【東京マラソン】42.195km走りながら取材すると死にかけることが判明した

「東京マラソン2018」にライター・patoが挑戦!およそ12倍の抽選倍率を見事にくぐりぬけたpatoさんが、約42.195kmのフルマラソンのコースを実際に走りながらレース中の沿道の様子をレポートしました。(読了目安時間:20分)

■2018年2月25日 AM6:00 東京都庁前
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早朝の東京都庁前からおはようございます。

時間は朝の6時30分。こんな早朝に都庁周辺なんて人がいなくて閑散としている、と言いたいところですがむちゃくちゃ人がいます。
道路が人で溢れかえっています。なにか祭りでもあるのでしょうか。

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とんでもなく人がいる。戦後の闇市みたいな状態だ。なんでこんなことになっているかといいますと、これから東京マラソン2018のスタートセレモニーがあるからです。

そう!
これからマラソンという42.195kmくらいを何の力も借りずに人力のみで走り切るという、狂気の沙汰みたいな行為が行われるみたいなのです!

こうして都庁を見上げる場所に佇む僕は、これからマラソンに参加するランナーしか立ち入れないエリアにいるわけなのですが、ということは普通に考えて、これから走る、フルマラソンを、死に物狂いで、ということになっているのです。何が起こってこんなことになっているのか分からない。ちょっと気が動転していますが、なんでこんな事態になってしまったのか、時間を巻き戻して追っていきたいと思います。

あれはまだ暑い暑い夏のことだったでしょうか。妙に蝉の声がうるさかったことと、汗ばむような気温だったことを覚えています。テレビでは甲子園の熱戦を流していましたね。そこにSPOT編集部の方から突如としてメッセージが来たのです。

SPOT編集部
「patoさん、東京マラソン走りません?」

いきなり単刀直入だな。いつもの編集部ならもうちょっと遠回しに切り出して徐々に追い詰めていく狡猾な爬虫類みたいな感じで攻めてくるのですが、そういった駆け引きが面倒になったのか直球できました。

pato
「嫌ですよ。マラソンってフルマラソンでしょ、10 km走るのだってしんどいのに」

下手したら100 m走っただけで息切れするというのに42.195 kmなんて正気の沙汰とは思えません。人間がやるレベルの運動じゃない。もっと、馬とかがやるものだろ。

SPOT編集部
「大丈夫ですよ、きっと走ることはありませんから。抽選で外れます」

なにを言っているのか理解できないのですが、編集部が言うにはこうだ。「東京マラソンは世界的にもかなり人気がある大会で、出場するにはかなり高い抽選ハードルを超えなくてはならない。そんな状況なのでお前みたいな豚が申し込んでもどうせ当たらない」ということのようなのです。早速調べてみました。

2018年の東京マラソンにおいて出走できる一般参加人数は26,370人、それに対して申し込み人数は319,777人、およそ12倍の抽選倍率となります。普通に考えて12年連続で申し込んでやっと当たるかどうか、ということのようです。

SPOT編集部
「どうせ当たらないでしょうから、話のネタに申し込むだけ申し込めばいいじゃないですか。外れたら『外れたー!』で記事書けばいいですよ。すぐ終わりますし」

どうせ当たらないなら申し込む意味もないと思うのですが、確かに、『抽選に外れたから出場できない』という理由付けは大切だと思います。なにせ12倍ですよ、12倍、当たるわけがない。外れたーで記事が終わるならこれほど愉快なことはない。

pato
「わかりました。申し込みます。当たるわけがないですものね」

SPOT編集部
「そうですよ、シャレですよ、シャレ」

何がシャレなのかさっぱり理解できないのですが、こうして僕は東京マラソンのエントリーサイトから申し込んだのです。それが確か8月でした。

それから1カ月くらい経って、抽選結果が送られてきました。

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当たっとるやないけ。

おいおい、嘘だろ、12倍だぞ、12倍、編集部は魔族と取引でもしたんじゃないか。勝手に僕の寿命とか使って取引したんじゃないか。こんなの絶対におかしいよ。

ということで、当たってしまったので、まっこと不本意ですが東京マラソンに出場し、その模様をレポートすることになったのでした。普通にマラソン走るだけでも大変なのに、編集部のせいでカメラ片手に取材もしなければならず、本当にやりきれるのだろうかという不安な気持ちでいっぱいです。まあ、とにかく頑張ってみます。

 

出場エントリー

さて、スタート間近の現在はこうして都庁周辺にいますが、実は東京マラソンはこの前日から始まっています。
出場ランナーは前日までに東京ビッグサイトに赴いて出場エントリーをしなくてはなりません。まずはそこから報告していきましょう。

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東京ビッグサイトまでやってきました。

この日、ビッグサイトでは東京マラソンのエントリーイベントと就活系のイベントが同時に開催されていたため、リクルートスーツに身を包む大学生とラフな感じのマラソンランナーが混在するカオスな状態になっていました。こうしてマラソンと就職のイベントを同時にやることで、これから就職して定年まで長い長い日々が続く、それはマラソンのようだ、なんて就活生に対する強烈な皮肉なのかもしれませんね。

