千葉県の県境はぜんぶ川らしいので歩いて確かめてきた

※この取材は1月末に行われました

1日目 AM6:00 千葉県浦安市舞浜 東京ディズニーリゾート

 

千葉県浦安市からおはようございます。

 

なぜかこんな早朝にここ東京ディズニーリゾートの入口みたいな場所に呼び出されました。

ディズニーです。ディズニーですよ。ついにSPOTの取材でディズニーにやってくる日が来たのですよ。※この取材は1月末に行われました

 

もしかしたら、いよいよSPOT編集部が改心し日頃の罪を悔い改めて「いつもがんばっているpatoさんにディズニーランドで遊んでもらいましょう。グラビアアイドルにも来ていただきました。予算は無限大です。デート風に取材してください」というやつかもしれません。なかなかニクい演出ですよ。そうじゃないとここに呼び出される理由が分からない。

 

 

朝焼けの中にぽっかりとその姿を浮かばせるディズニー的で楽しそうな何らかのアトラクション。とてもワクワクしてくるものです。こうなったらグラビアアイドルとガッツリと取材してですね、まあ、その色々やってですね、まあちょっと役得なこともあってですね、それでビシッと記事を書くわけですよ。書きますとも。

 

SPOT編集部「patoさん、patoさん」

 

pato「あ、いつもお世話になってます。ディズニー取材ありがとうございます。今日はシーですか? ランドですか? 両方を一気にはさすがに時間的余裕がないとは思いますが」

 

SPOT編集部「????????」

 

pato「??? 今日はグラビアアイドルとディズニー取材ですよね。隠れミッキーとか見つけるんですよね。イチャイチャしながら探すんですよね。ここにもあるかなー? バカっ! もうっ! メンゴメンゴ、とかイチャイチャやるんですよね」

 

SPOT編集部「ディズニー取材なんて一言も言ってませんけど?」

 

pato「?????」

 

こんな場所に呼び出しておいて訳の分からないことを言いだす編集部。嫌な予感がしてきました。

 

 

なんど読んでも東京ディズニーリゾートって書いてある。ここに呼び出しておいてディズニーに行かないなんてありえるのだろうか。※この取材は1月末に行われました

 

なんだか段々と嫌な予感がしてきた。よくよく考えたらこいつらが自分の罪を悔い改めるなんてことないはずだ。ましてやご褒美取材なんてありえないことだ。どうせグラビアアイドルにツテとかもないんだろ。呼べないだろ、こいつら。

 

SPOT編集部「落ち着いて、いま、どこにいるのかしっかりと地図を確認してみてください」

 

pato「いや、どこにいるかって、ディズニーリゾートでしょうよ」

 

スマホで地図を開き、現在地を確認します。

 

 

この位置にいますけど、間違いなく東京ディズニーリゾートじゃないですか。他に何があるっていうんですか。

 

SPOT編集部「このラインですよ、このラインなんだと思いますか」

なにって、これは県境でしょう。東京都と千葉県の境目が江戸川の真ん中にあるというラインなんでしょうが。そうそう、ディズニーランドって東京と千葉の県境ギリギリにあるんですよね。

 

で、これがどうかしたのでしょうか。

 

SPOT編集部「そうです。県境です。実はですね、ちょっと前にネットで話題になったんですけど、千葉県の県境はなかなか特殊でしてね、すべての県境が川と一致している。つまり千葉県は陸続きに見えて本当は陸続きでない孤島なんだって説があるんですよ」

千葉県の大部分は海に突き出した半島部分であり、他の都県と接する部分が平野という事情があるためか、その県境が全て川だということなのです。本来は山深い場所に県境があったりするのですが、千葉県はそれがない。故に、千葉県人の中には県境=川と認識している人もいるらしく、よその県にいって陸続きの県境を見ると驚いたりするらしいのです。

 

SPOT編集部「つまり、本当に県境の全部が川なのか、本当に陸続き県境がないのか、歩いて確かめてきてほしいわけなんですよ」

 

pato「なんで? そんなの地図見れば一発じゃないですか。いまからグーグルマップで調べましょうか?」

 

SPOT編集部「いやいやいや、ちゃんと歩いて調べてきてください」

pato「なんでですか?」

SPOT編集部「ほら、そこはね。ちゃんとした理由があるわけなんですよ」

 

なんとも煮え切らない様子の編集部。歩いて確認させるなりの理由があると主張しだしました。

 

SPOT編集部「調べてみたらpatoさんは2019年、歩く記事を一本も書いてないんです。たくさん電車に乗ったとかそういうのはあるんですけど、ぜんぜん歩いていないんです。歩くのが売りみたいなところがあるpatoさんに歩く記事を提案できなかった。我々はそれに心を痛めているんです」

 

心を痛めるな。

 

SPOT編集部「調べてみたら、2018年に廃線後の三江線をもう一度125km歩いた(https://travel.spot-app.jp/sankosen_again/)きりなんですよ。これは由々しき問題です。ですから、2年ぶりに歩いてもらうと我々も必死に考えたわけです。そこで千葉県境を歩いてもらおうと、がっつり歩いてもらおうと」

 

pato「よくわからないですけど、お気遣いありがとうございます」

 

というわけで、なぜだか知らないけど延々と千葉の県境を歩くことになりました。本当になんでそうなるのか全く持って理由が分からない。もうおっさんなんだからこういうのもっと若手にやらせろよ。

 

千葉県境歩きルール

・県境を延々と歩き、本当に川にしか県境がないのか調べる。

・タイムリミットは2日間とする(スケジュールの関係)

・ただし、千葉県境の総延長は約200キロ以上あるため、2日間では走破できない可能性が高い。というか無理。よって、川と並行して走っており、川から大きく離れない路線であればバス・鉄道でワープして良いものとする。

 

こんなルールで行きたいと思います。そんなこんなで、千葉県境の旅、スタートです。

 

千葉県浦安市

 

 

東京ディズニーランドの看板を恨めしそうに眺めながら歩き始めます。ただ、歩き始めてすぐに足に感じたこの感触は「ほんと、歩く取材は久々だな」と思うものでした。悔しいけどこの感覚を体が覚えている。

 

 

遠くにビル群が見える。あれは東京の町並みだろうか。この辺りはまだ左側が海で完全なる岸壁なので、県境は存在しないはずだ。

 

 

海の向こうに東京ゲートブリッジと富士山が見える。というか、冬の早朝で空気が澄んでるせいかめちゃくちゃ綺麗に見える。

 

 

東京スカイツリーと葛西臨海公園の観覧車も見えてきた。位置関係から考えてこのスカイツリーはかなり長い間、左手に見えているはずで、長い付き合いになりそうだ。

 

 

さて、ついに県境があるであろう場所にまで到達した。手前側が千葉県で向こう側が東京都だ。たぶんこんな感じ。

 

 

当たり前だけどしっかりと川の中に県境があるはずだ。要はこれをずっと見張っていけばいいんだろ。簡単じゃないか。

 

ちなみに、いま現在の位置はこのあたり、まだまだ序盤もいいところだ。

 

 

県境を流れるこの川は旧江戸川だ。名前の通り、かつては江戸川の本流であったが、1919年に放水路側が広げられ、そちらが本流となったためにこのような名称になった。Wikipediaによると、「全区間にわたって東京都と千葉県の県境を有する川」ということだ。つまり歩いて見張るまでもなく旧江戸川の間は川と県境が一致しているわけである。それなのになぜ歩くのか。自問自答してみたが答えは見つからなかった。

 

 

東京湾にそそぐ河口付近ということで川幅はかなり広い。同じ屋号で同じカラーリングの釣り船と思わしき緑の船が何隻も通り過ぎて行った。そのたびに静かな水面が揺れ、川辺に佇んでいた小さな鳥が驚いていた。釣り船がもたらす音と波が、この光景が絵画ではないことを思い出させてくれる。

 

 

いきなり川が大きく二手に分かれる場所に遭遇した。旧江戸川と見明川に分かれるポイントらしい。こういった川の分岐は川沿いに歩く人間にとっては脅威である。

 

 

このように堤防の道路が突如として行き止まりになるからだ。

この地点の場合、画像右側に橋が写っていることから分かるように、この橋を通ってしまえば問題がないが、もし、この橋がかなり遠い場所にあった場合、川の分岐によって大幅な大回りを強要される事態になりうる。川の分岐、合流はかなり危険。旅の序盤から早くも教訓めいた何かを手に入れることができた。

 

分岐した見明川にかかる橋を渡り、引き続き旧江戸川沿いに歩いていく。ただし、ここからは堤防の上は歩けないようだ。一見するとけっこう細い堤防で、とてもじゃないが歩くスペースがなさそうだ。

 

 

正確に測定したわけではないので分からないが、雰囲気的に堤防のこちら側の町は川の水面より低い気がする。いわゆる海抜ゼロメートル地帯というやつではないだろうか。それだけに高潮対策として屈強な堤防が築かれているように感じた。

 

この堤防がかなり高いので、川の様子を窺い知ることはできない。できればはやく堤防の上を歩いて県境を見張りたい。そうしないと「見張ってないじゃないですか」とか編集部がケチをつけてくる可能性があるからだ。あいつらはインターネットおでかけサイト界のヤクザみたいなもんだからな。

 

 

どうやら、雰囲気的に堤防の上にも歩行者道路が出現してきたようで、登ることのできる階段があるのだけど、徹底的に封鎖されている。100メートルに一つくらいの頻度でこの階段があるが、全て封鎖されている。よほど県境を見張らせたくないらしい。

 

ただし、はるか前方に犬の散歩をしているじいさんがいて、そのじいさんが普通に階段を登って行って堤防の上へと到達していたので、もしかしたらはるか前方なら階段が解放されているのかもしれない、これなら県境を見張ることができる! と少し駆け足でその場所まで行ってみた。

 

