【宙に舞う警察官】広島カープ25年ぶりの優勝。その時広島市内で何が起きたか

広島カープが25年ぶりにリーグ優勝し、街中が歓喜に沸いた広島。バスタ発、カープファンも乗ったバスに揺られながら広島へ向かったライターが、クライマックスシリーズを突破した夜、何が起きていたかをお伝えします。街の中心にどこからともなくやってくるカープ色の人たち、応援歌から胴上げに発展、対戦相手DeNAファンもなぜか胴上げされ、健闘を称え合う。歓喜の瞬間をぜひご覧ください。

いざ広島へ

新宿駅に新たに完成したバスターミナル「バスタ」を金曜夜に出発し、広島へと向かう高速バス、その車内に毛深い男たちがギュウギュウ詰めにされながら運ばれていた。それはさながら、これから出荷されるキウイのようでもあり、売りに行かれる奴隷たちのようでもあった。

静かなバス内に、広島カープが負けたとの速報がどこからともなく流れてくる。「よしっ!」「やった!」「よくやったDeNA!」ところどころからそんな声が漏れ聞こえてくる。このバス内は全員広島カープファンであることはなんとなく雰囲気で伝わってくる。けれどもそのカープの敗戦に歓声が上がった。なんとも不思議な気もするが、その気持ちも良くわかる。

「セリーグ クライマックスシリーズ」ファイナルステージは佳境を迎えていた。ファーストステージを勝ち上がってきたDeNAを相手に迎え、ここまで1勝のアドバンテージを加えて広島カープの3勝。この試合まで勝ってしまったら勝ち抜けが決まってしまい、おそらくこのバスの中の全員がチケットを所有しているであろう第4戦が行われないところであった。これでは何のために出荷されたのか分かったものではない。そういった意味でカープの敗戦に喜びの声があがる。明日の試合に対する期待の声がバス内に広がった。

新宿を出たバスは、横浜のバスターミナルに寄り、そこでも乗客を乗せていく。横浜といえばDeNAの本拠地だ。ここでDeNAファンが大挙して乗ってきて広島ファンとバス内で煽り合い、殴り合い、ラップバトルにでも発展するかと思ったが、別にそういうことはなく、普通に広島に用事がある横浜の人たちが乗ってきただけだった。

出荷のバスに12時間揺られ、体が収まりきらない座席、眠れない振動、やっと眠れたタイミングにパーキングによる間の悪さ、それらが総動員で「地獄」という言葉を演出してくる。途中、関取にもみくちゃにされている夢を何度も見ながら、ついに出荷されたキウイたちは広島へと到着した。

 

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25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島の街は完全に浮かれモード。街のあちこちにカープが溶け込んでいた。

 

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完全にお祝いムード一色だ。広島の街が赤に染まっているといっても過言ではないほどだ。

 

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カープだらけ。

 

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カープ勝利で岩盤浴無料&マッサージ1000円引きなど魅惑的なサービスを街中のいたるところでやっている。地域を挙げてカープを盛り立てている印象だ。

店の前に立っている用心棒みたいな男が怖かったので写真は撮影できなかったが、風俗店の煽りもすさまじく、今シーズンカープ快進撃の原動力となった鈴木選手の「神ってる!鈴木」をもじって「神ってる!即尺!」と書いてある店もあった。どんな即尺なのか、広島の底が知れない。

 




MAZDA zoom-zoomスタジアム広島へ

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そしてついにやってきたMAZDA zoom-zoomスタジアム広島。今日勝てば球団史上初のCS突破が決まる。天気も絶好の晴天、完全に野球日和。いい試合が見られそうだ。

 

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広島駅から球場へと続く通称カープロードはすでに真っ赤。遥か先まで真っ赤な隊列が続く。

 

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マツダスタジアムまで390m、横浜スタジアムまで880000m。しっかりと対戦相手の横浜を煽りつつ新幹線のぞみだと3時間26分!と宣伝も忘れないJR西日本。夜行バスで地獄の苦しみを味わったことを思い出し、のぞみに乗ればよかったと後悔させてくれる看板だ。

 

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LAWSONもとにかく赤い。とにかくなんでもかんでも赤いのが広島なのである。たぶん手前に映ってるおばちゃんも下着が赤いんちゃうかな。

 

 

試合開始

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真っ赤に染まるスタジアム、それはまるで赤い波のようだった。

後ろの席に座っていたかなりご年配の御老人の会話が聞こえてきて、

「広島カープが強いのは嬉しい、でもそれ以上に広島が一丸となっているのがうれしい。こんな光景を見ることができてよかった。長生きはするもんだ」

と言っていたのが印象的だった。

試合の方は7-8で広島カープの勝利。初のCS突破! 会場は赤い熱気に包まれた。おめでとう! 広島カープ!

 

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歓喜の夜へ

さて、前回のリーグ優勝の際には広島の中心部で人々がハイタッチしあう喜びの光景が見られたらしい。なにせ25年ぶり、四半世紀ぶりの優勝なのだ、その熱気たるや相当のものだったはずである。

そして今回はCS突破!さぞかし興奮のるつぼに包まれているぞ、と中心部へと繰り出したが、街の様子は平穏そのものだった。何人かユニフォーム姿のオッサンがハイタッチをしていたが、まあ、そのレベルのオッサンなら重賞の時に府中競馬場に行けばけっこういる。

 

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予想していたよりも町は静かである。

あれ、おかしいぞ、もしかして広島市民にとってCS突破ってそんなに大事ではないのか?

