近いので、そこで並んでいる人々の状況から推理していく。
まず、手に持っている横断幕は、このために自作したものだろう。微妙に手作り感がある。「さくらちゃん」とは新幹線の名称だ。九州新幹線は「みずほ」「さくら」「つばめ」の三種類が走る。これらを皆で作って持ってくることができる環境の人々だ。
よくよく見ると、並んでいる人々は全員もしくはそのほとんどが女性のように見える。そして、なんとなくだが仕事中に抜け出してきた雰囲気だ。女性が大人数で働く職場があって、ちょっと新幹線を見に行こうか、じゃあ「さくらちゃん」という横断幕を作ろう、となった可能性がある。その際に、紙や色ペンがふんだんにある職場。その流れが自然である場所。そう幼稚園、保育園、なんらかの支援施設の可能性が高い。新幹線の左側には現時点ではそういった施設はないようだが、右側にはあった。そこから歩いてきたのではないだろうか。
その観点で、該当する施設を中心に場所を捜索してみたが、やはり見つからなかった。やはり、あまりにノーヒントすぎる。
SceneNo.030
次のシーンはこちら。また川だ。
画像を見るに、車が見えるので、堤防の上を車が走行できるタイプの川だ。これは簡単そうだ。
やはり簡単に見つかった。砂川の堤防だ。道幅、道の角度、段差、コンクリート壁の高さ、すべてが一致している。ここはかなり良いアングルで新幹線を見ることができるポイントだ。川を渡る新幹線がなんとも美しく映えそうだ。
さて、こうして追っかけているこのCMは時系列順に並んでいることはすでに判明している。シーンの前後は入れ替えていない。つまり見つけることができなかった「ビニールハウス」と「さくらちゃん」のシーンは、ボートを浮かべていた「ひろぎ遊水地」と、ここ「砂川堤防」の間に必ず存在する。その距離はまあまあ短い。つまり本気を出してローラー作戦をやれば見つかる可能性もある。
もう一度、戻って徹底的に捜索するべきでは、徹底的にローラーすべきでは、と思ったが深追いはしないルールなのであきらめた。
SceneNo.031
次のシーンがこれ。巨大な建造物の上に人が座って手を振っている。おそらくではあるが、農業系の何らかの施設、それもおそらくお米関係のものだと思う。こんな巨大建造物ははっきり言って目立つので完全に楽勝だ。完全にもらった。
と、思ったのだけどこれがまあ難航した。ずっと新幹線の左側を探し続けるのだけど、ぜんぜん気配がない。こんな巨大なもの見つけられませんでしたじゃ済まないぞと、かなり入念に探したのだけど本当に見つからなかった。この10年でこの建造物がなくなったことも考えたが、そうそう取り壊されるような規模のものでもない。本当にこれは不思議だった。おそらくなにか重大な見落としがあるに違いない。
そうこうしているうちに、味のある鉄橋がかかる川に到達した。手前の白い橋が新幹線高架、奥の鉄橋が在来線の橋、緑川に架かる橋だ。これはあれだ。次のシーンの場所だ。謎の建造物が見つからないまま次のシーンの場所まで来てしまったのだ。
SceneNo.032
橋の下に戦隊ヒーローがいるという、ちょっとよくわからないシーンだ。新幹線からこの形で橋脚が見えて、川がある場所といえばここしかない。つまりこの前のシーン、あの巨大建造物を見落としたということだろう。
橋脚の構造が完全に一致している。中央部がボコッと出ているのが特徴だ。
本来ならこれでクリアなのだけど、ちょっと自信がない。10年前に比べてあまりに草がボーボーに生えて荒れ果てているからだ。河川敷に降りられるようだったので、降りて近づいてみたが、途中からジャングルレベルで草が立ちはだかり、地面もぬかるみまくっていて沼みたいになっていた。ちょうど戦隊ヒーローがいたあたりは沼の中心だ。10年でこんなに荒廃するか、と言いたくなるレベルだ。
特に赤で囲った特徴的なパネルが確認できればいいのだけど、いかんせん、ここに近づけない。完全に人類未踏の地みたいになっている。頑張って近づいてみたけど、もうこれ以上進めないという状況になってしまった。ということで川の逆側から確認することにした。たぶん、この次のシーンは対岸で撮影されているので一石二鳥だ。
SceneNo.033
手前側にお相撲さんがいる。撮影は2月だ。川辺だ。風も冷たかったと思う。お相撲さんはずっとこの状態で新幹線が来るのを待っていたのだろうか。かなり寒かったと思う。
対岸のお相撲さんポイントにやってきた。柵のところはこの10年で少し変化しているが、橋の付け根の部分が完全に一致しているので間違いないだろう。ここにお相撲さんがいたのだ。
ここからさきほど確認できなかった対岸の戦隊ヒーロースポットを確認する。特徴的なパネルが一致しているのでこちらも間違いないだろう。それにしても10年でこれだけ荒むか。
SceneNo.034
次のシーンがこちら。風景からわかるけど、完全に景色が都市部になってきた。熊本駅が近いということだ。こちらはとても簡単で、陸橋に地名が書いてある「島町歩道橋」だ。さらに標識にも「熊本港9km」と書かれている。場所の特定は容易だ。すぐに移動する。
歩道橋は10年前のまま存在していた。本当に何も変わっておらず、そのまま存在する。ただ周囲の状況はずいぶんと変わっているようで、CMのシーンでは、歩道橋の左側は畑があるように見えていた。これが現代ではきっちり開発されていて、住宅展示場や飲食店が立ち並ぶ商業エリアになっている。
SceneNo.035
次のシーンはこれ。一瞬、またノーヒントの田園風景か、とビビったが、もう熊本の市街地に入ってしまったのでおそらくそれはない。ということは、このシーンはおそらく川なのだろう。きっと川の堤防だ。うすうす感づいていたけど、このCM、やたら川のシーンが多い。逆に言うと、多くの人がこういう場合に集まることができる場所、といえば川の河川敷とかなのだろう。
SceneNo.036
ついで言ってしまうと、次のシーンのこれも川だろう。地形的にそうとしか思えない。このCMで川が出てくるときはだいた両岸がセットででてくるので間違いなさそうだ。
ここから熊本駅までの間で、新幹線とクロスする形の比較的に大きな川は「白川」だろう。十分にあたりをつけて向かってみる。
おそらくここ「白川」で間違いないと思う。川のシーン自体にはヒントとなるものが映っていないので確定できず、状況証拠に頼るしかないが、ここで決まりだろう。ただし、この2つのシーンは川の両岸と予想したが、熊本駅側の川岸はCMのシーンとかなり様子が違うので、この2つのシーンは両方ともこちら側の川岸、それもかなり近い位置を撮影していると思う。
SceneNo.037
次はこのシーン。これはなかなか難しい。田園の中にポツンというマンションなら問題ないが、もうずいぶんと熊本市の都市部に入ってきたのでポコポコとそこかしこにマンションが建っている。建物がたくさんあるので見通しも悪く、捜索は難航した。
ただ、映像から察するに、かなり新幹線高架からかなり近い場所にあるマンションとあたりをつけていたが、見つからなかった。
「もしかして、CMの新幹線カメラはけっこう遠くも映せるのでは?」
そう考え、ちょっと奥まった場所、つまり新幹線から離れた場所のマンションも捜索した。
あったわ。