 

やっぱり強固に封鎖されていた。よほど見張られたくないらしい。というか、あのじいさんと犬はどうやってこれを乗り越えていったんだ。パワフルすぎるだろ。

 

立ち入り禁止を乗り越えていくわけにもいかないので、仕方なしに堤防下の道路を歩いて北上していく。

 

 

途中、誰かが腹筋を鍛えようとして挫折した残骸みたいなものが捨ててあった。兵どもが夢の跡、である。ぜんぜん県境と関係ないのになぜこの写真をとったのか。自分の心理状態がちょっと分からなかった。

 

さらに先へと進む。

 

 

どうやらこのあたりは「富士見」という地名のようだ。日本には多くの「富士見」という地名があるが、その多くの場所で実際に富士山を眺めることができる。おそらくここも空気が澄んだ日は綺麗に富士山が見えるのだろう。ただ、屈強な堤防に阻まれてこの位置からみることはできない。たぶん昔は見えたはず。

 

 

やはりこの周辺は、川の水面より低くいのかもしれない。そうなると、いかにして川に水を流すのか重要になってくるのだろう。このような排水機場がたくさんある。ここでポンプが稼働しており、むりやり川に水を排出していく。

 

 

そしてこれがたぶん排水用の樋管(ひかん)。これを使って川に排水する。この周辺はこういった施設が等間隔で複数存在する。

 

 

しばらく進むと、ついに堤防に登れそうな階段が登場してきた。別に立ち入り禁止もされてなさそうなので、迷わず登ってみる。

 

 

階段を昇りきった先は船溜まりになっていた。海みたいに波があるわけではないので、本当に静かな光景だ。ただひっそりとたくさんの船がかすかな風に吹かれて揺れている。音のない世界がそこにあった。

 

 

とりあえず突堤みたいな場所を船を眺めながら先に進んでみる。

 

行き止まりだった。

 

よくよく考えたら当たり前で、船が出入りするためにかならずこの突堤は途切れる。なんでそんなことも分からなかったんだろう。ちょっと冷静に考えればわかることだろ。

 

 

向こう側の突堤までジャンプで飛び移れたりしないかな。引き返していたらけっこうな遠回りになる。飛び移れたりしないかな。いけそうな気がする。本気で飛べばいけそうな気がする。いける。たぶんいける。Fly High!

 

 

いける。いけるだろ。これくらい飛べなくてどうする!

 

と思ったのですが、普通に届かないだろうし、失敗したら川にドボンで、スマホとカメラとパソコンと、あらゆる電子機器がお陀仏になるので諦めました。

 

 

おとなしく引き返して先へと進みます。というか、川にこれだけ船があるってなかなかすごい光景ですね。

 

 

めちゃくちゃやばそうな場所もある。大丈夫かいなとビクビクしながら通過していく。

 

 

遠回りポイントから先ほどの場所を客観的に見る。冷静になってみるとあの距離は飛べないわ。全ての電子機器をお陀仏にさせるところだった。危ない危ない。冷静になってよかった。

 

 

船溜まりを抜け、また川沿いの道を歩いていく。

 

 

歩いていると、なんだかめちゃくちゃ賑やかそうな場所に出た。何か川沿いにそびえ立つ高い建物みたいなものがあるし、その向こうには大きな鉄橋、その奥には少し見えにくいけどラブホテルが佇む島みたいなものがある。情報量が多すぎて何から処理していいのか分からない。

 

まずは建物から。どうやらこれは「境川西水門」というらしく。水門とそれを管理する施設が一体化した感じになっているようだ。取材時は真冬なので気が付かなかったけど、この傍らには見事な桜の木があって、満開ともなるとなかなか綺麗な桜が咲き、絶好の桜スポットになるらしい。※この取材は1月末に行われました

 

 

そして大きな鉄橋は東西線の鉄橋。なんの鉄橋だろうって眺めていたらタイミングよく東西線の車両が通過したのでラッキーだった。

 

 

そしてその奥の島。どうやら川の中州の島らしく、思った以上に大きな島だった。妙見島というらしい。

 

地図で見るとこんな感じ。すっかり忘れかけていたけど、これは県境を見張る旅だった。地図によると県境はこっち側になるので、妙見島は東京都に属する島ということだろう。

 

この妙見島、なかなか大きな島で、ラブホテルだけじゃなく工場などがたくさんある。現在では周囲をコンクリートで固められているが、それ以前は少しづつ移動していく島だったらしい。

 

 

島を後ろから見るとそれが良く分かる。川にぽっかりと浮かぶ軍艦みたいな島だ。

 

 

妙見島にかかる浦安橋、その街灯の上にはなんだかかっこいい感じで鳥が佇んでいた。

 

「船宿 吉野家」の看板だ。これを撮影している僕のすぐ後ろにこの吉野家がある。さっきからこの吉野家の緑色の船ががんがん東京湾に向かって川を下っていた。どうやらこの吉野家は釣り船をやっているようで、さらには屋形船もやっているようだ。

 

なぜか看板では競うようにして「サンケイスポーツ推薦」「スポーツニッポン推薦」と書かれている。おまけに「警視庁指定店」と書かれている。警視庁指定店ってのがどういう状況なのかは分からないが、「お、警視庁指定か、いっちょ釣ってみるか」となるシーンはあまり想像できない。たぶんきっとない。

 

 

少しだけ川上に歩いていくと屋形船が停泊しているゾーンに到達する。この屋形船が夜ともなると煌びやかな明かりを灯して川を進んでいく。そのなかでお酒を飲んだら確実に楽しいと思う。是非とも行ってみたいものだ。その時はこの吉野家にしようか、警視庁指定店だし。

 

さらに歩いていると飛行機の轟音が鳴り響いた。上空を見上げると青い空に浮かぶ旅客機の姿が。なんだかこの光景にたまらない違和感を抱いてしまった。

 

「旅客機がこんなルートを通過することあったっけ?」

 

この違和感はたぶん正解で、この日は3月から導入される羽田空港新飛行ルートのテスト飛行をしていたみたいだった。普段は通らない都内上空ルートを試しているみたいだった。※この取材は1月末に行われました

 

 

さらに歩いていると、新しい船を川に入れている場面に遭遇した。大きなリフトでゆっくりと丁寧に降ろしていた。なるほど、こうやって川に船を入れるのか。

 

 

ここに勝手に船舶を係留しちゃだめだよ、という看板。中途半端に落書きされていて若干のカオスを感じるけど注目すべきはここに記載されている地図。しっかり川が県境として機能していることが示されている。あと、このまま上流に行くと今現在の旧江戸川から江戸川の本流に合流し、そこで県境をバトンタッチするみたいだ。

 

今いる位置がこのへん。はっきり言わせてもらうと序盤もいいとこ。めちゃくちゃ先が長い。気を失いそうになるくらい先が長い。

 

「ただし、千葉県境の総延長は約200キロあるため、2日間では走破できない可能性がある。よって、川と並行して走っており、川から大きく離れない路線であればバス・鉄道でワープして良いものとする」

 

このルールを大胆に適用してワープを決めないととてもじゃないけど終わらないぞ。

 

 

どのタイミングでワープを決めてやろうかと虎視眈々と考えつつ、しばらく進むと川の分岐点に出た。いや、河口から上がってきているから分岐に見えるだけで、正確には合流地点か。新中川と旧江戸川が合流する地点だ。図からも分かるように、東京都と千葉県の県境は旧江戸川の方にあるのでそちらを進んでいく。

 

 

旧江戸川に沿って歩いていく。やはり屋形船がいっぱいある。

 

千葉県市川市

 

 

いつの間にか浦安市を超えて市川市に入ったようだ。市川市、逆から読んでも市川市だな。

 

 

旧江戸川沿いを歩いていると、ただの川沿いの広場みたいな謎の空間が登場してくることがある。これは緊急用の船着き場で、災害時などの緊急時に復旧用の資材などを川を使って運搬するために整備されている。ただ、現在は緊急時ではないので、若者がスケボーしていたりする。絶妙なスロープがあるから絶好のスケボースポットみたい。

 

 

河川敷に何を置いてはいけないのか分からなくて怖い。それはそうとして、「千葉県」と書かれているのでこちら側が千葉県であることを再確認する。

 

 

さきほど、緊急船着き場はスケボーやっているしゃらくさい若者しかいないみたいな話をしたけど、それは間違っていた。おそらくここも緊急船着き場であろうスペースなのだけど、そこで剣術を磨いている若者がいた。延々と、ストイックに剣術を磨き続けていた。川沿いはいろいろな人がいるなあ。

 

 

先に進んでいく。いいかげん川の景色にも飽きてきたし、足も痛くなってきた。

 

 

川の向こう側におそらく東京都江戸川区の清掃工場が見えたのでだいたいの位置を把握できた。それをもとにスタートからここまで歩いた距離を算出してみたら、まだ6kmだった。序盤もいいとこなのに早くも足が痛い。これは長いこと歩き取材をしてこなかったツケがきている。確実にきている。

 

 

8:50 常夜灯公園(市川市行徳) 移動距離 8.87 km

 

 

痛み出した足を抱えつつトボトボと歩いていると、「常夜灯公園」という川沿いの公園にたどり着いた。地図によると、この公園が出てくると江戸川との合流地点が近いっぽい。ちなみに江戸時代に建てられた「常夜灯」があるからこの名前みたいだ。

 

 

細長く小さな公園だけど、しっかりと売店があったりする。

 

よし、ここまできたらもう少しで旧江戸川が終わる。いよいよ江戸川に合流するぞ。頑張って歩こう。

 

 

ついに江戸川との合流地点に到達した。正確に言うと江戸川と旧江戸川の分岐地点だ。ここからは江戸川に沿って県境を監視していくことになる。

 

 

