【長崎】文化遺産を巡る!九州在住ライターが教える佐世保・長崎市、定番観光ツアー
今回の記事では長崎の観光の中心でもある長崎市、佐世保市を中心とした観光コースをご紹介。軍港としての長い歴史を持つ佐世保市では「軍港クルーズ」や佐世保バーガー、長崎市では原爆の歴史を学ぶスポットや、世界的に有名な廃墟「軍艦島(端島)」などをめぐります。2泊3日のモデルプラン、ひとり旅や家族での旅行の際の参考にしてみてください!
はじめまして!福岡在住でライターをしている赤坂と申します。
東京から移住してちょうど5年経ったところです。
今回のテーマは「長崎県」。
長崎観光の有名どころといえば、皆様がイメージするのは恐らくハウステンボスですが、他にはどんなところがあるの?と思う方も多いかと思います。
街のアチコチに異国情緒が漂う雰囲気も長崎の大きな魅力なんですよ。
ということで、今回の記事では、あえてハウステンボス以外の長崎の魅力をお伝えいたします!
3日間のモデルプランとしてお伝えしておりますが、気になる場所だけピックアップして頂ければ幸いです。
目次
【1日目】佐世保で軍港クルーズと九十九島を一望するバスツアー
佐世保市といえば、自分にとっては「造船」と「自然」というイメージの町なのです!
そこで、その2つを満喫できる観光コースをご紹介したいと思います。
軍港クルーズ
佐世保市は造船の街です。
古くから米軍や海上自衛隊の軍港としての機能を持つ佐世保港が、佐世保の雰囲気を決定づけているのではないでしょうか。
そこで、軍港や造船の歴史を感じられる観光コースはないか? と探したところ今回の軍港クルーズを発見したわけです。
迷わず今回のコースに盛り込みたくなり申込みました。
※ なお、電話での事前予約が必要です(https://www.sasebo99.com/tour/?action=view&id=74)
取材当日、JR佐世保駅の観光情報センターへ行き、予約している旨を伝えてチケットを購入。
料金は大人2,000円。出発は11:30頃なので、11時にはチケットを購入しておいたほうが良いでしょう。
チケットを受け取ったら、JR佐世保駅の前の「新みなとターミナル」へ向かいましょう。
今回の軍港クルーズは波羅門観光の船に乗ります。
ちょっと早めに到着して並んでおいて良い席を取りましょうね。
いよいよ出港!取材日は満席搭乗でした。
早めに並んでおいて良かった。
最初に見えてくるのが、「米海軍佐世保指令基地」です。
いくつか旗が立っているのが見えますが、右から日本国、アメリカ合衆国、そして青いのが国際連合、いわゆる「国連」の旗で、様々な国の艦艇が入港してくることを物語っています。
アメリカ国旗の下に黒い旗が見えますが、戦没者追悼のものだとか。
ここ佐世保港にはアメリカ海軍で最大規模を誇る第7艦隊が配備されているんですって。
さらに船は進んでいき、イージス艦「こんごう」と、奥側の護衛艦「いせ」が見えてきました。
イージス艦の役割は音速よりも速い速度で近づいてくるミサイルや戦闘機を迎撃すること。レーダーの観測範囲は佐世保からだと大阪府あたりまでをカバーするとか。ものすごく広い……。
「佐世保重工業株式会社(通称:SSK)」が見えてきました。
弓張岳をバックに大型のジャイアントカンチレバークレーンがドンと構えています。これは後ほどのバスツアーで至近距離から見学することとなりますので、お楽しみに。
建造中の巨大なタンカーも見えていますね。
色とりどりのクレーン。
SSKは大小合わせて7つのドックがある広大な造船所です。第4ドックはなんと長さ400m!
かつては大日本帝国海軍の戦艦も多く作られており、戦艦「武蔵」の艤装(ぎそう:艦船に様々な工事を施すこと)が行われていたとか。どんな風景だったんでしょうね。
「アメリカ海軍赤崎燃料補給所」には530万バーレル(850万リットル)もの貯蔵量……、といってもピンときませんよね。
アメリカ軍の燃料を貯蔵している施設の中でも世界で3番めに大きいそうです。日本の長崎県にこんな施設があるなんてご存知したか?