映像から受ける印象と実際のマンションのタイルが違うので最初は気づかなかったが後ろの建物の窓の形が一致しているので間違いないと思う。予想以上に奥まった場所にあったので、当時の撮影はけっこう離れた場所でも捉えている、と認識を改めなければならない。もしかしたらこれまでの見落としシーンはこれが原因かもしれない。つまり、ここからは捜索範囲が広がるということだ。
SceneNo.038
SceneNo.039
次がこれ。この2つのシーンはおそらく同じ場所だと思う。2枚目は特に好きなシーンで、子どもと一緒にめちゃくちゃはしゃぎながら走るお母さんと思われる人、これが良い。子どもよりはしゃぐお母さん、よい。このシーンは地形が特徴的なので、こういったカーブを伴って川と並行に走る場所を地図から絞っていく。
ただ、絞り込みは簡単だったが、この場所がガチガチの住宅街の奥にあり、絶対にここ、通れないでしょってレベルのめちゃくちゃ細い道や、こちらの車体を削りにきているとしか思えないブロック塀に肝を冷やしながら進んだので大変だった。
到着した。
CMのシーンの背後に映っているものは、八嶋神社の一部だろう。ちょうど、地域の人々が協力して境内を掃除しているところだった。
CMの映像とほとんど変わらない風景がそこにはあった。まるでここだけ時が停まったかのようだ。この川は坪井川というらしく変わらずゆっくりと流れていた。カーブの形状とコンクリートの形状が完全に一致しているので決まりだろう。この道路をお母さんと思われる人が走ったと思うと感慨深い。
やはり、田園地帯よりも都市部のほうがヒントが多くなるので探しやすい。ここから熊本駅まではずっと都市のはずなのでそう苦労なく進んでいけるはずだ。なんでもこいや。
SceneNo.040
と言った矢先にとんでもない高難易度シーンが登場してきたな。
これはどっからどうみても造成地だ。これから分譲して家を建てるぜって雰囲気がプンプンしている。つまり、この場所はこの直後に家が建ち並んで、いまはもう全く違う景色になっているに違いない。こりゃまいった。
この坪井川から熊本駅までの間で、比較的新しい家が建ち並ぶ住宅地。それも白い大きな壁からも分かるように、小高い丘などの斜面に作られた住宅地である可能性が高い。その情報をもとに場所を絞り込んでいく。
なんか見つけた。
もう熊本駅が間近という場所だ。
斜面に並ぶ比較的に新しい家々。左側に映るコンクリートの壁の形状がとても似ている。と思ったのだけど、たぶんここは違う。なぜなら、新幹線高架からの距離が近すぎる。ここを映す場合はもっと見下ろす形の映像になると思う。つまり、問題の場所はもうちょっと高い位置にあるはずだ。
それは予想通り、丘を一段高い位置に上がった場所にあった。
完全にここだ。家が建っているので壁の全体像が分かりにくいけど、下の段のちょっとした段差の壁と、上の段の大きな壁の形状が一致している。CM映像のプレハブがあるあたりだ。
そうか、こんな立派な高級住宅街になったんだ。ほんと、めちゃくちゃ閑静な住宅街だ。すごいな、10年って。
SceneNo.041
次のシーンがこれ。野球をやっているシーンだ。ここもけっこう好きなシーンで、野球を真剣にやっている風に見えて、後ろの選手が試合そっちのけで新幹線に手を振っている。ついでに、CM映像を見たらよくわかるけど、後ろの校舎の窓に「ランチルーム」っていう張り紙がされているのが良い。
地図で確認し、位置的におそらくこの近くにある「春日小学校」だろうとあたりをつけて移動する。熊本駅までの間にある学校はここしかない。
校舎が一致しているのでやはりここで間違いない。ただ、バックネットは色が変わっているしコンクリ部分が綺麗になっているので、おそらくこの10年で改修があったのだろう。あと、「ランチルーム」の張り紙はなくなっていた。もしかしたらランチルームは廃止になったのかもしれない。みんなどこでランチをとるのだろうか。
撮影時は、無理をすれば新幹線からこの校庭が見えたのだろうと思う。
ただし、現在は新幹線と小学校の間に比較的に新しい立体駐車場が建っているため、おそらく見ることができない。つまりこのシーンはもう失われてしまった新幹線の風景なのだ。
2日目 9:42 熊本駅(熊本県熊本市)
SceneNo.042
次のシーンは熊本駅だ。九州新幹線の中間駅であり、すべての車両が停車するこの駅は、新幹線ホームの数も多い。ちなみに、2021年現在、熊本駅周辺は再開発中であり、多くの商業施設がオープンしている。
CMに映し出されている柱の形状、奥の壁、屋根の形状から総合して撮影時はこの12番ホームに入線してきたと考えられる。
SceneNo.043
次のこのシーンも、これまでの流れから考えると熊本駅を出発してすぐの場所にあるはずだ。それにしてもこの地形はなんだろうか。ちょっと高い場所にある公園か何かだろうか。とりあえず、こういう地形ならそう苦労せずに見つかるはずなので移動してみる。
地形的条件が一致するのはこの場所だ。長谷寺と清水寺と書いてある。おそらく階段を上った先が境内になっているんだろう。新幹線の高架もすぐ横にある。
ここで間違いなさそうだ。本当に熊本駅のすぐ横にあった。
ここなら高さもあるし新幹線からの距離も近いので、CMに映るぞってときに熊本の人が真っ先に集まりそうだ。CMのシーンのように人だかりになるのも無理はない。
さて、ここからは新幹線高架に沿って並行に道路が伸びているようなので、比較的に捜索が行いやすい。これがあるのとないのとでは労力に大きな違いがでてくる。
SceneNo.044
次のシーンがこれ。一瞬、民家の一軒家とその屋根に上る人々かなと思った。そうなると民家一軒家は特定しないというルールに則って調査対象外だ。ただ、屋根の上の人間の比率から考えて、この建物、かなりでかい。奥行きが相当にある。こりゃただの民家じゃないぞ、ということで捜索を開始した。
熊本駅から少し離れた場所に、それっぽい建物があった。かなり奥行きがある大きな建物で、形状も一致している。熊本県酒造研究所らしい。やはり民家ではなかった。おそらくここで間違いないだろう。
ただ、画像からわかるようにかなり強固に立ち入り禁止が施されており、なかなか建物に近づくことができない。この厳重で物々しい感じがCMの姿と一致しない。
CMの映像で建物の周囲を確認すると牧歌的でおおらかな感じすらする。この10年で物々しい立ち入り禁止になったと仮定すると、いったいぜんたい何があったのか、そこが気になってしょうがない。とりあえず、建物に近づけないので周囲の状況から確定させてしまう。
ちょろっと映っている特徴的な形状のマンションの屋上部分、それが一致しているのでやはりこの建物で間違いがないのだろう。熊本県酒造研究所だ。
SceneNo.045
次がマンションのシーン。特徴的なカラーリングなのでそう難しくはないだろう。
やはりすぐに見つかった。というか、醸造研究所からちょっと移動するだけで見つかった。
このマンションは上層階と下層階で外壁のカラーリングが異なるので、CMに映っているのは下層階の方だと予想できる。
SceneNo.046
次のシーンはどこかのグラウンドだ。グラウンドはかなり難易度が低い。やはり、都市部に入ってから特定しやすい場所が続く。これが田園風景でヒントは植物のみ、となるとかなり大変になるのだ。これだけ人が集まれる広いグラウンドとなるとかなり絞られる。