わかっていたことだが、川沿いの道路を進んでいたら思いっきり行き止まりにぶち当たってしまった。要塞みたいな屈強さでしっかりと行き止まりを演出していた。これを無視して先に進もうものなら射殺されそうな物々しさがある行き止まりだった。

 

そりゃ川と川が合流するんだからこうなる。こういった徒歩旅していて何が一番怖いかというと、文字通り徒労となる距離を歩くことだ。行き止まりはその徒労距離をドラマチックに演出してくれる。引き返さねばならないからだ。つまり心を折りにくる。確実に折りにくる。

 

 

幸い、今回だけはその横には抜け道的な道路があったのでなんとか心を折られずに済んだ。このままちょっと大きめの幹線道路まで出てしまおう。

 

 

幹線道路に出るとバス停があった。「下新宿」とかいてある。

はっきり言って大チャンスだ。ここにバス停があるということは、おそらく川沿いに伸びる幹線道路に沿って進むと考えられるからだ。

つまり、「県境から大きく離れないのなら交通機関でワープしても良い」というルールを適用できる。ただ、バスの時間がけっこうありそうだったので、とりあえずここにバス路線はあるわけだから、徒歩で先に進んでおいて次のバス停あたりでワープを使うことにした。

 

 

しばらく歩くと江戸川にかかる橋に到達した。これまでの旧江戸川に比べて江戸川はおもいっきり大きな川なのでそこにかかる橋も大きい。ただ、明らかにその橋の歩道が狭い。完全に狭い。明らかに歩行者を労わる気のない橋だ。

 

 

その細い歩道をけっこう爆裂な勢いで自転車が走ってくるので、なかなかに危険が危ない。完全に歩行者を労わる気ゼロの橋だ。

 

 

ただその真横に新しい橋を作っていたので、これが完成すればいくらかは歩道もましになるはずだ。

 

※取材時の1月末時点では建設中ですが、新橋は令和2年3月10日に供用開始されており、歩道も1.5m幅から4m幅に改良されています。旧橋は取り壊される予定

 

 

ちなみにこの橋は可動堰と一体化している。この堰を動かすことによって治水と利水を行っている。なんだかかっこいいギミックだ。ぜひとも動いているところ見てみたいな。

 

 

橋を渡ると、おそらく新しい橋の工事の関係なのだろうけど、今度は歩道が一切ないゾーンを歩かされることになった。つくづく歩行者は迫害される。

さて、この画像の中央にバス停が見えると思う。ここからバスに乗ってやるぞーと思ってたら思いっきり後ろからバスがやってきて、完全にギリギリのタイミングだったのでバス停もバスも撮影できなかった。

 

 

なんとか滑り込みでバスに乗ることができた。ただこれで安心安心というわけにはいかない。まず、県境である川を見張りながら乗る必要があるし、おまけにバスが大きく県境から離れていかないよう、マップを見ながらどの停留所で降りるかとタイミングを見計らわなくてはならない。

 

 

車窓から見張っていると、やけに川を見つめる人の姿が見られた。なんだろう、みんなも県境を見張っているのかなって思ったけど、たぶん画像の中央に映る富士山を見ていたんだと思う。この日は天気も良くて空気が澄んでいて、きれいに富士山が見えていた。こんな場所でもまだまだ富士山が見えるんだな。

 

 

このままずっとバスに乗っていたかったのだけど、明らかに川を離れて街中へと入っていきそうな雰囲気がムンムンと流れていたので、泣く泣くバスを降りることにした。数分しか乗ってない。一本松というバス停だった。

 

 

バス停から少し歩くと、また土手に出ることができる。今度は江戸川を遡上しながら県境の監視を続けていく。

 

現在の位置はこちら。

 

10:26 市川市 江戸川・旧江戸川分岐点 移動距離 10.18 km

 

堤防にあがると様々なものが視界に入ってきた。まず、川がでかい。これまでの旧江戸川の倍くらいの川幅がある。さすが江戸川の本流だ。おまけに河川敷も広い。ついでに、富士山も綺麗に見えるしスカイツリーまで見える。いろいろと盛りだくさんの光景だ。

 

 

江戸川に入ると、いろいろと充実した感じになっていた。まず堤防上の歩道がしっかり整備されているし、舗装の色もちょっとしゃれてる。河川敷内に野球場などが整備され始めて土地の有効利用をしているし、犬の散歩をしている人が異常に増えてくる。

 

 

この地点で「海から10.25 km」らしい。まだそんなものなのか。ちょっと衝撃だ。もう50 kmくらいはきたのかと思った。けっこう心を折りにくる看板だな。まあ、この看板がずっと川上まで続くなら良い目安になりそうだ。

 

 

江戸川の河川敷はとにかくはちゃめちゃに野球場がある。ぎっしりと何面もあって、その全てがフル稼働している。この画像も分かりにくいけど4面ある。みんなどれだけ野球が好きなんだ。

 

 

さきほど見た時より富士山とスカイツリーの位置関係が変わっている。そうかそうか、歩いて川上に行くことにより、2者の位置関係が変わるのか。もっと上っていけば富士山の脇にスカイツリーある、みたいなベストポジションが見つかるのかもしれない。

 

まだそんなに歩いているわけではないのに、やはりブランクなのか、足が痛い。できればもう歩きたくない。どれくらい歩きたくないのかというと、以下の通りだ。

 

 

これは、“かなり遠くから見たらこの看板のシルエットがバス停にしか見えず、しめたワープできるぞと駆け寄ったらただの真っ白な看板だった”というものだ。たぶんもともとは下に落ちてる看板が付いていたんだろう。よく考えたらほぼ歩行者専用の堤防上の道にバス停があると考える方がおかしい。足が痛すぎてまともな判断ができなくなっている。

 

 

ジェットスキーをやっている人もいた。めちゃくちゃ楽しそう。

川の真ん中でやってるので、たぶん体の半分が県境っていう状態でやっていると思う。あれで上流まで一気に連れて行って欲しいけど、水が冷たそうなのでやっぱり遠慮したいと思った。あと、こっち側も野球場なのだけど、よく見たら川の向こう側の東京都側にも野球場がたくさんある。みんなどれだけ野球好きなんだ。

 

 

さらに上流に歩いていくと、このような光景にでくわした。なんてことはない、堤防と川沿いのマンションという光景だが、そう単純なことではない。これは堤防の上にマンションが乗っていると見るべきだ。つまり、堤防とマンションが一体化している。これはたぶん一時期ちょっと話題になったスーパー堤防ってやつだ。

 

 

ほら、やっぱりそうだ。江戸川スーパー堤防って書いてある。

 

スーパー堤防ときくと、めちゃくちゃ高い堤防を想像しがちだが、実はそうではなくてほとんどの場合高さは変わらない。けれども高さに対して30倍くらいの幅を持った堤防だと考えてもらえればいい。その広い幅の部分に公園を整備したり一体となった建築物を建てたりする。これはマンションも含めてまさにスーパー堤防だ。話には聞いていたけどこれが実物か。いいもの見れた。

 

 

大きな橋が見えてきた。おそらく総武線が通る橋だろう。

 

そしてそのすぐ上流にあるのが市川橋。こちらは一般道なので車がビュンビュン通る。というか、一般道路で千葉と東京を結ぶ橋が思ってた以上に少なかった。これなら数少ない橋に車が集中してしまうが、千葉が鎖国をしようと思ったら簡単そうだ。

 

ちなみに、なぜかこの橋の部分だけは道路と土手の通路がクロスするので注意して通行する必要がある。

 

 

さらに上流に行くと今度は京成線の橋が出てくる。タイミングよく京成線がやってきたところだった。

 

プワー、プワー

 

京成線の車両を眺めていると、電車の音に混じってどこか気の抜けた音が響き始めた。なんだなんだと周囲を見渡す。

 

 

ラッパ吹いている人いた。

 

その奥にはカヌーに乗ってる人いるし、ほんと、川にはいろいろな人がいるな。

 

ただ、川の水面の静かな光景と、ゆっくりランニングする人、吹き抜ける風が少しだけ冷たくて、ちょっと遠くから電車の音が聞こえてくる。そんな中に響くラッパの音はなかなかいいものだった。

 

 

僕は堤防の下の河川敷の部分を歩いていたのだけど、堤防の上を歩いている人もいた。この人がカメラを構えて延々と川を睨みながら歩いていた。なんだろう、この人も県境を見張りに来たのかな。

 

 

富士山とスカイツリーの位置関係がいい感じになったのに、今度は富士山がビルに隠れてしまった。うまくいかないものだ。

 

 

海から14キロ、全然進んでいない。全部で200キロくらいあるはずなのに10%にも達していない。

 

 

ここまでずっと堤防に沿って歩いてきたが、突如として堤防がなくなってしまい、普通の川沿いの道みたいな感じになった。陸側がそこそこの山なので堤防である必要がなくなってしまいこうなっているんだろう。

 

 

カヌーしている人たちがいた。さっきからチロチロ見えていたカヌーだけど、ここを拠点にしているようだ。たぶん、大学のチームかなにかの練習なのだと思う。それ以外にも釣りをしている人などたくさんいて賑やかな感じだった。

 

 

焼き芋も売りに来ている。

 

 

しばらく歩くとまた堤防が復活してきた。心なしか堤防上の道路も車が通れるくらい広くなっている。あと、空がめちゃくちゃ青い。

 

千葉県松戸市

 

 

なかなか巨大な建造物があるなあとおもっていたら、これは水門らしい。「柳原水門」という名称のようだ。これが市原市と松戸市の境にあるようなので、ここからは松戸市になるということだろう。

 

 

松戸市に入ってしばらく進むと今度は北総線が通る橋が見えてきた。ちなみに、この画像の左下に女子高生と思われる二人の姿が写っているのだけど、この周辺の高校が部活動のトレーニングに使っているのか、たくさんの高校生が走っていた。走りながら何やら深刻そうな会話をしてた。

