JR西日本が発表した”維持困難な17路線30区間”ぜんぶ乗ってきたので狂ったように紹介する_PR【駅メモ!】

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【3日目】 5:30 兵庫県姫路市 姫路駅

3日目の朝はしっとりとした雨と共に迎えた。なぜか僕が取材する時は異様な晴天に恵まれて青い空の写真をたくさん撮ることができるのだけど、今回は違うらしい。初日からけっこうな雨にやられている。

姫路駅の中央コンコースは、なぜかコンコースという場所なのにブリバリに自転車がそのまま侵入してくる。2台ほどの自転車を見かけた。姫路の人が無法者なのか、それとも自転車通行が許可されているか、どちらかなのだろう。許可されているのならば駅のコンコースとしてけっこう珍しいと思う。

僕は姫路駅のこの姫路城側の出口が好きだ。

もちろん、駅から真正面に美しい姫路城が見えるというのもあるけど、それ以上に駅前がすっきりしている点が高い評価に繋がっている。

普通、姫路駅ほどの大きな駅であれば、駅前はバス停やらなにやらでけっこうごちゃごちゃしている。タクシー用のロータリーなども作られ、バスセンターみたいに色々なものがある。交通や人の集約地である駅前の光景としてはそれが正しい。

姫路駅のこちら側の出口にはそれがない。すっきりしている。バスなどはすべて反対側の出口に集約され、こちら側はすっきり。だから城までスッキリ見えるので良い。

ここからは維持困難路線である姫新線を目指していく。同様に姫路から伸びる播但線にも維持困難路線が存在するので、おそらく姫路駅にはもう一度もどってくることになりそうだ。

改札を抜けて姫新線のホームに向かうと、なぜかもうひとつ改札があった。2つの改札を抜けなければならないらしい。2つ目の改札を抜けた後の領域にはトイレがないので要注意だ。なぜそんな注意喚起をするかというと、改札を抜けた瞬間にトイレに行きたくなったからだ。

いくら探してもこちら側の領域にトイレがない。改札の向こうにトイレが見える。駅員さんに事情を話して2つ目の改札を戻る必要がある。でも、朝の忙しい時間らしく、改札横の窓口に駅員さんがいない。危うく漏らしてしまうところだった。朝からスリリングな体験だ。

ここからは「ましろ」が担当。

 

15本目 6:10 姫路発 姫新線普通 上月行き

2両編成

乗客14人

始発列車ということもあって乗客は昨日の終電では帰れなかった雰囲気の人が多かった。朝まで夜の姫路を堪能し、始発で帰る感じだろう。みんな座席に座って泥のように眠っていた。

姫路から伸びる姫新線は播磨新宮駅までは維持困難路線に指定されてない。その区間はおそらく姫路の都市圏に入るので利用者が多い。それは乗っていてもわかる。列車から見える街並みは都会的で、住宅も多い。今日は休日なので定かではないが、通勤・通学需要もあると思う。ただし、この時間帯は姫路に向かう逆方向の列車の方が利用されているのだろう。

50分ほどの乗車で、播磨新宮駅へと到着した。そろそろ街並みが寂しくなり始めた頃合いを見計らって維持困難区間に入っていく。

姫新線(播磨新宮~上月)営業係数751 輸送密度 932 人/日

兵庫県の姫路駅から津山駅を経て岡山県の新見駅に至る路線。津山盆地を経由して中国山地の山間を走る。山陽と山陰を結ぶ陰陽連絡路線としての側面も持つ。姫路駅から播磨新宮駅の間では市街地および住宅地が広がっており、この区間ではダイヤもある程度は確保されており、利用客も多い。播磨新宮を超えて該当区間に入ると田園風景が広がり始める。

播磨新宮駅-兵庫県たつの市:姫新線

手延素麺揖保乃糸の産地、たつの市の新宮町域の中心駅でもある。駅周辺には製麺会社や製粉会社など、手延素麵に関係する工場が多数立ち並んでいる。工場を抜けた先に新宮宮内遺跡があり、弥生時代の竪穴住居の復元されている。

