東京で楽しめる42の「京都の味・京都チェーン」を実際に食べ歩きました
東京出店している京都チェーンがたくさんあったので、京都に7年住んでいた筆者が42店舗行ってきました。修学旅行で食べたあの味、京都旅行の定番てみやげ、学生時代の思い出の味……盛りだくさんなので、各項目に飛べる目次をぜひご活用ください
東京にいながら、本場京都の味を楽しむ。
京都に本店を持つお店の東京出店って、予想以上にたくさんあるんです。
修学旅行で食べたあの味、京都旅行の定番てみやげ、学生時代の思い出の味、さらには江戸時代の三十三間堂跡まで。
京都に大学時代から7年間住んだことのある筆者が、美味しさと懐かしさに震えながら実際に42店舗食べ歩いてみました。盛りだくさんなので、各項目に飛べる目次をぜひご活用してください……!
(いわゆるチェーン店、直営店、のれん分けしたお店など京都発といっても様々ですが、ここでは区別せずに紹介しています。)
目次
◇ラーメン・中華
学生が多いからか、京都は意外にラーメン屋だらけ。私自身も懐かしい味がたくさんあります。
あの天下一品も京都発ですし、ラーメンにも京都流のスタイルがあるんです(そしてこれが薄味とは程遠いこってりした味付け!)。
「新福菜館」……黒光りする醤油ラーメンは思い出の味(麻布十番など)
個人的に一番思い入れがあるのはこの新福菜館。関東人もびっくりの黒いスープが有名です。
豚肉(豚骨ではなく)の旨味がたっぷりで、濃厚でコクのある味。黒いからといって塩辛いわけではありません。
京都御所近くの荒神口にある府立医大前店にはよく自転車で行きました。
関東出身者が京都へ行くと、ときおり無性にガツンと「醤油くさい」食べものが欲しくなるんですよね。
必ず両方食べたくなるのが新福菜館のスープの魔力。
食べ終わる頃には、今日も食べすぎちゃったな……と思うも、また次回頼んでしまう。是非、そんな黒いスープの味を確かめてみてください……!
「第一旭」……昭和22年創業、元祖京都ラーメンが食べられる老舗(新宿御苑前)
京都駅のほど近くに新福菜館と並んで本店を構える第一旭。
九条ネギ、もやし、背脂、薄切りのチャーシューが敷き詰められたこのジューシーな醤油ラーメンが、京都の味なんです。
東京のふつうの中華そばとの違いは、存分に溶け込んだ豚肉の旨味だと思います。今時のこってりとも、昔ながらのあっさりとも違ういいとこ取りな味。
食べたことがない人でもすぐに馴染む、良いお味です。
「魁力屋」……ロードサイドで楽しめる京都の味(三鷹など多数)
都内だけで15店舗も出店している京都発のラーメンチェーン、魁力屋。車で行ける郊外型の店舗が多いようです。
京都でも何度か行ったことはありますが、東京に来てから懐かしくて食べた回数の方がずっと多いです。それくらい身近な京都ラーメン。
もともと、第一旭や新福菜館に比べるとさっぱりしたスープ。そのじんわりと優しい味に心まであたたかくなります。
余談ですが、京都でラーメンといえば北部にある「一乗寺」という場所が密集地として有名です。関西人なら知ってる方が多いと思います。
魁力屋も住所でいえば一乗寺に本店があるのですが、全国展開するうえでは一乗寺より北白川の方が響きがいいのかな、と想像しました(次に紹介する天下一品もそうですし)。
「天下一品」……京都発全国区なこってりラーメンの代表格(都内多数)
鶏ガラや野菜などを長時間煮込んだこってりスープが有名な天一(てんいち)。
京都でも、王将と並んで日常に溶け込んだお店です。本店は白川(一乗寺)にあり、ちょっとだけ美味しい気がすることでも有名です。
個人的な思い出としては、奈良へ遊びに行った時に夕食の候補が見つからず、結局天一に入ったこと。