 

「それでさ、カスミのこと好きでしょって裕太に聞いたの」

 

「それで? それで?」

 

「好きじゃないって」

 

「うそー、絶対に好きじゃん」

 

「でしょ、裕太がカスミを見るときの目、尋常じゃないよって言ったの」

 

「完全にやばいよね」

 

裕太はいったいどんな目でカスミのことを見つめていたのか気になるところですが、どうやらけっこうな距離を走らされているみたいで、ちょっとボヤキも入っていました。

 

「走らせすぎだよね」

 

「あー、足痛い」

 

それを聞きながら「僕も足が痛い」と会話に混ざろうと思いましたが、明らかに変質者なのでやめておきました。

 

 

ちょっと見えづらいですが、海から16.25 kmだそうです。そろそろ大胆なワープを考えていかないと全然進んでいないし、足が痛い。

 

 

この辺りに「矢切の渡し」があるらしい。細川たかしの歌にも出てきた有名な場所だ。江戸幕府が設置した由緒正しい渡船だ。しかも、いまでも運航を続けているらしい。

 

 

かなり河川敷が広いので堤防から遠い。痛い足を抱えたこの状況ではちょっと行けそうにないが、どうやら画像の茂みの辺りが乗り場らしい。渡った向こうは東京都葛飾区柴又だ。

 

 

そろそろワープを、なんて考えていたら、さっそく堤防脇の道路にバス停があった。これ幸いと近づいてみる。

ワープを決めるには2つの要因が大切で、1つがダイヤ的にあまり待たされないこと、そしてもう1つが、あまり県境から離れないこと、だ。どちらもクリアしていてくれ、と祈るような気持ちで近づいた。

 

 

まずはバスルートから。イエス。このルートなら地図内をL字にはしる江戸川からそう大きく離れない。松戸駅まで行けそうだ。

次に重要なのはダイヤだ。

 

 

なんだこりゃ。

思わず声を上げてしまった。

 

平日にはいっさいバスがなくて、土日祝日のみにバスがあるなんて初めて見た。まあでも、今日は土曜日だし、待ち時間もそこまでなさそうだ。土日祝日に8本しかないバス、それがタイミングよく存在する、これはもう神がワープしなさいと言ってるようなものだ。

 

ただ、このバスも少しだけ不安要素がある。

 

 

このバス停は、謎の顔出し看板を携えた「やきり観光協会」が運営する「野菊の蔵」という施設の中にあるのだけど、この施設が強固に閉店していた。

 

 

営業時間は土日祝日の10時から16時までと書いてある。そして今日は土日祝日だ。時間もお昼になろうかという時間だ。つまり、絶賛営業中でなくてはならない時間なのだ。

 

ただ、休業していること自体は構わない。いろいろと理由があるのだろう。

 

ただ、そうなってくると同じく土日祝日しか運行しないと謳っているバスの信頼性まで揺らいでくるのだ。この施設とバスの運行時間は明らかにリンクしている。そう、つまりなぜか営業していない野菊の蔵と同じく、なぜか運行していないバス、も十分にありえる。

 

果たしてバスはくるのか。来なかったらとんだピエロじゃないか。痛む足をさすりながら、祈るようにしてバスを待つ。神よ。神よ……!

 

頼む……!

 

 

バスofゴッドである。

 

よかった、これで松戸駅まで一気にワープできる。

 

バスの乗客は僕だけだった。そのまま一気に松戸駅まで移動したのだけど、そこで一つの重大な事実に気が付いたのです。まずは地図をご覧ください。

 

赤で示したのがここまでの移動経路。

このまま松戸駅まで行ったとして、だいたい21 kmくらいの移動距離だ。現時点でお昼くらいなので歩くペースとしてはまあまあなわけだ。

けれども、何度も申し上げている通り、千葉県の県境は全部で200 kmくらいある。それを2日間で走破しなければならないわけですから、だいたい1/4の時間を使って1/10くらいしか終わっていない。これはえらいことですよ。

つまり、もっと大胆にワープを決める必要があるわけです。松戸駅までワープした程度、そんなしょぼいワープで喜んでいてはいけません。そこでもう一度ルールを確認するわけです。

 

「ただし、千葉県境の総延長は約200キロあるため、2日間では走破できない可能性がある。よって、川と並行して走っており、川から大きく離れない路線であればバス・鉄道でワープして良いものとする」

 

このルールを悪用すればいいんですよ。編集部は本当に迂闊だったと思いますよ。「川から大きく離れない路線」なんて曖昧なことを書いちゃだめですよ。どれくらいが「大きく離れる」なのか、解釈はひとによってまちまちですからね。

この赤で囲った部分は完全に「川から大きく離れて」いないでしょうという領域です。つまり、松戸駅だけに留まらず、「流山」という駅まで一気にワープできてしまう。そういうことです。その間、県境を見張ることはできませんが、まあ、地図を見ればわかるので、県境は正常です。

 

そうと決まれば大ワープです。

 

11:00 JR馬橋駅

 

ということで、常磐線に乗って松戸駅から馬橋駅にやってきました。ここで流鉄流山線に乗り換えて流山駅を目指します。

ぜんぜん関係ない話ですが、なぜか僕はこの馬橋駅に来ると頭がズキズキしてくるんですよね。何か良くないオーラというか、35時間くらい電車に乗り続けた疲労感みたいなものがフラッシュバックしてくるんです。なぜなのでしょうか。

 

 

この光景とか、どこかで見たことがある気がするんですよ。どこで見たのでしょうか。悪夢の中とかでしょうか。

 

 

さて、ここが流鉄の馬橋駅ホームです。JRの改札を出て陸橋を渡った先にあるのですが、その案内が微妙に分かりづらく、マゴマゴしていたら目の前で電車が行ってしまいました。まあ、だいたいこの時間帯だと20分に1本くらいあるようなので、次の電車を待つことにしましょう。コンビニでも行って食料を調達することにします。

 

 

何が起こったのか分からないけど、どう考えても駅のコンビニで売る分量じゃないだろ。ストロングゼロのやばいやつだぞ、これ。どうなってんだ、馬橋駅の駅ビルコンビニは。

 

 

ストロングゼロを買うべきか迷ってるうちに、20分経過しましたので、そのまま先ほどの分かりにくいホームへと向かいました。そこにはピンク色のかわいい車両がありました。

 

どうやら、数日後に控えた令和2年2月2日の2並びの日に備えてニャンニャン記念号みたいな特別ラッピングのようです。「ワンマン」と記載されるべきところも「ニャンマン」と記載されている念の入れようですが、この特別車両を撮影しに来ていた訓練された剛の者みたいな人が、「普通はニャンマンじゃなくてマンの方を猫にするだろ。でもワンニャンだと犬と猫みたいになるもんな」とブツブツ言っていてけっこう怖かったです。

 

千葉県流山市

12分ほどで終点の流山駅に到着しました。なんだか静かでのんびりとした雰囲気のする駅です。

 

 

流鉄の歴史は古く、開業100周年になるそうです。ちなみに、作中では「架空です」と言っているのにどう見てもこの流山市が舞台としか思えないアニメ「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」としっかりコラボしています。

 

 

駅から県境は近いようなので細い路地を抜けて歩いていきます。あの階段の向こうが県境のはずです。

 

 

やはり変わらず、江戸川はそこにありました。県境はそこにありました。心なしか堤防の色合いが緑から茶色めになっていて寂しさを感じますが、やはり変わらずそこにありました。

現在の位置がこちら。

総移動距離 30.66 km

ワープによりずいぶんと先に進めたが、正直に告白すると、じつはもう一段のワープを狙っている。ちょっと戦略めいた複雑な話になるので、心して聞いて欲しい。

赤で囲った部分は、誰がどう見ても川から大きく離れていない路線である。つまり、ここは一気にワープできる可能性がある。しかしながら、そうなると、なぜここ流山駅に来てしまったのかという疑問が残る。

なぜなら、松戸駅から一気に馬橋駅を通り抜けて新松戸駅で乗り換え、南流山駅から流山おおたかの森駅でさらに乗り換えればこのワープ路線に到達する。つまり、一度も歩くことなく、全てをワープで行けるのだ。

しかしながら、青で囲った流山おおたかの森駅、これがネックであると考えた。この駅はあまりに県境から離れすぎである。測定してみたら2.5 kmも離れていた。これでは理解を得られない。

 

ということで、流山おおたかの森駅を避けるために、ここ流山駅にやってきて、そこから徒歩でワープ地点である江戸川台駅を目指すこととした。

 

これにはもう一つ理由がある。以前に、縄文から平成まで、全ての時代名が付いた駅を巡るという蛮行を実施した時(なんで?)にそれは起こった。

 

https://travel.spot-app.jp/heisei_pato/

 

時代名のついた駅を延々とめぐる中で、ついに江戸時代の出番がきた。江戸の名前を関する駅は複数あった。結局、特に深い理由もなく東京都の「江戸川橋駅」を訪問したのだけど、その際に、「あーあ、地元の江戸川台駅にきてほしかったわー」と迂闊なコメントが書かれたのだ。こういう迂闊なことを書くと本当に来る、読者にはそれを理解させなければならない。迂闊に書くと来る、というわけで、迂闊なコメントどおり、江戸川台駅を目指し、そこからワープを決めることにした。

 

 

海から30 kmらしい。ワープを決めてずいぶんと進んだが、それでもまだまだ先は長い。

 

 

歩いていると、橋を建設している現場に遭遇した。思った以上に橋が少なくて千葉県の出入りに苦労しそうと考えていたが、これでかなり楽になるのかもしれない。

 

 

この看板を見て驚いたのだけど、いつの間にか県境の向こうは東京都ではなく、埼玉県になったらしい。おそらく埼玉県の三郷市になるのだろう。東京都を突き抜けたと考えるとけっこう移動してきたのかもしれない。

