【チェジュ島一周】48時間の旅におっさんが一人自転車でチャレンジしてきた_PR
ライターのpatoさんに、韓国チェジュ島の一周旅行に行ってもらいました。(読了目安 : 30分)
3日目 8:00 (残り時間 7時間00分)
もしかしたら、このホテルの名前であるサンライズホテルは、綺麗な朝日が見られることからつけられたのかもしれない。
この手のホテルにしては似つかわしくないくらいに大きな窓から入り込む朝日は眩しいものだった。その先には、変わった形の山が見える。おそらく、あれが世界遺産、城山日出峰であろう。その名前の通り、日の出の光を浴びて燦然と輝いている。今日はあそこに行くところから旅が始まりそうだ。
身支度をしてホテルを出ると、けっこうな雨だった。なんで? さっきまでめちゃくちゃ朝日輝かしい晴れだったじゃん。
海上に浮かぶ島であるチェジュ島はかなり天気が変わりやすい。ここまで雨が来なかったのは幸運なのかもしれないが、いまはけっこうな雨である。雨具を買おうにも、お金がないし、そもそもどこで売っているのか分からない。たぶん、コンビニは食料品中心なので売っていないと思う。
まあ、考えてもどうにもならないので、雨の中、突き進むことにした。
雨は冷たく、容赦なく体を濡らし体温を奪っていく。けれども希望もあって、その先には晴れ間が見える。チェジュ島の天気は変わりやすいということは、コロッと晴れに転ずることもあるわけだ。それに期待をかけて突き進むしかない。
綺麗な花畑が見える頃にはちょっと雨がやんできた。
どうやら恋人たちのスポットみたいなものを意識して花畑を作っているようだ。ハートとかありやがる。
そんな恋の聖地を横目に日出峰を目指す。
それにしても、この日出峰もかなり変わった形の山だ。さすが世界自然遺産になるだけはある。
遅れてやってきた筋肉痛と、そもそもの酷使でやってきた痛みとか入り混じって全然自転車を漕げない。漕いでも漕いでも世界遺産が近づいてこない。完全に死にそうだ。なんで外国でこんなことしてんだ、僕。
死にものぐるいでなんとか到着した。看板を見てわかった。ははーん、この山はこういうお皿みたいな形してるのね。これ何かの写真で見たことあるわ。
8:19 第七チェックポイント城山日出峰(ソンサンイルチュルボン)
走行距離 161.2 km
残り6時間41分
残り距離 72.8 km
所持金 ₩5,500
やはり世界自然遺産ということは、チェジュ島で一番力が入っている名所ということではないだろうか。どれどれ、どんな感じですかなと自転車を降りて見に行った。
たぶんユネスコ世界遺産とか書いてあるんだろう。
どうやら登れるらしい。そうか、登れるのか。登れるのか。どうせなら入山禁止とかにしてくれてたらよかったのに、登れるなら登らなければならない。あの皿みたいな形状した場所を観てみたいしな。
チケットを買って登ることにした。チケット代は₩2,000(約200円)で、なんとか持っている金で足りた。
現在の所持金 ₩5,500→₩3,500
最初は緩やかな傾斜が続く。ただ、石畳が雨で滑ってけっこう歩きにくかった。ずっとこんな傾斜だったらいいのになあと思いながら歩いていたのだけど、もちろん山の形状から言ってそんなわけはなく、すぐに途方もない傾斜へと変わっていった。
まだそんなに登っていないのにそこから見える景色はなかなか絶景で、さっき通ってきた道が天橋立みたいな感じになってるんだってわかった。何がどうなったらこんな地形が出来上がるんだろうか。
ひい、足が死ぬ。ここ二日の疲労が完全に蓄積していて、もう全然動かない。おまけに息切れも酷い。
ただ、足の疲労も息切れも、そこまで急がすゆっくり登っていけばずいぶんとマシになる。時間制限を考えてかなり急ぎ足で登っていたが、ゆっくり登ることにしよう。
こういった直立した岩とかを横目に見ながらゆっくりと登っていく。このペースなら大丈夫、いける。ゆっくり行けばいける。そう自分に言い聞かせながらて歩いていると途方もない事態が巻き起こった。
キエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
とんでもない断末魔みたいな奇声が下の方から聴こえてくる。声の感じからして何か得体の知れない存在が迫ってきているとわかった。ただ、自分より下は木々に囲まれていてその姿は見えない。
キエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
奇声がとんでもない勢いで迫ってくる。やだ、怖い。
迫りくるその“何か”から逃げようと急いで登る。足が痛い。肺もパンクしそうだ。急げ。逃げろ。なんかホラー映画みたい。
それでも迫りくる奇声の勢いが凄まじい。ついには追いつかれてしまった。振り返ると、ジンオウガみたいなババアが凄まじい勢いで奇声を上げながら登ってきた。
「殺される!」
なぜそう思ったのかは分からないが、そう思った。逃げなければ殺される。必死でジンオウガから逃げた。足が痛みを訴える。肺が限界だと伝えてくる。呼吸が整わない。それでも必死でジンオウガから逃げた。
けれども、ついに追いつかれてしまった。殺される! と思ったがそんなことはなく、ジンオウガは奇声にドップラー効果を効かせて追い抜いていった。単に奇声を上げながら猛ダッシュで山登りするババアだったみたいだ。なんでそんなことをしているのか知らないけど。
呼吸を整え、変わった形の岩を眺めながら先へと進む。
そしてついに頂上へと到達した。
景色もかなりの絶景である。ジンオウガのおかげでかなり速いペースで登ることができた。いよいよあの皿みたいな形状の頂上を見ることができる。頂上だ! こい皿!