天一のこってりは意外と脂っこくなく、ほっとするこってりなんですよね。
「ますたに」……京都ラーメンの中でもまろやかなスープが魅力(日本橋)
こちらは今回初めて食べました。新福菜館とは対照的な黄金色のスープで、脂の甘味を感じるまろやかなお味。
こってりしつつも、すこし上品な完成度の高い味がしました。店内も清潔感があり、まだ京都ラーメンを食べたことがない人にもおすすめです。
「餃子の王将」……京都発の全国チェーンといえばここ!(都内多数)
天津飯は甘酸っぱいケチャップ味で、すこしオムライスっぽい雰囲気
京都の四条大宮に一号店がある王将。京都の王将は、それぞれ良くも悪くも年季の入った町中華的な雰囲気が強いです。
北野白梅町や中立売のお店には大学1年の頃によく行きました。北野白梅町のお店は天一っぽいこってりラーメンが常に割引してて390円だったんですよね。学生の味方でした。
東京のチェーン店っぽい雰囲気からするとギャップに驚くかも。
(あらためて食べて見ると、王将の餃子はみっちり詰まっておいしい)
たまに大阪のものだと思っている人もいますが、「大阪王将」と名乗る別チェーンがあるからには、大阪のものではないのです。
◇肉料理
「かつくら」……京都のトンカツといえばここ!こだわりの味噌汁も魅力(吉祥寺など)
京都でとんかつといえばかつくら。本店は細い路地を入っていく京都らしいお店です。
学生時代にちょっと奮発して外食したい時、ここへ来ると間違いなく良いものを食べた……!って思えるお店でした。男友達と来たことはないような気がします。
特筆すべきはお味噌汁。時期によってか、お店によってか、白だし/赤だしなど違いはありますがどれもこだわりがあって非常に美味しいです。
他にも香ばしいほうじ茶やあっさりした漬物も京都らしさを感じるもので、さぼてんや和幸などの全国チェーンともまた一味違います。
そんな、トータルで満足できる場所です。
「モリタ屋」……創業明治2年、京都を代表する高級牛肉料理店(丸の内)
昔一度だけ父親につれて行ってもらったことのあるモリタ屋。その時は木屋町の和室でステーキをいただきました。
平日ランチとはいえ、人生で二度目の来店です。
おっかなびっくり入ったのですが、丁寧であたたかみのある接客がとても居心地のよいお店でした。
京都らしさは細部に宿る……なんて言いたくなるくらい、京都のお店ってトータルで満足度が高いですね。
いつか絶対夜に来たい……!
「CHIRIRI」……しゃぶしゃぶの新定番、京都つゆしゃぶのお店(六本木など)
今回初めて知りましたが、しゃぶしゃぶにも京都風があったとは……!
近江八幡の老舗日本料理店ひょうたんやが2003年に烏丸四条で開業したそうです。
ポン酢やゴマだれではなく、濃いめの出汁つゆにつけて食べるらしいのですが……
非常に旨味の濃い和風だしが、豚肉の甘味や白ネギと絶妙に合います。本当にこれ以上ないほどのベストマッチ。一口食べて美味しすぎてびっくりしました。
ランチで2200円というと結構なお値段にも感じますが、満足度を考えるとむしろリーズナブルな気がします。
「瓢斗」……ヘルシーで心和らぐ京都風出汁しゃぶのお店(渋谷)
CHIRIRIと同じくらい美味しいこちらのお店は、渋谷の新しくなった東急プラザの中にあります。渋谷にいるとは思えない落ち着いた店内も魅力です。
CHIRIRIとよく似たスタイルのお店ですが、こちらの方が健康志向で、栄養やその効能などを簡単に店員さんが説明してくれます。
「焼肉の名門 天壇」……京都風のさっぱりしたタレつけて食べる焼肉(赤坂など)