 

 

流山市に入ってから急に川沿いの風景が殺風景になったように思う。下流の方では緑が茂り、人々が数多く行きかい、狂ったように野球をしていてラッパまで吹かれていたのに、急激に荒涼とした世界みたいになってきた。

 

 

堤防から降りて町へと向かっていく。迂闊なことを書いた読者をギャフンと言わせるため江戸川台駅に向かうのだ。つまり、もう一発ワープを決める。

 

 

少し川から離れて歩いていると、殺風景な景色に似つかわしくない巨大な建物が目の前に現れた。しかも新しくて綺麗だ。

どうやらこれはロジポートと呼ばれるマルチテナント型物流拠点のようだ。楽天モバイルとかが入っていた。

 

 

そのロジポートの前にはおあつらえ向きな感じでローカルなコミュニティバスのバス停があった。しかも、今から読者をギャフンと言わせるために向かっている江戸川台駅まで行くらしい。完全に勝っただろ、川を離れたのは的確な判断だった、と時刻表を見ると、残念なことにバスは5分前に行ってしまったようだった。

 

「ぐおおおお、タッチの差じゃねえか。馬橋駅の乗り換えが分かりやすかったらぜったいに間に合ってた!」

 

と悶絶するのですが、ここで冷静に考えてみてください。バスの5分遅れ、じつはまだチャンスがあるじゃないですか。まだチャンスあるじゃないですか。

僕も良くバス停で待つんですが、けっこうバスって遅れてくるんですよね。鉄道とは違って他の車が通る道路で運行しているわけですから、渋滞、信号待ち、そういった要因で5分くらいはけっこう遅れる。つまり、時刻表的には5分前に行ってしまったのだけど、まだ来ていない可能性は大いにありうる。

 

それは完全に無根拠な理論ではない。なぜなら、僕はこのバス停に至るまでにおそらくバスが通るであろう路線に並行して歩いてきている。その時間はちょうど5分くらいだろうか。つまり、もし時間通りにバスが来ていたとしても「あ、バスだ」と目撃している可能性が高い。それがないということは、まだバスは来ていないということじゃないか。

 

「くる、絶対に来る。バスは遅れている!」

 

そう確信して15分くらい棒立ちで待っていましたが、来ませんでした。やっぱもう行っちゃってたんだな。バスって時間通りに停留所に行くと遅れてくるのに、遅れていくときっちりオンタイムなのな。

 

諦めて歩き出すと、ガーっと赤い軽自動車がやってきて、僕の真横で停まりました。そのあまりのタイミングに「まさかこれがバス?」と思ったのですが、そうではなく、どっからどう見ても軽自動車でした。

 

助手席の窓がゆっくりと開き、おばさんの姿が見えます。運転席にもおばさんがいましたので、おばさん二人でドライブでもしていたみたいです。

 

「すいません、この辺にファミリーマートありますか?」

 

「いや、ちょっとわかんないですね、この辺の住人じゃないんで」

 

なんだ、道を尋ねたかっただけなのかよ、異常に小さいコミュニティバスかと思ったじゃないか、と思いつつ無難に答えました。普通なら、それで「あらー、失礼しましたー」みたいな感じで走り去っていって終わる話だと思うんですけど、おばちゃん、なぜか食いついてきた。

 

「え、なんでこの辺の人じゃないのにんなところ歩いているの?」

 

確かに、巨大な物流基地があるだけで、あとは広い道路と森が茂っているだけ、そんな場所をこんな住人でもないおっさんがフラフラ歩いているのはおかしい。このまま怪しまれて通報されたら面倒だ。

 

「いや、実はずっと浦安から川沿いに歩いてきたんですよ」

 

よけいに怪しい感じになってしまった。おばちゃんもいぶかしげな表情を見せている。

 

「千葉の県境をずっと見張ってきたんです」

 

「なんでそんなことを?」

 

「(それは僕には分からない)」

 

こんな心温まるやり取りがあって、軽自動車は走り去っていきました。

 

2:03 江戸川台駅

 

そして、ついに江戸川台駅に到着。シャオラ! 思い知ったか! 思ってもないくせに迂闊に「あーあ、江戸川台駅に来てほしかったなー」なんて書くからこういうことになるんだぞ、思い知ったか!

 

ということで、ここから一気にワープを決めます。

 

千葉県野田市

14:26 川間駅

 

いつの間にか千葉県野田市に入り、いよいよ江戸川沿いの県境の旅は佳境に入りつつあった。いままでのルートはこちら。

 

一気にワープを決めたのはいいものの、ここからは千葉県の先っぽの戦いだ。赤で示したチーバくんの鼻の先を目指すことになる。この領域はワープに使えそうな鉄道路線が皆無なので、かなり厳しい戦いになりそうだ。ちなみに、鼻先まで行くと江戸川に別れを告げて、今度は利根川を銚子に向けて下っていくことになる。めちゃくちゃ長い。到達できるのか、これ。

 

川間駅はとてもとても静かな印象がする駅だ。川間って地名は、たぶん鼻先が近くて江戸川と利根川に挟まれているからだと思う。駅前は綺麗に整備されていて、落ち着いた雰囲気、ちょっと頑張って電車に乗れば都心に出ることができる。将来はこういうところに住みたいんだよ。

 

さて、駅前の小さな通りを抜けて川を目指す。

 

 

当たり前だが、そこに川があった。県境もここにある。ずいぶんと川幅が狭くなり、殺風景さが増したように思えた。

 

 

ちょっとわかりづらいが、海から45 kmらしい。ずいぶんと来たものだ。

 

子供たちが木に引っかかった何かを取ろうとしていた。実にのどかな風景だ。

 

 

堤防の高さ自体はもうそこまでではなくて、そのかわり道が広くなっていた。普通に、車同士がすれ違えるくらいの広さがある。

 

 

と、思ったら、なにもここまであからさまにしなくても、というレベルで突如として道が狭くなる。ここまで急激だと何かあったんじゃないかと心配になってくる。

 

 

そろそろ日が傾いてきた。これは由々しき問題だ。先ほども示したように、これから歩いていくゾーンは千葉県の先っぽ、チーバくんの鼻の先だ。これからは鉄道がない地帯に入り込んでしまう。そこで日が暮れてしまうとかなりやばい。宿泊場所がない可能性が高いからだ。

 

これが、鉄道が存在する地帯ならなんとでもなる。まず駅前とかにホテルがある可能性が高いし、ないとしても適当に移動してしまえばいい。ただ、これが鉄道不毛地帯となると、何もない、移動も不可という状態になってしまうのだ。それだけは避けたい。できることなら、日が暮れる前にこの先っぽ地帯を駆け抜けてしまいたい。

 

 

見慣れぬ乗り物が数多く停めてある施設を発見した。なんか翼を畳んだみたいな形状をした不思議な乗り物が複数ある。なんだろこれは。

 

 

どうやら関宿滑空場という施設らしく、主にグライダーなどが離着陸する場所みたいだ。停まっているのがグライダーなのかなー、と思いながら見ていたら、

 

 

いた。あれがグライダーなのかな。プロペラついているから違うか。とにかく、空から行けば県境を見張るのも楽なのにな。乗せてくれんかな、とか考えていたら、これが県境を見張る旅だってことを思い出した。ただただ無意味に歩かされている旅だと勘違いし始めていた。

 

延々と、延々と、何もない殺風景な景色の中をただただ歩く。気が付くと、人とすれ違うこともなくなっていた。

 

 

 

しばらく歩くと、何かおかしな建造物が目の前に現れた。めちゃくちゃ分かりづらいけれども、はるか遠くに城が見える。

 

 

調べてみると、どうやらこれは関宿城跡という施設らしい。なるほど、ここには城があったのだ。川に囲まれた先っぽだし、なんとなく要所っぽいものな。つまり、これが出てきたということは、ついに千葉県の鼻先に到達したということだ。地図で表すとこんな場所らしい。

 

ついに千葉県の先っぽに到達した。といっても、あの城はまだまだ先にあるので、まだまだ歩いていかねばならない。

 

海から59 km。ずいぶんと遠くまで来たものだ。太陽は完全に夕暮れのそれに変わり果てていた。

 

 

完全に太陽が沈む。千葉の鼻先に到達する直前でこんなことになってしまった。非常にヤバイんだけど、非常に美しい夕暮れだ。

 

なぜか、城跡に到着すると無骨な重機みたいなものが展示されていた。表記を見るに、建設省時代のものらしい。おそらく川砂を掘る重機なのだと思う。ここ千葉の鼻先は江戸川と利根川が分かれる分岐点がある場所で、分岐点だけに砂が溜まりやすい。それを掘って取り除く重機じゃないだろうか。なんにせよ、こういう展示が出てきたということは分岐点、千葉の鼻先が近い。

 

 

アフリカのサバンナみたいな写真が撮れてしまった。なんということだろうか。千葉の鼻先はサバンナだったのだ。

 

 

さて、ついに千葉県の鼻先に到達したのだけど、ここで特に城跡を見ることもなく、堤防から降りて河川敷部分を歩いてみた。何の変哲もない草むらと道路の写真と思うかもしれないが、ここには衝撃的な事実が示されている。どうか心臓を叩いたうえで聞いて欲しい。

 

まずはこちらの地図を見ていただきたい。

 

言うまでもなく千葉の鼻先の拡大図、今いる場所の地図なのだけど、衝撃の事実が示されている。わかりやすいように拡大してみよう。

 

あーーー! 陸地に県境がある!