外海と行き来するためには、わずか850mのすき間(写真中央)を通らねばなりません。
入り組んだリアス式海岸となっている佐世保湾は、戦艦の隠し場所としても最適な場所であり、また十分な深さもあったことから、日清・日露・太平洋戦争と進んでいくにしたがい、軍港としての重要度を増していきました。
またしばらく進んでいくうちに、陸の向こうに煙突のような構造物が見えてきます。「針尾送信所」という巨大な3本の塔が立っています(写真では2本しか確認できず)。大正11年に、4年かかって完成したコンクリート製の長波電波塔ですが、その大きさは135mほどで、自立している電波塔として高さ・古さともに日本一を誇ります。位置関係はそれぞれ300m間隔の正三角形となっています。
「針尾送信所」は、太平洋戦争の開戦を告げる暗号「ニイタカヤマノボレ一二◯八」が発信されたことで知られていますが、諸説あって別の基地から打電されたものを中継し、別の部隊に再発信したとも。この暗号は学校の授業で習いましたよね? 日本海軍の鎮守府(ちんじゅふ)があった佐世保ならではのエピソードですね。
他にも多くの艦艇を見学しながら折り返し。佐世保港に近づいてきましたが、なにやらアンテナがたくさん立っている施設を発見しました。
こちらは米海軍の前畑弾薬庫。火薬を扱っているので雷を避ける避雷針が立っているのでした。
船着き場まで戻りツアーは終了! 広場からも見えていた多用途支援艦「あまくさ」は、訓練用のイカダなどを積載している艦艇です。
太平洋戦争終結から72年。それ以降、日本が戦火に見舞われることはありませんでしたが、こうして潮風に吹かれながら、これからの平和を考える良い機会となった気がします。今回紹介した船の他にまだまだ多くの艦艇を見学できるコースですので、1時間があっという間でした。
SASEBO軍港クルーズ
- 場所:解散、集合ともに佐世保港
- 料金:2,000円(大人)、1,000円(小学生)
- 運行日:土日祝日(2017年12月30日~2018年2月25日まで冬季運休)
- 電話番号:0956-22-6630(佐世保観光情報センター)
※荒天時は運休の可能性があります
SASEBOクルーズバス海風:うみかぜ
次に選んだのは、巨大な造船所や佐世保の自然を満喫できるバスツアーである「SASEBOクルーズバス海風:うみかぜ」。
コースは、巨大な造船所である「SSK(佐世保重工業)」の正門前や、ドック見学(撮影禁止スポットあり)、弓張岳山頂からの景色を眺めてJR佐世保駅に帰ってくるルート。
この日は13時15分。「海風:うみかぜ号」が到着。軍港クルーズから帰ってきて比較的待ち時間の少ない2便目を予約しておきました。
市を一望する弓張岳の山頂からの帰りには、九十九島をゆく遊覧船や水族館「海きらら」で途中下車も可能なので、一日いっぱい佐世保を堪能したい方はそちらもオススメです。
ちなみにこのバスツアーの料金は大人1,800円。先程の軍港クルーズと合わせると3,800円ですが、同時にチケットを購入すると3,200円となります。2つのツアーを堪能したい人はセット券を購入しましょう。
バスツアーはWeb予約が可能です。今回のように連続で利用する場合は、佐世保駅内の観光情報センターで伝えましょう。
はい、では「海風:うみかぜ号」に乗車し、スタートします。
最初にやってきたのは「佐世保重工業株式会社」の東側の門。
SSKは旧名称「佐世保船舶工業」の頭文字からきています。ライトグリーンの大きなクレーン、見覚えがありますね? そう、先程の軍港クルーズで海上から見えていたジャイアントカンチレバークレーンです。
日本遺産に認定されています。
250tもの重量物を持ち上げることができる力持ち。イギリス製で大正2年に完成しました。もう100年選手ですが、今なお現役だそうです。
次にやってきたのがSSKの北側のバイパス沿い。バイパスの名前は「SSKバイパス」。SSKあっての佐世保ということです。
この先、バスはドックを通り過ぎて海の方に進みます。米軍の建造中の巨大な艦艇のパーツがゴロゴロしているゾーンがあり、こちらは撮影禁止。
例えるならば、建設途中のマンションがバラバラになって、そこらじゅうに転がっているという感じでしょうか。バスの中からでもその迫力に圧倒されます。
そこからバスは最終目的地の弓張岳に。335mの高さにある「弓張岳展望台」に到着しました。
まずは佐世保市内を一望。港と市街地の位置関係が良くわかります。右下がSSK。軍港クルーズでは佐世保港を写真右上の方までいって帰ってきた感じですね。
そして南の市街地方面から西側の展望台へ。水平線ドーン!
これが九十九島ですよ。
あ、九十九島(くじゅうくしまと読みます)の説明をしてなかったですね。
カンタンに説明すると、佐世保氏の西側から北に向かう平戸まで、複雑に入り組んだリアス式海岸と208の島々が組み合わさった「西海国立公園」に指定されたエリアの総称です。
中央より少し右側の水平線の手前に黒島が見えます。
くろしま…くろし…くろす…クロス、十字架?ということで豊臣秀吉が出した禁教令によって、キリシタンが移り住むようになった記録がありますが、その前から黒島と名付けられていたようです。
バスツアーはここで終了。佐世保駅に向かって戻りますが、途中下車の件を覚えてますか?そこに寄ってみましょうね。それでは発車!