京都にも焼肉の人気店はたくさんありますが、天壇は大箱で安心感のあるお店。昔クリスマスイブに予約してなくても入れたことがある、個人的に恩を感じているお店です。
夜はお高い店のランチって、席の高級感も含めて値段以上に感じます。
京都らしさといえば、牛骨などからとったという薄味のタレ。これは肉の良さがよくわかりますね。
半個室だし、店員さんの接客も丁寧で、ランチに来るとむしろこんなに安くて良いのかな……という気分になるお店でした。
「京都勝牛」…牛カツブームを全国に広めたお店(新宿など)
2010年代に広まった牛カツ。外国人観光客にも人気で、連日京都でも並んでた記憶があります。
同じく有名な「もと村」よりも1年早い2014年に京都で創業。またたく間に全国チェーンとなりました。
つけるたれもさっぱりしていて、わさびがよく合います。揚げ物なのに胃もたれせず小食の方にも意外とおすすめです。
◇お好み焼き
「茶ばな」……学生街にある関西風お好み焼きのお店(中目黒)
ちゃばなと言えば、京都だと学生が飲み会をしている賑やかなお店というイメージがあります。一方、東京のお店は「お好み酒場」というやや大人っぽい雰囲気のお店でした。夜は賑やかな雰囲気になるんでしょうか。
ふわふわの関西風のお好み焼きを東京で食べれるお店は貴重です。自分でつくる関東風のお店も楽しいですが、やはり店員さんがつくった方が美味しい気がします。
「わらい」……コロナで2020年4月より休業中(五反田)
京都では錦市場のすぐそばにある錦わらい。このあたりのカフェでバイトしていたので、入ったことはなくとも見覚えがあります。行ってみましたが、残念ながら休業中でした。
◇京料理
東京で京料理を食べるとすると、有名な美濃吉、菊乃井、和久傳、下鴨茶寮など高級なお店はいくつかあるようですが、さすがに気軽に入れる場所じゃありません。
今回は、リーズナブルに京都の味を楽しめる3つのお店を紹介します。
「近為」……明治12年創業、京都・西陣の漬物をたっぷりと楽しめる日本料理店(大丸東京)
大丸東京店のレストラン街にある近為(きんため)は、本場の漬物をリーズナブルに食べられるお店です。
どの定食にも漬物がたっぷりとついてきて、さっぱりと幸せな気持ちになります。
ちなみにあの有名な”ぶぶづけ”も食べることができます。
店内はそれほど広くはないのですが、東京駅付近でこんなにリーズナブルに美味しい夕食をとれるのか……という穴場。
「永楽屋」……一と口椎茸が有名な京佃煮・京菓子のお店(日本橋)
京都のお店がデパートに出店していることはよくありますが、こちらはこじんまりとしながらも直営店で購入することができます。
いったいどんな味がするんでしょうか。白飯にのせて食べてみます。
一口といいつつ、ご飯がいくらでもいけてしまう味……!
佃煮だけでなく、琥珀という綺麗な和菓子も有名なので、今度買ってみたいです。
「八百一」……デパ地下で京野菜やおばんざいが手に入る(日本橋高島屋など)
八百一は東京のデパ地下にけっこう入ってるお店なのですが、僕が烏丸御池駅近くに住んでいたころ近くに八百一本館という高級スーパーができて、時折買い物をしていました。屋上に菜園があったり、コース料理のレストランがあったりで尖ったお店という印象でした。
意外とリーズナブルなものも売っており、よく買っていたのは500円で売っていた大量の昆布の耳。いまだにあれ以上に安い昆布は見たことがありません。
どれも京都風の薄味甘めな味付けで、心が和らぐお味。懐かしい気分になりました。
◇カフェ・喫茶
「イノダコーヒ」……1947年創業、京都を代表する喫茶店(大丸東京)
喫茶店のたくさんある京都ですが、まっさきに名前があがるのはイノダコーヒ。
