これぞ大人の社会科見学!西粟倉村の斬新な取り組みと極上サウナに驚愕した
岡山県西粟倉村にある「森の学校」などをご紹介。独自の取り組みが注目を集めている西粟倉村の民間企業を取材してきました。佐用町の南光自然観察村にある、極上のフィンランド式サウナ情報も。
こんにちは。タカヤマ(@sauna_kurasu)です。
突然ですが、岡山県最北端の村に行ってきました!その村とは「西粟倉村(にしあわくらそん)」。読者にとっては耳馴染みのない、初めて耳にする地名でしょうか? 実はこの西粟倉村、巷では非常に注目されている村のようでして、西粟倉村の取り組みを一目見てみようと、わざわざ首都圏から足を運ぶ人が絶えないそうです。西粟倉村のどんなところが注目されているのか? この目で見て参りましたので、その様子をレポートします!
目次
◆西粟倉村ってどんなところ?
西粟倉は岡山県にある、人口1,500人ほどの小さな村。すぐ近くには鳥取県と兵庫県があり、山間に位置することから、“のどかな田舎”というイメージを筆者は持っておりました。
大阪から特急に乗り約2時間…!(村内には高規格道路も通っており、車だともう少し早く到着するようです)
筆者は、西粟倉村影石にある、智頭急行線・あわくら温泉駅を訪れました!
西粟倉村は林業が盛んということでしたが、駅舎に降り立った時点で、木のぬくもりがいっぱいに感じられました。
待合室に設置されたウェルカムボードと、
あわくら温泉駅の時刻表。智頭急行智頭線という路線名ではありますが急行は停まらず、各駅停車の列車が1~2時間に1本来るのみです。
駅周辺の光景。山が高いです…!散策していると、ちょうど一両編成の普通列車が田んぼの間を駆け抜けていきました。
こちらは道の駅付近に設置されていた木造トイレ。さすがは林業の村。まさか用を足していても、木のぬくもりが感じられるとは思いませんでした…。
道の駅レストセンター あわくらんど。木材をふんだんに使ったエントランスは(風車の飾りつけとの相乗効果もあって)ただただ壮観、の一言に尽きます。
西粟倉村への筆者の第一印象は、「木のぬくもりが感じられる素朴な村」でした!
しかし、筆者が西粟倉村に面白みを感じていたのはまた別のところにあります。それは、西粟倉村独自の取り組み です。西粟倉村は、全国各地で過疎化や高齢化が進む中、俗に言う「平成の大合併」の流れに入らず、自立の道を選んだ自治体なのです。
さらに、行政と民間企業が二人三脚で村づくりをしており、IターンやUターンの移住者や起業する人たちが続々流入。ここ10年間で30もの地域ベンチャー企業が立ち上がる等、実はビジネスの可能性に満ち溢れた村であるとして注目されているのです。
ビジネスの盛り上がりが人の流れを生み、2017年にはついに人口増加を成し遂げました。西粟倉村のどのようなところがこうした結果につながっているのか? 注目スポットを回りながら、この目で確かめたいと思います・・・!
◆西粟倉村の見るべきスポット1“森の学校”
こちらは西粟倉村における民間企業の取り組みの、中心的存在である“森の学校”。
平成11年に廃校となった旧影石小学校の施設を再利用し、民間企業のひとつである“森の学校”を含むいくつかの団体が入居をしています。
基本的には業務用で使われているそうですが、校舎入り口周辺の一部エリアは、外来の方でも足を踏み入れることができます。
こちらが校舎のエントランス。両隣のお店は外来の方向けにそれぞれ営業をされています。
まずエントランス右側が“帽子屋UKIYO”。Closeと書かれていますが、開店前のようでした。開店後にお店の中を拝見させていただくと…
なんと、こども向けの帽子のみ取り扱っているそうです…!試着したときに「サイズが小さいな…」と感じるのはそのためだったのですね。笑 のちほど記事中盤でも取り上げますが、西粟倉村ではこどもが主役の宿泊所もあり、取り組みの面白さをさっそく垣間見ることができました。
それからエントランス左側にはうってかわって、大人向けの日本酒店 “酒うらら”がありました。
こちらのお店はなんと、西粟倉村内のお宅に出張して日本酒をふるまう出張日本酒店でもあります。首都圏ではまず考えられない、斬新な営業スタイルですね…。酒うららのオーナーさんは日本酒に精通されており、日本酒を愛しておられる気さくな女性の方でした。全国各地のイベントに出店もされており、ただただフットワークの軽さに恐れ入りました。(オーナーさん、本名は異なるそうですが周りの方々からは“うららさん”と呼ばれ親しまれているそうです。)
他、西粟倉村の人口増を思わせる賃貸アパートの張り紙が掲出されていたり
旧・影石小学校時代のものと思われる不気味な看板が置いてあったり
森の学校周辺を再現した極めてリアルな模型も置いてありました。
写真左下の校舎模型に注目してみてください。
校舎の模型の中で、何かが水の中を泳いでいるようにも見えませんか?