維持困難路線に入る駅では運行形態が入れ替わることが多く、乗り換えや長い停車時間が必要となることが多い。ここ播磨新宮駅でも5分の停車時間があった。

揖保乃糸と書かれた工場が見える。

播磨新宮を抜けると、沿線の風景は一気にカントリーなものへと変化する。山と田園、その淵に数件の住宅である。その光景の真ん中に次の千本駅があった。

千本駅-兵庫県たつの市(無人駅):姫新線

小さな集落の真ん中にポツンとある駅。駅前の通りに数件の民家があるだけであとは田畑が広がっている。この駅より先はICカードの利用ができない。

駅の周辺をゴリゴリのギャルがおじいちゃんとおばあちゃんを連れて歩いている光景を見た。なんだか良い光景だった。この田園の風景の中にゴリゴリのギャルというアンバランスさ、なぜこんな場所をというミステリアスさ、おじいちゃんおばあちゃんを連れているというほのかな優しさ。まだ朝の7時という早い時間にギャルが動き出しているという点も良い。一般的なゴリゴリギャルはまだこの時間はクラブでテキーラだろ。なんかすごく絵になる光景だった。

西栗栖駅-兵庫県たつの市(無人駅):姫新線

西栗栖駅は木造の駅舎があったが、2019年に撤去されたようだ。千本駅からこの駅までの間、山間を縫うように走るため、大きく迂回する箇所がある。その先に駅が存在する。

さきほどの千本駅からそうなのだけど、駅に停車した時にドアが開かなくなった。基本的にはワンマン運転なので、降りる乗客は前方のドアまで移動して運転手に切符を渡す。ただし、降りる気配の人がいない場合と、ホームに乗り込む人の姿が見えない時、ドアは開かない。バスみたいな運用になる。ドアが開かないので停車時間が短く、2秒くらいしか停車していない。2秒はさすがに言いすぎかもしれないけど、それくらい短い停車時間だ。

三日月駅-兵庫県佐用町(無人駅):姫新線

旧三日月町の中心駅であり、周囲には旧役場などの建物がある。駅舎は2003年に改築されたもので屋根には三日月のシンボルが掲げられている。諸国を行脚し人々を救済した北条時頼がこの地を訪れた際、病のため三ヶ月間滞在したことからこの地名になったと言われている。駅舎は綺麗で新しく、駅前も整備されている。

ドアが開かない。

播磨徳久駅-兵庫県佐用町(無人駅):姫新線

旧南光町唯一の駅。旧南光町の観光名所である南光ひまわり畑の最寄り駅で、ひまわりのシーズンとなると駅からの臨時バスが運行される。ひまわりが一面に咲き誇る南光ひまわり畑の光景は圧巻である。

絶対にドアをあけてなるものかという断固たる決意みたいなものを感じる。

佐用駅-兵庫県佐用町:姫新線、智頭急行智頭線

佐用町の代表駅。町名の読みは合併時に「さよ」から「さよう」に変更されたが、駅名はそのまま「さよ」である。智頭急行の智頭線が乗り入れる。姫新線の系統境界駅でもあり、姫路方面からの列車の半数程度がこの駅で折り返す。残りの列車もすべて次の上月駅で折り返す。

ついにドアが開いた。長かった。4駅分くらいは開かない区間があったと思う。その区間では誰も乗り降りしなかったということだ。久々にドアが開いたと同時に全ての乗客が降りてしまい、貸し切り状態になってしまった。久々の貸し切りだ。

佐用駅を出発し、終点の上月駅を目指す。車内は僕ひとりだ。

運転席はブラインドが下げられているのだけど、終点が近づく気配を感じて運転手さんがこのブラインドを上げる。いつも休日のこの列車は佐用駅を過ぎると無人状態になるのか、運転手さんは明らかに列車が無人であるテンションでブラインドを上げていた。

