140円のきっぷで2日かけて1,035km移動してみたら普通に地獄だった【年越し最長大回り】
JRの運賃特例を利用した「大回り乗車」にライター・patoが挑戦。大晦日から元旦にかけての2日間しか開かれないという幻のルート「年越し最長大回り」に挑みます。改札内滞在時間は約35時間。140円のきっぷ一枚で1,035.4kmを移動する地獄のような行程を、旅の記録にアプリ「駅メモ!」を使用しながらレポートします。(読了目安時間:30分)
2018年1月1日 元旦
0:05発 成田線 成田行き
年越しカウントダウンに微動だにしない即身仏と化した剛の者たちを乗せて成田行きの電車が出発した。まさかあんなにも静止した世界で年越しを迎えるとは思わなかった。
0:36 成田駅(千葉県成田市)
チェックインした駅 栄町(千葉)、東千葉、都賀、四街道、物井、佐倉、南酒々井、酒々井、宗吾参道、公津の杜、京成成田、成田 (12駅/累計293駅)
2018年になって気分も新たに颯爽と出発したばかりだけど、あいにくここで足止めだ。この先へと進む電車はもう終わっていて、大晦日の終夜運転にも対応していない。始発まで3時間か4時間くらいここで足止めを喰らうことになる。
ただ、ここ成田駅で夜を明かす人は意外と多い。僕のように年越し大回りを実施している同業者はもちろんのこと、他にも銚子まで初日の出を見に行く特別列車が走っているのだけど、それを待つ人、普通に初詣帰りの人など、かなり人でごった返している。本来なら終電の後に駅は閉鎖されるのだろうけど、大晦日と元日は特別だ。改札を出ることなくここ成田駅で過ごして良いことになっている。
ちなみに、成田駅と千葉駅間では初詣需要に応えて終夜運転でピストン輸送を行っている。たぶん成田山新勝寺の初詣客への対応だ。それとは別にもう一台ホームに電車が停まっていて、なんと、この電車を待合室として利用していいらしい。これは助かる。ホームで待つことになったら凍死するところだった。
なんとか待合室電車の座席を確保し、仮眠をとろうとするが、下手にドア近くに陣取ってしまったために、乗客が入ってくるたびにプシューとドアを開けられ(押しボタンで開けるタイプ)、尋常じゃない冷気が流れ込んでくるので全く眠ることができなかった。
お腹が減ったので売店でもないかと改札の方に行ってみたが、売店は改札の向こう側だった。これではいけない。泣く泣く諦める。
さて、待合室列車に戻ったが、相変わらず寒くて眠れない。おまけに隣のボックスに鉄道ファングループっぽい人たちがいて、かなり議論がヒートしていたのが気になって眠れなかった。
そのヒートしている3人組のところに、またプシューとかドアが開いて別の鉄道好きグループが乗車してきたのだけど、とんでもない偶然が巻き起こった。先にいたグループの一人と、後から来たグループの一人が同僚か同級生か、とにかく知り合いだったらしい。
「うっそ、奇遇!」
「うわ、山田ちゃんじゃん。なにやってんのこんなとこで」
みたいな会話を大声でしている。
「今日はどうしてここに?」
「いやね、初日の出号に乗って銚子まで行こうと思ってね」
「俺たちもよ」
「すごい偶然じゃん」
みたいな会話をしている。不勉強なので存じなかったけど、銚子での初日の出はかなり大きなイベントらしい。
「なに、鉄道とか好きな友達なわけ?」
後から来た方は他のメンツを一瞥する。
「うんそう、そっちも?」
「そう、こっちも」
「じゃあさ、合併しようよ。これからは一緒に色々いこう」
「いいね」
そんな平和な会話がなされていた。随分とトントン拍子で鉄道好きグループの合併が決まっていた。僕はその光景を見ながら「出逢って4秒で合併」とか良く分からないことを考えていた。かなり疲れている。
寒い寒いと震えながら待っていると、4時になったらしく特急初日の出号がやってきた。
銚子の初日の出イベントのために元日だけ特別に走る特急らしい。剛の者っぽい人たちが狂ったように撮影していた。ちなみに全席指定で完売しているらしいのでこれに乗ることはできない。この10分後に指定席も特急券も必要ない「快速 初日の出号」が来るようなので、それに乗るべきである。