新幹線の左側にある学校となると、熊本市立西山中学校が有力だが、新幹線高架からの距離、グラウンドの位置から考えて該当しない。もっとも有力なのは熊本市立井芹中学校だ。さっそく移動してみる。たぶんここで間違いないだろう。
井芹中学校に到着したが、なんか違う。左側に新幹線高架が見えているので、位置関係としては申し分ない。ただ、フェンスの形状が全く違う。おまけに設置されている角度も全然違うので、どこからどうみてもCMのような絵にならない。これは違う。
もう少しよく映像を分析してみる。CMのグラウンドは一般用のサッカーゴールが映っている。中学以上はこの大きさを使うので小学校という選択肢が消える。さらに、このグラウンドの広さは中学校にしてはあまりに広い。ということは高校か! 近くに文徳高校なる高校のグラウンドがあるようだ。そこに移動する。
完全に一致。ガードレールや後ろの風景まで一致しているので間違いない。このシーンの撮影場所は文徳高校第一グラウンドだ。
SceneNo.047
次のシーンは、このCMの中でもかなりインパクトがある場面だ。ウェディング姿に身を包む新郎新婦、それとの対比のように草しか映っていない風景。はっきりいって難易度が高すぎる。とてもじゃないが捜索の手掛かりがない。これまでの経験で分かる。これは見つけるの無理なやつだ。
ただし、このあとに続く2つのシーンを精査するとその考えが一変する。
SceneNo.048
SceneNo.049
土手みたいな場所で子供を肩車して手を振る夫婦、そして道路上から手を振る人と、動画で見ると分かりやすいのだけど、土手の下の道を並走する2台のバイク、新郎新婦のシーンからこの2つのシーンが映し出される。そこで注目して欲しいのは3枚目の土手の下だ。
ここに新郎新婦がいる。
このCMは時系列の入れ替えを行わないことはもう判明している。けれども、同じシーンを拡大度と角度を変えて映し出すことはある。これまでも何回かそういったシーンがあった。つまり、この3つのシーンは、同じ場所を映しているに過ぎない。幸いにも3枚目の映像はかなりヒントが多い。
青で囲った部分は橋である。つまり、奥と手前の道路の間には川が通っている。そして、青で囲った橋の部分の斜めにつけられたガードレールはけっこう特徴的なので決め手になりそうだ。
まず、この映像には3つの道路が並行して走っている。奥と手前に舗装された道路があり、土手の下にバイクが並走する道があるが、下の道は舗装されていない。
さらに、赤で囲った建物だ。うっかり見落としがちだが、この建物けっこうでかい。周辺の民家に比べて倍以上の大きさがあるので、おそらくアパートか何かだと思う。これも決め手になりそうだ。
この辺りは、新幹線がトンネルに入ったり地表に出たりを繰り返す場所である。鹿児島で学習した通り、こういった形状の場所は捜索が難しい。全て調べるといくら時間があっても足りなくなってしまう。あらかじめ川と地形的要因から場所を絞り込み、玉名市の県道309号線とあたりをつけて移動した。
あたりをつけた場所にやってきた。ちょうど新幹線がやってきたので軽快に手を振った。県道309号線のこのあたりは車通りも少なく、かなり見通しが良い。何も邪魔するものがないので新幹線を眺めるのに適している。新郎新婦がいた場所はこの周辺にあるはずだ。
あった。完全にこの場所だ。斜めのガードレールも、奥の大きな建物も一致している。そうなるとこの下に新郎新婦がいた場所があるはずだ。
ここだ。やはり下の道は舗装されていなかった。ここをバイクが爆走したわけだ。
橋との位置関係、田んぼの切れ目、ブロックの位置から考えて新郎新婦が立っていた場所はここだ。そうかあ、ここに新郎新婦がいて、その後ろをバイクが爆走してたんだな。ってよく考えたらなかなかカオスなシチュエーションだな。
2枚目のシーンは、おそらく川の向こう側の土手の道だ。なぜなら、現地に来れば分かる、それ以外の場所だと必ずガードレールか柵が映りこむ。なにも映り込まない場所はそこしかない。
赤で囲った土手のどこかで撮影されている。
このCMの象徴的なシーンの場所を特定することができたので、安心して次のシーンに移る。
SceneNo.050
SceneNo.051
トランポリンでぴょんぴょん飛び跳ねる姿と、綺麗な緑の芝生が印象的な場面だ。この形状でこの広さは大きな川の河川敷としか考えられない。また川だ。おそらくこれまでの法則通り、川の両岸の映像だろう。この周辺でこれだけ大きな川というと、菊池川くらいしか思いつかない。
順番が前後して申し訳ないが、菊池川の博多方面側の河川敷だ。いまは草が生え茂って荒れ放題だが、当時はここに人が並んで手を振っていたはず。そして、対岸がトランポリンの芝生になるはずだ。
トランポリンのシーンの背後に映る樹木、その並びが同じことが対岸からでも確認できる。うっすらと綺麗な芝生も確認できるので、やはりここ菊池川で間違いなさそうだ。
SceneNo.052
次のシーンがこれだ。虹のアーチが並び、その横に人が並んで手を振っている。なかなか手が込んだ演出だ。とにかく、また畑か、という印象だ。ハチャメチャに難易度が高い、ノーヒントじゃねえか、と思うが実はそうでもない。これも次のシーンと合わせて考えると難易度が下がる。
SceneNo.053
祝!新玉名と映し出される広大な田園風景の画像、そこに映るビニールハウスの数と形状は、一個前の虹色アーチの映像に映るビニールハウスと一致している。特に、骨組みだけのハウスが3つ並んでいるところが同じなので確定だろう。つまり、ここも同じシーンを別角度で、というやつである。これだけ広大な田園風景ならばかなり限定的になるので捜索は簡単だ。おそらく新玉名駅の手前の場所だろう。
新玉名駅手前のこの位置だ。奥に新玉名駅とケーズデンキが見える。当時はここに人が並んでいた。この左には舗装道路があるので、CMの場面の奥の方に縦列駐車されている車の列とも一致する。
2日目 11:22 新玉名駅(熊本県玉名市)
SceneNo.054
さて、CMでは新玉名駅ホームにて大はしゃぎでウェーブする駅員さんが映し出されている。本来ならここも検証するために車を駐車場に入れて駅に行き、入場券を購入してホームに上がる必要があるが、体力的にかなり厳しいこと、そもそも新玉名駅だと分かりきっていること、ホームが上り線1本しかないのでどのホームかも分かりきっていること、これらを考慮して検証はしないことにした。
その代わりといってはなんだけど、僕はなぜか鹿児島中央から新函館北斗まですべての新幹線駅に降り立ったことがあるという稀有な体験を持っているので、その時の画像で代用させていただく。ここに新幹線が入ってきて、駅員さんがめちゃくちゃはしゃいでいた。
SceneNo.055
次のシーン。相変わらず難易度が高い。
赤い布みたいなものを持っている3人の女性のテンションがなかなかに高い。それにしても田園風景は本当に難しい。ただ、後ろに映る綺麗な道路が気になる。道路が妙に新しい。新玉名駅は新幹線開業に合わせて町のはずれに新たに作られた駅だ。当然、駅までの道路も新たに整備されている。この妙に新しい道路はそんな道路だろう。
