飲食店はどうなる? 緊急事態宣言解除後の今を聞いてみた

この時期にコロナウイルス関連の報道が多くなり、今後どうなるのだろう……という感じがありました。

そして……

改めましてこんにちは。おさしみと申します。
前述のとおり4月まで飲食店で働いていたのですが、おなじみコロナの影響で3月の後半から人がほとんど来ない日が続いていました。
そんな感じで緊急事態宣言が出され、同時に私も退職日を迎えてしまい……。退職の直前まで、この先は大丈夫なの……!? と気を揉んでいました。

そこで今回、コロナの影響下で飲食店が置かれている、緊急事態宣言解除後の現状を、元職場であるお店に聞いてきました!
お客の立場ではなかなか見えてこない飲食店の今を、少しでもお伝えできれば幸いです。

 

※全国での緊急事態宣言が解除になってから行ったインタビューです。

 お店の基本情報

インパクト大なこの看板、早稲田になじみのある人なら一度は見た方も多いのではないでしょうか? 「どんぴしゃり」と「油SOBA図星」です。

(新型コロナウイルスによる縮小営業の一環で、奥の「油SOBA図星」は現在臨時休業中です)

「油SOBA 普通盛り」(830円)

「油SOBA 普通盛り」(830円)

自家製チャーシューの色味が食欲をそそります……!

「炭焼き豚丼 普通盛り」(830円)

「炭焼き豚丼 普通盛り」(830円)

すごい照りだ……写真だけでも最高においしそうです!

 

こんな感じで胃袋を掴んで離さない絶品メニューが大好評! 早稲田大学の学生さんの間でおすすめのお店として挙げられることも多いです。

もはや図星とどんぴしゃりが切っても切り離せない存在になっている早稲田の学生さんも少なくないと思うのですが、現状はいったいどうなっているのでしょうか?
こちらの姉妹店舗を経営する合同会社エスキューブジャパンの根本社長、杉山さんにお話を伺いました。

 

緊急事態宣言解除後の現状

――よろしくお願いします。緊急事態宣言は解除されたわけですが、正直なところ、来店する人ってかなり減ってますか?

杉山さん
そうですね。人はまだ全然戻ってきていないな、と感じます。
 

根本社長
早稲田大学は3月の時点で入学式の中止を決定していて、新歓サークル活動も自粛してくれって学生さんたちに言っていたんですね。だから3月後半くらいから、もう大学は閑散としちゃってて、客足もまばらで。緊急事態宣言が出てからはそれ以上に減ったなあ。その時に比べたら、今のほうが人は来てるって感じではある。

 

――じゃあ4月から、お客さんの数はあまり変わりないですか?

杉山さん
そうですね。少し前までは短縮営業をしていましたが、
その時は夜はどちらの店舗もほとんどお客さんが来ない日もありました。

根本社長
とにかく団体のお客さんが減っちゃったね。

 

お話を聞いた時間(14時頃)の店内の様子。さみしい……

お話を聞いた時間(14時頃)の店内の様子。さみしい……

――それは辛いですよね。コロナ前はランチの時間だけで100人行くこともあったのに(そうして腰をしょっちゅう痛めていた私)。

根本社長
あとは、今まで4年生のお客さんが卒業しちゃった分は、新1年生に来てもらうことでカバーしていたんですね。それが今年は入学式も新歓もなくなって、新1年生はうちのことを知る機会が減っちゃったから、今後が少し不安ではあるかな。

 

――確かに、新歓期間の売上ってすごかったですね。在校生も新歓活動の休憩時間に食べに来てくれてましたから。やっぱり大学のイベントに合わせて成り立ってた面が大きいですね……。今、大学は基本オンライン授業なんですよね?

 杉山さん
そうです。6月からキャンパスは開くけど、原則、入れるのは教職員のみって感じで。

 

無人の早稲田キャンパス。中央奥に見えるのが有名な「大隈像」こと大隈重信の銅像です。

無人の早稲田キャンパス。中央奥に見えるのが有名な「大隈像」こと大隈重信の銅像です。

――さっきキャンパスも見てきたけど、全部の門が閉まってる上に無人でビビりました。早稲田大学の教職員さんは来ますか?

