【全長200km】地下トンネル探検で学ぶベトナム戦争の歴史… ホーチミンの「クチトンネル」
ベトナム戦争の影が色濃く残る、ホーチミンの観光スポット「クチトンネル」。戦争の際に使用された全長200kmとも言われる地下トンネルの一部をガイドに案内してもらえるほか、トラップの展示や実弾射撃などを通じて戦争の生々しさを体感することができます。学びの場として観光客の関心を集めるクチトンネルを、実際に訪れた旅行大好き夫婦が詳しくご紹介します。
こんにちは!
阿佐ヶ谷在住のフリーライター夫婦、山岡ソースケ・リホです。
ブログ「ユリイカ・ユリイカ」と旅行をこよなく愛するアラサー夫婦です。
今回は東南アジアの雄、ベトナムのディープな隠れスポットをご紹介。
文化と進化が入り混じる首都ハノイ。リゾート地として人気急上昇中のダナン。そして雑多なベトナムの原風景ホーチミン。さまざまな観光スポットがある中でも、一度は訪れるべきと言えるのが、今回紹介する「クチトンネル」。
ホーチミン市から少し離れればそこにはジャングルが広がり、
ベトナム戦時下に落とされた爆弾の痕跡や、
ベトコンが作った地下トンネル用の空気穴、
さらには実弾の数々まで、本物の戦争の影を、そこに見ることができるのです。
しかしそれだけならば普通の戦争記念館と大きな違いはありません。
クチトンネルのキーワードは「実体験」。戦争を実体験するとはどういうことなのか?ぜひその目で確かめてみてください。
目次
クチトンネルってどんなところ?
ベトナム戦争当時、「鉄の三角地帯」と呼ばれ難攻不落として恐れられた街クチ。その鉄壁の防御を支えたのが全長200kmにも及ぶ地下トンネルです。当時のアメリカ軍を翻弄したその地下トンネルは、今ではベトナム解放勢力の英雄的象徴として保存され、多くの観光客を集めるスポットになりました。
クチトンネルへの行き方
クチトンネルはベトナム・ホーチミン市の北西70kmのところにあります。
交通手段としてはバスかタクシーになりますが、バスは乗り継ぎもあるし結構面倒。タクシーは距離があるので少々不安。
なのでここでは日本の旅行社が企画しているツアーに参加するのをおすすめします。
ツナ―ならば日本語OKのガイドさんも付いてきてくれますからね。
有名どころであればJTBとHISがツアーを出していますので、事前に予約しておきましょう。
クチトンネルではここを見よう。注目ポイント一覧
ここからはクチトンネルでしか経験できないおすすめ「実体験」ポイントを紹介していきます。
世界広しと言えども、ここまで衝撃的な体験ができる場所は他にはないでしょう。
戦争というとどうしても暗いイメージにもなりがちですが、現地の人にとっては英雄的・象徴的な場所。誇りを持って案内してくれます。
クチトンネルの象徴であり、ベトナムの英雄的スポット「地下トンネル」
クチトンネルの名前が示す通り、一番メインのコンテンツとなっているのが地下トンネル。観光用に多少整備されてはいるものの、その道中は決して楽なものではありません。
地下トンネルの探検がスタート。当時のベトコンの衣装に身を包んだ現地ガイドさんに案内してもらいます。
階段状になったトンネル入り口を降りていくと、すぐに立っていられない高さにまで天井が下がってきます。横幅もかなり狭く、体を横向きにしないと前に進めないようなところもちらほら。
このように内部は暗く、狭い。座りながら歩かないと前に進めません。さらに地上の音は一切聞こえず、自分の呼吸音ばかりが反響する空間は不安そのもの。空気も薄いため、体力的にも精神的にも苦しくなります。
カメラのフラッシュを焚いても、その全貌を映し出すことはできません。見学はできませんが、トンネル内はメイン通路以外にもさまざまに枝分かれしており、全長200kmという情報に偽りはないでしょう。当時はここを懐中電灯片手に進んだわけです。
当時は今みたいな機械や技術もなく、人の手だけでこのトンネルを掘り進めたわけですから、その苦労は計り知れません。ベトナムの英雄的スポットとして語られるのも当然と言えるでしょう。
天井には野生のコウモリが住み着いていました。
トンネル内の通路にもコウモリが。普段はあまり人が来ないため、住処にしているコウモリも多いのだとか。
何気ない場所から突如として現れる「秘密の入り口」
ベトナム戦争当時、アメリカ兵を苦しめたのがベトコンのゲリラ戦術。神出鬼没で実体を掴ませないその戦い方を感じられるポイントもあります。
ジャングルの中で突然立ち止まり、「ここに秘密の入り口があります」と案内してくれるガイドさん。しかし、素人目には入り口らしきものの陰すら見つけ出すことはできません。
しかし、指示された場所の落ち葉を払うと……、