なんと、校舎の体育館を利用してうなぎを養殖しているとのことです…!!!これには驚きました。
海のない村で、しかも体育館の中で“森のうなぎ”を育てるという、という冗談のような取り組みを実現してしまっているのです。事前に電話連絡をして、予約をすれば養殖の模様(体育館の中も)一般見学できるそうです。
養殖された“森のうなぎ”は、村内の食堂や道の駅(あわくらんど)のお土産コーナーでも気軽に手にすることができます。
いやー、すごいぞ西粟倉村!“帽子屋UKIYO”と“酒うらら”、そして“森のうなぎ”の取り組みに至るまで、普通に働いていたら生まれないような斬新なアイデアを実現されていて大変刺激を受けました。森の学校では「これぞ、大人の社会科見学」という言葉がふさわしいような取り組みを、目の当たりにすることが出来ましたね。
西粟倉森の学校
営業時間:各店舗の公式サイトよりご確認ください。
住所:岡山県英田郡西粟倉村長尾461‐1 (旧ナカバヤシ岡山工場)
電話番号:0868-73-0338(対応時間9:00~17:30 ※土日祝を除く)
公式サイト:
西粟倉森の学校 http://zaimoku.me/
帽子屋 UKIYO 西粟倉村店 http://ukiyoboushi.net/okayama/
酒うらら http://sakeurara.com/index.html
◆西粟倉村の注目スポット2「メゾン・ド・フルージュ」
ところ変わって、道の駅“あわくらんど”付近へ戻って参りました。あわくらんど周辺は大変盛況していましたが、その中でも一際目立つお店がありました。それが“メゾン・ド・フルージュ”です。
“メゾン・ド・フルージュ”はいちごに特化したスイーツ専門店で、もともとスイーツ業界未経験だったオーナーが、絶品いちごの魅力に惹かれ開店されたお店だそうです。また、「いちごで世界一を取りにいく」というビジョンを本気で掲げておられます。
スポーツやゲーム、どんなジャンルであったとしても、世界を相手にしている凄みというのは一般人には到底知りえないことです。しかし、“メゾン・ド・フルージュ”のスイーツを口に運んだ瞬間、その凄みを一瞬垣間見たように思いました。
“メゾン・ド・フルージュ”は京都に本店があり、そちらのお店は連日行列が絶えない人気店なのだとか。西粟倉にあるお店はいわゆる製造元にあたるそうです。山間に位置する西粟倉村は、夏におけるいちごの栽培に適した環境として選ばれたとのこと。(こちらの経緯は後述する書籍、『ローカルベンチャー』に詳細が書かれていますので、手に取ってみると面白いと思います…!)