4:10発 成田線 快速初日の出号 銚子行き
凍えるホームに快速初日の出号がやってきた。先の特急に乗れなかった人たちも乗り込むので乗客はかなり多かった。座席に座れないほどだったのでずっと立っていた。そして、発車してすぐに自分が犯した大きなミスに気が付くこととなった。
この列車は快速列車で、銚子までかなりの駅を飛ばして走る。というか停車駅は途中の「佐原」という駅だけっぽい。その後は銚子までノンストップだ。じつはこれ、大回り的には非常にまずい。完全なるトラップだ。
つまりこういうことだ。この電車は佐原駅を出た後は銚子までノンストップなので、その手前の松岸駅に停車しない。銚子まで行ってしまうとそこから戻る必要が生じ、松岸駅を2回通ることになってしまう。これは大回り乗車のルール違反だ。危ないところだった。これにすぐ気づかなければ成す術なく銚子まで運ばれてしまうところだった。もう大回りできないので初日の出見てすごすご帰ることになっていた。別にそれでもいいけど、まだ佐原駅で降りれば軌道修正できるっぽいので、やってみる。
4:39 佐原駅
何もない駅だ。ここで次の電車が来るまで1時間半くらい待たなければならないらしい。緩やかな拷問に近い。こんなことなら成田駅の待合列車で待つべきだった。寒い、何もない、寝不足、と途方もないことになっている。本当に何もない。一瞬、鶴見線にいるのかと思った。
こんな場所に1時間半も立っていたら凍え死ぬぞと思った瞬間、ホームの真ん中にガラス張りの待合所みたいなものがあるのを発見した。もしかしたらあそこなら寒さをしのげるかもしれない。もしかしたら暖房だって入っているのかもしれない。
入って見ると、思いっきり暖房が入っていた。助かった。ただ、なぜか待合い室内には先客がいた。一人の青年が寒さを紛らわすように待合い室内で体操をしていた。僕は社交的でないのでできれば知らない人がいる狭い待合室は避けたいのだけど、そんなことも言っていられない寒さなので居座ることにした。
入って数分で気が付いた。この待合室は確かに暖房が入っているのだけど、全然暖かくない。むしろ外と同じくらい寒い。なぜかというと、ガラス張りの壁、これの断熱性がゼロに近いのだ。
図に表すとこんな感じで、壁に近いほど冷気が伝わってきていて寒い。壁際の椅子なんてキンキンに冷えていてとてもじゃないが座れない。じゃあ真ん中が寒くないかというとそうでもなく、天井設置タイプのエアコンだったので、真下は温風が吹かない構造になっており、それはそれで寒い。この中に暖かい場所なんてどこにもありゃしない。この待合室、完全にツンドラ気候だ。
ただ、色々と試行錯誤した結果、エアコンからの温風が直接当たる場所だけは少しだけ暖かいことを発見できた。
ここだけちょっと暖かいなと立ち尽くしていると、先客の青年もそれに気がつきやがった。体操しながらジリジリとこちらに近づいてきやがる。これは完全に唯一の暖かい場所を巡って押し合いになる。スクリーンアウトみたいな状態になる。そうなったら「スクリーンアウトがおろそかになっているぞ、桜木!」とグイグイ押しながら言う準備がある。
暖かい場所を求めて血で血を洗う抗争になるかと思われたが、同じ理論で反対側もやや暖かいのではという結論になり、仲良く分担することで事なきを得た。
結局、二人して向き合うようにして立ち尽くしていた。こういう石像が建っている門とかマカオとかにありそう、そんな感じの距離感と立ち方でずっと立っていた。ずっと無言で1時間半立っていた。
5:56 成田線 普通 銚子行き
長かったし寒かった。なんとか凍死することなく1時間半を耐えることができた。あの暖かいポイントを見つけることができなかったら死んでいたと思う。つくづく発見とは貴重なものなのだ。
やってきた普通列車はかなり混み合っていた。どうやら大回り乗車同業者と初日の出客が混在しているらしい。
東の空が白々と明るくなってきた。初日の出は近い。というか、もう24時間以上も改札の中にいるのでそろそろ精神がおかしくなってきた。
6:39 松岸駅(千葉県銚子市)
チェックインした駅 成田湯川、久住、滑河、下総神崎、笹川、佐原、香取、水郷、小見川、大戸、下総橋、下総豊里、松岸 (13駅/累計306駅)