そこで僕の姿を確認し。あきらかに「え、いたの?」みたいな表情を見せた。

7:29上月駅-兵庫県佐用町(無人駅):姫新線

川のほとりに佇む駅。姫路からやってくる電車の全てがこの駅か佐用駅で折り返す。姫路から津山まで乗り換えなしでいく列車は設定されていない。駅舎は佐用町の特産物直売所が併設されており、待合室で飲食も可能。これよりさき姫新線の駅は岡山県となる。

これにて姫新線(播磨新宮-上月)クリア。

 

 

さて、上月駅に着いたのはいいものの、予想以上に大変な状態になってしまった。ここより先に進んで津山駅を目指すのだけど、次の津山行きの列車は1時間10分後だ。つまり、この駅で1時間10分過ごさなければならない。それがけっこうきつそうなのだ。

上月駅はこのような駅舎だ。駅舎には特産物直売所が併設されている。この直売所が営業していれば良かったのだけど、このときは開店前だった。

駅前の光景はこんな感じで川が流れるだけ。自然豊かでのどかで素晴らしいロケーションなのだけど、ここで1時間10分待てと言われたら急に事情が異なってくる。ここで1時間10分待つ自信は僕にはない。さすがに終着駅だしね、もうちょっと色々あるだろうと考えていたけど、ここまで何もないのは想像していなかった。

僕が見つけられなかっただけかもしれないけど、観光名所的な絶好の時間つぶし場所もないようなので途方に暮れてしまった。

しょうがない。歩いてあのクレーンを見に行くか。なんか大きそうだし。

もはや観光名所でもなんでもない。ただのクレーンを見に行くという暴挙に出る。それほどまでに追い込まれていた。

川沿いには大きな道路が通っていて交通量が多い。その道路沿いにたくさんの住宅が建っていた。人口はそこそこありそうな雰囲気だ。

時間があるし、散髪でもしてやろうかと思ったけど、維持困難路線を取りに行く旅の最中に散髪する意味が分からないし、早朝すぎて営業していなかったので断念した。

グレーンに到着した。

「クレーンだね……大きいね……」

これで終了だ。10分くらいしか時間を潰せなかった。

仕方がないので、駅に戻ることにする。来た時とは別ルートで、川沿いを通るルートだ。川が流れる音に混じって鳥の鳴き声が聞こえる。そんな心地よいルートだ。こういった落ち着いた風景は最高である。ただし、ここで1時間10分待てと言われたら途端に事情が変わる。やはり苦しい。

川へと降りていく階段があった。どうせ時間も大量にあるので降りてみた。

完全に透明な水! 清流! と紹介しようと思ったけど、ちょっと濁っていた。雨の影響だろうか。何か川の生き物とかいないかなと探していたらそのまま右足がドボンと川にはまり込んでしまった。ろくなことがない。ふくらはぎのあたりまでびちょびちょだ。

右足が完全に濡れてしまい、気持ち悪い。歩くたびに靴からジュッポンジュッポンと水を吐き出す音が響き渡る。こんな状態では列車に乗れない。川沿いのローカル線に片足を濡らしてジュポジュポ言わせている乗客が乗ってきたら「河童の化身かな?」と思われてしまう。

幸い、濡れたのは右足だけなので、靴下を替えて靴を乾かせばなんとかなる。駅で乾かそう。

川沿いを進むと駅が見えてきた。都合、20分くらいしか潰せていない。あと50分はある。

もう歩き回ってもろくなことがないので、駅のホームで靴下を替え、靴を乾かすことにした。幸いなことに駅には誰もいないので「河童かしら?」と怪訝な顔をされることはない。と思ったら、駅舎内の特産物直売所のおばちゃんが開店の準備をしていて「河童かしら?」と怪訝な顔をされてしまった。