西粟倉の製造ラインを取り仕切る総責任者の小林さん。お仕事の合間に、少しお話を伺うことができました。
「おー、僕でよければ何でも聞いてくださいね!」とても気さくで、冗談をよく口にする小林さん。しかし、いざ仕事になると表情と仕草が一変します。
スイーツを作るまでの一つ一つの所作が、素人目からみてもプロフェッショナルそのものでした。お話を聞くと、こちらの製造所ですべてのスイーツを製作し、全国に発送されているそうです。日本全国、そしてゆくゆくは世界を相手にするとなると、そのプレッシャーは並大抵ではないのでしょう。
こちらは西粟倉の製造元で独自に製作された、期間限定の創作スイーツ。
アイスの中にいちごがまるごと一つ入っており、実に贅沢な食感でした。普段スイーツをあまり口にしないメンズでも、こんなに美味しいなら、いくらでも食べられるような気がします。
小林さんのお話でとりわけ印象的だったのは、Uターンに至った経緯に関して。
「僕は元々西粟倉の出身で、地元を出て鳥取で長らくパティシエをしていました。でも、西粟倉の人達がイキイキしているのを見て、僕も地元に帰りたいって自然にそう思えたんですよね」
小林さんがふと口にされた何気ない一言が、西粟倉のイマを如実に映し出しているように思えました。
苺研究所・製造アトリエ
住所:岡山県英田郡西粟倉村影石521
公式サイト:http://ichigonoomise.com/
◆西粟倉村の注目スポット3「あわくら温泉 元湯」
西粟倉村では、こちらの“あわくら温泉 元湯”にお世話になりました…!
“あわくら温泉 元湯”は、カフェ&レストラン併設の温泉付きゲストハウスです。かつて日帰り温泉であった場所をリノベーションした宿泊施設になります。こちらの施設でも木材がふんだんに使われていて、木のぬくもりがいい感じでした…!
筆者が気になったのは、「こどもばんだい」がエントランスに設置されていたこと。
「こどもばんだい」の中はこんな感じになっています。
また、施設の中でも結構大きめなこども専用プレイスペースがあったり
専用の授乳室まで設けられています…!
実はこちらの“あわくら温泉 元湯”は、「こどもの笑顔がまんなかにある大きな家」がコンセプトの宿泊施設なのです。ゲストハウスといえば、バックパッカーや外国人観光客が宿泊するイメージが強かったのですが、こちらのゲストハウスでは、こどもが主役といっても過言ではありませんでした。筆者が宿泊した日も、多くのこども達がリビング周辺を駆け回っておりました。
前述の“帽子屋UKIYO”でも同様のコンセプトでしたが、「誰向けに何を提供するか?が明確ですごいなぁ…」と筆者はただただ感心させられておりました。
しかし、大人も楽しめない訳ではありません…!“あわくら温泉 元湯”にはバーカウンターがあって、お酒片手に大人向けの書籍を手に取ることができたりしますし、
“あわくら温泉 元湯”のグッズや、西粟倉村で生産されているものに特化したお土産コーナーがあったりします。
そして、なんといっても温泉ですね…!
“あわくら温泉 元湯”の泉質はやわらかくてなめらか!泉質の良さから、地元の方々も定期的に足を運ばれるとのことです。筆者も体験しましたが、包み込まれるようなやさしさがあって、これならずっと入っていられる…と思いました。
そしてこの天然温泉、西粟倉村産の薪で加温しているのが特徴なんです!
ゲストハウスの入り口で薪を切り、薪ボイラーで源泉14度の温泉を温める過程を経て、“あわくら温泉 元湯”の泉質は保たれています!
西粟倉村の資源である木材を徹底活用しつつ、新しいムーブメントを提供できるゲストハウス、それが ”あわくら温泉 元湯”でした。(こちらのゲストハウスを活用した季節限定イベントなども定期的に開催されているそうです!)
あわくら温泉 元湯
営業日:平日…15:00~22:00、土日祝…10:00~22:00
定休日:毎週水曜
住所:〒707-0503 岡山県英田郡西粟倉村影石2050
電話:0868-79-2129
公式サイト:http://motoyu.asia/
◆西粟倉村のほぼ隣町、兵庫県佐用町にも訪問
さて、西粟倉村での社会見学はこれにて終了ですが、筆者にはどうしても訪れたい場所がありました。それは…「サウナ」です。
SPOTで記事を書かせて頂いて以来、記事のどこかにサウナネタを挟むことが筆者の使命である…と勝手に思ってます。笑
しかし、岡山のこの奥地にサウナなど無いのではないか。そう絶望しかけていたところに、極上のサウナを近隣で見つけました。
西粟倉の中心地から車で20~30分ほど。
お隣の県にはなりますが、兵庫県佐用町にそのサウナはありました。
◆本場フィンランドに匹敵する、極上サウナがキャンプ場にあった…!