さて、この駅では比較的重要なことが分かる。ここまでの旅程で大回り乗車をしている同業者を見ることはあまりなかった。それは、どうせ成田で足止めを喰らってしまうので、結果が同じになる。だから成田までは比較的自由に電車を選べるからだ。開始時間も自由だし、途中で休憩してもいい。成田駅までは終夜運転しているので、かなり自由度をもって移動でるのだ。だからあまり同業者と会うことはなかった。
ただ、成田で足止めを食った後、同業者のほとんどは今乗ってきた電車に乗っていると推察できる。そして、ここ松岸駅で降りて乗り換える人間は、ほぼ同業者しかありえないのだ。つまり、ここでどれだけの同業者がいるのか初めて判明するというわけだ。
だいたい30名くらいいる。思っていたより多い。バラバラだった大回り乗車同業者オールスターたちがついに松岸駅に集結した! と興奮しても集結したからと言って何かをするわけではなく、淡々と各々が乗車していくだけである。もちろん、これはあくまでも先頭集団であり、もっと遅い電車で回る同業者もいるので実数はもっと多いと思われる。
6:54発 総武本線 普通 千葉行き
やってきた電車には既にかなりの乗客が乗っていた。そこに大回り乗車組が乗り込むのでかなり混み合うこととなってしまった。一般人と大回り乗車組が混在する車内だけど、大回り乗車組を見分けるのは簡単だ。大回り乗車組は面構えが違う。地獄を見てきた顔してやがる。
車内から初日の出を見ることができた。おはよう2018年。
7:48 成東駅
チェックインした駅 椎柴、猿田、倉橋、飯岡、旭(千葉)、干潟、八日市場、飯倉、横芝、松尾(千葉)、成東 (11駅/累計317駅)
ここで乗り換えなので同業者たちがごそっと降りる。かなり若い同業者もいて、おそらく鉄道が好きな小学生なのだろうけど、お婆ちゃんを引き連れて大回り乗車をしていた。そういえば神奈川で同じだった剛の者キッズたちの姿はいつの間にか見えなくなっていた。もっと遅いで電車で回るつもりなのかもしれない。
新年にふさわしい快晴だ。今日は良い日になりそうだ。そして今年は良い年になりそうだ。
8:03発 東金・外房線 普通 千葉行き
そろそろ精神的におかしくなってきた。なんでこんなことをしているのだろうかという気持ちがかなり強まったのを感じた。憤りすら覚えるほどだった。ただ、先に進むしかないのでやってきた電車に乗り込む。それだけだ。
8:21 大網駅
チェックインした駅 求名、東金、福俵、大網 (4駅/累計321駅)
やり場のない怒りみたいな気持ちが沸き上がってくる。これはもう観光とか趣味とかそういう乗車じゃないでしょ。罪人とかがやらされるやつでしょ。そんな気持ちが強まってくる。電車待ちをする他の同業者たちも戦場で地獄を見てきたみたいな目をしている。なぜそこまでして大回り乗車をするのか質問してみたい気分だ。あと、かなりお腹が減ったけど改札内に店がないので何も買えない。
8:41 外房線 普通 安房鴨川行き
ここから房総半島を回ることになる。かなり長い乗車になりそうだ。途中の駅で乗り込んできたお婆ちゃんがカバンからミカンを出して食べ始めたんだけど、柑橘系の良い匂いがファーっと車内に広がってねえ、空腹で死にそうな僕は耐えられなかったよ。これはもうミカンテロですよ。本当にお腹が減った。
海が見えた。
単線の路線なので途中の駅でけっこう長い時間停車したりする。あまり長いこと車内に留まっていると気が狂いそうになるので、なるべくこういう時間を利用して車外に出るようにする。すごい山の中だな、ここ。
海、波、砂浜、家、これが層のように折り重なった景色が延々と続く。本当にずっと続く。
10:13 安房鴨川駅
チェックインした駅 永田(千葉)、本納、新茂原、茂原、八積、上総一ノ宮、東浪見、太東、長者町、三門、大原(千葉)、浪花、御宿、勝浦、鵜原、上総興津、行川アイランド、安房小湊、安房天津、安房鴨川 (20駅/累計337駅)
房総半島を走る電車はかなり本数が少ないのを覚悟していたが、次の電車はきちんと接続が考えられているらしく、スムーズに乗り換えることができた。館山行きの列車に乗り換える。