あれ、あまり皿感がない。
なんというか、けっこう壮大すぎて、実際に上まで登ってみるとそこまで皿感は感じられない。目で見ると皿感はあるんだけど、画像に収めるとその皿感が失われてしまう。もっと離れて撮影しないとだめなんだ、これ。まあ、目で感じることができたのだから良しとしよう。
この辺がちょっと皿感ある画像が撮れているかもしれない。皿感のある頂上も良いが、そこから見える景色もなかなかの絶景だ。
世界遺産を堪能したし、急いで下山することにする。登山道とは別に下山道があるのでそこを一気に駆け下りていく。急がないと間に合わなくなる。
完全に垂直に切り立っている。
登りはあんなに苦労したのに、下りはらくちんで、あっという間に降りてきてしまった。
ここ日出峰周辺では海女さんが実演してくれるショーや、船に乗ったりもできるようだ。
いやーけっこう足の疲労がやばいことになったけど登れてよかったわー、と世界遺産をあとにすることにした。急いで進まないと本当に帰りの飛行機に間に合わなくなる。
ふもとの駐車場ではオレンジジュースを販売する店があった。チェジュ島の名産であるミカンを絞ったものだろう。ジンオウガのせいでかなり喉が渇いたので、1本買うことにした。どうせ₩2,000(約200円)くらいだろうと注文したら、₩4,000だ、と言われた。高い。
現在の所持金 ₩3,500
金が足りない。
₩3,500しかないけど、今登ってきて死ぬほど喉が渇いている、それにまだチェジュ島のミカンを味わっていない、みたいなことを熱烈にアピールしたら、₩3,500にまけてくれた。
うめえ、死ぬほどうめえ。五臓六腑に染み渡るとはまさにこのこと。
現在の所持金 ₩3,500→₩0
ついに使い切ってしまったが、まあ、あとは空港まで行くだけである。そこまで金を使うこともないだろう。気にせず進んでいこう。
第八チェックポイントはウォルジョンリ海水浴場らしい。エメラルドグリーンの海、白い砂浜、インスタ映えするかわいい椅子、おしゃれなカフェ、とチェジュ島を訪れる女の子に人気のスポットらしい。この調子で一気に攻め入ってしまおう。
そういえばいつの間にか雨があがっていた。やはりチェジュ島の天気は移ろいやすい。また振り出してくるなよと天に祈りながら自転車を走らせた。
また青いラインを頼りに突き進んでいく。
しばらく走ると完全に空が晴れ渡ってきた。こうなってくると今度は日差しがきつい。
海沿いに伸びる道路を突き進んでいく。おしゃれなペンションとかが沢山あるエリアだ。
あっという間に進んでいき、さっきの山があんなに遠くに見えるようになった。
それにしても、もう自転車にのって3日目である。完全に体中が痛い。できることならもっと陽気な自転車に乗りたいと考え始めた。ただ、僕の言う陽気な自転車ってやつを文字で説明することは難しい。どうしたものかな、と考えているとまさに僕の言いたい陽気な自転車のイラストが登場してきた。
これこれこれ。こういう陽気な自転車なら、疲れることなく進んでいけるのではないか、そんなことを考えていた。実際にはこの陽気な自転車の方が絶対に体への負担が大きいと思うけど、そんなことも分からないくらいに追い込まれつつあった。
この辺一帯はもう島の北側になっているので、南側と違って険しい断崖絶壁ではない。というか、さきほどの日出峰もそうだったし、この島全体もそうなのだけど、南側が断崖絶壁になる傾向がある。もしかしたら北側は海流とか風の関係で波の浸食によって削られるのかもしれない。
綺麗な海岸が多く分布する島の北側は、カフェやペンションが多い。僕の目の前にもオシャレなペンションが姿を現した。
これは絶対に怒られるやつでしょ。
やはり北側に来ると砂浜の海岸が増えてくる。
完全に空が晴れ渡ってきた。たぶんきっと、もう少しで次のチェックポイントだ。
あまり変わり映えのしない海沿いの景色を進んでいくと、前方にマリンスポーツなどをやる感じのショップが見えてきた。たぶん雰囲気的に海の家みたいなものだと思う。
これ完全に竹野内豊とか反町隆史とか広末涼子出てくるやつでしょ。そんな雰囲気がプンプンしてくる。
なんとなくトレンディな海の家を見ながらさらに先に進む。そうしていると、衝撃的な店が目の前に現れた。
あああああああ、この店は!