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東京マラソンのエントリーだけでなく、東京マラソンエキスポも同時開催されているらしいです。こちらは出場しない人でも参加できる付随イベントのようです。エントリーに付き添ってきた人とか、全然関係ない人とかまでかなり来ていました。

 

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こちらがランナー受付。この門より先には出場ランナーしか進めない。つまりここにいる連中はみんな出場者ということだ。どいつもこいつも腕に覚えのありそうな連中だ。12倍の倍率を潜り抜けた一癖も二癖もありそうな連中、さながらハンター試験の会場に来たみたいな感じだ。

※編集部注……漫画「HUNTER×HUNTER」の話です

 

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まず本人確認が行われる。前述したように過酷な当選倍率なので出走権を転売されないように万全のチェック体制が設けられている。

まず、当選名義と同一人物か公的な写真付き身分証明書で確認され、そのまま確認したスタッフの手でセキュリティバンドを装着してもらう。

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おばちゃん
「これにチップが入っているんですよ。これを付けてないと明日、ランナーエリアに入れませんからね」

セキュリティバンドを付けながらスタッフのおばちゃんがそう言う。

pato
「これ、明日までつけておくんですか? お風呂とか入ったらとれちゃいません?」

僕が少しジョーク交じりにそう言うと、おばちゃんは急に真剣な表情になった。

おばちゃん
「絶対に取れません。特殊な素材なのでお風呂どころか、強引に引っ張っても取れません。ハサミで切らない限り取れませんから」

pato
「ほんとですか」

おばちゃん
「絶対にとれません」

あまりにもおばちゃんが力強く言うものだから、ほんまかいなと強く引っ張ったら、全然びくともしなかった。こりゃ本当に取れないのかもと、マラソン後もずっと装着していたら本当に取れませんでした。2カ月くらいつけていたらポロッと取れたけど、そこまで持つのがすごい。

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セキュリティバンドの装着が終わると、早速、そのチップに顔写真を登録します。その場で撮影されるので、結構男前な表情をしておきます。ここまででエントリー作業は終わり。記念Tシャツなどを貰って明日の本番に備えます。

ちなみに、そのまま東京マラソンエキスポの方に雪崩れ込む形になっているようですが、色々な趣向を凝らした催しが沢山あって面白かったです。

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このような謎のオブジェがあり、みんながマラソンに賭ける思いの丈を書けるようになっている。読んでみると、「ヨシくんと絶対に完走する! そして結婚する! 佐和子」とか何の躊躇もなく書いてありやがる。完走と結婚は一切関係ない。別物と考えるべきだ。マラソンに結婚を持ち込むな! 個人的には「一緒に走ろうね」とか言っていてスタートしたらヨシくんが裏切って猛ダッシュで先に行って欲しい。婚約破棄して欲しい。

 

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明日走るコースと撮影ポイントが紹介されていたりする。なんか明日、本当に走るんだなって気分が盛り上がってくる。

先に進むと企業ごとのブースがあって、各企業が狂ったように試供品を配布している。その数や凄まじくて、本気で収集したら貰い物だけで大きめの袋がパンパンになるくらいだ(しかもその袋すらも試供品)。サロンパスだとか栄養ドリンクだとか、マラソンと繋がりの深い品々が配られている。

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これは綺麗なお姉さんがノンアルコールビールを配布しているところ。ビールは大人気だった。

 

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マラソン中にお腹が痛くなった時のために下痢止めストッパまで配布されていた。あらゆる配布物の中でこれが一番心強かった。そうだよな、マラソン中に下痢になったら地獄だもんな。

さらに先に進むと、シューズやらウェアやら、マラソンに出る人ならついつい購入してしまいそうになるショップが並ぶエリアに出る。明日のためにちょっといいウェア買おうか、サングラス買ってしまおうか、腕時計を買おうか、という気分になってくる。なかなか上手い商売だ。

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有森裕子さんのトークショーもあったりして、マラソンを完走するにはどうしたらいいか、みたいな話をしてくれる。

こうして、マラソンを走らなくてもここにいるだけでけっこう楽しいんじゃないかというエントリーを終え、いよいよ本番、出走となるのだった。

 

スタート前

マラソン当日、スタート前。スタート地点である都庁周辺は厳重な警備がなされ、区切られたエリア内には立ち入れないようになっていた。

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ゲートでは持ち物検査、金属探知機、リストバンド内のチップでの本人確認とかなり厳しいチェックをされる。それらをパスしてランナー専用エリアへと進む。

 

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ゲートを越えると完全にランナー専用エリア。普段は車が通る場所を悠々と歩いて進む。いつもは車がビュンビュン走っているこの道路を悠々と歩いていると変な気分になってくる。意味不明に『世界は俺のもの』みたいな感情が湧き上がってくる。

 

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このテントの中で着替えとかする。中は野戦病院みたいな感じになっていて、かなり熾烈な場所取り競争がある。マラソン猛者が柔軟体操とかしていて新入りは入り込めない雰囲気がある。本気でハンター試験みたいだ。ちょっと内気な人は場所すら取れない過酷な感じがあるので、物陰とかで着替えている人もいる。僕も物陰で着替えた。