靴を乾かす間に駅内で見かけた掲示。チャレンジ300万人乗車計画と銘打って姫新線の利用促進をはかっているらしい。さまざまな取り組みの中の1つとして片道切符を支給してくれるようだ。大変良い取り組みなのだけど、こういう施策はもっと利用しやすくする方が効果は大きいと思う。支給の条件を見てみると、5人以上のグループで、利用の20日前までに申請とある。この条件を満たすのはかなり限られたパターンになると思う。それよりももっと支給しやすくして、じゃんじゃん乗ってもらったほうがいいのではないだろうか。

16本目 8:38発 上月発 姫新線普通 津山行き

1両編成

乗客9人

なんとか1時間10分の待ち時間を耐え抜き、次の津山行きの列車がやってきた。靴も乾いた。

予想したよりもホームの奥の部分に停車したため走って乗り込む形になってしまった。下手したら置いて行かれるところだった。さすがにここで置いていかれたら心が折れてしまう。

車内の乗客は9人で、そのうちの6人ほどがただならぬオーラを放っていたので、おそらくローカル線に乗りに来た剛の者だと思う。みんな沿線の風景をパシャパシャと撮影していた。その中の一人は座席でパソコンを開いて、一人だけ電子の要塞みたいな状態になって、そこを拠点に縦横無尽に撮影していた。

列車が進むと何人かが運転席の横でビデオを回して撮影していた。

姫新線(上月~津山)営業係数887 輸送密度 413人/日

姫新線のこの区間は、兵庫県と岡山県の県境を通過する。車両は1両、多くとも2両である。県境を超える場合はほとんど通学需要が見込めないが、県境を越えた後には、美作市や津山市の間で通学需要があるのか、営業係数は887とそこまで高くはない。ただし、これは何度も言うように他の維持困難路線に比べてであり、路線の赤字としては大きい。

上月駅を出ると、列車は兵庫県と岡山県の県境に差し掛かる。相変わらず山と川、そこに数件ある住宅の光景が続く。

美作土居駅-岡山県美作市:姫新線

駅からすぐの場所に復元された門(土居宿 西惣門)がある。この周辺は出雲街道の土居宿にあたり宿場町の東西に2つの門を設けて国境の警備を行っていた。宿場町の両端に門を設けた例は全国でも珍しく、現在は西門だけ復元されている。

美作江見駅-岡山県美作市:姫新線

旧作東町の中心駅であり、街の中心には民家や商店が多い。駅はその中心から少し外れた場所にある。雰囲気の良い駅で、2008年のNHKドラマ「バッテリー」の撮影で使用され、2012年には第一生命のTVCM「知っておいていただきたいこと・風景」篇で“誰もが抱く大切な風景としてピッタリだった”として撮影に使用された。

楢原駅-岡山県美作市(無人駅):姫新線

楢原地区からは離れた場所に駅がある。周囲にはほとんど民家もなく、周囲には工場とため池があるのみ。駅の位置に関しては、南にある平福地区に配慮してこうなったのではないかといわれている。

県境越えのこの区間はあまり乗客の乗り降りがないかと思われたが、岡山県入りしてからおもいのほか乗客がいた。降りる人はそうおらず、乗ってくる人ばかりなのでおそらく津山市への通勤や買い物の事情なのだろう。上月駅ではスカスカだった車内だったが、この頃にはだいたい1つずつの間隔をあけてロングシートが埋まるほどになっていた。

いちばん端っこに座っていた若い女性が、何度もポニーテールをやり直していて、僕はもう朝っぱらか疲労で感情がぶっ壊れているので、「わかる、大切な人に会う時に何度やってもポニーテール決まらないこととかあるよね。わかる」といちどもポニーテールなんてしたことないくせに感傷的になって泣きそうになっていた。相変わらずこうなった時の感情の上下が意味不明すぎる。

林野駅-岡山県美作市:姫新線

美作市の代表駅で街の中心部に存在する。周囲には道の駅や美作警察署などがあり栄えている。太平洋戦争時にはこの「はやしの」という地名が早く死ぬようにきこえて縁起が悪いため、出征する地元の人々は縁起のいい名前である隣の「勝間田駅」から出征したという逸話がある。