京都三条にある本店へは観光で行った方も多いのでは。そんな京都の味が東京でも楽しめます。
個人的に好きなのはミックスジュース。一口目から、高級……!という味がします。
また、有名なホテル式のモーニングも東京で食べることができるようです。
ケーキセット(1350円)も魅力。ラムロックはお酒弱い人ならクラっとくるかもしれない濃厚さで、好きな人は強烈に好きになるお味。
高級感がありつつも、どこかレトロな雰囲気がイノダコーヒの魅力でしょう。
「OGAWA COFFEE LABORATORY」……小川珈琲のこだわりの旗艦店が東京に(桜新町)
イノダと並んで有名な小川珈琲。1952年創業で、喫茶店経営もやっていますが、もともとは珈琲豆の製造・販売を行う会社です。
そんな小川珈琲の実験店舗・旗艦店が東京にできました。
珈琲の種類だけで何十種類もあり、ひとつひとつのメニューのこだわりがすごい。
このプリンアラモード、期間限定で今は別のスイーツに代わってるのですが、非常にレベルの高い味がしました。ドリンクセットで200円引きと、ちゃんと喫茶店価格なのもびっくり。
ちなみに、下北沢にもっと尖った実験室のようなお店がオープンしましたが、そちらはまだまだ行列になっていました。
OGAWA COFFEE LABORATORY桜新町(公式HP店舗一覧・メニュー)
「とらやアンスタンド」……実は京都発、とらやの新業態はスタンドカフェ(新宿など)
誰もが知るどら焼きのとらや。明治時代から東京にあるため、東京のお店といってもよいのですが元は室町時代の京都発祥。
そんなとらやのあんこを気軽に楽しめる、あんスタンド。一緒に頼んだあずき茶は、なぜか小豆の枕を思い出すような本当に落ち着く味でした。寝る前に飲みたい……。
濃厚なクリーム感のあるあんトーストは、はっきりいってケーキレベルの満足感があります。
「Premarché Gelateria(プレマルシェ・ジェラテリア)」……京都三条のヴィーガンなジェラート屋(中目黒)
こちらのお店はミルクフリーやヴィーガンのジェラートが食べられるお店。若者が集まる洒落たアイスクリーム屋といった雰囲気と、ガチのオーガニックが共存する不思議なお店でした。
オーガニックであることを抜きにしても濃厚で非常に美味しく、ミルクフリーゆえに後味もさっぱりしていて魔法のような味でした。写真を見ているとまた食べたくなります……!
「よーじやカフェ」……2020年4月からカフェは休業中(羽田空港)
よーじやカフェ、残念ながら2020年4月からずっと休業中です。
ショップの方はやっているようです。
◇日本茶・甘味処
「一保堂茶寮」……1717年創業、旨味たっぷりの玉露をテイクアウトで(丸の内)
京都の寺町通りに本店を構える一保堂茶舗。歩いて行ける距離に住んでいたため一回だけ本店に入ったことがありますが、玉露の出汁みたいな濃厚な旨味に衝撃を受けました。
「中村藤吉本店」……安政元年創業、宇治抹茶の老舗がGINZA SIXに出店(銀座)
平等院鳳凰堂と抹茶で有名な宇治。京都市外としては有数の観光地で、中村藤吉の喫茶店も並んでいてなかなか入れない印象があります。そんな老舗の玉露パフェを並ばずに銀座で食べました。最新の商業施設GINZA SIXの中にありますが、入りやすい雰囲気で修学旅行生らしきグループも入っていました。
カフェに行くとデザートとドリンク両方頼む必要がありますけど、ここはパフェだけで済むのでむしろリーズナブルに感じます。
「特選都路里」…抹茶パフェが有名な祇園辻利の茶寮スタイルのお店(大丸東京)