そうなると、新玉名駅を過ぎたあたりの道路沿いと特定できるが、それ以上はやはりノーヒントなので詳細に特定することはできなかった。
SceneNo.056
このシーンも、後ろに真新しい道路が映っているので同じ場所だと思うけど同様の理由で特定が難しい。全然ヒントとは関係ないけど、白い服の人が持ってるのガラケーだなこれ。そうか、10年前だとガラケーとスマホは半々くらいの使用割合だったかもしれない。
SceneNo.057
次のシーンがこれ。また広大な田園風景だ。かなり広い。新玉名駅を出て新大牟田駅に至るこの区間は、そこそこに駅間距離がに自覚、さらにその大部分がトンネルになる。つまり、このような田園風景が広がる場所はそう多くなく限定的だ。これだけ広い場所であること、映っている看板などから考えるに新大牟田駅手前の場所だと思う。一気に新大牟田駅まで移動する。
この道路の向こうに広がる地帯で間違いない。写真を撮り忘れてしまったが、道路の形状が完全に一致している。田園地帯は10年後も変わらず田園地帯でいてくれた。
2日目 12:00 新大牟田駅(福岡県大牟田市)
SceneNo.058
次のシーンは、またも新大牟田駅のホームの映像だ。本来なら車を停めて入場券を購入して検証する必要があるのだけど、まあ、この映像の場所が新大牟田駅と分かりきっていることとホームが上り線1本しかないのでどのホームかも分かりきっていること、これらを考慮して検証はしないことにした。
その代わりといってはなんだけど、なぜか僕は鹿児島中央から新函館北斗まですべての新幹線駅に降り立ったことがあるという稀有な体験を持っているので、その時の画像で代用させていただく。
SceneNo.059
次のシーンがこちら。いい加減にしろ。ノーヒントにもほどがある。
バイクの上に立っている人の脅威のバランス感覚に目が行きがちだが、よくよく周囲を見るとあまりにヒントが少ない。というか、CM時はバイクの上に立っていると思ったけど、こうして検証用にコマ送り画像を見ると向かって右側の足の位置がおかしい。バイクの後ろに立って遠近法を使ってるようにも見える。そもそも、冷静に考えてこのサイズのバイクの上に直立するのはかなり困難だと思う。恐ろしく緻密に計算してそう見えるように立っているのか、本当にバイクの上に立っているのか、判断が難しいところだ。
さて、そんな立っているのか立っていないのかなんて場所のヒントにはならない。位置的には新大牟田駅を抜けた先になるのだろうけど、このような風景の場所は無限に近いくらいに存在する。唯一のヒントが横に映る樹木だが、10年後もそのまま存在していなさそうな弱々しさがある。
なんとか頑張って探し、この道路のどこかじゃないかということころまでは絞り込めたけど、弱々しい樹木は見つけられなかった。たぶん弱々しさのあまり伐採されたんじゃないかな。
SceneNo.060
次のシーンがこれ。なんだこれ。この人たち、なにやってんだ。このちょっとした観客席みたいなものは何なのだろう。用水路みたいなものが映っているのでおそらく水門の設備だと思うけれども、やはりこういう場所は山ほどある。ほぼ手掛かりがない。
ただ、ここにきて重大なことに気が付いてしまった。もっと早く気がついていれば捜索も効率的になっていたのに、という重大事実だ。
ポイントは防音壁だ。
実は、新幹線高架には防音壁がある場所とない場所が存在する。
こちらが防音壁のある新幹線高架。
こちらが防音壁のない新幹線高架。実際にここに新幹線を入れ込んでみると分かるけど、防音壁がある方は、新幹線の窓がほとんど見えない。そうなると、このCMは新幹線の車窓から見える景色を撮影しているので、ただ防音壁だけが映る状態になる。つまり、防音壁がある部分はほぼCMに使われていないわけだ。
このCMは防音壁がない部分だけ撮影しているわけで、そこだけを捜索すれば良いことになる。これまでの検証でも、あまりに田園風景、川の土手といった場所が多かった。これは民家がないので防音壁がないことに起因する。また駅の前後の映像が多いのも同じ理由で、駅の前後は新幹線が速度を落とすので防音壁がないことが多い。とにかく、やっとこさ気づきに至ったのでここからは防音壁の有無を判断することで捜索範囲を絞ることができる。
そんなこんなで、防護壁を睨みつつ、さらに用水路の流れを考慮しながら問題の場所を探す。
なんかあった。
予想通り、用水路の水門に関わる設備のよようで、この周囲に同様のものがいくつかあった。新幹線との位置関係、周囲の状況から判断するに、これで間違いない。
やはり防音壁に着目すると効率的に捜索が進む。こりゃ一気に行けちゃうぞと油断したが、ここから怒涛の如くノーヒントの高難易度シーンが連続する。
SceneNo.061
SceneNo.062
SceneNo.063
SceneNo.064
怒涛の波状攻撃だ。
ほとんどヒントがない。2枚目の「燃えろ!たかた」の勇ましい横断幕が何らかのヒントになるかと思ったが、全然関係ない部活動などの応援用のものだと思う。よくよく考えると新幹線の撮影に持ってくる意味がない。
ノーヒントながらなんとか探してみたが、やはり決め手がないので苦しい。3枚目に至っては、大きなツボみたいな廃棄物の山がヒントになると思ったが、発見には至らなかった。やはり田園地帯は苦しい。
SceneNo.065
次のシーンがこれ。またもやビニールハウスの上に乗っている。人は新幹線を見るとビニールハウスに乗りたくなるのかもしれない。もちろん、これも見つからなかった。ビニールハウスは難しいんだって。
探してみたけど、それっぽいものはあるものの、これだという確証には至らなかった。さすがに10年経つとビニールハウスは厳しい。
新大牟田-筑後船小屋のこの区間はかなり難易度が高かった。あまりにノーヒントシーンが多すぎて、ほとんど見つからなかった。
2日目 12:57 筑後船小屋駅(福岡県筑後市)
SceneNo.066
CMはやっとこさ筑後船小屋駅の映像に切り替わる。ホット安堵する。これは簡単だ。
筑後船小屋駅は、公園内に駅があることで有名な新幹線駅だ。当然、CMのこの広大な広場もその公園の映像だろうと分かる。位置関係からわかるように、筑後広域公園多目的広場だろう。
樹木の向こうに見えるのがその多目的広場。むちゃくちゃ広い場所だ。CM映像からも分かるように、当時はここにかなりの人が集まっていたようだ。
SceneNo.067
SceneNo.068
問題となるのは、そのあとに続くこの2つのシーンだ。電線の本数から、この2つのシーンはほぼ同じ場所であると予想できる。完全なるノーヒントかと思われたけれども、1枚目の画像の後ろの風景をみてみると、ダンプカーや重機がめちゃくちゃ働いていることがわかる。つまり、絶賛工事中だった場所だと理解できる。そして2枚目の画像、この踏切と短い橋が重なっている場所、これを地図で確認すると該当する場所が1か所あった。
あまりの興奮に写真を撮り忘れてしまったので、なぜか僕は新幹線の全駅を巡り、その周辺の写真を撮ったりしたことがあるのでその写真で代用させてもらう。2011年のCM撮影時に工事中で、筑後船小屋駅周辺の場所、そしてこの踏切と短い橋、それらを総合すると、現在、この場所はまるっきり異なる風景になっている。