美作市に入ったようで、周囲に住宅などが見えてきて賑やかになってきた。ここ林田駅では若い男性などが何人か乗ってきたのが印象的だった。数人の会話を聞いていると、大学生が休日に大学に行くような雰囲気があったので、もしかしたら津山市に向けてこうした大学生の通学需要もあるのかもしれない。

勝間田駅-岡山県勝央町:姫新線

令和3年に新しい駅舎に建て替えられた。田畑が広がる地帯と勝央町の中心部の街並みとの境界に位置する駅。駅の近くを国道が走っており国道沿いには多くの商店がある。

のどかな風景の中に佇む駅。乗客が増えてきたので撮影できなかったけどモダンで味のある駅舎だった。ただ、この駅に関してはひとつだけ言いたい。ひとつだけ苦言を呈したい。

いくらなんでも駅名標がボロボロすぎやしないだろうか。

なんらかの銃撃を受けたのか。

なにをどうやったらこの状態になるのか皆目わからない。

西勝間田駅-岡山県勝央町(無人駅):姫新線

入口が分かりにくい場所に駅がある。勝央町の中心からは外れた場所に駅が立地する。日に2本だけ設定されている快速列車も停車しない。

花がめちゃくちゃ綺麗な駅だった。これはかなり手入れされているのではないだろうか。

こういった無人駅は、地元の有志の人が手入れしていることも多い。植物を植えたり、清掃を行ったり、少しでも駅を綺麗に保とうと活動されている方がいる。駅を大切にする地元の人の心みたいなものが現れていることもある。もしかしたらこの駅もそういった思いが形になっているのかもしれない。

美作大崎駅-岡山県津山市(無人駅):姫新線

駅名の由来となっているのは旧大崎(おおざき)村であるが、駅名の大崎は「おおさき」である。駅名や地名に限らず、埼の「さ」が濁る濁らない問題は山崎さんなどに会ったときに多くの人を困らせるのでいい加減に統一して欲しい。

ついに津山市へと入った。周囲の景色は完全に街になっている。

ここにきて初めて気が付いたのだけど、サブ運転手みたいな人が運転席の横に椅子を置いて座っていた。上月駅を出たときにはいなかったはずなので、いつの間にかどこかの駅から乗り込んできたのだろう。

どうやら新人の運転手さんにベテランの運転手さんが横からアドバイスをしているみたいで、「ここで警笛を鳴らす」みたいなワンポイントアドバイスをしていた。そうやってノウハウが継承されていくのである。

東津山駅-岡山県津山市:姫新線、因美線

鳥取と津山を結ぶ因美線の終着駅。ただし、因美線はすべて隣の津山駅まで乗り入れてそこで発着となる。駅からすぐ近くの場所に「イナバ化粧品店」があり、津山市の重要な観光地となっている。

この駅でごそっと乗客が降りた。若い大学生風の人も大量に降りたのでもしかしたら近くに大学や専門学校などがあるのかもしれない。駅からはマクドナルドなどの商業施設が見え、かなり栄えている印象を受けた。

9:31津山駅-岡山県津山市:姫新線、津山線

岡山と津山を結ぶ津山線と姫新線、そして隣の東津山駅を終点とする因美線もすべて乗り入れているため、事実上、3路線4方向の路線を持つ駅。駅から川を挟んで津山市の中心部がある。2007年まではこの駅を発車する4時17分の始発が日本一早い始発だった。

ついに津山駅へと到達した。姫新線(上月-津山)の県境越えルートクリアである。

ここから2つのルート選択がある。どちらも維持困難路線だ。ひとつはこのまま姫新線を進んで新見まで行き、そこから昨日取り逃した芸備線をとっていくルート。もうひとつはここから因美線に乗って鳥取へと向かうルートだ。どう考えても姫新線から芸備線と入っていかないとダメそうなので、そちらを先に片付ける。そうなると待ち時間は30分とちょっとだ。