ここで、ちょっとおまけ情報。
今回の軍港クルーズやSASEBOクルーズバス「海風:うみかぜ」には、さらにディープな見学地が追加されたプランも用意されています。
一般には立ち入ることができない「海上自衛隊佐世保地方総監部(かつての佐世保鎮守府)」の地下壕や、「海上自衛隊佐世保資料館」を海上自衛隊OBが案内してくれるコース。
朝9時45分集合、昼食付きで16時までタップリ見学ができます。
ただし、あらかじめ日付が決まっている点、さらに最低催行人数20名以上でツアー成立、と諸条件があります。
くわしくはこちらのページで確認してくださいね。
https://www.sasebo99.com/tour/?action=view&id=113
SASEBOクルーズバス海風:うみかぜ
- 場所:解散、集合ともにJR佐世保駅
- 料金:1,800円(大人)、900円(小人)※JR佐世保駅発着の場合
- 運行日:月〜水・金〜日 ※木曜以外の運休日あり
- 電話番号:0956-22-6630(佐世保観光情報センター)
九十九島パールシーリゾート〜九十九島水族館「海きらら」
イルカやカブトガニ、クラゲといった九十九島に棲む生態系が再現されている水族館です。
「九十九島パールシーリゾート」の敷地内にあり、その他にも遊覧船で九十九島をクルージングすることもできます。
もし、軍港クルーズやバスツアーに興味が無くても、朝からパールシーリゾートに来ても良いでしょう。
ここでも丸一日楽しく過ごすこともできます。
「海きらら」から歩いてすぐの場所に遊覧船ターミナルビルがあります。
運航スケジュールは、季節によって変わりますが、最終便が15時ということで、クルージングしたい人は先にこちらに来ると良いでしょう。ここまでのバスも佐世保駅前から運行しています。
小さいお子さんのいる家族連れは、水族館〜遊覧船クルージングという流れもオススメ(赤坂家調べ)です。
それと、水族館と遊覧船の両方を楽しみたい人は、先に購入したチケットを捨てないでくださいね。例えば水族館のチケットを遊覧船の券売所で見せると割引が受けられます。逆も然り。
クルージングの様子も少しだけ紹介しましょう。船内では島々の紹介アナウンスはもちろん、子供向けのクイズもあり、飽きさせない工夫がいっぱいです。
海風にあたりながら穏やかなクルージングは気持ち良い以外の言葉が見つかりません。ライター失格!
こんなところを進んでいきます。気持ち良さしかない。
西海国立公園 九十九島水族館「海きらら」
- 場所:長崎県佐世保市鹿子前町1008(パールシーリゾート内)
- 料金:1,440円(高校生以上)、720円(4歳〜中学生)
- 営業日:年中無休
- 電話番号:0956-28-4187
- Webサイト:http://www.pearlsea.jp/umikirara/
九十九島遊覧船
- 場所:長崎県佐世保市鹿子前町1008(パールシーリゾート内)
- 料金:1,400円(高校生以上)、700円(4歳〜中学生)
- 営業日:年中無休
- 電話番号:0956-28-1999
- Webサイト:http://www.pearlsea.jp/cruising/#
レンタカーを借りている方には
もし、バスツアーじゃなくて家族でドライブ、という人向けに絶景スポットを紹介しておきます。
それは「展海峰」という展望台公園。
ナビに入力する住所は“長崎県佐世保市下船越町399”。
ここからも九十九島の自然を見渡せるスポットとなっています。弓張岳に登らなくても、ここで絶景が見られます。
弓張岳の反対側というか南から北側を見ている感じですね。
こうした入り組んだ地形を展望公園から見下ろすと、スーッとストレスが抜けていく気がしませんか?