まさかの入り口が現れます。しかし入り口といっても30cmぐらいの幅しかなく、本当に人間が入り込めるのか疑問に感じていると……、
慣れた手つきで入っていくガイドさん。
落ち葉をかけて蓋を閉めると、もはやどこが入り口だったのかもわかりません。
しばらくすると背後にあった別の入り口から登場。この入り口も、まさかそんな場所にあるとは想像もできず、かなり驚かされます。
この秘密の入り口も自分で体験することができます。
体をこすりながら入らないとだめですが、地面はそこまで粉っぽくないので汚れません。この時ばかりはガイドさんの案内もなく、一人でトンネル内を進まなければならないため、恐怖心もひとしおです。
ほんとに、これぐらいしか広さがないのです。
生々しいリアルさが怖い「ブービートラップ」
クチトンネルでは戦争中に作られたブービートラップの数々を見学することもできます。
生々しいその姿はリアルで痛々しく、この戦争が夢ではなく現実であったことを、まざまざと感じさせてくれるでしょう。
ジャングルの一体に木枠に囲まれた芝生のエリアがあり、ガイドさんの案内に従って近づくと……、
まさかの落とし穴でした。当時はこんな風に芝生をひいて、わかりやすくはしてくれていません。仕組みはシンプルながらも、これがジャングルに隠されてたらと思うとゾッとします。
ブービートラップの特設コーナーでは色んな種類のトラップを展示。回転式のものがあったり、すり鉢状になってるものがあったり、色んなパターンの罠が当時作られたようです。
ドアを開けると作動するタイプのものや、
踏むと作動すらタイプのものもありました。実際に触ることもできますが、切っ先は非常に鋭いので注意しましょう。
当時の生活を再現した「ジオラマ展示」
ただただトンネルを見るだけじゃなく、当時のジオラマなども展示しており、学びの場としても非常に作り込まれています。
ベトコンのマネキン。足にはタイヤで作ったサンダルが履かされています。タイヤならではの丈夫なゴムは、自分たちのブービートラップで怪我をするのを防ぐための当時のアイデアだそうです。
爆弾解体の風景。これらのマネキンは電気仕掛けで動きます。当時のベトコンは物資が少なく、敵が落とした爆弾などを積極的に回収し、自分たちの物資として活用していたのだとか。
トンネル内で負傷兵を治療しているシーン。綺麗事では済まない生々しさがそこにあります。
トンネル内部に作られた広めの部屋では、作戦会議などが行われていました。
多少広いとは言えども、そこはやっぱりトンネル内ですから、文字通り息が詰まる感覚です。
タピオカの原料にもなる「キャッサバ」
地下トンネルをひとしきり見て回ると小休止。当時の食べ物を味わえる休憩所があります。
日本人にはまぁ馴染みの薄いキャッサバという食べ物。実はタピオカの原料です。
これをどう料理していけばあのタピオカになるのか、見当もつきません。
食べたら意外とあまくておいしい! サツマイモに似た食感と味わいでした。
当時の武器がそのまま残る「射撃場」
見て感じるだけじゃなく、触って感じることもできるクチトンネル。日本では絶対にできない実弾射撃ができるところもありました。
射撃体験ができるのは、ベトナム戦争当時に使われた本物の銃。昔は色々な種類の銃があったようですが、現在はAR15とAK47のみが体験できます。
料金は弾丸一発6万ドン。日本円にして300円ぐらいでしょうか。
受付が終わると銃を抱えたスタッフと一緒に射撃場に入場。ここを持って、ここを引く、ぐらいの簡単な説明で突然スタートします。
ほんとにこれで撃てるのか、ぐらいの気持ちで引き金を引くとまるで目の前で爆発が起きたかのような衝撃と音。引き金の軽さとは反対の、重みのある後味が背中をゾクゾクと伝わります。
射撃場の上には見学スポットも。色んな国籍の観光客が射撃体験に興じていました。ただここでも音はかなり大きく聞こえるので、耳栓などを持って行った方が無難かもしれません。
まとめ
このように、単なる博物館を通り越し、実体験を通してベトナム戦争の歴史や当時のベトコン達の生き様が学べるクチトンネル。
教科書で習うよりも深く、心に刻まれる体験になることは間違いありません。
色々と紹介しましたが、戦争特有のダークな雰囲気はあまりありません。そこはベトナム人の底抜けな明るさと、自国に対する誇りがあるからこそなのかもしれませんね。
クチトンネル
- 住所:Hamlet Phu Hiep, Ward Phu My Hung, Cu Chi
- 料金:9万ドン(約450円)
- 営業時間:7:30~17:00
twitter
山岡ソースケ(@sosuke_eureka22)
山岡リホ(@riho_eureka22)
ブログ
ユリイカ・ユリイカ