 

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着替えエリアの反対側では物資の配給が行われている。ミカンだとかバナナだとか、あとスポーツドリンクとか大盤振る舞いで配られている。僕は貧乏性なので貰えるものは貰っとこうとけっこうな量を貰ってしまったので、スタート前に腹がたぷんたぷんになってしまった。早くも完走に黄色信号だ。

出場ランナーには結構大きめの袋が配布される。その中に、着替えた服だとか私物だとかを入れて預ける。逆を言うとそれ以外は絶対に預かってくれないので、自分の荷物を袋に入るくらいの量に厳選する必要がある。

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荷物預かりポイントはかなり混雑する。あらかじめ指定された番号の場所に預ける必要があるのだけど、そこを見つけるのも一苦労だ。祭りのように混雑しているので移動だけでかなり体力を削られる。預かりポイントで爺さんが「これから亡命ですか?」と聞きたくなるレベルのデカい荷物を預けようとしていて丁重にお断りされてた。

さて、いよいよスタート地点へと移動していくわけだが、ニュースなどの映像で東京マラソンの映像を見たことある人は都庁前の道路に人がわんさかいて、紙吹雪などが舞い散る中で華やかにスタートする光景を思い浮かべるかもしれない。

ちょうど良い画像が東京マラソン公式サイトにあったので引用する。

じつに華やかだ。こんな華やかなスタートができると僕も想像していたがそんなことはなかった。じつはこの光景、選ばれし天上人たちによるものなのである。

出場するランナーは自己申告ではあるが申し込み時に持ちタイムの申告をさせられる。その申告タイムが速い順番にゾーンが振り分けられ、スタート位置が決定する。ニュース映像に映ったりする華やかなスタートはほぼ2時間台とかで走る招待選手などだ。分かりやすく図に表すと以下のようになる。

mara21都庁前の華やかなゾーンはAやBのアルファベットが割り振られた選手である。この辺は招待選手だったりする本格派だ。そのあとに続くCやDやEの選手も基本的にかなりのマラソン猛者であり、持ちタイムも立派だ。日常的にマラソンのことを考えて生きているレベル。この辺くらいまではスタートセレモニーに参加したと言っても良い状況だ。

これがFゾーンとなると道路の形状の関係で折れ曲がった場所になる。

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こうなってしまうとスタート位置が見えないので別世界感が出てくる。どこか人ごとのようにスタートを捉えてしまうのではないか。

ちなみに「マラソン経験なし」「初マラソンなので持ちタイムなし」と申告した僕に割り振られたアルファベットは「L」である。まだまだ遠い。
どのタイミングで「L」が出て来るのか、順番に見ていこう。

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Gからは人数が多いのか、かなりエリア設定が広くなっている。「I」が数字の「1」と間違いやすいのか設定がないのでJまでの3エリアでかなり距離を要する。長すぎて図のタイトルを突き破ってしまった。もうJからみたらスタート地点は別世界だ。Lはまだ出て来ない。

 

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Kはついにラインから外される。道路脇にある広場みたいな場所で待機させられる。そしていよいよ「L」だ。

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もう都庁スタートではなく、「都庁近くの公園スタート」という勢いで公園に押し込められる。完全にスタート場所とは別世界の趣だ。

 

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とりあえず、「L」ゾーンのスタート位置である公園へ。雰囲気的にはマラソンに来たというよりも炊き出しに並びに来たという感じだ。

たぶんここに押し込められている人のほとんどが初マラソンだと思う。とりあえず、初マラソンでいきなりマラソン猛者とかに囲まれたらどうしようとか思っていたけど、周りみんなが初心者だと考えると急に安心してきた。よくよく見るとどいつもこいつもヒョロヒョロじゃねえか。本当にフルマラソンを走り切れるのか。相撲取ったら俺が優勝するぞ。

 

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スタートまでけっこう時間があるので配っていたバナナなどを食べて腹を満たしておく。この公園からみて巨大な都庁の建物の向こう側が華やかなスタート地点で、何やらセレモニーの音だけが聞こえてくるんだけど、この公園は関係ない。別世界だ。ただ、初心者が呆然と突っ立っているだけだ。

 

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マラソンとは完全に無関係で配給とか何かを待っている集団と勘違いしてしまいそうになるが、それでもスタート時間が近づくと緊張感みたいなものが蔓延してくる。次第に行列が形成され、皆が今か今かとスタートを待つ状態になる。

「Yeahhhhhhhh! TOKYO! マラソーーーン!」

みたいなテンションの高いDJ風の叫び声だけがビルの向こうから聞こえてくる。それとは対照的に公園では北風が通り抜ける音が響いていた。完全に置き去りだ。

ボーーーン!