都路里は祇園本店、京都駅の伊勢丹、そしてこの大丸東京の3店舗だけ。京都ではいつも並んでてなかなか入れないイメージがありました。大丸東京店は席数も多く、時間帯によってはすんなりと入れます。
至福の甘味とともに、しっかりとした抹茶の風味が効いており、まあその美味しいこと。至福の味がします。
「鶴屋吉信 TOKYO MISE」……生菓子つくりの実演も行う鶴屋吉信のコンセプトショップ(日本橋)
東京では珍しい、職人による生菓子づくりの実演も行われています。今回は時間の都合で入れませんでしたが、高級鮨屋のカウンターみたいな雰囲気。予約制ではないため、席が空いてればチャンスです。
三宝柑は春~夏に収穫される和歌山の特産品で、爽やかな香りが魅力の蜜柑の一種。
「茶庭 然花抄院」……新鋭の菓匠がヒカリエに出店(渋谷)
然花抄院は2009年に京都室町にオープンした新進の御菓子司。カフェとしては2店舗目が2012年に渋谷ヒカリエにオープン。
最近の渋谷は渋谷は京都スポットになっている気がします。
場所柄か、IT企業のエリートっぽい人が一息つきに来るような雰囲気。
風味爆弾というか、この粒にびっくりするような濃い風味が詰まっています。公式HPによると、「小さなひとつぶに広がる磯の香りと山椒の風味」とのこと。お茶請けとして、これはアリだなあと思いました。
「茶寮翠泉」……宇治抹茶を気軽に楽しめるモダンな和カフェ(新宿など)
外にはストリートピアノもあって、働く人たちの憩いの場という雰囲気です。
だんだん年をとるにつれて抹茶の美味しさがわかってきました。何度も飲むうちにその甘味やいろんな風味があることに気付いてくるものですね。
◇和菓子(持ち帰り)
京都といえば和菓子。東京に支店を構える老舗も数多くありますが、その中でも特に気になっていたお店を選んでみました。
「笹屋伊織」……月3日だけ販売する東寺御用達のどら焼きを東京で(渋谷など)
東京のデパートにも出店している老舗の笹屋伊織ですが、代表銘菓である月3日しか販売しないどら焼きも買うことができるのです!
江戸時代に東寺のお坊さんから頼まれて、銅鑼(どら)の上で焼いてつくれるお菓子を考案したのがルーツだそう。
それゆえ、今でも弘法大師の月命日をふくむ三日間だけ販売しているようです。
これが食べたことのない新しい食感。しっとりもちもちの皮に、みずみずしいこしあん。甘すぎない上品な塩梅が絶妙です。
月に一度の贅沢として、ほうじ茶とともに食べたくなるお味でした。
「老松」……北野天満宮近くの「有職菓子御調進所」(新宿など)
数ある老舗の和菓子屋のなかでも、老松は昔一人暮らししていた場所の近くが本店だったので個人的に親しみを感じます。
東京に来てからデパートで見かけて、そんな有名なお店だったんだ!と驚きました。
御所車は「柳桜織りなす都大路をしのぶ代表銘菓」。風雅でめでたい感じがします。
中国の月餅と、ドライフルーツパイのいいとこ取りをしたような香果餅も美味しいです。
老松は婚礼菓子などの伝統菓子もつくっており、京都の和菓子屋の中でも特に老舗の風格があります。
「祇をん ににぎ」……一粒入りのフルーツ大福専門店(新宿など)
色とりどりのフルーツ大福専門店、ににぎ。東京だと新宿駅や東京駅の構内でも買うことができます。
これはもう、見た目の華やかさ通りの美味しさ。大福の中にフルーツが入っているというより、フルーツの周りに大福がついてる……といったような存在感です。味はしあわせの味。
「紫野和久傳」……有名なれんこん菓子「西湖」はどんな味がするのか?(新宿など)
京都の料亭和久傳のおもたせのお店が紫野和久傳。そんな料亭の味を楽しめる和久傳のれんこん菓子、はたしてどんな美味しさなんでしょうか……?