陽気な自転車をレンタルしてる!!!!
完全に念願叶っているのでレンタルしようと思ったのですが、まあ、絶対にこの陽気な自転車のほうが疲れるし、今の自転車を乗り捨てるわけにもいかないし、金もないしで、諦めました。
進んでいくと、どんどん浅瀬の海になっていって、海の透明度が手に取るように分かるようになってきました。本当にめちゃくちゃ綺麗な海だな。
おっさんが膝まで海に浸かって青春していた。なにやってんだろ、この人。
さらに進んでいくと、ちょっとした観光施設みたいなものが現れてきた。
遠目でも分かる。また変な人形を置いとるな!
ほうら、置いてた。なんか海女さんの人形だった。
どうやらここは海女さんとかがとった海産物を直売する場所のようなのだけど、もう営業が終わったのか、それとも休みだったのか、ガランとしていた。活気ある感じで販売しているところを見たかったが仕方がない。先へ進むとしよう。
ここが落ち着くのか、めちゃくちゃ海鳥がいる場所があった。
しばらく進んでいくと、なにやら潜水用の服を着ている人が目の前に現れてきた。もしかして海女さんじゃない? とちょっと興奮した。ああいうウェットスーツは海女さんしかありえんだろ、すげえラッキーじゃん、海女さんが見られるなんて! と近づいた。
海女さんではなく、何らかの工事をしているおっさんたちだった。
島の北側はやはり風が強い。巨大な風力発電施設がかなりの数あるのだ。やはり自然エネルギーに対する意識がかなり高いと感じた。
目の前にエメラルドグリーンの海と、白い砂浜が見えてきた。完全に第八チェックポイント「ウォルジョンリ海水浴場」だ。
11:01 第八チェックポイント ウォルジョンリ海水浴場
走行距離 196.0 km
残り時間 3時間59分
残り距離 38.0 km
所持金 ₩0
インスタ映えで女の子に大人気の前評判通り、おしゃれカフェが密集する地域は女の子だらけだった。
たとえば、こうやって恋人同士で撮影するような椅子も置かれていたりする。チェジュ島は愛の島なのである。決して無一文のおっさんが汗だくになって自転車で爆走する島ではないのだ。
こうやって女の子がインスタに上げる写真を撮っているのである。
みんな思い思いのインスタ映えを撮影する。そんな場所だ。ちょっと汗だくの自転車おっさんは場違いな感じがしたな。
さて、時間もないし金もないので急いで先に進む。次の第九チェックポイントも同じく海水浴場で、「ハムドッ海水浴場」らしい。解説によると済州市からほど近い場所にある海水浴場、とある。済州市はゴールがある場所なので、いよいよこの旅も終盤ということだ。
また風力発電の風車たちを眺めながら海沿いを進んでいく。
この辺りから向かい風が尋常じゃないレベルで強くなってしまい、がくっとペースが落ちた。いくら漕いでも全然進まないのである。はたして間に合うのか。ちょっと不安になってきた。
何の予告もなくただの空き地に馬がいたりする。エメラルドグリーンの海を背にした馬はなんかかっこいい。
しばらく走ると、すぐに海水浴場に到着した。
第九チェックポイントだ、ついたー! と思ったがどうやら違う海水浴場らしい。チェックポイントはもっと先みたいだ。ぬか喜びさせやがって。
興奮気味に自転車を降りたのに勘違いと知ってけっこう恥ずかしかった。
進んでいくと、海岸の景色が終わり、どんどんと風景が都市部のそれに変わっていった。きっと、チェジュ島で最も栄えている済州市に近づいているのだろう。ハムドッ海水浴場まではあと6.8 kmらしい。
雲行きが怪しくなってきた。実は何回か雨が降ったり止んだりを繰り返していて、その度に体が濡れたり乾いたりを繰り返していた。本当にチェジュ島の天気は移ろいやすい。ただ、そろそろ本格的に降ってきそうな気配がある。頼む、ゴールするまで降らないでくれ。
ついに道路標識に、島の中心地である「済州 jeju」の表記が見られるようになってきた。ゴールは近い。もう少しだぞ!