この20分から30分くらいの待ち時間が本当にやっかいだ。ただ待つだけの時間としてならそこそこに長いけど、食事や観光で時間を潰そうと考えると異常に短い。結果、手持ちぶさたな時間になってしまう。とりあえず、ただ茫然と待つのもつまらないので、なにか駅近くで観光できるものを探すことにした。

津山駅の周辺は綺麗に整備されている印象だ。駅全体が白壁風のデザインで統一されている。

駅前にはSLも展示されている。また、その後ろに見える大きなホテルも白壁風のデザインで景観を壊さないようにしていてポイントが高い。

B’zのポスターもドーンと貼ってある。津山市はB‘zの稲葉さんの出身地であり、東津山駅から近い場所にある実家のイナバ化粧品店はファンの聖地みたいになっている。

駅周辺を色々と探索した結果、近くに「津山まなびの鉄道館」があるらしいのでそこに向かうことにする。

歩き出してすぐに分かったのだけど、地図を見ると本当に駅の真横にあるのに徒歩で行くとけっこう遠い。津山駅は駅裏に出口がなく、鉄道館はその駅裏にあるようだった。けっこう大回りして歩いていく必要があり、想像以上に時間がかかってしまった。

やっとついたぞ、と思ったらもうかなり時間的に差し迫っていて、次の新見行きの列車に間に合うかどうかみたいな状態になってしまった。こりゃ、鉄道館の中に入らず、建物だけ見たら引き返すことになりそうだ。

これが津山まなびの鉄道館だ。ちょうど子どもの日にちなんだイベントをやっていたようでかなり賑わっていた。

津山扇形機関車庫をリニューアルして作られた鉄道館で、扇形車庫の迫力がすごい。きかんしゃトーマスにでてくるやつみたいだ。中に数々の車両があるようなので興味があるのだけど、いかんせん時間がない。駅の横なのに駅から遠すぎるよ。

名残惜しい思いを抱えつつ、急いで駅まで戻る。今度は線路沿いの小さな細道を駆け抜けてなるべく遠回りにならないように走った。列車の真横を通るダイナミックな路地だ。

途中、散髪屋があったので散髪でもしようかと思ったけど、さすがに時間がないのであきらめた。

駅のホームに駆け込む。本当にギリギリだったけどなんとか間に合った。

ほら、こうしてホームから見ても、さっきの扇形車庫があんなに近い。駅から跨線橋でダイレクトに行けるようにしてくれればもっと行きやすくなるのに。

17本目 10:07 津山発 芸備線 普通 新見行き

1両編成

乗客25人くらい

車内は混雑していた。ほとんどの座席が埋まり、数名は立っていた。もちろん、上月-津山間でみた剛の者っぽい人たちもそのままいた。というか、鉄道館でも見た。彼らはいち早く鉄道館に向かい、この僅かな待ち時間で中に入って何かを購入していた。あらかじめそういう計画だったのだろう。年季が違う。

ギリギリに駆け込んだ僕は当然のことながら座れなかったので立つことになった。

さて、ここからの区間の姫新線も維持困難路線である。

姫新線(津山~中国勝山)営業係数610 輸送密度820人/日

津山を出て最初はなだらかな平地を走るが、突如として山岳地帯に入る。なだらかな個所では通学などの需要も考えられる。山岳地帯に入ると危険個所が数か所あり、徐行運転を行う区間がいくつかある。途中駅は山間の集落の中の駅が多い。

院庄駅-岡山県津山市(無人駅):姫新線

津山市の市街地から少し外れた場所にある駅。周囲は田畑と民家がある。駅から少し離れた場所に複合型の商業施設「ウエストランド」がある。このウエストランドは2021年に建て替えられ、テナントも一新された。

美作千代駅-岡山県津山市(無人駅):姫新線

木造駅舎は大正12年の開業時に建てられたもので、津山市において最古の駅舎である。駅舎やホームの随所に大正時代の面影が残る。

さらりと書いてあるし、これまでにもそういった駅舎はあったと思うけど、よくよく考えると大正からの駅舎が残っているってのはすごいことだ。この駅に関してはどれだけ味のある駅舎が出てくるのか楽しみにしていたところがあった。