れんこんの澱粉を使った西湖は、わらび餅ともまた違ったまったりとしたモチモチ感。
れんこんのからみも感じられ、シンプルながら深みのある味がします。
この舌を刺激する旨味過多の時代に、自分の味覚の方が歩み寄っていくような……そんな繊細な味がしました。
「藤菜美」……清水産寧坂の団子屋が東京初出店!(渋谷)
渋谷マークシティにできた藤菜美。みたらし団子って、関東と関西で一番味が違う気がします。ちなみに、みたらし団子の発祥は京都の下鴨だと言われています。
京都のみたらしってなんというか本当に柔らかいお味で、いつまでもこのたれを舐めていたい……!って気持ちになります。
北野天満宮の近くにあった日栄堂というこじんまりとした老舗のみたらし団子が好きでした。店主がご高齢だったからか、今はもう閉店してしまったのですが、京都で団子を食べるならとにかくみたらしがおすすめです。
本当にギリギリ固体って感じで、口に入れた瞬間にほどけていく絶妙な食感です。
「鼓月」……スポーツ用羊羹などもつくる伏見の京菓子處(日本橋など)
全国の百貨店などにも多数出店している鼓月。エネルギー補給用のスポーツ羊羹「anpower」も話題になりました。
中には干しブドウを使った葡萄餡が入っており、見た目に負けない葡萄感たっぷりのお饅頭でした。
◇日本橋三越・菓遊庵に揃う京菓子たち
都内のデパートでも特に品揃えがよいのが三越本店の菓遊庵。毎日全国の銘菓がここに直送されてくる、夢のような場所です。
曜日や日付によっても入荷が異なり、京都なら出町ふたばの豆餅や、村上開新堂のロシアケーキなど、レアな入荷も多数あります。
「二條若狭屋」……シンプルなのに”モンブラン以上”なやき栗に驚く
「趣味の菓匠」を標する二條若狭屋、京都ではふわふわのかき氷のお店としても有名です。
そんな若狭屋のやき栗、大粒の和栗を栗餡で包んで焼いたお菓子なのですが、これがびっくりするほど美味しくて声が出てしまいました。
栗餡で包むことで、口に入れた時の柔らかさ、口溶けの良さがシームレスに栗本体とつながっていて、モンブラン以上の満足感。世の中にはまだ知らない美味しいものがあるんだなあとしみじみと感じました。
「満月」……あの阿闍梨餅も東京で食べられる!
数ある京都の和菓子のなかでも、阿闍梨餅はマールブランシュの「茶の菓」とともに日常に溶け込んだ手土産とでも言うべき和菓子です(あくまで個人的経験ですが)。
小麦粉ではなく米粉のもっちりした生地が美味しいんですよね…。東京でも食べられることを知って、一番嬉しかったお菓子です。
今川焼ともどら焼きともちがう、唯一無二の存在です。
「緑寿庵 清水」……日本唯一の金平糖専門店
見た目もかわいい緑寿庵の金平糖。さまざまな果物をそのまま使った金平糖を売っています。
ふつうの砂糖だけの金平糖と違い、一粒一粒にたしかに果物の風味が詰まっていて初めて食べる味わいでした。
一粒の満足感が高いため、毎日の楽しみにするとけっこう長持ちします。
「亀屋陸奥」……1421年創業!代表銘菓「松風」は織田信長にも関係する歴史をもつ
京都の和菓子屋としても、屈指の古さがある亀屋陸奥。
見た目は知っているけど、長年どんな味がするのかわかりませんでした。
ひと口食べてみると、シンプルでありながら何とも言えない奥深さがあるお味。白味噌の深みある淡白さ、とでも言えばいいのか。パンともちがう独特な弾力もクセになります。
これ以上ないほど削ぎ落とされた味が衝撃的でした。また食べたい。
「聖護院八ツ橋総本店」……八ツ橋だって全然東京で買えます!