ついにスタートになった“らしく”、おそらく華やかに紙吹雪とかが噴出されたであろう爆音が聞こえてきた。

「Yeahhhhhhhh! TOKYO! マラソーーーン! スッタートゥ!」

みたいなDJ風の音声も聞こえてきたと思う。ついに東京マラソンが始まった。たぶん。

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しかしながらゾーン「L」のメンツは微動だにしない。東京マラソンスタートをまるで海の向こうの遠い国で起こっている出来事のように捉えている。スタート後も全く変わることのない光景がそこにあった。

スタートから10分くらい経過しても動き出す気配すらない。目の前の「J」ゾーンあたりも動いてないのでまだまだ時間がかかるだろう。なので、ちょっと装備品を紹介しておくことにする。

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ランナーたちはシューズに装着するチップみたいなものを配布される。これがセンサーを通過することでタイムが計測される。各ランナーに振り分けられた番号やQRコードで専用サイトにアクセスすることにより、今どこを走っているのかもわかるようになっている。観戦する人にも便利なシステムだ。

他にも、Bluetoothイヤホンや、スマホを収納するケースなどを装備して今回のマラソンに臨んだ。あとはスタートを待つばかりである。いや、もうスタートはしているので、動き出すのを待つばかりである。

ここで緊急事態が発生した。無料だからと配給を食いまくっていたせいなのか、それとも緊張からなのか、むちゃくちゃお腹が痛くなってきた。このまま走り出してしまっては完全に5km地点くらいで垂れ流しになるレベルの腹痛だ。どうするべきか。かなりの判断力を問われる状況だ。昨日貰った下痢止めストッパはカバンの中に忘れてきた。

普通に考えて、スタート後もコース上にトイレがあると考えるべきだ。むしろ東京マラソンはトイレ設備が豊富であるとも聞く。ならばこのまま動き出すのを待ってトイレに駆け込むべきか。しかしながら、スタート直後のトイレはかなり混雑するのではないだろうか。いくらトイレが豊富といってもそれはコース全般でのことである。スタート直後は3万人以上のランナーが序盤に集結することになる。それだけの人数を処理しきれるほどのトイレが準備されているとは考えにくい。さらに前の方のマラソンエリートたちがそのトイレを占拠している可能性だってある。

現に、ここ「L」ゾーンの公園にもトイレはあったが、かなり長蛇の列になっていた。これがコース上ともなればかなり混雑することになるだろう。そうなると行列で待っている間に不幸な事故が起きてしまう。どうするべきか。もう完走どうこうの話じゃない。マラソンとかの話じゃない。今、僕は人間の尊厳としての話をしているんだ。いったいどうするべきなのか!

いよいよ列が動き出すぞ、という状況。トイレは混雑している。おまけに僕は「L」ゾーンのなかでも早くスタートを切れるように前目の位置に並んでいる。今トイレに行くということは、1時間くらい並んで確保していたこの好位置を放棄することになる。どうするべきか。

答えは「今ウンコをする」だ。「L」ゾーンのトイレは、先ほどあれほどの長蛇の列だったのに、今まさにマラソンが始まるという状況になってさすがにみんな前のめりになるのか、スタート位置に移動し、誰も並んでいない状態になっていた。今なら待つことなくウンコができる。漏らしてしまっては好位置もクソもない、クソはあるけど、元も子もないのでとにかくトイレに行くべきだ。出すべきなのだ。人間としての尊厳を守るため。

すし詰め状態の行列をかき分けてトイレへと向かう。待ち時間ゼロで大便ブースへと入ることができた。

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ウンコを終えてトイレから出ると、完全なる最後尾だった。最後方の「L」ゾーンの中でも最後尾。東京マラソン2018の中でもっとも後ろからのスタートだ(正確にはLゾーンの後ろに整列時間までにスタート位置に行けなかった人の列がある)。

「おもしろくなってきたじゃないの」

僕は自分でも良く分からないキャラ設定でニヤリと笑った。たぶん苦境になるほど燃えるタイプのキャラを演じたつもりなんだと思う。意味が分からない。

ついに東京マラソンが始まった。完全なる最後尾からの戦いだ。

 

スタート

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ついに列が動き出し、道路へと出ることができた。周りの皆が溜まっていた鬱憤を晴らすかのごとく結構な速さで走り出した。うそ、そんな速いの、張り切りすぎじゃない? と焦るくらいのペースだった。何度も言うが、ここから正規のスタート地点までけっこう遠い。それなのになかなかのペースで走らされるので、まだスタート地点に到達していないのに息が切れてしまった。前代未聞だ。スタートラインに到達する前にゼエゼエいってる。

 

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正規のスタート地点が近づいてくる。これは洋服ポストと呼ばれるもので、スタート前に体を冷やさないように着ていた上着などを、寄付するという名目で投げ捨てていくポストだ。つまりみんな捨ててもいい上着を持ってマラソンに臨むのだ。僕はそれを知らなかったので、ちょっと捨ててしまっては困る上着を着ていた(まあまあお気に入り)。これを捨てるわけにはいかないので着たまま走ることになってしまった。

スタート前ともなると、このポストでは受け止めきれなかったのか、道路上にも上着が投げ捨てられ、踏まれ、おまけに華やかなスタートの名残である紙吹雪とかまで路上に散乱しているので、映画バイオハザードのラストシーンみたいな状態になっていた。ランナーたちも暴れまわるゾンビに見えてくる。都庁前がこんなことになっているなんてなかなか見ることができない光景だ。