杉山さん
この前、もともと常連さんで来てくれていた方が「出勤だったから」って来てくれましたね。それと、歩いててたまたま目に入ったから、って感じの人も何人かいらっしゃいました。

根本社長
リモートワークで外に出れなかった分、止むを得ない出勤で外に出るのが特別な時間になってる、って人は多い印象ですね。これまでうちのことを知らなかった職員さんも来てくれている感じはします。

 

――大学の教職員さんに直接「食べに来てくれませんか?」って呼びかける手段は、学生さん相手の場合より少ないですしね。職員さんが来るようになったのはいいことだ……。

杉山さん
これを機にこれからも食べに来ていただけたらいいんですが……。
今はTwitterをメインに、現状の発信をしています。休業になってしまうお店もありますが、うちはほとんど休みなくやっているので、それを知ってもらいたくて。

 

――最近はTwitterで窮状を訴えているお店も多いですね。

杉山さん
うちはあまり、そういう感じのことは書かないようにしています。(@kokorobazuboshi)もちろん、呼びかけをしなければ現状が伝わらないのも確かです。
けど、だからって電車に乗ってまで無理して来てもらおうとは思わないし、呼びかけているお店の方々も勇気のいる決断だったんじゃないかなと思います。

 

――今は仕方がないとはいえ、ピンチです! って堂々と書くのは確かに怖いかもしれない。

杉山さん
うちはメインの客層の学生さんと距離が近いというか、良くも悪くも彼らの日常に根差した存在になれていると思っていて。今は学生さんも、初めての事態で不安なことだらけの時期でしょう? そんな中で、うちがピンチです! って訴えているメッセージを見たら不安が増しちゃう気がしていて。
今はお互いに耐える時というか。「新学期が始まってまた学校に来られるようになったら、うちの店もなるべく変わりなく待っているから安心して」ってメッセージに寄せたくて。

 

コロナ後、客層に変化が

根本社長
もちろん、現状のままでは厳しいことに変わりはないので、前々からやっている「どんぴしゃり」のテイクアウトメニューの宣伝を発信しています。新しいテイクアウトメニューも始めたよ。

テイクアウトの新メニュー「がぶり ローストポークめし」。(580円)

テイクアウトの新メニュー「がぶり ローストポークめし」。(580円) 

――すごい! めっちゃ食べたい!(ド直球)これ、周り全部肉ですか? 

根本社長
自家製ローストポークをごはんに巻き付けてます。このローストポークは真空低温調理法で仕上げてあるから、かぶりついてすんなり噛み切れるよ。タレまで全部自家製です。そういうこだわりを知ってほしくて、少し挑戦的な値段にしてみたんですが。

 杉山さん
リーズナブルとは言えないですが、今のところ一定数のご注文をいただけていてありがたいです。

 

――確かに、働いていた時から思ってたけど、メニューのこだわりが本当にすごいんですよね…… 

杉山さん
そういうのも今後Twitterで発信していこうと思っています。まずは現状を乗り切るために、営業告知とテイクアウトメニューの宣伝が続いちゃってますが。

 

――テイクアウトメニューはどうですか? 以前より売れていますか? 

杉山さん
「どんぴしゃり」のテイクアウトは、以前から学生さん以外の一般の方の利用も多くて。そういう常連さんは今も変わらず来ていただけています。
 

根本社長
それと、通りの看板を見て買ってくれる人は増えたね。こういう時だし、皆さんも家での食事に少しは刺激というか、外の要因を入れたいのかなという印象です。親子でのテイクアウトのお客さんとか前より見る気がするなあ。

どんぴしゃりの店前。このテイクアウトの看板を見る人が増えたそうです。

どんぴしゃりの店前。このテイクアウトの看板を見る人が増えたそうです。

 ――さっき大学職員さんが来るようになった、って話もありましたが、お客さんの層に変化があったんですね。 

杉山さん
そうですね。これは以前から話していたんですけど、うちも学生さん向けでやってきていた方針を変える時期なのかもしれません。事態が落ち着いてからも、今の時期に来てくれた一般の人たちには変わりなく来てほしいですから。

根本社長
そうやって来てくれた人が常連のお客さんになってくれないと今後につながらないし、今は店の体制を一から見直している最中です。 

杉山さん
こんなことになる前は、メインターゲットを絞りすぎていたと思います。学生さん以外へのアプローチを考える機会になりましたね。もちろん、学生さんに向けたサービスも考え続けていきます。今回のことで、いかに支えてもらっていたかを実感しましたし。

 根本社長
今までも長期休暇が明けて新学期になると、我先にと食べに来てくれた学生さんがたくさんいましたから。「やっぱりこの味」って思ってもらえるのは本当にありがたいことだし、大学が再開してからひさびさに食べに来たって時に、よりよい店になって迎えてあげたいね。

 

【今はお店もお客様も耐える時】

――ちなみにテイクアウト以外にも何かやってますか?