ということで、初日は2つのクルーズに参加してみました。
名物グルメをランチで食べようとすると、ちょっとせわしない感じになるかもしれませんが、佐世保駅に戻ってきてからでも時間は十分あると思います。
レモンステーキ、佐世保バーガーも堪能
初日の最後になりますが、佐世保名物のレモンステーキと佐世保バーガーを味わってきましたのでご紹介しましょう。
まずはレモンステーキ。
佐世保市街からちょっと港側に歩いて、静かなエリアにあるお店「カフェドットファイブ」さんにきました。
レモンステーキ単品(1,300円/税込)。
ランチの時間帯はセットメニューもあります。表面がしっかり焼かれた1cm厚ほどの赤身肉にレモンソースがたっぷりかけられたステーキです。
そこに醤油ベースのソースを追加すると、なぜかかレモンの爽やかさが引き立ち、不思議な感覚です。醤油とレモン、合うんですね。
CAFE.5(カフェドットファイブ)
- 住所:長崎県佐世保市万津町7-6
- TEL.0956-22-8505
- Webサイト:http://www.dot-sasebo.com/
さて、続いて訪れたのは佐世保バーガー「ハンバーガーショップヒカリ」さん。
こちらは矢岳本店(佐世保市矢岳町1-1)になります。
軍港クルーズのスタート地点となった「させぼ五番館」にもあるようです。軍港クルーズの前にサッと食べるのもアリですね。
エッグベーコンバーガー(530円)を注文しました。
小ぶりなバンズにレタス、トマト、玉ねぎ、ベーコン、エッグ、パテの順で挟まれたバーガー。ベーコンとパテ、その間にあるエッグから肉々しさと甘さを感じます。それらをまとめているオリジナルのマヨネーズ、なんともまろやかな風味で満足度の高いハンバーガーでありました。
作りおきしないので注文から数分待ちます。店頭のベンチでも食べることが可能。ちょっと入りづらいですが敷地内に駐車スペースもあります。週末は混雑しているので、正面のコインパーキングに停めて道路を渡ってきましょうね。
ハンバーガーショップヒカリ
- 場所:佐世保市矢岳町1-1
- 電話番号:0956-25-6685
- 定休日:毎週水曜日、年末年始、お盆
- Webサイト:http://hikari-burger.com/
こんなところで佐世保編は終了。
軍港として発展してきた歴史のある街ですが、豊かな自然を満喫しながら平和についてボーっと考えながら海風にあたってみるのも良いのではないでしょうか。
そうそう、佐世保バーガーは市内に多くの店舗があります。観光案内所に「佐世保バーガーマップ」も置いてありますので、それを片手に佐世保の街を歩くのも楽しいと思います。
長崎市で「世界新三大夜景」のひとつ、稲佐山の夜景を見る
2日目以降は長崎市内を紹介ということで、佐世保から移動開始。
夕方に市内に到着したので夜景を見にいくことにしました。
長崎の夜景といえば「稲佐山」。
ここは「世界新三大夜景」のうちの一つ、ということで俄然高まる期待感。
今回は展望台の敷地内にある有料駐車場に停めました(500台分の無料駐車場もあります)。
雰囲気のある照明
はいドーン!
明るい時間は、北に五島列島、東に雲仙、南には天草(熊本県)まで見えるとか。
昼に来てみるのも良いですね。
ロープウェイで登ることも可能ですが、大人は1,230円で麓の駅と往復できます。
混雑時は自動車かロープウェイか悩むところです。道中の景色を楽しめるのはロープウェイですね。
【2日目】 長崎市内〜平和公園・原爆資料館〜出島など
長崎市内は2日間で巡るプランを組んでみました。
初日は、長崎市中心部の少し北側にある、平和公園・原爆資料館などを巡り、そこから途中寄り道しつつ最後に出島、という流れです。
太平洋戦争で、広島の次に原爆を投下された長崎市。
長崎がどのような惨状だったのかということをキチンと知りたかったというのが、このプランの理由のひとつ。
こうした歴史を大人になってから改めてジックリ学習すること、そして自分の子どもたちに伝えていくことが大事だと思います。さらに繰り返し確認し続けることも大事ではないかと。
平和公園
自分にとっては長崎といえば「平和祈念像」のイメージが強かったんです。
ということで初日の目的地を「平和公園」に選んでみました。
場所ですが、JR長崎駅を起点とする路面電車の「長崎電気軌道」を使ってみると、「長崎駅前」から8駅すすんだ「松山町駅」まで乗車すれば平和公園に着きます。
この長崎電気軌道には「長電アプリ」というスマホアプリが用意されており、キャリア決済に対応している端末を使っていれば、1日乗り放題500円で利用することができます。車移動じゃない人にはオススメ。
エスカレーターを登り奥に進むと「平和の泉」が現れます。
メチャクチャに破壊された街の中で水を求めながら亡くなっていった犠牲者の冥福を祈るために作られました。
その奥に「平和祈念像」が見えてきました。
昭和30年に完成した「平和祈念像」。
像自体の高さは9.7m、重さ30トンの青銅製。右手は原爆、左手は平和、顔の表情は戦争犠牲者の冥福を祈る、とあります。
平和祈念像のある広場から南の方角に振り返り、視線を上に向けてみましょう。