10:21 内房線 普通 館山行き
また電車の写真を撮影し忘れている。いよいよやばい。
また同じような景色が延々と続く。
途中、隣の車両から移動してきたアベックがキッチリとドアを閉めなかったもんだから、カーブの度にドアがドッタンバッタン大騒ぎで大変なことになっていた。誰かが閉めに行けば良かったんだけど、車両には大回り乗車中の生きる屍しかいなかったので誰も気力がなく、ずっとドアだけドッタンバッタン大騒ぎだった。
11:03 館山駅
チェックインした駅 太海、江見、和田浦、南三原、千歳(千葉)、千倉、九重、館山 (8駅/累計345駅)
館山まで来るとすごく遠くに来たなあという感じがする。たった140円でここまで来ることができるなんてすごいな。まあ、改札から出ることはできないんですけど。
先ほどはとても接続が良い乗り換えだったのだけど、今回はあまり良くないみたいで40分くらい待たないといけないようだ。館山はそこまで大きな駅でもないので改札内に店舗がない。一切ない。
お、コンビニあるじゃん。ついに念願の食料買えるじゃん。と思ったけれども残念ながらコンビニの入り口は改札の向こう。行くことはできない。大回り乗車とはなんと酷な修行なのだろうか。
それは他の大回り乗車同業者も同じようで、この何もない改札内で40分の待ち時間は苦行そのもの。みんなやることなくてエスカレーター脇に置かれていたフルムーン旅行のパンフレットとか熟読してた。
晴天で、駅から見える景色が素晴らしく爽快、ゆえに改札内に封印されている我々のフラストレーションが溜まっていく。
11:47発 内房線 普通 木更津行き
やっとこさ封印が解かれる時が来た。待っていましたとばかりに電車に乗り込む。かなり一般的な乗客も増えてきたので同業者たちは散り散りになってしまった。
房総半島においては車窓から見える景色はそんなに変わらない。この景色をずっと眺めていると今日が元日であることすら忘れてしまいそうだ。あまりに正月感がない。
12:45 君津駅
チェックインした駅 那古船形、富浦(千葉)、岩井、安房勝山、保田(千葉)、浜金谷、竹岡、上総湊、佐貫町、大貫、青堀、君津 (12駅/累計357駅)
木更津行きの電車に乗って景色を眺めていると、1駅手前の君津駅で「ここで乗り換えた方がいいぞ」とアナウンスされたのでホントかよ、と思いながら乗り換えた。どうやら快速電車がやってくるらしい。
12:52発 総武本線 快速 逗子行き
この電車、逗子までいくらしい。逗子って神奈川県だろ。ぐるっと東京湾を周りこんでそんなところまで行くなんてとんでもない路線だ。
この辺の路線になるとかなり一般の人が増えてくる。千葉や東京の方面に行く人が大半のようだ。僕はというと、ここまで32時間くらいずっと改札内にいて電車に揺られているのでなんだか精神的に新たな境地みたいなものに到達しつつあった。
こうね、なんか目の前に椅子があるんですよ。僕は座席に座っているんですけど、目の前に椅子がある感覚がしてくる。樹脂製でね、スケルトンでビビットなワインレッドの椅子があってね、オシャレなバーとかにありそうなやつですよ。足が長いやつ。で、これが実際に触れるんですよ。手に感触があるんです。目には見えないのに触れるんです。確かにここに椅子があるんです。この曲線が手触りがよくてね、あ、ここに尻がくるように計算されてるんだなって分かるんです。その椅子がずっと目の前にあるの。立ってる人に「座りますか? ここに椅子があるんですよ」って言いそうになった。
13:31 蘇我駅
チェックインした駅 木更津、巌根、袖ケ浦、長浦(千葉)、姉ヶ崎、五井、八幡宿、浜野、蘇我 (9駅/累計366駅)
ホームで変なオッサンがパントマイムみたいな動きをしていた。なんかけっこう序盤にもロボットダンスを見たような記憶があるんだけど、もしかしたら駅のホームってやつはそういった動きをしたくなる何かがあるのかもしれない。
このオッサンのパントマイムがなかなか上手くて、そこには存在しないロープだとか壁とかが実際に存在するかのように見えるんですよ。でもまあ、冷静に見るとやっぱり存在しないわけですからね。ないない、ロープも壁もない。いくらパントマイムが上手いからって存在しないものを存在するって言い出したら本気で危ないですよ。椅子が触れるとか言い出すといよいよ危ないですよ。