佐用町の南光地域にある南光自然観察村。村といってもいわゆるキャンプ場で、アウトドアやキャンプに興じる方々がほとんどです。
しかし、キャンプ場にサウナなんて本当にあるんでしょうか。
あったー!!!
しかも、めちゃめちゃ本格的なサウナが!!!
筆者は日本全国から本場フィンランドに至るまで、数多くのサウナを経験して参りましたが、こちらのサウナを見た瞬間に腰を抜かしかけました。
このサウナ、ロウリュし放題(サウナストーンに水をかけ、水蒸気で一気に暖める)だし、座る場所が天井にちゃんと近い(水蒸気は天井付近に集まりやすい)し、サウナストーブがHARVIA製(フィンランドの本格老舗メーカー)だし。なぜ、これほどまでに素晴らしいサウナが兵庫県佐用町に眠っていたのか。
サウナストーブは薪で暖める仕組みのため、受付で薪を購入しセルフで暖めます。
西粟倉での社会見学で沢山の薪を目にしてきた後だったので、火をおこす作業から始められるのはテンションが上がります・・・!
火をおこしはじめてから30分後…
アウトドアならではの、極上サウナが出来上がりました。
さっそくサウナ室で身体を暖める筆者。目の前に置いてあるバケツと柄杓でサウナストーンに水をかけつつ、自分の好きなペースで身体を暖めることが出来ます。
サウナ室にはもちろんテレビもなく、聞こえてくるのは鳥のせせらぎと、風に揺れる木々の音のみ。いやー、ここは天国かw
サウナでたっぷり汗をかいた後は、水風呂がわりに隣の川へドボン。
川に浸かっているとき、見上げるとフィンランドと見間違う光景がそこには広がっていました。
まさか西粟倉村の近くでこのような体験ができると思わなかったです!西粟倉を訪れる方のみならず、西粟倉の皆さんにも是非とも通って頂きたい素敵なサウナでした。(木の文化がある西粟倉とサウナ、実はめちゃめちゃ相性良いと思うんですよね)
南光自然観察村
業務時間:受付時間…8:30~16:30(休日:年末年始)
入場料:小学生以上500円、小学生未満200円
フィンランド式サウナ利用料:1,000円(薪代金は別途)
住所:〒679-5227 兵庫県佐用郡佐用町船越222
電話番号:0790-77-0160
公式サイト:http://www.town.sayo.lg.jp/cms-sypher/www/section/detail.jsp?id=74
◆書籍『ローカルベンチャー』の紹介
さて、サウナの話で脱線してしまいましたが、最後に書籍のご紹介になります。こちらの記事では西粟倉村での盛り上がりや様々な取り組みをレポートして参りましたが、それらの軌跡がより深く書かれているのが、牧大介さん著『ローカルベンチャー』です。※2018年7月出版
牧さんは“西粟倉・森の学校”の代表取締役を務められており、一方で農林水産業等の新規事業立ち上げを行う“エーゼロ株式会社”を設立された方でもいらっしゃいます。
「ローカルベンチャー」の出版記念イベントが東京で行われ、牧さんのお話をお伺いしましたが、西粟倉に人が集まる仕組みと、地域での取り組み・チャレンジにまつわる刺激的なお話を数多くされておられました!
筆者にとって、特に印象的であったのはこれらのお言葉でした。
「何かをやりたい、という人がやりたいことをやる」
「地域起こしとは、自分起こしの集合体である」
“森の学校”や“メゾン・ド・フルージュ”、そして“あわくら温泉 元湯”でも、中で働かれている方々にお話を伺いましたが、「自分が何をやりたいか?」という問いを持ち続けながら、みなさんイキイキと働いていらっしゃるように見えました。
ふだん、首都圏でオフィスワークや組織の中で働いてらっしゃる方も、西粟倉村に訪れ、日常業務とは離れた環境や取り組みに触れてみることで、新たな気付きが得られるような気がします。
西粟倉村の軌跡を記した『ローカルベンチャー』、とても面白い本なのでご興味ある方は是非!!
ローカルベンチャー 地域にはビジネスの可能性があふれている | 牧 大介 |本 | 通販 | Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4863241240/
(〆)