この付近、上空500mで原子爆弾が爆発しました。次の立ち寄り場所でもある「爆心地公園」には原子爆弾落下中心碑が建てられています。
平和の泉の他にも、平和祈念像の足元にも静かに水が流れていて、不思議と穏やかな気持ちになりました。
爆心地公園
平和公園のある交差点に戻ってくると、反対側にある「爆心地公園」。中に進んでみましょう。
「原子爆弾落下中心地碑」。
この碑が指している上空500mで原子爆弾が爆発し、半径数kmに渡るすべてを消し去りました。
移築された浦上天主堂の遺壁。
公園の脇を流れる「下の川」に降りられる場所があり、当時の地層が見られる展示スペースが設けられています。
親水護岸(しんすいごがん〜人が水辺で楽しめるように配慮された護岸)も。
これは「被爆50周年記念事業碑」。
長崎原爆資料館
爆心地公園を反対側に抜けると、「原爆資料館」に続く階段が見えてきます。これまでの3箇所は、すべてセットで見学しましょう。より理解を深めるために。北国出身の自分にとって子供の頃は遠くて来れなかったところです。
階段を登るとエントランスが見えてきました。この途中にも、さまざまなモニュメントや彫刻があり、戦争の悲惨さを改めて感じとることができます。
地下2階の受付に到着。観覧料は大人200円。
入ってすぐに展示されている柱時計の針は、1945年8月9日の11時2分を指したまま。長崎市内の上空で原子爆弾が爆発した時刻で止まっています。
アメリカ軍が撮影した、原爆投下の様子。
爆発のあとキノコ雲が大きくなっていく様子が記録されている。ループ再生されるその様子を、何度も何度も観てしばらく止まってしまいました。
原爆投下直後の長崎の街を再現した常設エリア。
爆心地から数百メートル離れた石垣も吹っ飛ぶほどの爆風があり、1km離れた場所でも1800℃もの熱風が襲ってきたそうです。
そして建物の跡形は残らず、4km離れたところでも熱傷を負ったといいます。威力の凄まじさがわかりますね。
長崎の街を再現したエリアを抜けると、被害状況を説明する展示物が多くある場所に出てきます。
プロジェションマッピングを用いた、原子爆弾の被害の拡がり方や、
ファットマンとよばれていた原子爆弾の原寸大模型
熱で変形したガラス。
熱で変形した線路など。
原子爆弾が及ぼす影響を、図で紹介しています。
放射線の性質。
それから、当時生き延びた人が語り継いできた手記が多く残されており、凄惨を極めた長崎の街の惨状がよくわかりました。
上の壁に小さいタイル状のパネルの集合体がありますが、核実験の回数を表しています。
ここまで紹介した3つの施設は3〜4時間あれば回れると思いますが、大人の方が時間がかかるかもしれませんね。
長崎原爆資料館
- 場所:長崎市平野町7番8号
- 休館日:12月29日~12月31日
- 営業時間:8:30~18:30(5月~8月)、8:30~20:00(8月7日~9日)、8:30~17:30(そのほかの時期/入館は閉館30分前まで)
- 電話番号:095-844-1231
- 料金:200円(一般)、100円(小中高生)
- Webサイト:http://nagasakipeace.jp/japanese/abm.html
国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館
原爆関連の施設をもう一つご紹介させてください。
ここは、原子爆弾の犠牲者の名前が銘記されている祈念施設です。写真のように水盤を回りながら階下に降りていく施設となっています。時間がある人は立ち寄ってみていただきたいです。
ここには犠牲となった方の名前と遺影が遺族によって収められています。一般の人も入場可能となっています。
屋内には厳かな雰囲気の追悼空間が設けられています。
国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館
場所:長崎市平野町7番8号
開館時間:8:30〜18:30(5月1日〜8月31日)、8:30〜20:00(8月7日〜9日)、8:30~17:30(そのほか)
電話番号:095-814-0055
休館日:12月29日~31日
入館料:無料
Webサイト:http://www.peace-nagasaki.go.jp/index.html
眼鏡橋で「ちりんちりんあいす」
原爆資料館をあとにして、眼鏡橋にやってきました。
石造りのアーチ橋がなんとも趣がありますよね。取材時は様々なあじさいが植えられている「ながさき紫陽花まつり」が行われていました。
あじさいって、こんなに種類があるの? と驚きました。ちなみにこの紫陽花まつりは、「おたくさまつり」と呼ぶそう。
江戸時代後期にシーボルトというお医者さんが長崎で活躍していました。彼は植物学者という顔も持っていて、長崎で知り合った“お滝さん”という日本人女性の名前をあじさいの1品種に採用。ヨーロッパに持ち帰ったのですが、「おたきさん → おたくさん → おたくさ」と変化したんですね。
ちなみに、シーボルトさんは国外追放になっており、お滝さんと再開できたのは安政の開港のとき。30年ぶりのことでした。