13:35発 京葉線 快速 東京行き
ついに東京駅へと向かう電車に乗ることになった。ゴールは近い。死んだ魚みたいな目になっていた僕にも活力がみなぎってくる。もうちょっとでゴールだ。そう言い聞かせて電車に乗る。
この路線は途中に東京ディズニーランドを擁する路線だ。車内にディズニーランド客が溢れているかと思ったが、そうではなかった。もう昼過ぎで時間も遅いし、あまり千葉方面から行く人はいないのかもしれない。
さて、ここで少し戦略的なお話をさせていただきたい。この京葉線に乗ってこのまま東京駅まで行くわけだが、そこで総武線快速への乗り換えを決めたいのだ。しかしながら、ご存知の方も多いと思うが、東京駅の京葉線ホームは他の路線からかなり離れた場所の地下深くに存在する。
これは成田新幹線を作ろうと考え、将来的に新宿などに延伸することを考えて他の路線から離れた位置に作ろうと工事を始めたという経緯があるようだ。しかしながら、成田新幹線工事は採算性の問題などで計画自体が凍結、そこに京葉線のホームを持ってきてこんな状態になった、というわけみたいだ。だから京葉線ホームだけ東京駅内で異様に離れている。
同様に東京駅において総武線快速のホームも位置的に遠いことが知られており、奇しくも東京駅における2大離れている路線間での乗り換えを決める必要に迫られることとなった。乗り換え時間は9分。ギリギリいけるかどうかの瀬戸際だ。
別に終電までにゴールにつけばいいのでそこまで焦る必要もなく、東京駅でゆっくりとソバでも食っていけばいいんでしょうけど、ちょっと事情がありましてね。まっこと私事で申し訳ないんですけど、この大回り乗車をゴールさせた後、その足で高知県の足摺岬までいかないといけないんですよ。足摺岬ってむちゃくちゃ遠いですよ。高知県ですよ。だから、なるべく早くゴールしたい。それにはここで9分の乗り換えを決める必要があるんです。
14:16 東京駅
チェックインした駅 本千葉、市役所前(千葉)、千葉みなと、西登戸、みどり台、稲毛海岸、検見川浜、海浜幕張、新習志野、南船橋、大神宮下、二保新町、妙典、市川塩浜、新浦安、東京ディズニーシー・ステーション、リゾートゲートウェイステーション、舞浜、東京ディズニーランドステーション、葛西臨海公園、新木場、京成船橋、潮見、有楽町、和光市、東京 (26駅/累計392駅)
うおおおおお、いそげえ。
めちゃくちゃ人が多いいいいいいいい。
もうこれ別の駅だろってレベルで移動し、なんとかギリギリ、目当ての電車に乗り換えることができた。ここを9分でいけたのは世界記録レベルだと思う。
14:25発 総武線快速 千葉行き
あまりに急いでいたので乗る電車の画像を撮影している暇がなかった。完全に息が切れていたので、呼吸を整えようとハァハァしているうちに錦糸町に到着してしまった。
14:34 錦糸町
チェックインした駅 菊川(東京)、錦糸町 (2駅/累計394駅)
ついに総移動距離が1000キロに迫ってきた。ゴールは近い。あとはつき進むだけだ。
14:38発 総武線 各駅停車 三鷹行き
乗り慣れた勝手知ったる総武線。なんだか安心する。車内の雰囲気も実に黄色い総武線っぽい可もなく不可もなくな感じが心地良い。
14:45 秋葉原駅
チェックインした駅 両国、浅草橋、岩本町、秋葉原 (4駅/398駅)
多数の路線が乗り入れる秋葉原駅、当然、改札内であっても多くの店が存在する。完全なる空腹なので「めしどこかたのむ」的な感じで何かを食べようとも思ったが、先を急ぐのできっちり乗り換えることにした。
14:49発 山手線 外回り 大崎行き
14:51 神田駅
チェックインした駅 神田 (1駅/累計399駅)
成田からここまで最速の乗り換えで来た自負がある。おまけに東京駅からはかなりタイトな乗り換えをクリアしてきたので他の同業者を置き去りにし、自分がファーストペンギンとなっている自信がある。僕が2017-2018シーズンの年越し大回りの最速の男だ! 最速でゴールしてやる!