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ついにスタート地点が見えてきた。長かった。まさかフルマラソンに至る前の、スタート地点まででこんなにも遠いとは思わなかった。やっとこさスタートを切ることができる。ただ、すごい混みあっていて、列が止まったりしていた。ちょっとしたラッシュアワーだ。

 

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もう少しでスタートだというのに列がなかなか動かない。そんな中、スタッフの人が何かを手に持ってる。なんだろうと近づいて見る。

 

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残り42.5 km。

ここからスタートまで300mくらいあるから、残り42.5kmだよ、ということだろうか。なかなか皮肉が効いてやがる。やるじゃねえか。

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ついにスタート地点だ。やった。もうマラソンを成し遂げたくらいの感慨がある。

 

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ついにスタート! スタートラインのその横には小池都知事がいる。しかし、真に注目するのはここ。

 

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もうスタートから20分経過している。都庁とは別世界の公園に押し込められたりウンコをしたりしているうちにこんなにも時間が経過してしまった。もう絶対に優勝は無理である。先頭集団はとんでもない先の方を走っているに違いない。

 

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普通に考えて小池都知事も20分以上、ここで愛想を振りまいているということだ。

 

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ついに本格的にマラソンがスタートした。集団がわさっと動き出す。僕はもう完全に息が切れているので、とてもじゃないがここから42.195 km走り切れると思えない。

 

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隊列は新宿の高層ビル群の間を縫うようにして走り抜けていく。たぶんまだ1 kmも走っていないのだけど完全に死にそうだ。なんで僕がこんな目に。くそっ、これも全部SPOT編集部のせいだ。

 

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途中、大きく右へと曲がるコースに出た。何の気なしに左側を見たら誰もいない道路が広がっていたのだけど、コースでもないのにここも交通規制されて車がいない状態になっていた。実はこの風景の中にSPOT編集部が入るビルがある。僕は行ったことないけど確かにある。このまま乗り込んでやろうかとも思った。彗星でも落ちねえかなあとも思った。

さて、ここで東京マラソンのコースをおさらいしたい。

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新宿、都庁前をスタートしたランナーはそのまま東に進み、東京駅へと向かう。東京駅からは浅草方面に向かい雷門前で折り返す。一団は門前仲町へと向かい、そこでも折り返し再度、東京駅へと至る。そこからさらに品川方面へと向かい、品川駅手前で折り返し、東京駅へと向かうコースになっている。

コース全体としてはスタート時に緩やかな下り坂がある以外は平坦でフラットな地形が続く、比較的走りやすいコースだ。ただし、コース図に書き入れた「制限時間」、これが最大のネックとなる。

東京マラソンは言うまでもなく首都東京の中枢を走るマラソンだ。長い時間、首都の交通を止めるわけにもいかない。42.195 kmを7時間で走破すれば良いという制限があるがそれよりも細かい区切りで制限時間なるものも設けられている。関門と言った方が適切かもしれない。ほぼ5 kmごとに関門があり、そこでの制限時間を越えてしまったらリタイアとなる。そこで道路を開放してしまおうというわけだ。これが非常に厄介だ。

最初の関門は5 km地点での80分。これはかなり余裕があるので心配することないが、問題はその次の10 km地点の110分だ。こちらは正規のスタートを切るまでに20分かかっているので実質的には10 kmを90分で通過しなければならない。トイレの列などに並んでいたらあっというまに制限時間になってしまう。かなり危険だ。とにかく急がなければならない。

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道路のど真ん中を通過して歌舞伎町へと突入していく。この道路の真ん中を走るなんて普段は絶対にないことだ。

画像を見て分かる通り、かなりランナーで混みあっている。この密集した中を走ることは思っていたより難しい。これだけ人がいるとそれぞれ色々なペースで走っているので、すぐにぶつかりそうになったりする。また、僕がいるゾーンは間違いなく走り慣れていない人が多いので、突然立ち止まったりペースを変えたりする。他のランナーとガンガンぶつかるし、それを避けようとトリッキーな動きをするしで、思った以上に体力を消耗することになってしまった。こればかりは慣れるしかない。

また、何かご機嫌なナンバーでも聞きながら走ろうと、わざわざBluetoothのワイヤレスイヤホンを購入して参戦したが、絶対にやめておいた方がいい。これだけ人が密集していると電波が入り乱れるのかBluetoothは全く使い物にならない。少々邪魔になるかもしれないが有線のイヤホンにしたほうが絶対に良い。

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大ガードを抜けて本格的に歌舞伎町エリアへと突入していく。ここまでくると体もまあまあ慣れてきて周りを見る余裕がでてくる。大部分のランナーがぴちっとしたタイツだとかマラソン向きのファッションに身を包んでいるが、中にはカープのユニフォームを着ている人とかもいる。というか、カープのユニフォームはかなり多かった。他の球団はそうでもないのにやたらカープがいた。

もちろん、コスプレに近い色物的ファッションに身を包む人もいる。

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変なのおるな。

 