 

そう、ずっと江戸川上を走っていた県境の点線が、突如としてカーブしてきて陸地にかかっているんですよ。そして、それがこの位置なんです。

 

これは完全に陸地にある県境でしょ。千葉県の県境は陸地にもあるって証でしょ。

※編集部追記 埼玉県と表記されている部分は実際には茨城県です

 

 

さらに進んでいくと、ここにもしっかり県境がある。

 

 

いやー、これは完全に陸地にある県境でしょ、って思ったのですけど、やはりここは川の中なんですよね。立派な道路があると言っても堤防下の河川敷ですから、例えば川が増水したら川の中になってしまうわけです。

というか、ここはおそらく川だったんでしょう。ただ、川が分岐するポイントなので、先ほどの重機からも分かるように、ここに砂が溜まっていった。そしてこんな陸地ができたんじゃないでしょうか。

 

※編集部追記 埼玉県と表記されている部分は実際には茨城県です

 

おまけに、やはり県境というと「ここから千葉県だぜ」「おいでませ千葉県」みたいな看板とか表記があるべきなんですよ。そういう物がないとちょっと地図の妙みたいなイメージは拭えません。

ということで、ここでの県境は三角印、陸地の県境としてはちょっと微妙、ということでどうでしょうか。

 

 

夕暮れに浮かぶ城が美しい。

 

まだまだ県境監視の旅は続くけど、真っ暗になってしまったので監視もクソもなく、ただただ暗闇の堤防を歩き続けました。

 

 

途中、ちょっと町の方に降りてみたら、闇の中から突如として巨大なカエルの石像が現れて、驚きすぎて腰が抜けるかと思った。

 

といったところで1日目の旅はおしまい。

 

旅の行程はこちら。

 

総移動距離 70.65 km 

 

ついに千葉の鼻先に到達し、江戸川に別れをつげて利根川になったものの、まだまだ先は長い。果たして2日目で銚子市に到達できるのか。陸地の県境はあるのか。不安な気持ちを抱えながら2日目に続く!

 

 

2日目

千葉県野田市

 

めちゃくちゃ足が痛い。けっこう積極的にワープを使っていたので、そこまで歩いていないと思うのだけど、それでもこの痛さだ。おそらく編集部の言葉どおり、歩く取材をしてこなかったツケが来ているのだろう。

 

さて、昨日は千葉の鼻先に到達し、なんとか陸地の県境と思われる地点を確認した。けれども、そこは相変わらず川の中だったし、あまり県境的なものではなかった。つまり納得いくものではなかった。ということで、引き続きしっかりと監視を続けなくてはならない。

鼻先を通過したことにより、パートナーとなる県境川が江戸川から利根川に変わった。

 

 

昨日は暗くて確認できなかったが、しっかりと利根川である。

 

 

利根川とは日本最大の流域面積を誇る川である。長さも信濃川に次いで2位となっている川だ。とにかくでかい。銚子の河口までまだまだ距離があるというのに、この段階で川幅が広い。とんでもないスケールと言わざるを得ない。

 

さて、ここまでずっと県境を見張りながら千葉県側を歩いてきたのだけど、ここで編集部の指示により橋を渡ることになった。つまり、対岸の茨城県側に行くことになったのだ。そうか、見張る川が利根川に変わると、県境の向こうも茨城県に変わるのか。

 

 

芽吹大橋、千葉県野田市と茨城県坂東市を結ぶ橋のようだ。かなり立派な橋だが、昭和33年に完成したらしく、かなり古くなっている。この先が茨城県だ、なんだかワクワクする。

 

茨城県坂東市

 

 

遠くから見ると歩道のない橋のようにみえて、また歩行者を労わる気ゼロの地獄のような橋かと恐怖したが、近づいてみると車用と歩行者用で橋が分かれていた。これは安心。

 

 

やはり、かなり年季の入った橋だ。車用の橋の方はガンガンとトラックとか走っているが、こちらのほうはまったくもって誰も使っていない。

 

 

おっと、こんなところにしっかりと県境の表示があった。きっちりと橋の中間地点にこの表示があったので、やはり川の中心が県境なのだろうと思う。

 

 

たぶんこんな感じ。

 

 

橋を渡り切り、茨城県入りする。こんどはこちら側の川沿いを県境を監視しながら歩いていく。

 

先ほど渡ってきた橋がこれ。かなり長い。

 

川沿いの景色は千葉県側も茨城県側もそう変わらない。右手に川を見るか左手に川を見るかの違いでしかない。淡々と歩いていく。

 

 

海から104キロらしい。昨日の江戸川では、海からの距離がすなわち移動してきた距離だったが、今日はもう利根川に変わっている。つまりこの表記は河口までの距離ということだ。つまり、ここから104キロ川が続く。長い。遠い。これは今日中に終わらないだろ、どこかで大胆なワープを決めるしかない。

 

ちなみに、茨城県に入っても薄っすらとだけど富士山が見える。すごいな、富士山。日本中どこからでもみえるんじゃないか。

 

 

 

足、いてえなあ、もうゆっくりとしか歩けないよ、と思いつつ堤防の道路を歩いていると、はるか後方で異常事態が巻き起こっていた。

 

利根川に入ってから基本的に生身の人間に遭遇していないのだけど、はるか後方に初の利根川人間として犬の散歩をするおっさんが登場してきた。おそらく下の集落に住んでいる人で、日課の散歩なのだろうけど、その連れている犬がケルベロスのごとき勢いで猛り狂っていた。

 

完全に獰猛な犬なのだけど、まあ、はるか後方なので安心だろうと思っていたら、そのケルベロスの慟哭が異常なスピードで近づいてくる。ちょいちょい振り返って確認するたびに、おっさんとケルベロスの姿が大きくなっている。おっさん、ちょっと小走りになってた。明らかにおかしいペースで近づいてくる。散歩というより狩りみたいな動きだった。誰を狩るんだ。僕か!?

 

冗談じゃない。あんな魔犬に喰われてたまるか、とこちらもペースアップする。それでもおっさんとケルベロスはどんどんスピードアップする。気が付くと、足が痛いのに、猛ダッシュで逃げる僕、おいかけるおっさんとケルベロス、という訳の分からない状態になっていた。

 

それでも、しばらくするとケルベロスは堤防の下へと降りて行ったので、ホッと安堵した。茨城県に入ったらこれだ。ほんと、恐ろしい場所だよ。

 

 

安堵しつつ、呼吸を整えながら歩いていると、河川敷に瓦礫みたいなものが積みあがっている光景を目にした。おそらくではあるけど、昨年の台風か豪雨の時に増水して、樹木にひっかかってたまった瓦礫だろうと思う。

 

利根川は、日本三大暴れ川に挙げられるほど洪水や水害が多いとされた河川だ。実際に洪水が起こるとああいう状態になるんだなあとゾッとした。

 

ただ、歩いていると、それ以上にゾッとする光景が目の前に広がっていた。

 

 

これである。

 

なんてことない光景じゃん。堤防上の道、普通じゃん、というひとは反省して欲しい。これぞ僕が一番恐れていた光景だ。

そう、なんと、川と共に伸びていた通路が、通路だけ左に曲がっていったのである。では、そこには何があるのか。図解をするこうなる。

 

 

どうやらここ、飯沼川との合流地点のようなんですけど、その合流地点にかかる橋がない。どう好意的に解釈しても橋がないんですよ。するとどうなるか、飯沼川の上流まで行ってそこにある橋を渡らないといけないわけなんですよ。

 

調べてみたら、上流の橋まで3kmありました。地獄かこれ。

 

しかも橋を渡ってそれで終わりではなく、同じ距離を下って利根川に戻ってこなくてはならないですからね。計6kmです。地獄かこれ。

 

ただ川を渡るだけで6kmの遠回り。普通に歩くと人は1時間に4km歩きますから、単純計算で1時間半のロスです。地獄かこれ。

それでも、泳いで渡るわけにもいかないので、泣きそうになりながらも歩くしかありません。

 

 

ただでさえ大回りのルートなのに、さらに突如としてゴルフ場が登場してきて、ダメ押しの大回りをさせられるので、県境を見張る人の気持ちも知らないで呑気にゴルフしやがって、と意味不明な怒りが沸き起こりつつあった。

 

 

なんだよ、飯沼川って、川なのか沼のかはっきりしろよ、とよく分からない八つ当たりをしつつなんとか上流の橋へと到達しました。ガチで1時間近く遠回りした。心が折れそう。

 

ちなみに、飯沼川も市の境になっているらしく、この橋を超えると茨城県坂東市から常総市になります。

 

茨城県常総市

 

 

鬼門である飯沼川を渡り、利根川に向かって歩いていると、車を停めて写真撮影している人がいた。はるか遠くにまだ富士山が見えるらしくそれを撮影している。すごいな、富士山。みんな富士山のこと好きすぎだろ。

 

 

利根川へとつづく真っすぐな道を歩く。すると、予想だにしない光景が目に飛び込んできた。

 

なんだこれ!?

 

それは、もう利根川に到達するという場所で突如として現れた。

 

 

これ県境じゃないの!? え!? 県境じゃん。県境!?