もしかしたら修学旅行以来かもしれない生八ツ橋。
京都に住んでいればよく食べる機会があるかといえば、そうでもないのがこの八ツ橋。ですが、ニッキの効いたこのオツな味は、ひと口食べると京都のお寺を思い出すものです。
◇三十三間堂跡まで!”京都チェーン”な歴史・観光スポット
浅草や深川に、京都の三十三間堂を模した「三十三間堂」があったのをご存じでしょうか。
新興都市・江戸には、京都にあやかったスポットが複数あったようです。
最後は「京都チェーン」の拡張版として、今に残るそんな場所を巡ってみました。
「東叡山寛永寺」……上野公園に残る一大京都スポット(上野)
上野公園の広大な敷地は江戸時代、寛永寺という江戸最大のお寺でした。
明治維新の時に上野戦争でそのほとんどが燃えてしまい、その跡地が今の上野公園になったのです。
それでも公園の各所に当時のお堂が散在していますが、その代表格が清水観音堂。
すこし小ぶりですがお堂に上がるとちゃんと舞台になっていて、不忍池方面を見渡すことができます。
天台宗総本山である比叡山延暦寺に対して、江戸幕府ができるとともに家康のブレーンだった天海和尚が天台宗の関東総本山として建てたのが寛永寺なのです。
鶯谷という地名は、もとはといえば隣町の谷中初音町に由来するものなのですが、京都からきた寛永寺の偉いお坊さん(元皇族の公弁法親王)が「江戸の鶯はなまっている」と言って、京都からわざわざ3500羽のウグイスを取り寄せて放し飼いしたことからついた……という話があります。
「東伏見稲荷神社」……京都の伏見稲荷神社から分霊を受けて創建(西東京市)
関東にも伏見稲荷が欲しい……!という信者たちの願いにより、比較的新しい1929年に建てられたのが東伏見稲荷神社。京都の伏見稲荷大社の分霊を勧請して創建されました。
やや郊外の西東京市に鎮座しています。
このあたりは一帯は地名も東伏見とついており、酒造はないけれどなんだか懐かしい気持ちになります。
「泉屋博古館」……京都の美術館の分館(六本木)
京都東山、哲学の道の近くに泉屋博古館という美術館があります。日本美術・東洋美術・西洋絵画など多岐にわたる住友財閥のコレクションを展示する美術館で、その分館が1999年六本木にできました。
さまざまな企画展をやっているのですが、以前見た木島櫻谷という京都の近代日本画家の展覧会が印象に残っています。
「三十三間堂跡」……江戸にも作られた超長いお堂(浅草、深川)
当時は三十三間の長さ(約120m)を弓矢で通す「通矢」も行われていたそうです。京都の三十三間堂といえば、中の千体千手観音や国宝・二十八部衆も有名ですが、江戸の三十三間堂はむしろ弓矢の練習場としての側面が強かったようです。
1698年に焼失、その後深川に移転しました。
さて、次に移ったのが深川三十三間堂。
1701年に建てられた深川三十三間堂も矢の練習に使われていたそうですが、明治に入って1872年に解体。焼失したのでないなら、少しもったいない気もしますね。ちなみに、中には本尊の千手観音像もあったそうです。
「瑞聖寺」……重要文化財の大雄宝殿をもつ黄檗宗本山寺院(白金)
京都に黄檗宗総本山の萬福寺という巨大な中国風のお寺があるのですが、それによく似たお堂が東京にもあります。
萬福寺には行ったことがありますが、数多あるお寺の中でも総本山の雰囲気に似たお堂です。江戸時代の豪壮な建物には背筋が伸びる思いがします。
京都旅行をしたときの、あの静謐な雰囲気が東京でも味わえる貴重な場所だと思います……!
「江戸六地蔵」……京都の六地蔵を模して各街道の入り口につくられた(新宿など)
京都に六地蔵という地名があるのですが、旧街道の入り口を護るために平安時代に作られた6つの地蔵菩薩に由来します。
それに倣って江戸の各街道(東海道、中山道、奥州街道、甲州街道など)に作られた青銅の地蔵菩薩坐像が江戸六地蔵。
丈六(坐像で2.4~2.8mほど)の巨大な当時のお地蔵さまが、今も5体現存しています(品川、新宿、巣鴨、浅草、白河)。街中にあるため実際にみるとより雄大で見応えがあります。
ちなみに、冒頭で紹介した第一旭の近くだったりします。
今回巡れなかったお店(思いつくだけ)
あとがき
東京で楽しめる京都の味や京都チェーン。
個人的な思い出の味もあれば、今まで知らなかった新たな美味しいものにも沢山出会えました。
もちろん、今回紹介しきれなかったものもまだまだ沢山あります。いつか料亭の味も楽しみたいですし……!
依然としてコロナ禍がつづく今の世の中ですが、東京にいながらも京都を味わうチャンスがこれだけあると思うと、日々の生活も楽しくなってくるものです。