東京にも美味しい湧き水がある!水の味を流水麺で確かめてみた。
東京といえば都会。都会といえば自然がないという連想をしがちですが、東京には湧き水を飲めるスポットが残っています。今回は流水麺片手にあきる野市、武蔵小金井などに行き、実際に味わってみました。湧き水が出る場所は自然の中だったり、神社だったり、はたまたわりと普通の街中だったり、なぜかどこも個性的。足を運ぶと、意外と知らない東京の姿が見られそう。
こんにちは。
東京農業大学多摩川源流大学プロジェクトのスタッフ矢野と申します。
皆さんは、実は東京が豊かな水源に恵まれた水の都市と言われていたのをご存知だろうか。
東京には現在でも多くの湧水が身近にある。
今回はそんな湧水の場所を巡ってソバを食べたいと思う。
お店ではなく、誰でも簡単に食べることのできる流水麺だ。
美味しい水でほぐせば、普段より美味しいに違いない。
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流水麺とおいしい水
食品メーカー「シマダヤ」が28年前から販売している商品「流水麺」。
麺を水道水でさっとほぐすだけで、すぐに食べることができるのが特徴だ。
ゆでなくてもいいので、とにかく手軽で、そして、おいしい。
そのままでも十分おいしいのだが、公式サイトによると、さまざまなアレンジを加えることでよりおいしくなるようだ。
しかし、私のような料理下手には、アレンジしたくても常にリスクが伴う。
おいしくないアレンジをしてしまったら元も子もないのだ。
そこで、「水」という結論に達した。コーヒーもお茶もご飯も、いい水を使うとおいしくなる。
流水麺も水道水ではなく、いい水でほぐせばさらにおいしくなるはず。
ということで、東京の湧水をめぐり、実際に流水麺を湧水でほぐしてみようと思う。
あきるの市の湧水で流水麺を食べる
あきる野市にある「野崎酒造」さん近くの湧水をくむことができる場所に来た。
東京もこの辺りまでくれば自然豊かだ。
ここでは、地元住民以外の人も募金箱に100円以上支払えば水を自由にくむことができる。
水のおいしさを味わうために、麺つゆを使わない水ソバにしてみた。
長野や京都、福島などの食べ方で、ソバ本来の味を楽しむことができるそうだ。
確かに食べた瞬間に麺つゆではなくソバの味がする。おいしい水だからできることだ。
等々力渓谷の湧水で流水麺を食べる
確かにあきるの市の湧水で食べた流水麺はおいしかった。
しかし、湧水はなにも東京の田舎に行かなくても味わえる。実は都心でも水は湧いている。
急なお客様が来たときなどは、都心の方が便利だ。急なお客様に流水麺を出すのかはおいといて。
東京23区唯一の渓谷「等々力渓谷」を訪れた。等々力駅から歩いて5分である。
世田谷に渓谷があるのだ。
約1キロにわたる渓谷内には、昔から国分寺崖線の湧水がたくさん湧いている。
川のせせらぎを聞きながら森林内を歩くと、気分も良くなるし、お腹もすいてくる。
渓谷を10分ほど歩くと、等々力不動尊が出てくる。
渓谷の中に静かにたたずむ雰囲気に、思わず心まで洗われるようだ。
ここに御神水としてくめる湧水がある。地元の方もお茶やコーヒーのためにくみに来ていた。
竹のカバーがしてあるホースから、透明の美しい水がちょろちょろと出て、苔むした石の上に優しく落ちている。
流水麺をほぐすと木々の緑が写り込み、きれいだ。私の流水麺が少し高級に感じる。
緑の中で食べるからなのか、いつも家で食べているよりもおいしく感じる。
もう外で食べれば何でもおいしいのではないかとも思う。空腹と雰囲気は最高のスパイスなのだ。誰かをもてなすときは、私も観葉植物を部屋中に置こうと思う。
大宮八幡宮の湧水で流水麺を食べる
確かに湧水で流水麺をほぐすとおいしい、気がする。
麺つゆではなく、湧水で食べるのも贅沢な気がする。ただ、いかんせん水なので「水味」になる。
さらなる高みを目指して、東京のど真ん中に位置する「大宮八幡宮」を訪れた。
縁結びにご利益があっても、今のところ流水麺を食べさせる相手はいない。
ただこの神社の御神水は武蔵野台地が育んだ湧水で、昔は清水がこんこんと湧き出ていたが、近年は周辺の宅地化が進み水脈が細くなっているそうだ。
現在では大事な水なのでくむ時間や本数が制限され、蛇口の開け閉めで水が出るようになっている。
まず神様にご挨拶をすませ、一滴も無駄にしないように流水麺をほぐした。清らかにほぐれていく。
そろそろ麺つゆが欲しいな、と少し思ってきたが、変わらずおいしい。
水って本当大事だなと思うけれど、撮影後にメモを見たら「ソバ味もしくは水味」と書いてあった。今まで食べたどの湧水の流水麺も水味だ。おいしいけど、水味。
六地蔵の恵み黄金の水で流水麺を食べる
清い湧水は堪能したので、おしゃれな湧水はないかと訪れたのは、私の中のキングオブおしゃれ沿線中央線にある武蔵小金井。
小金井市は「黄金に値する豊かな水が湧く」という地名の由来の通り、名水・湧水の多い地域として知られてきた。
商店街から少し路地をすすむと、六地蔵の敷地内に深井戸を掘り、地下水を汲むことができる場所が用意されている。
コップ1杯分なら無料で飲むことができるが、もっと汲みたい人のために、専用蛇口の水栓を隣にある「菊谷文房具店」さんで販売している。
これさえ買えば、1人1日20リットルまで水をくむことができる。
この日も、多くの近隣住民やお店の方が水をくみに来ていた。
私もカギを購入したので、自由に水をくめるという優越感が生まれる。石油王もこんな気分なのだろう。今後は水くみ放題だ。
黄金の水でソバをいただく。相変わらずおいしい水味だった。
本当の水ソバは最初は水で味わって、その後は塩や麺つゆで食べていたような気がする。
今更そんなことを思い出したが、湧水も堪能できたし水に流すとしよう。水がマジでおいしいのです。
この黄金の水は、地域資源として活用されていて、商店街の喫茶店などでも提供されている。
その一つ「Café de PERRINE」さんで、最後にコーヒーをいただいた。とりあえず水味以外の味を味わいたかったのもある。
こちらでは、最初に運ばれてくる水も黄金の水を使っているそうで、毎日水をくみに行っているとのことだ。
昔の古き良き喫茶店の雰囲気を残しており、店中にコーヒーの香りが広がる。
流水麺との湧水をめぐる旅も終わり、水っておいしいな、としみじみと思った。
最後はコーヒーのおいしさに感動したけれど、それも水あってこそ。水のありがたみを感じる旅だった。
ちなみに次の日、残りの流水麺を麺つゆで食べたらびっくりするくらいおいしくて、4人前食べてしまった。
※生水をそのまま飲むとお腹を壊すこともありますので、使用する際はご家庭で煮沸することをオススメします。