 

思いっきり陸地の県境があるじゃん。しかもこの県境表示、なんか真新しい。

 

地図でみるとこんな感じ。なぜか茨城県側にポコッと千葉県が入り込んでいる。その境がしっかりと県境として提示されている。

っていうか、なんでこんな千葉県が侵食してくることになっているんだろう。

 

 

 

実際の風景に県境を入れ込むとこんな感じになる。ぽこっと茨城県に侵略してきた千葉県だけど、その中に人が住んでいる集落があるというわけではなく、そこにはただ畑があるだけだ。

 

ただ、こういう形状で県境があるということは、もう一つ、同じような千葉県から茨城県に戻る県境があるはずだ。そこまで歩いてみよう

 

千葉県野田市

 

 

茨城県に侵食している千葉県、その中に牛が放牧されている一角があった。ただ、この部分には牛が生活するような施設はなかったので、おそらく茨城県から毎日ここに運ばれてきているのだと思う。もしかしたらこの牛たちは日本一、県境を移動する牛なのかもしれない。

 

 

侵食してきた千葉県内を順調に歩いていると、突如として行き止まりが出現してきた。これだから川沿いの道は恐ろしい。おそらく、調整池がある関係で、水の出入りのためにここで堤防が途切れるのだと思う。こりゃ、また遠回りか。

 

 

一瞬だけ危惧したけど、行き止まりのすぐ横には河川敷に降りる階段があったので、そこから降りて河川敷を通過していく。ヘドロみたいなのが堆積している場所を通過する必要があるらしく、なかなか過酷な感じになってきた。

 

 

この部分が堤防より少し低い堰のようになっていて、調整池に水が入るようにしているんだと思う。逆に言うと、洪水時はさっきの侵食してきた千葉県部分がほとんど水に浸かるんじゃないだろうか。そうやって利根川の水位を調整するわけだ。だから調整池。もしかするとこの調整池で水に浸る区域がそのまま侵食している千葉県になるのかもしれない。

 

 

なんとか、逆側の堤防まで上ることができた。

 

 

そして、逆側の県境もしっかりと登場してくる。2つめの明確な陸地の県境だ。

千葉県はしっかりと、明確に陸続きで、陸地の県境があったのだ。

ちなみに海まで100キロを切った。

 

 

茨城県守谷市

県境を越えて再度、茨城県に入ると常総市から守谷市へと変わる。

 

 

なんだよ、ちゃんと陸地の県境あるじゃねえか、けっこう衝撃だな、と思いつつ歩いていると、即座にそれ以上に衝撃的な光景が目に飛び込んできた。

 

 

ちょっとわかりづらくて申し訳ないが、まっすぐかと思われた道路が、はるか先でググっと左側にカーブしている。大きくカーブしている。僕はこの不自然なカーブに記憶がある。忌々しい記憶がある。けっこう真新しい記憶がある。

 

地獄かよ。

 

また、利根川と鬼怒川の合流があるらしく、これまた3km上流にいくまで橋がないっぽい。地獄かよじゃない、明確に地獄だ。

また合計6kmの遠回りだけはなんとしても避けたい。そこで考えましたよ。みなさんはちょっとこちらの地図を見てください。

 

そう、橋を目指すために川から離れるならば、そこからバスによるワープを目指せばいいのです。川沿いはなかなかバスが望めませんが、3kmも上流にある橋の付近ならかなり可能性が高くなります。なにせそこを通るしかないので、絶対に大きな道路です。そこには必ずバスがある。

さらに、位置関係から考えるに、そのバスは「守谷駅」行きである可能性が高い。つまり、あまり川から離れることなく移動できるわけです。そして、そこから鉄道に乗って一気に取手駅を目指す。これもまあ、あまり川から離れない路線。そう、一気に大ワープできる可能性がある。

つまり、大回りが余儀なし! みたいなピンチと見せかけて、それを大ワープのチャンスに変えるのです。ピンチをチャンスに変えるのです。

そうと決まれば橋を目指して歩くのみ。

 

 

トボトボと歩いていると、やたら攻撃的なエンジン音が響き渡ってきました。なんだろうと上空を見てみると、赤い飛行機が颯爽と飛んでいました。どうやら、なかなか本格的な航空機ラジコンのようで、みるからに高価なんだろうなってものがブンブン飛んでました。川沿いにはいろいろな人がいるね。

 

 

北海道あたりではそう珍しくないけど、ここまで延々と真っすぐな道路を見ることは、関東ではなかなか珍しい。

 

 

よくよく見ると、河川区域図なる看板があって、しっかりとこの辺の一部分は千葉県野田市だぞって地図付きで案内されていた。

 

 

死ぬ思いをしながらなんとか上流の橋に到達。思った以上にしっかりとした橋だ。予想した通り道路もでかい。

 

 

これが忌々しき鬼怒川だ。

 

さて、僕の予想が正しければ、橋を渡ってすぐの場所にバス停があるはずだ。若干、希望的予測ではあるけど、間違いではないはず。きっとバス停はある。

 

 

あった。

 

しかも守谷駅行き。完全に予想通りだ。怖いくらいだ。こういった旅ばかりしていると、こんな勘ばかり研ぎ澄まされてくるのだ。

 

 

バスに乗って守谷駅を目指す。はるか向こうに見えるあの建物、歩いているときにすごく遠くに見えていた建物じゃないかな。ワープってすごいな。一気に進めてしまう。

 

 

守谷駅に到着。予想していた以上に大きくて立派な駅だし、なにより駅周辺も栄えている。めちゃくちゃ人がいて何やらイベントをやっている感じだった(1月下旬の取材です)。

 

 

守谷駅はつくばエクスプレスの駅と関東鉄道の駅があるようなのだけど、取手を目指すために関東鉄道の方を利用する。

 

 

駅の外観は近代的で真新しい感じだったのに、中に入るとレトロな雰囲気の駅だった。あと、異様に暗い。

 

こんなホームで取手行きの電車を待っていたら、なぜかホームにいた女性が踊りだした。おそらく、ヘッドホンで聞いているご機嫌なナンバーに身を委ねる形で、ついつい踊りだしてしまったのだろうけど、なぜかそれを見ていた無関係そうな青年まで踊りだした。

 

これはもしかしてフラッシュモブが始まるのでは!? みんなが次々に踊りだして、その中に幸雄(だれ?)の姿もあって、幸雄がプロポーズしてくるわけですよ。道子(だれ?)も両手を口に当てて驚きの表情。小さく頷く。また狂ったように踊りだす民衆。幸雄と道子を取り囲むようにして踊るその姿は、まるで花びらのようでもあった。

 

ということが始まると思ってある程度覚悟していたのですが、何事もなく、中途半端な感じで女性も踊るのをやめ、そのうち電車が来ました。なんだったんだ。

 

茨城県取手市

11:51 取手駅

 

 

取手駅までワープしてきたところで、ここまでの経路はこちら

 

総移動距離 108.77 km

 

取手駅に来たのはいいものの、早めに川を目指し、千葉県側に移動する必要がある。なぜならば、2度苦しめられ大回りを余儀なくされた「川の合流」だ。あれは、よくよく考えると茨城県側だから起こった惨事だ。

 

大きな川は、茨城県よりさらに北の方の山から流れてくるわけだ。それらが利根川に合流していく。そうなると、合流地点に橋がなくて大回りとなるわけだ。

 

逆に考えると、千葉県側は房総半島以外は山がほとんどないので、そこまで大きい川が利根川に流れ込むわけではない。つまり、利根川の茨城県側はめちゃくちゃ合流があるけど、千葉県側はそんなにない。そういうことだろうと思う。

 

 

取手駅から利根川は比較的に近いみたいで、歩いていたらすぐに川にかかる橋に出た。いつのまにか川幅はめちゃくちゃでかくなっているし、河川敷も広くなっている。さらに、その河川敷ではずらりと並んだおっさんたちによってゴルフの打ちっぱなし練習が行われていた。

 

 

久々の利根川だ。めかなり川幅が広くなっている。向こうにかかる橋は常磐線が通る橋だ。

 

千葉県我孫子市

 

死ぬほど長い橋をなんとか歩き終えて久々の千葉県入りとなった。

 

 

ちなみに、千葉県側の河川敷でもめちゃくちゃゴルフの打ちっぱなしやっていた。両サイドで狂ったように打ちっぱなしていたし、千葉県側なんてその奥にゴルフ場まである。江戸川沿いでは狂ったように野球やっていたけど、利根川沿いは狂ったようにゴルフをやっている。その辺は文化の違いなのかもしれない。

 

 

呑気にゴルフしやがってと怒りながらゴルフ場を横目に眺めつつ、いやいや、呑気にしてるわけじゃないだろ、言いすぎだろと、思い直してまた堤防の上の道を歩いていく。

 

 

本当に呑気にゴルフしやがって。

 

しばらく歩くと、異様なものが視界に飛びこんできた。

 

 

あれ? なんだ?

 

よく分からない看板表示が出現してきた。遠くて分からないけれども、もしかするともしかするぞと急いで駆け寄る。

 

 

うおおおおおおおおおおおお。県境だ! 県境だ!

 

千葉県側を歩いていたのに、突如として茨城県になった! 陸地の県境だ!

 

なんでこんなことになっているのか、地図で見るとこんな感じだ。

 

えらく大胆に取手市が侵食してきている。おまけに、さきほどの千葉県の侵食地帯は畑と牛しか存在しなかったけれども、今度はこの侵食領域にバンバン車が通る道路があるし、人も住んでいる。

 

茨城県取手市

 

県境なので、逆から見るとこんな表示もある。

 

 

完全に県境だこれ。陸地の県境だ。

 

 

ローソンまである。このローソン、利根川の千葉県側にあるのに、しっかりと「取手小堀店」になっている。

 

 

侵食してきた取手市内には、航空専門学校まである。学校関連で何となく思ったのだけど、例えばこの侵食地帯の中に小学生とかいたらどうなるのだろうか。住所的には茨城県取手市なので、取手市の小学校に通うべきだ。けれども侵食地帯内に小学校はない。越境して我孫子市の小学校に通うのか、はたまた僕が歩いてきた橋を渡って取手市の小学校に行くのか。それはめちゃくちゃ遠い。

 

 

ただ、侵食地帯内には渡し船があるようで、これが今でも絶賛運行中だ。これによって取手市の本体とのつながりがあるので、通学に利用するのかもしれない。

ただ、ごみの収集はどうなってるのか、水道はどうなってるのか、疑問が尽きない。

 

では、どうして県境がこんなことになってしまっているのか。なぜ茨城県が侵食してきているのか、調べれば簡単に分かることだろうけど、あえて調べず、現地で感じた雰囲気から予想してみる。

 

 

まず、県境から眺めたこの風景を見て欲しい。これは利根川とは反対方向なのだけど、こちら側にも水面が見えると思う。どうも、この水面に向かって県境が伸びている感じだ。書き入れるとこんな感じ。