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倒す方もおるな。

まだ全然朝方なので歌舞伎町エリアでは沿道にほとんど人がいなかったのだけど、そこを越えると人が増えてくる。通りすがりに「がんばれー」と応援してくれる人もいれば、プラカードを掲げて「山本部長!がんばれ!」と、1000%上司のために嫌々ながら休日に駆り出されたんだなって人もいる。沿道の人々も思い思いのスタイルで東京マラソンに参加しているのだ。

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こういう人もいる。東京マラソンは今年で12回目。つまり全部落選ということか。できることなら変わってあげたかった。

 

5km~

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5kmでの制限時間、80分はかなり余裕を見た設定なので、なんとかクリアすることができた。ただ何度も言っているように次の10kmが正念場である。途中、コース上に何個かトイレがあったが、全て長蛇の列だった。あれに並んでいたら確実に10kmの制限時間に間に合わないと思う。つくづくスタート列を放棄してウンコをして正解だったと思う。ナイスウンコだ。

5km地点よりちょっと先くらいの場所に最初の給水所があった。テレビなんかで見るマラソンランナーみたいにシュパン!とスピードを落とさずに水を取るイメージトレーニングをし、家でも実際に練習していたのだけど、実際にはめちゃくちゃ混みあっているのでスピードもクソもなく、わらわらと魑魅魍魎のごとく給水所に集うランナーをかき分けて「すいません、水ください」とお慈悲を貰う格好になっていた。練習したシュパンを見せる場がない。

おまけに、先頭集団から数えてかなりの数のランナーが通過した後で、ほぼ最後尾に近い場所なので、給水所が略奪に遭った後みたいになっていた。暴徒に襲撃された後みたいになっていた。コップに入れられた水やドリンクは前の人たちに取られてしまっているので、じっと並んでコップに注いで貰っている状態だ。

さらに、スポーツドリンクが道路上にこぼれるらしく、アスファルトの上がかなりべたべたしている。けっこう気持ち悪い音があちこちから聞こえてくる。シューズの裏がベタベタだ。

別にそこまで喉は乾いていなかったけど、配っているものは飲まなきゃ損と飲んでいたらまた腹がタプタプになってしまった。とりあえず、10 km地点までは制限がシビアなのでこんなことをしている場合じゃないと走りだした。

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なんかいる。

 

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こんなもんでフルマラソン走り切れるわけないだろ。カランカランと妙な音がすると思ったらお前か。

神田に差し掛かったくらいだろうか。おそらく7kmとか8km地点かと思うのだけど、爆音でYMCAが流れ続けている場所があった。

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ここではランナー全員がYMCAをするしきたりがあるらしい。僕もやりたかったが、腹がたぷんたぷんで息も絶え絶え、死にそうなのでやれなかった。腕が上がらない。死ぬ。

 

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時計を見ながらなんとか先へと進み、10 kmの関門を目指す。がんばれ自分。

 

10 km~

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ついに日本橋までやってきた。もうすぐ目の前が10kmポイントだ。なんとか死にそうになりながらここまで来ることができた。ここまできたらもう安心だ。

 

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10 kmを走る、なんて長い人生において経験がないので足とか痛くてしょうがない。そしてなぜか腕の変な場所の筋肉が痛い。走っているだけなので足が痛くなるのは分かるが、腕が痛くなるってのは不思議だった。限界を超えると理解できない人体の不思議が露出してくる。

 

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10 km手前では大型ビジョンによって先頭集団の様子を映し出していた。なんでももう30km近辺を走っているっぽい。こっちは10 kmの門限でヒーヒー言っているのに棲む世界が違う。トップランナーってすげえんだなあ。

 

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10 km地点-約90 min(制限110min)

ついに10km地点に到達した。時間も90分くらいなので20分くらい余裕を残していることになる。もうかなりやり遂げた感があるんだけど、実際には1/4もきてないよのね。全然序盤、序盤もいいとこ。

 

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またビル群の中を走る。明治座の前を通った。この辺になるとまた沿道に応援の人が増えてきて、熱烈な声援を受けることとなる。多くの人が持参したプラカードを掲げて応援してくれる。

 

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またお前か。

この人みたいな方も珍しくなくて、熱心な方は地下鉄での移動などを駆使して何度も沿道に現れてくれる。大体は特定の誰かを熱烈に応援したくて複数個所に現れるが、この人みたいに何度も12回落ちたことを教えてくれる人もいる。

 

15 km~

そろそろ体力の限界だ。足がプルプルしていて生まれたての鹿みたいになってる。それでも前に進むしかないので走る。途中何度か、ふと思うことがあった。なんでこんなところを走っているんだろうか。なんでフルマラソンをやっているのだろうか。答えは見つからなかった。答えが見つからないときはただ進んでみるだけである。

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雷門にやってきた。ここで折り返すこととなる。ここは沿道がすごいことになっていて、溢れんばかりの人だった。何かステージイベントも開催されている様子だった。

 

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こんな感じですごく盛大にやっている。大変な盛り上がりだった。あまりの盛り上がりに立ち止まって記念撮影するランナーもちらほら見えた。