たぶんここ。
この2枚の場所は現在のタマスタ筑後と、ソフトバンクホークス2軍練習場がある場所だ。今のような状態になる前の空き地状態を映し出している。そう考えるとこの10年でかなり劇的に変化している場所といえる。
SceneNo.069
次のシーンがこれ。右側に映る看板に「タマアグリ」株式会社と書いてあるので簡単そうだ。とりあえず、地図で検索すると2か所にピンが刺さったのでそこに向かってみる。
とりあえず、ピンが刺さった場所に来てみたが、なんか違う感じがする。なんか殺伐とした感じがするし、看板もない。違ったかなと思った瞬間だった。
これ、看板があった場所のプレハブだろ。手前の3本の棒の上部に看板が付いていたんだ。何があったかわからないけど、看板が撤去されていて雰囲気が変わり、廃墟みたいになっているけど、この場所で間違いない。
SceneNo.070
SceneNo.071
怒涛の波状攻撃だ。こういったシーンはいくら探しても見つからないって分かりきっている。特に2枚目の、子どもを抱えて手を振るお父さん、すがすがしいほどにノーヒントだ。ヒントを与えてはならない、という断固たる覚悟みたいなものすら感じる。こんなの絶対に見つからない。もちろん探すけどさ、やっぱ見つからなかった。
SceneNo.072
これもなかなかに難解なシーンだ。「祝」という文字を何らかのケースを並べることで表現している。このケースはビールケースだと思う。そして広大な駐車場と思わしきスペース。おそらくどこかの商業施設の駐車場ではないだろうか。手を振っている人たちも、エプロンをしている人の割合が多い、スーパーなどの商業施設の従業員じゃないだろうか。
ただ、そうなると一つだけ不可思議な点がある。ここが商業施設の駐車場だった場合、撮影時はバリバリに営業時間であったと考えられる点だ。利用客の車を制限してまで店舗の人が撮影に備えるとは考えにくい。店舗の駐車場とは別に空きスペースのような駐車場があったのではないだろうか。
ここからは想像の域を出ないのだけど、現在「スーパーセンター トライアル筑後店」として営業している場所がある。その脇に新幹線高架に向かって突き出すようにして存在する駐車場のようなスペースがある。そのスペースは封鎖されて入れなくなっているため撮影できなかったが、ここがその撮影場所ではないだろうか。
航空写真で見る限り、白線のかすれ具合がよく似ている。新幹線高架からの角度もばっちりだ。もうこことしか考えられない。ここなら、利用客の車を制限しなくても撮影に備えられる。
10年前の撮影当時、ここが「トライアル筑後店」だったのかは調べたけどわからなかった。もしかしたら別の商業施設だったのかもしれない。けれども、この付属的な駐車場で決まりだろう。
SceneNo.073
次のシーンがこれ。全てのシーンがこうでありたい。答えが書いてある。工場と思われる建物の上に並ぶ人々、しっかりと「綿入はんてん」と書いてある。そのものズバリ、綿入はんてんを作っている工場なのだろう。
地図を確認し、新幹線の左側にあって綿入はんてんを作っていそうな工場を調べる。筑後市の北側に位置するこの辺りは機械加工から食品系まで様々な工場が密集するエリアのようだ。おそらく「宮田織物株式会社」ではないだろうか。位置的にも申し分ないし、はんてんを作っていそうだ。
よし。やはり宮田織物株式会社だった。工場の位置的に看板を確認するのが難しく、手前側の別会社のフェンス越しに撮影するしかなかったので盗撮したみたいになってしまった。あと、ここにきて急激に天気が悪くなってきて、ポツリポツリと雨が降り始めてきた。急いで捜索を進めなくてはならない。
SceneNo.074
次のシーンがこれ。これが本当に難しかった。結果を先に言ってしまうと、見つけることはできなかった。
一瞬だけ映るこの建物の形状から、おそらく工場や研究所的な場所の屋上なのだと思う。手を振っている人もエンジニアっぽい格好をしている。前述したように、この周辺はそういった工場施設が多い。それらはかなり広大な敷地を有しているものもあり、中に入って捜索をすることができない。もしかしたらこの建物は地上から確認が難しい場所にあるのかもしれない。くまなく探したが見つけることは叶わなかった。
SceneNo.075
次のシーンがこれ。かなり巨大なマンションだ。これだけ巨大なマンションなので見落とすはずもない、簡単に見つかりそうだが、そうではなかった。これについては皆さんに謝罪しなくてはならない。
飲まず食わずで移動し、捜索を続けてかなりの時間が経過した。そろそろ肉体的にも精神的にも限界が来ているようで、あろうことか、このシーンを見落として次のシーンの捜索に向かってしまったのだ。
そう、マンション自体は見落とさないだろうが、CMのシーンを見落としてしまったのだ。取材を終えて帰宅して画像を整理してシーンを飛ばしたことに気が付いた。後の祭りだ。ということで、このマンションに関してはストリートビューで見つけておいたので、それでご容赦願いたい。
グランビア津福
よし。
SceneNo.076
次のシーン。何らかの高架の下に佇む4人組。画質的にその表情は読み取りづらいが、4人とも絶対にすげえ笑顔だろと分かる良いシーンだ。あと、杭の上にバッグを置いている点も評価が高い。そこまでして大胆に手を振りたかった人がいるのだ。たぶん黄色のおばちゃんだな。
こういった高架が映るシーンは珍しい。なぜなら、撮影している新幹線自体が高架だからだ。このような角度で映っているということは高架と高架が交差している状態だろうと思う。
赤で囲った部分に着目して欲しい。高架の上に砂利が敷き詰められている。この高架の上が道路だった場合、こういった砂利は出てこない。つまり、この高架は鉄道なのだろうと思う。地図で調べてみると、久留米駅の手前の場所に、新幹線と、西鉄大牟田線が交差する場所があった。おそらくそこではないかと向かってみる。
ただし、ひとつだけ問題があった。
撮影角度的に、赤丸で囲った場所のように思えるのだけど、地図で見る限り、そこまで入っていく手段がないのだ。道路もないし、付近に変電所があったりしてそもそも人が立ち入れないようになっている。この4人組はどうやってここに入ったのか。10年前は入れたのか。それともぜんぜん違う場所なのか。とにかく近づける限界の場所まで行ってみるしかない。
来てみてわかった。ここが撮影場所だ。まず、橋脚の形状が一致しているので交差していた高架は西鉄大牟田線で間違いない。問題は撮影場所だ。地図の段階では、新幹線高架に近づける限界のこの位置は遠すぎると思っていた。もっと新幹線高架に近い場所だと思っていたので、これ以上は入り込めないのにどうやったんだと疑問に感じたが、真相はそうではない。このCMの新幹線カメラは予想以上に離れた場所も捉えていることは既に学習した。つまりこれだけ離れたこの位置でも捉えられたわけだ。
4人組はここにいた。おそらくひとつ奥のフェンスのあたりだろう。フェンスの形状が一致するのはこの位置しかない。彼らは入り込めるギリギリのこの場所にいた。ただ、周囲に新しい家が建ち、かなり見通しが悪くなっているる。
SceneNo.077