チラリと見えるだけでめちゃくちゃ味がある。

坪井駅-岡山県津山市(無人駅):姫新線

田畑の中心に駅があり、かなり見通しが良い場所になる。周囲をぐるりと見渡せ、列車が減速して駅へと向かうので、絶好の撮影ポイントになっている。

 

コイン精米所と見間違いそうな駅舎だ。いや、駅舎ではなくただの待合所だろうか。ただ、その下のコンクリート地面の感じを見ると、もともとは駅舎がありそれが取り壊されてこれが置かれたような雰囲気もある。古い駅舎が壊されるとこういった感じになるのだろう。

列車と景色の絶好の撮影ポイントのことなので注意して沿線の風景を眺めていたら、やはりカメラ構えている人がいた。三脚を建てて両手で2台のカメラを駆使して撮影していた。その動きは素早く、やり手のドラマーみたいな俊敏さがあった。

美作追分駅-岡山県真庭市(無人駅):姫新線

「追分」も正確に言うと地名ではなく状態を示したものだ。「備後落合駅」で落合は路線が落ち合う場所からきているとあったように「追分」は道が分かれる場所を示す。この駅の近くで古くからの出雲街道と備中往来の分岐があり、追分と呼ばれている。

美作落合駅-岡山県真庭市:姫新線

「追分」があったと思ったら「落合」も出てきた。駅名は真庭市の前身の旧落合町に由来する。こちらは路線が落ち合うのではなく、川が落ち合うことからそのような地名になっている。地図を見ると旧町内でしっかりと旭川と備中川が落ち合っている。姫新線は美作追分から大きくカーブを描いて美作追分、古見へと繋がっていくが、美作追分駅からまっすぐ古見駅につないだ方が最短距離となる。そうしなかったのは単に技術的な問題なのか、それともどうしても落合を通したいなにかがあったのか。たぶん、落合がこの周辺では比較的に大きな集落だからだと思う。

どうして美作落合で大回りしていると気づいたかというと、先の美作追分駅で次の駅を取ろうと駅メモ!アクセスをしていたら、この次の古見駅が先に取れてしまったからだ。まさか駅を飛ばしてしまったかと焦ったけど、落ち着いて地図を見てみたら線路が大きく迂回していたというわけだった。

けっこう頭がボーっとしてくると、駅メモ!のチェックインを忘れることがままある。そのときはこそっとレーダーというアイテムを使って取っているので、チェックイン画面が「check in」ではなく「Radar」となっていたら、ああ、ボーっとしていてレーダーで取ったんだなと思って欲しい。

古見駅-岡山県真庭市(無人駅):姫新線

駅舎はなく、ホームに簡易的な雨よけ付きベンチがある。周囲は田畑のみだが川を渡った先の国道沿いには多くの店舗があり栄えている。

久世駅-岡山県真庭市:姫新線

久世駅の周辺には、2011年に勝山から移転してきた真庭市の市役所庁舎がある。かつては旧久世町の中心駅でもあり、周辺には店舗も多い。バスの中心であるバスセンターは駅から少し離れている。

久世駅のホームからのぞむ山の景色は美しい。本当に静かな駅で心が落ち着く。

こういった、途中駅なのにホームから撮影した画像がある場合は、列車の行き違いのために数分の停車時間があるときだ。このときも4分ほどの停車時間があった。

「列車行き違いのため4分停車します」

というアナウンスが入ると、歴戦の剛の者っぽい人たちは列車を降りて撮影を始める。それに触発された撮影しない人も降りて屈伸運動をしたりする。ただ、いちばん研ぎ澄まされた剛の者は、この駅で4分停車するとあらかじめ分かっていて、停車する前から準備している。動きが早い。僕らがバタバタと降りる頃にはもう撮影を終えている。アナウンス聞いてから動いているようじゃ甘いぜと言われたような気がした。