根本社長
ウーバーイーツ(Uber eats)も始めました。ただ注文がチェーン店に集中してしまっているみたいで、個人店は厳しいですね。

 

――え、意外! でも確かに、今ウーバーを頼むってことは外に出る時間が取れなかったって状況なわけだから、そういう時に知らない店のものを頼む気になれない、とか……? そういえば、ウーバーイーツって今までも何度か「やってみようよ」ってなってませんでしたっけ?

根本社長
以前は打診が来てもミーティングの末に導入しない、って感じだったかな。配達員の方が衛生管理を徹底しているのかが不安で……。

杉山さん
もちろん配達員の方も仕事ですし、きちんと届けていただけることは承知しています。ただ、たとえば食中毒とか、何かあった時の責任の所在がどこか、それがわからなくなりそうなのが怖い。うちとしては、この騒動が収まってからも続けるかは微妙なところです。

 

――それはお店ならではの不安ですね。利用する側としては「家から出ずにごはんが手に入った!」くらいにしか思ってなかった……。ウーバーを始めたことも含めて、今はとにかくできることはやって耐える時期って感じですか?

根本社長
耐えながら、事態が終息してからのことを一番に考えてるかな。大学は段階的に開放されていくわけだし。色々なことは変わりつつも、また日常は始まるわけだから。だから、今までの日常にうちの店を組み込んでくれていた人のために、うちとしてはいつでも来てくださいねって気持ちで構えていなければならない。

 

――ただ、日常が戻って本格的に再開する前に経営難に……ってことはないですか?

根本社長
企業として店舗を経営しているから補償が受けられたし、なんとか持ちこたえられると思います。本格始動までに感染症対策も万全にしていくつもりです。パーテーションで席を区切ったり、並ぶ人数に制限を設けたり。今は換気を徹底して、入り口で必ず手の消毒をしてもらってるよ。

 

店内に置かれた消毒用スプレー

店内に置かれた消毒用スプレー

――これまで以上に衛生管理が大変になりますね……でも美味しさは変わらないわけだし、また学生さんには食べにきてもらいたいですね。

根本社長
それはもちろんです。けど、やっぱりこれを機に全部見直そうってなってて。言い方はよくないけど、今回のことは店の方針を見直すいい機会だったとも思っています。2駅先から歩いてきたとか、今までは来なかったような人まで来てくれるようになった。そうなると、店を良くしていく方向にシフトしなきゃと思って。

 

――先を見据えて切り替えられているのがすごい。

根本社長
厳しいって嘆いてるだけじゃ始まらないしね。前よりは町に人が増えているし、確実にいい方向に向かっていると思います。常連だった学生さんが外に出る機会も増えていくだろうし。もちろん、今は無理してここまで来てもらう必要はないけど、大学が始まったらまた足を運んでもらえたら嬉しいです。

杉山さん
うちの店舗は、メニューの質も店内の清潔度も今まで以上のものにして、感染症対策も万全な状態で皆さんを待っています。これからもふらっと立ち寄っていただけたら。

 

――めちゃくちゃ前向きでこっちまで気が引き締まるな。ありがとうございました!

 

ぜひお近くの飲食店の開拓を!

少しでもお店の役に立てたら、という気持ちでお話を聞いてきましたが、こんな中でも皆さんとても前向きに、お客さんのことを第一に考えて営業を続けていました。なんだか私のほうが励まされた気がします。

「日常に店を組み込んでくれていた人のために」という根本社長の言葉が強く心に残りました。「これからも誰かにとっての大切なお店でありたい」という思いのもと、飲食店の人たちも工夫を凝らしてこの状況を乗り越えようとしています。

緊急事態宣言は解除されても、息苦しい日々はまだ続きそうです。こんな時だからこそ、近隣のお店に目を向けてみるのもいいかもしれません。柔軟に対応して、テイクアウトをやっているお店は多いですよ!

良い料理をこれから先もずっと届け続けたい! という思いはどのお店も同じです。より多くの思いが先へ続くためにも、まずは身近なお店の開拓から始めてみてはいかがでしょうか?