14:52発 中央線 中央特快 高尾行き
車内で若者が会話していた。どうやら二人は同郷の仲間のようなのだが、今年は帰省をしなかったらしい。することもないので男二人で初詣に行った帰りらしい。
「やっぱ高知は遠いよな。帰省するだけですげー金かかる」
「遠いわ」
みたいな会話をしていた。僕、馬橋にゴールしたらその足で高知に行くんだよ。それも端っこの足摺岬。そんなに行きたくもないのに行くんだよ。
15:05 新宿駅
チェックインした駅 お茶の水、水道橋、飯田橋、市ケ谷(市ヶ谷)、四ツ谷(四ッ谷)、信濃町、国立競技場、千駄ヶ谷、北参道、代々木、新宿 (11駅/累計410駅)
もう少しでゴールだ。頑張れ、頑張れ。
15:07 山手線 外回り 大崎行き
これさっき秋葉原-神田で乗った同じ車両かもしれない。僕が中央線でズドンと進んでいる間に山手線を大回りしてやってきたんじゃないかな。絶対に同じ車両な気がする。なんとなくそんな気がする。
15:28 日暮里駅
チェックインした駅 西武新宿、新大久保、高田馬場、目白、上り屋敷、池袋、北池袋、向原(東京)、大塚駅前、大塚(東京)、巣鴨、駒込、田端、西日暮里 (14駅/累計424駅)
ついに最後の乗り換えの時が来た。ここまで本当に長かった。紅白が観たい気分を我慢し、極寒の中を薄着で、ソバ三連発に気持ち悪くなりながらも何とかチェックインし続けここまできた。その旅もいよいよ終わる。約36時間かけて1000キロ以上移動してきたのに、2駅しか移動しないという事実に震えながら最後の乗り換えを行った。
15:36発 常磐線直通 水戸行き
乗り込んでみて分かったけど、大変なミスをしでかした。
この電車はゴールである馬橋駅に停車しない。馬橋駅を通過してとんでもない場所までいっちまう電車だ。最後の最後でとんでもないことしでかして大回り乗車に失敗するところだった。まだ軌道修正が可能なので松戸で降りて、正真正銘、最後の乗り換えを実施する。今度こそ最後だ。
15:53 松戸駅
マッドシティ松戸。ついに帰ってきた。
15:59発 常磐線各駅停車 取手行き
正真正銘、最後の電車きた。なんだか昆虫みたいでかっこいい電車だな。
そしてついに。
「つぎは馬橋」
ついにゴールだー!
16:03 馬橋駅
チェックインした駅 日暮里、新三河島、三河島、荒川区役所前、三ノ輪橋、南千住、中千住、北千住、小菅、綾瀬、亀有、金町、松戸、北松戸、馬橋 (15駅/累計439駅)
ついに長かった大回り乗車も終わることとなった。
こんな140円の切符一枚で1000キロ以上も移動できるのだからなかなかすごい。ちなみに自動改札はたとえ大晦日~元日の有効期限が2日間の切符であっても日をまたいだものに対応していないっぽいので、この切符を入れるとリンゴーンと鳴って門を閉ざしてしまう。試しにやってみたけどやはり閉まった。駅員さんに「大回り乗車です」と宣言して通過しよう。
140円で1,035キロ、年越し大回りの旅はこうして終わった。
旅のまとめはこちら
総移動距離 1,035.4 km
乗車本数 42本
チェックイン駅数 439駅
総改札内時間 35時間9分
僕が幼かった頃に比べて、年々、年の瀬と新年の雰囲気が失われつつあるように感じる。大晦日であっても元旦であっても、店も開いているしコンビニもやっている。昔は食料を買いそびれると大変だったし、ちょっと前でもお金を降ろし忘れると大変なことになっていた。ただ、現代はもうそんなことはない。大晦日も元日も普段と変わることない普通の日になりつつある。
大晦日から元日にかけてずっと改札の中にいて大回り乗車をする、という狂気の沙汰を行ってみて、やはりこの日本からは正月らしさ、というものが完璧に失われつつあると感じた。別に普段とそんなに変わらないのである。街は変わらず動き、電車はずっと働いているのである。そんな中にあって大晦日と元日しか実現しない経路を乗車することは逆に貴重なんじゃないだろうか。
正月であるのに働いている人がいる。正月であるのに特別特急を撮影しに行く人がいる。正月であるのに孫のために苦行のような移動に付き合っているお婆さんがいる。正月であるのに年越し大回りをする剛の者っぽい人々がいる。正月であるのに取材させられている人がいる。みんなそれぞれの思いを抱えて、薄れゆく年末年始を泳いでいる。そんなことを実感できる旅だった。
大晦日と元日の間にしか開かれない幻のルート、年越し大回り、是非とも2018年の大晦日に周ってみてはいかがだろうか。この日本にのこる数少ない年越しを是非とも実感して欲しい。きっと何か新しい発見があるはずだ。
そして是非そんなときは駅メモを使ってみて欲しい。
「駅メモ!」と一緒に旅にでかけよう!
アプリをダウンロード