ついた。第九チェックポイント、ハムドッ海水浴場だ。
12:19 第九チェックポイント ハムドッ海水浴場
走行距離 212.2 km
残り時間 1時間41分
残り距離 21.8km
所持金 ₩0
ただ、この場所を吟味している時間も、休憩している時間もない。急がないと間に合わない。チェジュ島の最終チェックポイント「龍頭岩(ヨンドゥアム)」を目指せ。一刻の猶予もないぞ。急げ!
と急いでるところを申し訳ないんだけど、完全に道を間違えたみたいで、青いラインはないわ、地元の人しか通らないわ、みたいな場所を通らされて遠回りする羽目になってしまった。
それでもなんとか青いラインの道路に復帰し、根性で先に進んでいく。もう体全部が痛くて限界、足はもう他人のヤツ、それもけっこうソリの合わないヤツのものがついてるみたいな状態になってるけど、ここで踏ん張らないとマジで帰りの飛行機に乗れなくなるので、死ぬ気で漕いだ。
随分と都市部になってきた。最終チェックポイントは近い!
うおおおおおおお、いそげええええええええ。足がちぎれるううううううううう。
14:50 第十チェックポイント 龍頭岩(ヨンドゥアム)
走行距離 232.5 km
残り時間 0時間10分
残り距離 1.5 km
所持金 ₩0
海に突き出た岩が龍の頭に似ているということでこの名前がついた。かなり焦って探したのだけど、どれが龍の頭のような岩なのかもう探索する時間もなかった。
たぶんこれだ、これ、これが龍の頭だ。龍頭岩だ。それでいいだろ。
いそげえええええ。
あと7分、絶対に間に合わせる! ここ最終チェックポイントからゴールはめちゃくちゃ近い!
うおおおおおおおお!
飛行機がめちゃくちゃ真上を通過した。完全に空港が間近だ。ゴールは近い!
ここ見覚えがある。完全にスタートした場所だ。やった! 島を一周してきた! ゴールだ!
14:58 ゴール
走行距離 234 km
残り 0時間2分
残り距離 0km
所持金 ₩0
ということで47時間58分という、わざとやったんじゃないかというレベルのギリギリさで234 kmを走破できた。完全に体がバラバラになりそうな状態だけど、実はこれで終わりではなくて、自転車を返却するために現地エージェントが待つ空港まで移動しなくてはならない。たぶん1キロくらいある。ゆっくり休みたいけど急がないと飛行機に乗れなくなってしまう。
なんとか空港に到着し、現地エージェントに自転車を返却する。
なんとか飛行機にも間に合った。死ぬかと思った。搭乗手続きの列に並んでいるだけなのに滝のように汗が噴き出ていて恥ずかしかった。
しっかし、到着してすぐに自転車に乗せられ、ゴールしてすぐに飛行機に乗せられるんだから、本当に自転車に乗りに来ただけだったな。
地獄のようだったこの旅の記録はこちら。
所要時間 47時間58分
走行距離 234 km
所持金 ₩0(ただし非常用の金を₩56,000使用)
チェジュ島は場所によって様々な表情を見せる。
時には平坦な道が続き、時には美しい海岸線が出迎えてくれる。かと思ったら激しいアップダウンの道があったりもする。切り立った断崖絶壁があったかと思うと、鋭利な岩場が延々と続くこともある。晴れていたかと思うと激しく雨が降り、強烈な向かい風が吹くこともある。全く異なるそれらの表情は、まるで感情を剥き出しにした人間のようだ。
チェジュ島は愛の島なのである。
誰かが誰かを愛する時、平坦な道ばかりではないだろう。時には切り立った崖があるかもしれない。喜ぶこともあれば絶望することもあるかもしれない。それこそが苦しみであり、喜びであり、醍醐味なのである。
様々な表情を見せる一筋縄ではいかないこの島を愛し、恋をしに来てはどうだろうか。きっとそこには新たな胸の高鳴りがあるはずだ。
チェジュ島は愛の島なのである。決して無一文の小汚いおっさんが汗だくになって自転車で爆走する島ではないのだ。
おわり
【11/30 編集部追記】
今回patoさんが訪れた場所のほかにも、チェジュ島には素晴らしいスポットがたくさんあります。
編集部おすすめの観光スポットやグルメ情報をこちらの記事でまとめましたので、これから訪れる方はぜひこちらの記事を参考にしてください!
【日本から一番近い海外リゾート】チェジュ島(済州島)のおすすめ観光地をご紹介!
https://travel.spot-app.jp/jeju_travel/