そんな疑問を抱きつつも、その辺の居酒屋に入り串カツを食する。店内は広島カープファンで溢れていて今日の試合のVTRを眺めていたり、公職選挙法に抵触しない方のテレンスリーみたいなオッサンのカープギャグを聞いたりと盛り上がったが、なんだか思ったより熱狂していない。

そこそこ飲んで居酒屋を出る。2軒目に行こうかとも考えたが、なんとなく意気消沈してしまい、ホテルに帰ろうと本通りを歩いていたその時だった。

 

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どこからともなく集まりだすカープファン。

広島パルコ前の人通りの多い場所で便乗してカープグッズを販売しており、それに引き寄せられる形でカープファンが集いだした。

 

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最初は輪になって応援歌を歌っているだけだったが

 

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突如として真ん中あたりにいる人を胴上げし始める。リーグ優勝の時と異なり、本日の試合では選手たちの胴上げがなかった。胴上げが見たかったファンの気持ちの表れかもしれない。

流れとしては、胴上げされたい人が真ん中に立つと、その人が来ているユニフォームの選手の応援歌を歌う、それから胴上げ、というスタイルだった。延々とそれが続く、徐々に集まる人も増えていく。

輪の中心で胴上げなどをしているファンは比較的若い感じの血気盛んなファンである。年季の入った年配のオールドファン(ユニフォームがかなり色褪せていて選手の名前も古い)は、そのはしゃぐ若いファンを少し遠巻きに見て嬉しそうにしていた。図にするとこんな感じ。

 

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しばらく騒ぐと、さすがに中心の若者もはしゃぎすぎて疲れてくる。応援歌が途切れ、ハァハァと息を切らして、そろそろこの熱狂も終わりのような雰囲気が漂ってくると

 

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オールドファンがそれは許さんと言わんばかりに応援歌の前奏を歌いだす。音楽が鳴ればダンサーは踊らなくてはならない。舞子は舞わねばならない。ロック歌手はロックに生きなければならない。それと同じで応援歌が鳴ればはしゃがないわけにはいかない。

 

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それでもやっぱり疲れてくるので若者が息を切らし、終わりの雰囲気が近づいてくると

 

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オールドファンがそれを許さない。

 

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こんなことが延々と1時間くらい続き、若者は完全に死に体、オールドファンも疲れが見えてきた。さすがに熱狂も終わりだろうと考えていると

プアァァーーー

 

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ラッパで応援歌を吹き出す人まで登場。野球ファンにとってラッパとは麻薬みたいなもので、ハァハァと死に体になっていた若者やオールドファンもムクムクと起き上がり始めた。まるでハーメルンの笛吹き男のようだ。

ゾンビのように復活したファンたちだが、

「わたしも胴上げしてぇ~~」

とすごいデブな女の人が輪の中心にやってきたときは

「え、それはちょっと」

という顔をしていたが、みんなでなんとか協力して胴上げしていた。

延々とラッパ付きで応援歌を歌い胴上げする、という訳のわからないことを繰り返していると、本人たちも訳が分からなくなってくるみたいで、この騒動で誰かが落としたであろうスマホを一人の男が拾い上げた。

「落とし物!落とし物!」

なぜか落とし物の応援歌が始まる。そしてスマホが胴上げだ。

「あ、それ俺の!」

持ち主が見つかる。なぜか持ち主が胴上げされていた。訳わからない。

 

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そこに今日の対戦相手であるDeNAファンが乱入してきた。これはまさか乱闘!? それともラップバトル!? 僕のイメージとしては横浜の人は四六時中ラップバトルをしている。いよいよ始まってしまうのか、と戦々恐々としていると

 

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なぜかDeNAファンも胴上げ。ソフトバンクショップ前で広島カープファンに胴上げされるDeNAファン、という精神鑑定の設問に出てきそうな訳の分からない状態に。

「今年のカープ強すぎっすわ、でも来年は勝たせてもらう」

「いい試合だった」

「来年もCSファイナルでやろうぜ」

広島カープファンとDeNAファンが健闘を称えあう場面も。そして広島カープファン全員でDeNA式応援と筒香の応援歌を歌う。たぶんみんなDeNA式応援を一回やってみたかったに違いない。

熱狂は収まらず、そろそろ危険な状態なんじゃないかと思い始めたころ、ついに2名の警官が拡声機片手にやってきた。

 

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「嬉しいのは分かりますが、大きな声をあげないでください。静かに喜んでください」

警官の表情は満面の笑みで、どうせ言っても無駄だろうな、と完全に分かっている感じだった。それでも人垣をかき分けて胴上げの中心にいき、静かに喜ぶように注意する。ついに公権力の介入だ。これで宴も終わりかと思われた時だった。

「お巡りさん! お巡りさん!」

なぜかお巡りさんコールが沸き起こる。

そして警官まで胴上げされる始末。これ完全に公務執行妨害だろ。広島カープファン、ウカレポンチになりすぎ。

 

 

 

 

carp

 

 

クリップボード01

 

「POLICE」の文字が光る。

さすがにそろそろ将棋倒し暴徒鎮圧など様々な要因で危険と判断し、この場を離脱して、酒を飲みにいった。

広島という街は広島カープさえ強ければ幸せな町である。完全に浮かれているこの真っ赤な街はそれだけで嬉しい気持ちにさせてくれる。遠出をしてその街の熱狂を味わう、そうすると本質が見えてくるのかもしれない。

 

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勝利の美酒に酔いすぎて潰れる著者(20年来の広島ファン)

この夜、赤く染まった広島の街は確かに幸せに包まれていた。

そして日本シリーズも頑張れ! カープ!(記事を書いた時は日本シリーズもカープが勝つと確信していましたが、惨敗しました)

 

文・pato(ブログ:多目的トイレ

撮影・super_star_hull

\ しっかり取材に行く旅メディア /

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