次のシーンはこちら。この企画のイメージカラーが施された巨大フラッグを掲げたマンションだ。これは簡単だ。これだけ背の高いマンションならそうそう見落とさない。シーン自体を見落としたら大変だが、マンションは見落とさない。ただ、もう久留米駅が近くなって背の高いマンションが増えてきたので、これらを一つ一つ確認していくのはかなり骨が折れそうだ。なんらかの情報をもとに候補を絞っていかねばならない。
冷静に考えると、このフラッグ、あまりに大きい。6戸ぶんの部屋を覆う大きさだ。これは個人の力を超えている。新幹線が来る? よっしゃ、巨大な旗だしたろ、と個人でこれをやる人がいたら相当な情熱の持ち主だ。もしくは完全に狂っている。他の世帯からしたらいい迷惑だ。
おそらくではあるが、これだけのことをやってのけるのだ、マンション自体がJR九州の協力要請を受けた可能性が高い。
たぶん、そこまでやるのって企画元であるJR九州が供給するマンションじゃないだろうか。普通に別の会社がやるマンションなら、ここまで協力しないと思う。
JR九州は鉄道業だけでなく、駅周辺の不動産開発にも積極的で、MJRシリーズとして駅近くのマンションなどを供給している。それらから考えると、久留米駅前のMJR久留米ステーションレジデンスが怪しい。
ベランダの柵の形状と窓枠が一致している。やはりMJR久留米ステーションレジデンスだった。よかった、新幹線が来るからと発奮して勝手に6戸を覆う旗を取り出してくる狂人はいなかったのだ。ちゃんとマンションぐるみだったんだ。
2日目 14:24 久留米駅(福岡県久留米市)
SceneNo.078
このシーンは久留米駅だ。もうホームも分かりきっているので、入場券を買って中に入るのは遠慮し、なぜかすべての新幹線の駅に降り立つという稀有な経験をしている僕なので、その時の画像で代用させていただく。やっててよかった全駅下車。
ついに久留米駅まできた。目指す博多はもうすぐそこだ。
SceneNo.079
また川だ。
久留米駅を出てすぐの場所に筑後川が流れているので、その河川敷だろう。住所的には佐賀県鳥栖市になる場所だろうか。このあたりは福岡県と佐賀県が微妙に入り組む場所なので、表記の住所だけ見ているとどこにいるか分からなくなることがある。とにかく向かってみよう。
綺麗に整備された河川敷に出た。芝が植えられ、ゴルフ場として使用されている感じだ。おそらくここが目的の場所だろう。
道路の形状的にここで間違いない。画像では分かりづらくて申し訳ないが、土手の上を走る道路と、土手から離れていく道路が分岐している部分が一致している。
久留米から次の新鳥栖駅までの区間は5.7キロしかなく、新幹線の駅間距離としては屈指の短さを持つ。当然、捜索もしやすいはずだと思っていたが、かなり高難度のノーヒントシーンが頻出することとなった。
SceneNo.080
なぜか鎧兜に身を包んだ集団が居並んでいる。鎧の連中に目が行きがちだが、左側に映っている犬のテンションが、このまま死んでしまうんじゃないかというレベルまでぶちあがっているのが特徴だ。
一瞬、またノーヒントシーンかと思ったが、よくよく見ると地形に特徴がある。舗装された道路の下を舗装されていない道路が走る二段構造だ。普通ならこのヒントだけでは捜索が難航するところだけど、前述したとおり、鳥栖駅までのこの区間はかなり距離が短い。おまけにその大部分が住宅街なので、こういった景色の場所は限られる。筑後川を通り過ぎた区間に少しだけ田園風景があり、そこしか該当しない。
菜の花が綺麗な道路、おそらくこれがそうだろう。地形的条件が一致する場所がここしかない。別角度から見ると、下を走る舗装されていない道がよくわかる。
それにしても、まるで新幹線から眺められるためだけに設置された舞台のように、新幹線からの距離、角度、周囲の見通しが完璧な場所だ。ここなら鎧兜を身にまとって並びたくなる気持ちも分かる。死ぬほどテンションが上がる犬の気持ちも分かる。
SceneNo.081
でた。またノーヒントシーンだ。ヒントが何もない。ただの緑だけがそこにある。それにしてもここでもまた鯉のぼりが登場してきた。撮影時は2月だというのに、鯉のぼりだ。何かあるのだろうか。
普通なら完全にノーヒントなので捜索を諦めるところなのだけど、何度も言うようにこの区間は駅間距離がかなり短い。捜索範囲はかなり狭くなるし、こういった田園風景の場所も限られる。
調べた限りでは、新幹線から見えるまとまった田園風景はこの区間しか存在しないので、おそらく、鯉のぼりのシーンはこの景色の中のどこかにある。ただ、それ以上の特定は困難だ。
SceneNo.082
このシーンも同様で、田園風景はこの場所しかないので、この風景の中で撮影されている。
SceneNo.083
問題はこのシーンだ。自転車置き場みたいな壁の場所に佇む男女、その微妙な距離からあまり親密な関係ではなく、知り合い程度の関係性だろう。ただ、お互いに悪くは思ってないはずだ。
その二人が佇む場所が本当にわからない。その横に映る扉がかなり厳重になっている点、敷地内に映る地面まで伸びる謎のスダレみたいなやつ、これらを総合すると冷凍された食品などを扱う工場か倉庫じゃないかと予想した。
ただ、筑後川を抜けて、田園地帯が終わると、今度は住宅街が現れる。その一部にこのような工場がいくつかは存在するが、いずれもこの景色には該当しなかった。10年前の撮影の時点で屋根とかもかなり老朽化しているので、もうしかしたらもう建て替えられているのかもしれない。そうなるともうお手上げだ。
SceneNo.084
祝!新鳥栖とテロップが入ったこのシーンから、けっこう長い尺で同じシーンの風景が続く。
SceneNo.085
SceneNo.086
新幹線と並行に走る川のほとりに並ぶ人、旗をもって追いかけるように走る子供たち、なかなか印象的なシーンだ。これは、地形的条件から考えて新鳥栖駅手前で見られる安良川しかありえない。
安良川は新幹線と並行して右側を流れているが、まるで左側を撮影するこのCMに合わせたかのように、新鳥栖駅手前で大きく湾曲して左側に現れる。そして駅までの間にもう一度大きく湾曲して右側に戻る。旗を持った子どもたちが走っているシーンは河川敷が右に湾曲しているので、おそらくこの右に戻る部分だろう。
これが安良川。けっこう荒れ果てていてあまり面影がないけれども撮影場所はここで間違いないだろう。向こうには新鳥栖駅が見える。
2日目 14:51 新鳥栖駅(佐賀県鳥栖市)
SceneNo.087
次のシーンがこれ。無理。ここはたぶん無理。絶対に見つからん。
SceneNo.088
次のシーンがこれ。ついに「博多」の文字が出てきた。九州新幹線における最後の駅だ。景色も一気に都市部になってきた。大勢集まっている人々が風船を飛ばすシーンだ。このシーンのヒントは、まず広いグラウンドであるという点だ。そして、グラウンドの向こうにはけっこう交通量の多い道路が存在するという点だろう。
新幹線は新鳥栖駅を抜けるとすぐに長いトンネルに入る。そのトンネルを抜けると一気に都市部の景観になるので、そこにあたりをつけた。この場所はグラウンドの土の感じと、映っている建物の感じから小学校か中学校のグラウンドのようなので、新幹線の左側にある学校施設を調べていく。