ここでは、前田冷菓が提供している長崎名物「ちりんちりんあいす」が買えます。
3月18日〜11月下旬までここで出店しているとのこと。
そのほか何店か出店しているので、調べておくと良いかも。
プレーン味とイチゴ味があったので、イチゴにしてみました。価格は150円。おじさんの手つきが見事で見入ってしまいました。
眼鏡橋
- 場所:長崎県長崎市魚の町古川町2
出島
では、今日の最後に出島にいってみましょうか。
眼鏡橋の中島川沿いを長崎港方面へ歩いていくと、出島が見えてきます。
社会の教科書で習った扇形の人工島の現在は、周囲も陸地となっていて街の一部となっていて中島川沿いの曲線に少し名残があります。
国道206号線沿いに出島の入り口が見えてきます。
では、入場料金510円(大人料金)を払って入場。
出島でもっとも大きな建物。日本の役人が出島を訪れた際に接待用の空間として使用されていた「カピタン部屋」があります。中身は実際に行ってのお楽しみに。
こちらは「旧出島神学校」。
明治11年(1878年)に建てられた日本最古のキリスト教神学校。現在は売店や貸会議室として利用されています。
そして東の端には、ミニチュア出島があります。ジオラマ好きは必見です。
1/15スケールで作られたジオラマセットです。島全体がゆるやかな弧を描いている様子がよくわかりますね。
と、駆け足で出島の様子をご覧いただきましたが、各蔵では出島を経由して日本から輸出していたもの(銅など)、海外から輸入していたもの(砂糖や染料など)それぞれの歴史を説明する展示が行われています。
出島を出て国道206号線側からから出島をみたところ。ここが一番当時の様子を表している角度かな、と感じました。
出島
- 場所:長崎県長崎市出島町6
- 営業時間:8:00〜18:00(〜19:00までの延長期間あり)
- 営業日:年中無休
- 電話番号:095-829-1194
- Webサイト:http://nagasakidejima.jp/
朝から歩きっぱなしでランチを忘れていました。出島からは中華街が近いので、歩いていってみましょう。
中華街〜江山楼
出島の東側には中華街があります。歩いてすぐそこ。
こちらも長崎ならではのエリアですよね。麺が食べたくなったので江山楼さんに。
せっかくなので、「王さんの特上ちゃんぽん」をオーダーしました。1500円也。
麺はモチモチとしていながらスルッと入ってくる印象。しっかりとしたシーフードの風味にとんこつの濃厚さがありながらも、サラッとしたスープ。街歩きで疲れた身体に染み込みます。
江山楼
- 場所:長崎市新地町12-2
- 営業時間:11:00〜15:00 17:00〜21:00(ラストオーダー20:10まで)
- 営業日:不定休
- 電話番号:095-821-3735
- Webサイト:http://www.kouzanrou.com/
【3日目】軍艦島上陸ツアー〜グラバー園
さあ最終日。軍艦島に上陸ツアーからスタートして、グラバー園というコースにしてみました。
軍艦島は、明治から昭和まで良質な石炭が採掘されていた炭鉱の島。現在はどうなっているのでしょうか?
軍艦島上陸ツアー
明治以降、海底炭鉱として栄えた軍艦島(正式名称は端島:はしま)。
1974年に閉山してからは無人島となっていますが、上陸ツアーを行う業者さんがいくつかあります。
今回は、「軍艦島デジタルミュージアム」という資料館の運営もしている軍艦島コンシェルジュさんのツアーを利用させていただきました。
「軍艦島デジタルミュージアム」は、壁面に資料写真などを投影したり、3DCGによる島のモデリング映像などを楽しめたりできる施設となっています。じっくりと軍艦島を知ることができる場所であるということで、上陸ツアーとセットで申し込みました。
上陸ツアーを提供しているところは、軍艦島コンシェルジュさん含め5社ほどあるようですが、船の大きさやタイプ、途中の運航するコースなど、それぞれ特色がありますので、行かれる読者の方は色々検討してみてくださいね。
午前9時、まず軍艦島デジタルミュージアムで受付します。ツアーの出港は10時半。
上陸ツアーの料金は大人4000円(別途入島料金300円)。デジタルミュージアムは1800円ですが、セット購入すると半額になります。
なので、今回は迷わずセットプランを選択。合計4,900円也。ちなみに、こちらで受付をすると優先乗船券を付与されるので、船着き場で優先の列に並べます。
デジタルミュージアムで受付を済ませたあとは、常盤桟橋まで徒歩。5分もかかりません。
港につくと、他の上陸ツアーの船着き場もあるので間違えないように。見学章を見せて係の人の指示に従いましょう。
マーキュリー号! 屋根付きの2階デッキがオススメ。
午前10時、いよいよ出港!!
こうして、マーキュリー号に揺られながら(実際はそれほど揺れませんでした)、船内ではこれまでの歴史を辿る映像が流れます。
当初、軍艦島は画面のまんなかの枠ほどの大きさしかなく、切削した岩などを利用して徐々に大きくなっていったんだとか。
出港して数十分、軍艦島が見えてきましたよ!