 

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スカイツリーも見えた。東京の街を走っているんだなあという実感が湧いてくる。

15kmの門限もなんとかクリアし、先へと進んでいく。何個か給水ポイントがあったが、ここにきて初めて食物の配布もあった。確か、ミカンとかそういったものだったと思う。これがもう美味くて美味くて、ミカンってこんなに美味かったか、世界一美味いんじゃないか、と思うほどだった。

ミカンの配給ポイントからちょっと進むと、今度はミニトマトの配給ポイントがあった。ここまで死ぬ思いで走ってきて塩分が不足していたのか、ミニトマトから感じる塩分がとにかく美味い。この世で一番美味いミニトマトだった。感動して目頭が熱くなるミニトマトだった。こんなミニトマトはもう生涯味わうことがないかもしれない。

こうして、公式の配給ポイントで食物の配布があるが、下町エリアに入ると予想だにしないものが沿道に現れた。

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私設の配給ポイントだ。

おそらく自腹で飲み物や食べ物を準備し、ランナーに振舞っている。下町ゾーンに入ってからこれがとにかく多かった。テーブルとかまで用意して本格的にやっている人もいれば、ついさっきコンビニで買ってきたようなアメの袋を携えてランナーに配布している人もいた。

小さな子供がちょっと誇らしそうにしてランナーにお菓子を渡していたり、「足が痛い人はエアサロンパスあるよ」とスプレーを構えている人もいた。それが決して珍しいものではなく50メートルに1組くらいそういった私設の配給をやっていた。

東京や都会って人が冷たいようなイメージがあるけどそんなことはない。見ず知らずのどうでもいいランナーにあれだけ声援をかけてくれて、何かの足しにとドリンクやお菓子を配っている。どうしてそこまでしてくれるのかと不思議で仕方がなく、目頭が熱くなった。

門前仲町へ向かって走っていると、倒れているランナーがいた。コースの各所には自転車に乗ってAEDを背負っている人がいるのだけど、その人が倒れているランナーにAEDを施していた。マラソンはこれがあるから怖い。急に怖くなった。僕もかなり危険な状態なので危なくなったらすぐリタイヤしようとペースを緩めた。結果としてこれが良くなかった。意図的にペースを落とすと逆に体力を消耗する。もう息も絶え絶えだった。

 

20 km~

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20km地点-約170min(制限200min)

門限まで30分くらい余裕があるタイムで走っているが、大きくペースを落としたことを考慮するとかなり危険な状況だ。配給をむしゃむしゃ食べている場合じゃない。配給のパン、美味い。

 

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門前仲町の折り返し点を目指す。

 

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ついに折り返し点へと到達した。だいたいこれで半分くらいが終わったことになる。うへー、まだあと半分あんのかよ。殺す気かよ。

 

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愚痴を言っても距離が縮むわけではないので気を取り直して先へと走る。もう足がバカになっていてほとんどいうことをきかない。

 

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銀座のど真ん中を走り抜けていく。

途中、沿道に大学のサークル仲間みたいな一団が立っているのが見えた。サークル内部の男女間のいざこざでドロドロしていそうな一団だ。

「ヨシノ頑張れ!東京制覇だ!」

みたいな横断幕を掲げて、頭の悪そうな大学生どもがビール片手に応援していた。東京制覇って暴走族みたいな感じなのかなって思いつつ、これだけ応援してもらえたらヨシノちゃんも嬉しいだろうと考えていると、僕の横を走っていた地味そうな女の子が一団に手を振った。

「みんな、ありがとー! 来てくれたんだ!」

うおー、僕の横を走っていたのはヨシノちゃんだったかーと驚きつつその光景を見守る。

「ヨシノ、いけー!」

「がんばれー! ヨシノー!」

「そんなオッサン抜いちまえー!」

一団の中で一番頭の悪そうな金髪の男が明らかに僕のことを指してそう言っていた。
彼らは僕とヨシノちゃんが通過した後もずっと大声で応援していて、後方の方でずっと騒がしかった。熱烈すぎる応援だ。

しかしまあ、これだけ盛大に応援されてヨシノちゃんは幸せ者だね。いい仲間を持ったね。さあ、頑張って走ろう、一緒にゴールしよう、と僕もヨシノちゃんに親近感を抱いていたら、ヨシノちゃんがポツリと言った。

「私の名前、ヨシミなんだけどな……」

名前ぐらい覚えてやれよ。応援に来るくらいなら正確に名前覚えてやれよ。間違えた名前で横断幕まで作ってるんじゃないよ。

そなんこんなで銀座の街を駆け抜け、ついに30km地点へと到達した。知らない間にヨシノちゃんとははぐれた。

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30km地点-約230 min(制限285 min)

 

30 km~

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ついにここまできた。あとは品川のほうまで行ってまたここに戻ってくるだけだ。時間制限にもかなり余裕があるので、たぶん歩いてでもゴールできる。体験したことない体の痛みに死にそうになるけど、あと12kmほどと考えればそこまで苦ではない。