最初に狙ったのが、福岡市立高木小学校。新幹線の左側にあり、地図から見えるグラウンドの形状がCMの映像によく似ている。
実際に来てみるとぜんぜん違う。グラウンドの形状はかなり似ているけど、そもそもフェンスが違う。樹木も違う。それ以上に背景の景色が全く違う。なにより決定的なのが、CMではグラウンドの向こうにけっこうな幹線道路が見えるけど、ここでは鉄道路線しかみえない。
とうことは、ここからそう遠くない場所にある福岡市立宮竹中学校だろうか。ここも地図で見る限り地形的条件が一致する。
宮竹中学のかなり近くまで来てみて確信した。ここだ。間違いない。
目の前にあらわれたハイカラな看板。「リサイクルマート」というリサイクルショップの看板のようだ。初めて見る店だけど、なんか見覚えあるなって思っていたらこういうことだった。
CMに映っていた。つまり、この看板の近くにある若竹中学のグラウンドで確定ということだろう。
このあたりから完全に福岡の都市部になるので、交通量も多く、複雑になってきた。さらに建物が多いので見通しが悪い。都市部はヒントが多いが捜索が難しい。田園風景は捜索しやすいがヒントが植物だけとか難易度が高い。一長一短あるものだ。
SceneNo.089
これもかなり特徴的なシーンだ。こんな風に真ん中がボコンと広がった橋はそうそうあるものじゃない。地図で見れば一目瞭然だ。
これはJR竹下駅前の「りぼん橋」と呼ばれる場所だ。竹下駅から川を挟んだ場所にマンションなどが建ち並んでいて住人が多いので、ダイレクトに駅に行けるように備えられた橋のように見える。なぜ真ん中がボワンと膨れているのかはわからないが、たぶんアート的な要素があるのだと思う。
けっこう入り組んだ路地が多く、駐車場に車を入れるのが大変だった。
SceneNo.090
なんらかの橋の下で赤ちゃんを見せびらかすようにして掲げる夫婦。めちゃくちゃほのぼのするシーンだ。
橋脚の高さがかなり高い。おそらく新幹線と立体交差する道路の橋脚なのだろうと思う。この大きさならそう苦労せずに見つかるだろうと思った。
楽勝だろうと舐めてかかって捜索していたら、ここが本当に見つからなかった。まるっきり見つからなかった。そもそも、このCMは時系列で並んでいるので、このシーンは竹下駅から博多駅までの間に存在するわけだ。つまり、そう広くない捜索範囲なわけだ。それなのにいくら探してもその範囲の中にこのような橋脚が存在しない。
最初は、どうせ新幹線と交差する「きよみ通り」だろうと舐めてかかっていたが、実際に行ってみると橋脚の高さがぜんぜん足りなかった。そもそも橋脚の形状も違っていた。まじで見つからなかった。なんだこれ。
本当に見つからなかったのだけど、ひとつの仮説にはたどり着くことができた。画像を見ると、やはりこの橋脚はあまりに大きい。背が高いといった方が適切か。これだけ高い場合、新幹線の高架の上で道路が交差していると考えられる。そうなると気になることがある。
序盤の「川内駅」の部分でも述べたけど、基本的に新幹線の上を通る跨線橋はそう多くない。もともと高い位置を走る新幹線だし、それに加えて電線の位置も高い。それよりさらに上を通すとなるとかなり大掛かりになる。ほとんどの立体交差が新幹線の下を通す形で行われるので、やはり新幹線の上を通すものはかなり特殊だ。現に、これまでずっと見てきてほとんどそういった交差はなかった。
ただ、一点だけありえる場所がある。
みなさんはこの光景を覚えているだろうか。もうはるか昔のことに感じられるけど、新水俣で見つけた建設中の高速道路だ。これは、新幹線の上を通す形で建設されている。そう、高速道路も新幹線に負けじと大掛かりなので、新幹線の上を通す場合があるのだ。
そうなると気になる場所が一つある。
それがここ。福岡都市高速の環状線と、新幹線が交差する場所、たぶん福岡都市高速なら新幹線の上を通す。もうここしか考えられない。ただ、とっくに昔に通り過ぎてしまった場所なのでいまさら確認にいけない。
ただ、そうなるとさらに大きな疑問が残る。地図で示したこの位置、SceneNo.089宮竹中やSceneNo.090りぼん橋のある竹下駅より手前の位置なのだ。つまり、このシーンはNo.89より前に存在しなければならない。
このCMは最初から一貫して時系列を守っていた。きちんと鹿児島中央駅から順番に並んでいたのに、ここにきて、この場所だけ時系列を入れ替えている。本当に、このシーンだけ例外なのだ。
思うに、編集した人が絶対にこのシーンを入れたかったのだと思う。法則を無視してでもこのシーンは入れたかった。その事情はこうだ。
このCMは基本的に駅ごとにテロップが入る。その駅の領域にさしかかると「祝!〇〇」とテロップが出る。
このテロップが入るシーンは、大勢の人が映っている場所になっている。たぶん華やかだから。つまり、これまでの決まりを守ろうとするとどうしてもこの若竹中のシーンから博多を始めねばならず、それより前にある赤ちゃんをみせる夫婦のシーンはカットする必要がでてくる。
幸せそうで、嬉しそうで、楽しそうで、このシーンは本当にいい。特に奥さんのポーズがいい。編集した人が、時系列順というルールを破ってでも入れたかったのも分かる。それほどにいいシーンだ。
だから、ここだけ時系列を入れ替えた。僕は編集した人の気持ち、わかる。ただ、そのせいで見つけることができなかった。
SceneNo.091
次のシーンだ。いよいよ博多駅が近いようで、連続して巨大マンションが登場してくる。捜索自体に苦労はないが、撮影に苦労する。博多駅がほど近くなった線路周辺の道路は一方通行が多く、トリッキーで完全に初見殺しだからだ。
逆光で見えづらくて申し訳ないけど、最初のマンションがこれ。
地上からだとちょっと全体像が捉えにくいけど、上層部3階のベランダが左右に透明パネルがあるのに対して、その下はベランダの中心に透明パネルがある。CM映像と完全に一致している。
SceneNo.092
次のマンションがこちら。階段部分の形状が独特だ。
そのマンションがこちら。階段のところ形状が一致している。
SceneNo.093
いよいよ佳境となり、このCMのなかでも随一に好きなシーンがでてきた。ビルに「Panasonic」と書かれているので特定は簡単だ。それよりなにより、その鏡のように反射している窓ガラスが良い。これまでずっと沿線の風景を撮影してきた新幹線が鏡に映されてはじめてその姿を映し出す。とても粋なシーンだ。
その「Panasonic」がこちら。いまでも鏡状の窓ガラスは健在で、ずっと新幹線の姿を映し続けているようだ。
よくよくみると、上の階の窓も鏡のようになっているようだ。CMでは上の階の窓が開けられていて社員と思わしき人たちが手を振っている。つまり、下の階の窓は新幹線が映り込むことが分かっていて開けなかったということだ。
SceneNo.094
次はこのシーン。このシーンも見落としていて探し忘れていた。ただまあ、たぶんPanasonicの近くにあるマンションだよ、たぶん。
SceneNo.095
このシーンは、その道路の形状から下をくぐって新幹線と交差する道路と、側道に分かれる場所だと思う。もう博多駅までかなり近く、こういった交差する道路はかなり限られる。