 

 

地図をみると分かりやすい。

 

完全にこの湖というか沼と県境が一致している。そして、その沼の名前が「古利根沼」だ。これはもう、名前の通り、かつてはこの沼が利根川だったんだろう。そう、はるか昔は変わらず利根川に沿って県境があったということではないだろうか。

 

 

こんな感じ。

 

ただ、川が曲がっているというのはかなりのリスクだ。それに利根川は三大暴れ川に挙げられるくらい洪水の多い川だった。洪水時は川が曲がっているところから削れていく。かなり被害も大きかったんじゃないだろうか。

 

だから、川を真っすぐに直した。新たに掘り、埋め立てて今の形にしたのではないだろうか。ただ、川を直したのはいいものの、県境を変更するのはそう簡単な話ではない。結果、川の流れが変わったのに県境だけはそのまま残された、ということではないだろうか。

 

千葉県我孫子市

 

 

もちろん、侵食地域なので、先に進んでいけばまた県境があって、千葉県に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

総移動距離113.47 km

 

さて、ここまで移動経路を見て欲しい。そして、これからの行程を見て欲しい。そう、めちゃくちゃ先が長い。銚子の先っぽまで行かなければならないので、気の遠くなる長さだ。下手したら、ワープを駆使して1日半かけたのに、まだ半分にも到達していないのかもしれない。そして制限時間はあと半日しかない。

 

もう陸地に県境があるのわかったし、あとは銚子までワープでいいのでは? と思ったがさすがにそういうわけにはいかない。そこで、陸地に県境がありそうな場所をピンポイントで攻めようと思う。それがここだ。

 

これ絶対になんかあるでしょ。これを確認しないとダメでしょ。よって、この近くの駅まで一気にワープを決め、ここを確認しにいくことにした。

 

具体的には、ここから歩いて「湖北駅」まで行き、「成田駅」を経由して「佐原駅」までワープする。途中、ちょっと「あまり県境から離れないこと」ルール的に怪しいゾーンがあるが、まあ、そんなことは編集部に黙っておけばいい。川から離れていないと自分で判断して完全に合法である。

 

 

途中、完全に山越えだろみたいな過酷なルートを経て「湖北駅」へ到達。そこから列車を乗り継いで「佐原駅」へと到着した。

 

千葉県香取市

 

 

これまでは淡々と利根川を下っていったのだけど、今度は気になる地点を確認するためにピンポイントで移動するので、逆方向に歩いていかねばならない。それも、魔の茨城県側に行かねばならない。

 

地図で見ると近いように感じるかもしれないが、これはもっと早い段階で言うべきことなのだろうけど、あえてここで言わせてもらうと、こう、近そうに見えるじゃん、これ歩くとめちゃくちゃ遠いから。本当に、遠いから。これ、歩くと遠いのよ。マジで。

 

 

文句ばかり言っていても始まらないので歩き始める。佐原の町は大きな道路沿いを中心にけっこう栄えていた。とりあえず、茨城県側に渡る橋を目指す。

 

 

ヒーヒー言いながら歩くと、やっとこさ利根川に到達した。おそらくこの画像に見える対岸の、ちょっと奥の方に県境がある。

 

 

ここでは川の真ん中に県境があるので、橋の途中で茨城県稲敷市に変わった。

 

茨城県稲敷市

 

 

橋にもちょろっと県境表示がある。

 

 

イヤッホー! 千葉ああ! みたいなノリでジェットスキーに乗っている人がいた。イヤッホー! 千葉ああ!みたいなノリだが、これに県境を入れ込むとこうなる。

 

 

一貫して茨城県側で遊んでいる。

 

 

茨城県側に渡り、問題の地点を目指して歩き続ける。ずいぶんと日が傾いてきて夕暮れの雰囲気が出てきたが、それでも歩き続ける。

 

ここまで連続で陸地の県境らしい県境が登場してきた。ここにもアッと驚く県境があるはずだ。

そしてついに問題の個所に到達した。

 

 

どうやら、県境の場所には公園があるっぽいのだけど、なんというか、県境らしい表示が一切なかった。けっこう車が通る道路もあるのに、さっきの県境みたいにはなっていない。ここに県境があるなんて嘘なんじゃないかという佇まいだ。

 

 

僕の見立てが正しければ、こういう感じで斜めに県境があるはずなのに、何の変哲もない感じだ。公園内も二つの県にまたがってる公園のはずなので、そういった表記があると思ったが、全くもって存在しなかった。ちなみに、この公園がある場所、ここもスーパー堤防らしい。

 

おかしい、何か県境らしい何かがあるはずだ。何かあるはずだ。何もなかったら来た意味がないじゃないかと悶絶しながら探しましたよ。

 

 

あった。

 

ラジオペンチでしょうか。なんでこんな場所に落ちているのか分かりませんが、なぜか県境にまたがって落ちてました。たぶんこういうことでしょう。

 

 

もうこういうことでいいよ。よく見たらラジオペンチも2つで1つみたいな構造だし、日本で唯一、県境にあるラジオペンチでいいよ。

 

さて、このあたり一帯も、おそらく昔は川が曲がっていたのでしょう。そこに堤防を築いて川を真っすぐにした。そして県境だけがかつての川の形に残ったということではないでしょうか。

 

さて、ここから先ほどの橋の場所まで戻ります。なぜかというと、ずっと利根川と共にあった県境ですが、なぜかここで突如としてバグります。

 

何をトチ狂ったのか、県境が突如としてカーブして、小さな川に入っていきます。そしてそのまま川を通って常陸利根川が県境になっていきます。そう、こうなったらそれを見届けなければならない。

 

これね、地図で見ると常陸利根川までけっこう近いじゃんって思うかもしれませんけど、この際だから言わせてもらいますけど、これ、歩くとめちゃくちゃ遠いですからね。ほんと、遠いですからね。

 

 

小さな川に出た。県境を担ってるとは思えないか細い川だ。横利根川というらしい。

 

 

それでもしっかりと県境が通っている。

 

 

この横利根川と共に県境を監視しながら歩き続ける。

 

 

めちゃくちゃ日が暮れてきたけど歩くしかない。常陸利根川を目指すしかないのである。足が痛かろうと歩くしかないのである。県境とはなんと過酷なものであろうか。

 

そんな感じでトボトボと歩いていると、謎のコミュニティバスがやってきた。はっきり言って大チャンスである。たぶん、バスのルート的にこの横利根川に沿って運行するはず。

 

乗り込んでみると、僕以外に乗客はいなかったので、どこまでバスに乗れるか運転手さんに訊ねてみた。

 

「すいません、このバスって県境から離れていきますか?」

 

「はあ?」

 

「いや、この川って県境ですよね」

 

「ああ、そうだね」

 

「その県境からこのバスが離れていかないのかなって思って」

 

「そんなこと考えたこともなかった」

 

確かにその通りだと思う。ここで暮らす人はここに県境があって当たり前なのだ。

 

「実はずっと県境を監視しながら浦安から旅してきまして、県境からあまり離れると困るんです」

 

「なんでそんなことを?」

 

「(それは僕にも分からない)」

 

結局、バスは県境から離れていくらしいので、1区間くらいしか乗れなかった。

 

 

バスを降りて歩き出す。もうすっかりと日が暮れてしまった。暗くなると県境もクソもなくなるのでかなりのピンチだ。

 

 

もう完全に日が暮れてしまったが、ついに常陸利根川に到達した。ここからしばらく、この常陸利根川が県境を担っていく。この水門みたいなところで横利根川と常陸利根川が合流しているので、県境はこんな感じになる

 

 

千葉県香取市

 

 

完全に日が暮れてしまって深淵なる闇を歩いているのだけど、こちら千葉県側はポツポツと民家がある程度だが、向こう側の茨城県側は大きな道路が通ってそうで、煌びやかで明るい。

 

というか、いままでさんざん堤防の上を歩いてきたのに、ここは堤防がないんじゃないかってレベルで低い。すぐそこに川の水面が見える。

 

 

延々と歩いたけど、ガチで暗闇だし、多分、県境があっても何もなさそうだし見えなさそうなので、ここから駅を目指して行って一気に銚子までワープすることにした。

 

ちなみに、この先はけっこうな勢いで県境がバグる。常陸利根川から利根川に移動するのにところどころで陸地を通るようだ。

 

こんな感じ。けっこうな勢いで陸地に県境がある。でもまあ、いいんじゃない。地図で確認すれば。

 

千葉県銚子市

 

 

というわけで、ついに銚子駅に到達した。長かった。

 

ちなみに、銚子駅から利根川の河口まではそこそこに距離があるので、痛い足を引きずりながら最後の気力を振り絞って歩いた。

 

 

利根川、めちゃくちゃでかい川になっとるやんけ。

 

県境を書き入れるとこんな感じ。

 

ちなみに、GoogleMapで見ると、

 

なぜか利根川の途中で県境が終わってるので

 

 

こんな感じ。

 

これにて、千葉県、県境監視の旅、おしまい。

 

まとめ

 

旅の全行程はこちら

 

総移動距離225.44 km 

 

・千葉県は孤島ではなかった。陸続きの県境は複数存在する。

・中には思いっきり県境として表示されている場所もあるが、そっけなく存在する場所もある。

・ラジオペンチが県境にまたがって落ちている場所もある。

・川と県境がずれている場所は、かつてそこが川だった可能性が高い。

・江戸川は野球、利根川はゴルフが盛んである。

・久々の歩き取材はこたえる。

・千葉の県境は総延長が200 km以上あるので、とても2日では移動しきれない。

・なにも歩いて県境を監視しなくとも、地図を見ればだいたいわかる。

 

以上のことが分かった。いいか、千葉県はしっかりと陸続きだぞ。

 

おわり。