これは北側からみたところ。左の白い建物は端島小中学校。
はい、無事に着岸。ひとまず上陸を果たしました。比較的、波も穏やかでした。
最初の見学ポイントへ。
ここでちょっと補足しておきますが、現在上陸して見学できるエリアは限られていて、島の南側だけ。ですので、先程の小中学校など、島の北側にはアクセスできませんのであしからず。
最初の見学ポイントに到着。
端島小中学校の屋上は、ここ数年で急速に朽ちているそうで、屋根が崩れています。
丘の上には高官用の住居が。屋上がデートスポットだったそうです。
その左に見えているのは生活道路として住民が往来していた坂が見えています。スタッフのお姉さんが当時の写真を掲げてくれていました。
3箇所ある見学ポイントは図の左側に集中しています。最初のポイントは第2竪坑の前あたり。
語り部のおじさんの話がおもしろいのですが、それは実際に訪れて体感してくださいね。
さあ、第2見学ポイントに移動します。他の上陸ツアー客もいるので、道を譲り合いながら移動していきます。
レンガ造りの事務所。
その右には竪坑に向かうためのターミナルの跡があります。鉱夫たちはここから竪坑に入っていってたのですね。
では最後の見学ポイントへ。
はい。最後の見学ポイントにやってきました。右は大正5年に建てられた「30号棟」。
日本の鉄筋アパートのハシリがここ軍艦島にあるんですね。左側の31号棟の1階には郵便局があったそうです。
大衆用スナックもあったそうな。労働の疲れを癒やしていたんでしょう。
異様な光景ですが、コレ、テレビのアンテナなんです。
軍艦島で働いている家庭の収入は全国でもかなり高収入の部類に入っていたらしく、東京よりもテレビの普及率が高かったとか。昭和33年頃、全国でも10%ほど。裕福な島だったんですね。
ほぼ、閉山の頃の姿を残していいて、ただの廃墟とはひと味違った雰囲気です。
自然と朽ちていく箇所もあり、この先上陸ツアーがいつまで行われるかはわかりませんが、今のうちに見てほしいな、と素直に思いました。
今回のツアーは10時半(受付は9時から)に出港して、1時間ほどで軍艦島に上陸、12時半には島を離れる、といった行程ですので、午前中いっぱいはツアーに参加していることになります。他の観光ポイントに行きたい人は午前の便がオススメ。
軍艦島上陸ツアー
- 受付場所:軍艦島デジタルミュージアム(長崎市松が枝町5-6)
- 発着場所:常盤ターミナル(長崎県長崎市常盤町1-60)
- 運航情報:午前10:00発・午後13:20発(軍艦島デジタルミュージアム受付は午前9:00〜9:40、午後12:00〜12:50)
- 価格:4,000円(大人)3,300円(中高生)2,000円(小学生)※別途、軍艦島上陸料金として300円(大人)が必要
- 営業日:年中無休
- 電話番号:095-895-9300
- Webサイト:http://www.gunkanjima-concierge.com/
- 予約ページ:https://www.gunkanjima-concierge.com/reserve/index.cgi?type=kojin&syuyu_flg=1
では長崎港に戻って、軍艦島デジタルミュージアムも覗いてみましょう。
はい。軍艦島デジタルミュージアムに戻ってまいりました。
グッズもたくさん販売されております。さっそく2階へ。
階段を上がった正面には、「軍艦島シンフォニー」と名付けられた大型の壁面スクリーンがあり、当時の資料画像などが幅30mに渡って投影されています。
その他、当時の住居を再現したブースや、ドローンによって空撮された島の様子を3D映像化したギャラリー、タッチパネル操作による軍艦島の解説など様々なアトラクションが用意されています。
続いて3階へ。
階段の踊り場には当時の写真が。坑夫たちの姿がかっこいい。
プロジェクションマッピングで島の表情がかわる「シマノリズム」。夏祭りの様子が投影されていました。チョコチョコうごく人の影がカワイイ。
お祭りの名前は「山神祭」。春に行われていたようです。
今までの暗く落ち着いた雰囲気から変わって、パッと明るい空間へ。
30号棟のミニチュアの中には生活している様子も確認できます。
その他、VRヘッドセットを使った島内探索(上陸ツアーでも行けない場所を360°動画で歩けます!)など、充実の資料内容。この内容であれば長崎観光に来ているタイミングで上陸できなかったとしても、島の当時の様子を知ることができますね。
ここまでで、朝から上陸ツアー、昼に帰ってきてデジタルミュージアム、という感じなので、朝早く受付に来たと仮定すると14時くらいまでたっぷりとかかります。
軍艦島デジタルミュージアム
- 場所:長崎市松が枝町5-6
- 電話番号:095-895-5000
- 営業時間:9:00 ~ 18:00(最終入館17:30)
- 定休日:不定休
- 料金:1,800円(一般)、1,300円(中高生)、800円(小学生)、500円(幼児)※上陸ツアーとの併用で割引き有り
- Webサイト:http://gdm.nagasaki.jp/
グラバー園
次は、「グラバー園」へ。軍艦島デジタルミュージアムからもほど近い場所にあります。
明治時代以前より、欧州諸国との外交の地として賑わいを見せた長崎の姿を感じとってみたくて、チョイスしました。
洋館という言葉だけでも、ちょっとワクワクしませんか?