相変わらず沿道には私設の配給者たちがいてスポーツドリンクなどを配っているのだけど、その中にワインを配っている人たちがいて「ワインをどうぞ(自己責任で)」とか書いてあった。30km走ってワイン飲んだら絶対に死ぬわ、と通り過ぎた。あれを飲んだ人いるんだろうか。

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東京タワーが見えた。こうしてスカイツリーと東京タワー、東京が誇る2大タワーの近くを通過するコース設定になっている。まさしく「東京」マラソンだ。なんか東京タワーって品があるね。

30kmを越えた辺りから急激に体が重くなった。これはちょっと体験したことない疲労感で、完全に制御不能になっている。まるで他人の体を操縦しているみたいだ。もう立ち止まって走ってを繰り返す状態になっていた。限界が近い。

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増上寺前を通過する。今にも天羽”セロニアス”時貞が出てきそうな威風堂々の佇まいだ。

 

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品川に向けて爆走していく。もう少しで最後の折り返し地点だ。がんばれ。

 

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ついに最後の折り返し点に到達した。あとはゴールに向かうだけ。まさかここまで来ることができるとは思わなかった。人間やればできるものだ。

黙々と走り続けていると、沿道にまた華やかな応援の一団が見えた。

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応援にかこつけて己の肉体を見せつけたいだけだろ。すげえムキムキじゃねえか。

 

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ここまでほとんど触れてこなかったけど、足の裏の皮がズルムケになり、おまけに右膝が痛い。痛み自体はそこまで深刻ではなく、リタイアするほどのものでもないのだけど、ずっと痛みを我慢していると意識が朦朧としてくる。視界が歪み、どこかフワフワした感じで沿道の景色を眺めている自分がいる。なんだか限界が近い感じがした。

ついに立ち止まってしまう。痛みが限界に近い。

「もうちょっとだ、がんばれ!」

沿道の見ず知らずの人がそう声をかけてくれる。エアーサロンパスを持った一般の人が駆け寄ってくる。

「もうちょっとだから、がんばってね」

「はい、がんばります」

こうしてまた走り出した。それでも意識が朦朧としてくる。視界がぼやけ、沿道の人々の姿が大きく歪んでぼやけ、二重に見えるようになった。もうダメか。そう思った時、朧げだった視界が徐々にはっきりし、しっかりと像を結んだ。

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またお前か。

不思議なことに、なんだか痛みも和らいできて意識もはっきりしてきた。いける。

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40km地点-約330 min(制限395 min)

ついに40km地点へと到達した。

 

40 km~

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あと2.195kmである。ここまでくると沿道のトイレもかなり空いているので待ち時間なしでトイレに行ける。ずっと行ってなかったので済ませておく。

いよいよゴール間近。日比谷公園の横を通り抜け、東京駅へと向かう。ゴール間近のコーナーを曲がり、石畳の道路へと向かう。

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すごかった。

雰囲気のある石畳の街並みに、沿道を埋め尽くす人。口々に「がんばれ!」と声をかけてくれる。走り切ったという感慨も相まって、ここでの声援はちょっとクルものがあった。こんなことされたら東京のこと、好きになっちゃうよ。

降り注ぐような声援を浴びながら最後の力を振り絞って走りぬく。そしていよいよゴールの時がやってきた。

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たぶんあと0.195 kmくらい。

 

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ゴーーール!

ついに走り切った。人間やればできるもんだ。

 

ゴール後

ゴール地点にはまたDJ風の人がいて、ずっと実況していた。ランナーはそのまま流れ作業のように先へ歩けと指示される。ゼッケンナンバーごとに通路を振り分けられて結構な距離を歩かされる。まあ、確かにゴールしたランナーがいつまでもゴールにとどまっていたら邪魔だからね。でもゴール後に1 kmくらいは歩かされたと思う。

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歩き進んでいくと、フィニッシャータオルを配布している場所に到達する。めちゃくちゃかわいいボランティアスタッフの子がファサっと肩にかけてくれる。これだけで42.195 km走ってくる価値がある。

 

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さらに歩き進むと、完走メダルをかけてくれる場所に到達する。安っぽくない、けっこう重量感のあるメダルだ。

 

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さらに先に進むと、銀色のシャカシャカするやつを肩にかけてくれるゾーンに到達する。いや、もうタオルを肩にかけているし、それってなんか重複してない? って思ったけれども、これまたかわいい子が「おつかれさま」とか言いながら配布していたのでついつい貰ってしまった。これだけで42.195km走ってくる価値がある。

こうして東京マラソンは終わった。

マラソン経験もないのになんとか完走できたのは東京マラソンが走りやすいコースだからだろうか。それとも沿道の声援のおかげだろうか。

「東京がひとつになる日。」

東京マラソンにはこのようなキャッチコピーがついている。本当にこの言葉通り東京が一つになったとは思わない。けれども、見ず知らずの僕らにかけられる沿道の声援や、私設の配給所、ボランティアスタッフの方たちの親切さ、それらは東京のことを好きになるのに十分だった。

もし、来年も抽選を突破したらやはり東京マラソンを走りたい。そう思った。あと、12回落ちた人も来年こそは是非とも当たって欲しい。