それがここ。かなり博多駅に近い場所だ。行ってみてわかったけど、下に潜る道路、下に潜る歩行者用通路、そして側道、と道路が3つに分かれていた。よく見ると、CMでストライプ状に緑色に塗られている塗装がうっすらと残っている。それでいて新たに「歩行者優先」と書き加えられている。おそらく自転車と歩行者の事故が多かったのだろう。
SceneNo.096
工事中の景色だ。10年前の映像なので横浜駅じゃあるまいしさすがに工事は終わっていると思う。ただ、手前の看板に「公園を作っています」と書いてあるし、いちはやくカラフルな遊具が置かれているので、現在は公園になっているのだろう。
さきほどの道路分岐のすぐ横が立派な公園になっていた。東領公園というらしい。マンションに囲まれた広めの公園で、子どもたちがサッカーなどをしていた。カラフルな遊具もしっかり健在で、あの工事現場がこんな綺麗な公園になったんだと感慨深い。
そして、いよいよ、博多駅がもう目と鼻の先まで近づいてきた。
SceneNo.097
ラストのシーンがこちら。ビルの屋上に白い服を着た人と牛の着ぐるみの人が立っている。横断幕が掲げられていて、「九州の空と風と大地から。」と書かれているようだ。ちょっと何の文言かわからないが、その下に書かれているURLにアクセスしてみる。
アクセスしてみると「九州LOVE Milk Club」というページが出てきた。ハイジ風のミクちゃんと子牛のミルちゃんをキャラクターにしたPRページのようだ。九州生乳販売農業協同組合連合会というところがやっているらしい。
その周辺でそれに関連したビルはないかと探してみると、ふくおか県酪農農業協同組合のビルがある。おそらくこれだろうと移動してみる。
おそらくここだ。屋上の形状は分からないし、横断幕みたいなものの内容も変わっている。それでも「ミルとミク」なので間違いない。CMの映像は新幹線に合わせて急いで横断幕を設置したと思っていたけど、こうして10年後も設置されているのを見ると常設の看板らしい。よくよく見ると、CM映像の方もライトが設置されているので、ずっとここに設置されている看板なのだろう。
2日目 16:30 博多駅(福岡県福岡市)
SceneNo.098
そして、CMの新幹線はいよいよ博多駅へと入線していく。長かった。本当に長かった。わずか180秒のCMなのに、膨大な場所が映像に捉えられている。その場所を追いかけていくと膨大な旅になっていく。その検証の旅もいよいよ終わりだ。何も食べていないのでめちゃくちゃ空腹だ。
やはり博多駅、はちゃめちゃに大きい駅だ。
CM映像では、博多駅新幹線ホームにめちゃくちゃ人が押し寄せていて、降りてきた運転士さんがもみくちゃにされてハッピーな雰囲気で終わる。
その映像から12番ホームに入線したことがわかる。
12番ホームだってわかりきっていたのに、なぜか16,15,14,13番ホームしか映っていない場所を撮影している。入場券まで購入しといてなにやってんだ。とにかくまあ、かなり疲労がたまっていたんだと思う。撮影に使われたのはこれより奥の12番ホームです。
これにて、JR九州 「九州新幹線全線開業CM」 特別篇 180秒verの聖地巡礼の旅、終了。現在の姿を思い浮かべながら、もう一度、CMを見ると受け取り方もかわるはずだ。
T&E JR九州 「九州新幹線全線開業CM」 特別篇 180秒ver
まとめ
このCMは全体を通して沿線の風景を流すだけであり、セリフやナレーションはほとんどない。最後の最後、博多へと差し掛かる部分になって初めてナレーションが入る。そのセリフがこうだ。
「あの日、手を振ってくれてありがとう」
まず初めに入るナレーションがこうなのだ。
手を振るという行為は、言葉以上に伝えられることが多い。少し離れた場所で目が合った知人に、言葉をかけるでもなく、ただ手を振る。向こうも手を振り返してくれる。人はそれだけで妙に安心感を覚える。それはその行為に「親しみ」を覚えるからだ。なぜ「親しみ」を覚えるか、それは振った手に想いがこもっているからだ。手を振る行為は思った以上に思いが伝えられるし、思った以上に伝わってくる。
鹿児島中央駅から博多駅まで、新幹線の沿線を映したこのCM、100を超えるシーンのほとんどで、沿線に立つ人々は手を振っていた。冒頭で僕はこのCMはなぜこんなにも涙が出るのかと疑問を投げかけた。それはおそらく、多くの人が手を振ってくれているからだろう。その思いを受けてCMを見た僕らはゆっくりと心が動く。
上京したてのあの日、独りぼっちだった僕を勇気づけてくれたのはそんな思いだったのかもしれない。
あの時、沿線の人々はどんな思いを新幹線に送ったのだろうか。そんなことに思いを馳せる。
10年前のこのCMの撮影時に、沿線に立ち手を振った僕は「がんばれ」という気持ちを送った。
九州新幹線の開業は必ずしも希望に満ち溢れたものではなかった。逆風も確かにあった。東京と関わらない初の新幹線路線、利用率が低くなるのでは、誰も乗らないんじゃないか、ものすごい赤字を叩き出すのでは、そう心配された。誰も使わない場所に駅を設置してどうするんだ。政治の力じゃないか、そんな声もあった。並行する在来線が三セク化することに対する批判の声もあった。それでも、やっと九州に新幹線が来たという喜びと感謝、がんばれ、という気持ちを込めて僕は手を振った。
今回訪れた全ての場所で、10年前、多くの人がそれぞれの思いを乗せて新幹線に手を振ったのだ。
あれから10年、いろいろなことがあった。
未曾有の大災害、九州新幹線も被災し、止まっている時期があった。大水害によりいまだ復旧のめどすら立たない場所もある。そして、未知の感染症の影響で利用客が大きく低迷している。本当にいろいろなことがあった。
きっとそれぞれの個人にも色々なことがあったはずだ。うれしいこと、喜ばしいこと、悲しいこと、別れ。沿線の風景も変わり、なくなった場所も新たにできた場所も、もしかしたらもうこの世からいなくなった人もいるかもしれない。それでも僕らは生き続けるし、新幹線も走り続けている。沿線の風景も、変化せず、ときには変化して存在し続けている。これからもきっとそうだろう。それはなんだか、妙に心強く頼もしい。今回、CMの場所を訪れて10年前を感じ、そんなことを考えた。
そして、この聖地巡礼の旅。もうちょっとだけ続きがあるのでお付き合い願いたい。
鹿児島でレンタルしたレンタカーを返却するため鹿児島に向かう道中、高速道路降り、また新幹線が見える場所に佇んだ。
10年前と同じように、多くの人が新幹線が見える場所に並ぶ。10年前と異なるのは、どっぷり日が暮れた夜という点と、詰めかけた人々がお互いに距離をとってソーシャルディスタンスを守っているという点だ。
2021年、3月14日、夜。
九州新幹線開業10周年を記念して、「流れ星新幹線」が一夜限りの運行を行う。そんな予告がされた。みんなの願いを乗せた流れ星新幹線、運行時間だけが予告され、いったいどんなものが来るのか分からないまま、また、沿線に立ったのだ。
そしてついにその「流れ星新幹線」がやってきた。
撮影:pato
まばゆい光を放つ流れ星新幹線。それは10年間の感謝のようだった。
10年前のあの日、僕は新幹線に向かって「がんばれ!」と手を振った。10年経って今度は新幹線が「がんばれ!」と僕たちに手を振ってくれたように思えた。