グラバー園は、イギリス・スコットランド出身のトーマス・B・グラバーさんが江戸時代の終わりに来日して建てられた自宅(旧グラバー住宅)を中心に、当時の建築物を移築・復元を繰り返しながら集積させた庭園。長崎市観光の名所となっています。2015年には「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つとして、世界遺産に登録されました。
長崎港を見渡せる南山手の丘の中腹に位置していますので、造船所や行き交う船の様子を眺めることもできます。
敷地内には旧グラバー住宅、旧リンガー住宅、旧オルト住宅といった当時の有力な商人の名称がつけられた建築物があります。この3棟は江戸時代の初めに建てられてから今に至るまで、ずっとその場所に建ち続けています。歴史的価値の高さから、国の重要文化財に指定されています。
園全体はこんな感じ。チケットを購入して、いざ入園!
動く歩道に乗って進んでいき、最初に見えてくるのは「旧三菱第2ドックハウス」とよばれる宿泊棟として利用されていた洋館。
もともとはここから見える長崎港の対岸の飽の浦町(あくのうらまち)にあって、修理でドックに入っている船員を宿泊させるための建物だったそうです。
2階のベランダからの眺めが最高です。庭園の先までいくと展望台のようになっており、三菱の造船所が一望できます。「造船の街・長崎」を感じる瞬間。
つづいて「旧リンガー住宅」。
製茶業や製粉、発電事業など幅広い分野で活躍していたフレデリック・リンガーさんの一家が住んでいた建物。この方は来日してグラバー商会に入ったのち、独立したんだとか。当時、一流ホテルだった「ナガサキ・ホテル」の建設にも関わったんですって。
さらに進むと、ちょっと雰囲気の違う建物が現れました。どことなく南国の雰囲気を醸しているというか。
こちらは「旧オルト住宅」。もうおわかりかと思いますが、オルトさんの家です。開国と同時に長崎にやってきたウィリアム・ジョン・オルトさんが1865〜1868年の3年間住んでいた自宅です。この方も製茶業で大成功した実業家なんですね。正面には車寄せや噴水もあって、華やかな雰囲気があります。個人的にイチオシの住宅です。
いよいよ、旧グラバー住宅へ。
ハイ! 着きました、今回のメイン「旧グラバー住宅」。写っている建物の後ろにも別棟があり、平屋ですが大きな住宅です。
洋風な感じの中に屋根に鬼瓦が乗っかっていたりと、異文化同士が融合しています。
では中へ。
屋内に入ってすぐに旧グラバー住宅の模型があります。最初の写真は正面と右側の建物が写っていた感じになりますね。
温室もあります。
グラバーさん。
さて、このハートなんだと思いますか? 敷地内の石畳に埋め込まれているのですが、2箇所あるそうです。ぜひ探してみてくださいね。
坂を下るように各施設を見てきましたが、出口手前には「長崎伝統芸能館」があります。
毎年10月に行われるお祭り「長崎くんち」の資料館となっています。
龍踊りの白龍や青龍、傘鉾(かさぼこ)といったお祭りで使われているものが展示されています。おみやげコーナーを抜けると、全ルート終了となります。
まだまだ他の建築物もありますので、じっくり巡ると2時間くらいは堪能できるはず。
園内にはオープンカフェのスペースや、「旧自由亭」といった喫茶室もありますので、ゆっくり過ごすのがオススメです。
グラバー園
- 場所:長崎県長崎市南山手町8番1号
- 電話番号:095-822-8223
- 営業時間:8~18時まで(イベントなどにより開園時間が変更することも)
- 料金:大人610円、高校生300円、小中学生180円。
- Webサイト:http://www.glover-garden.jp/
まとめ
今回のツアーはここで終了です。ここまで読んでいただきありがとうございます!
長崎県にはまだまだ魅力あるエリアや離島も多く、1度や2度いったくらいでは長崎通を語ることはできません。
今回は県庁所在地のある長崎市と、造船の街・佐世保を巡ってみましたが、次回はまた別の場所を紹介していきたいと思います。次は、雲仙・島原や五島、対馬などの離島も巡ってみたいですね。平戸や大村や西海などのエリアも面白そうです!
お楽しみに!