停車時間があれば駅舎の撮影もあまり苦労しない。風情のある古い駅舎ながらバリバリの木造ではない。姫新線の駅舎では珍しいタイプのものだ。

川沿いの風景が続く。

中国勝山駅-岡山県真庭市:姫新線

旧勝山町の中心駅であり、真庭市でもっとも利用客の多い駅だ。開業当時に福井県にあった勝山駅との被りを避けるために旧国名である「美作」を冠して「美作勝山」とする案もあったが、将来は美作としての勝山ではなく中国地方の勝山として発展していくという当時の町長の言葉により「中国勝山」となった。

この駅に関しては思い出深い駅だ。僕の親戚が仕事の関係でこの近くに住んでいたことがあり、突然に電話がかかってきた。

住んでいる借家に霊が出る、怖いから様子を見に来て欲しいとのことだった。当時、広島に住んでいた僕がまあまあ近いよねということで様子を見に行くことになった。車を運転してかなり時間がかかったと思う。親戚は完全に怯えきっていた。夜になると数分だけ異様な音が響き渡るらしい。

そんなわけあるかいなと、一緒に待っていたら夜の10時くらいだっただろうか、本当に「ヒィヒィヒィヒィ」と音が響きわたった。親戚は震えてしまい、「ほらこの世のものとは思えない音が聞こえてきた!」とパニックになっていたけど、調べてみると隣の爺さんの風呂の換気扇の音だった。換気扇がきしんでいて、爺さんが風呂に入るときだけ動いてその音がしていたのだ。

「この世の音だった」

そう言った親戚のことを今でも覚えている。僕はまたかなりの時間をかけて広島に戻った。中国勝山駅はそんな駅だ。

駅は大きく立派なのだけど基本的に人がいないので静かだ。いまにもこの世のものじゃない音が聞こえてきてもおかしくない雰囲気だ。

この駅のひとつ手前、久世駅から赤ちゃんを抱っこした女性が乗ってきた。駅まで旦那さんが見送りにきていたのでよく覚えている。この駅あたりで抱っこされた赤ちゃんと目が合ってしまった僕は、楽しませようと変顔を駆使していた。そしたらガン無視された。ふつうもうちょっと喜んだりするもんじゃないのか。

ここからは維持困難路線の区切りが変わる。困難路線の切り替わりではお供の“でんこ”を替えていたのだけど、現在用いている「ゆめの」はけっこうお気に入りキャラなので、引き続き新見まで担当してもらう。

姫新線(中国勝山~新見)営業係数1349 輸送密度 306人/日

営業係数がついに4桁となった。ここまでのは久しぶりだ。

中国勝山駅を出て、川を渡る橋を通過したあたりから山深い場所へと入っていく。

山深い場所をトンネルを駆使して通過していく。この画像はなかなかいい絵が撮れている。なんと3つ先のトンネルまで見えているのだ。それくらいのトンネル連続地帯だ。

月田駅-岡山県真庭市(無人駅):姫新線

真庭市のはずれ、山間の集落の中心に駅がある。駅に咲く桜が有名で、日本で27本しか存在が確認されていない鬱金桜(うこんざくら)がある。駅舎もかなり古く趣きがある。

これはローカル線あるあるなのだけど、このように単線の路線においては、駅舎に1つのホームというスタイルが多くなる。ただし単線においては逆方向の列車をすれ違いさせる設備を駅に持たせる必要がある。そうなると、線路が二つにわかれ、ホームが2つになる(島状の1つの場合もある)。列車の本数が多い時代はそのすれ違い可能な駅が多く必要となるが、時代の流れと共に本数が減るとすれ違う必要もなくなる。こうして。交換設備が撤去されていく。

そうなると、明らかにこっちに線路とホームあったろ、という感じでその構造がそのまま残ることが多い。線路だけを撤去するのだ。この使わなくなったホームをそのまま花壇などにするパターンもある。

富原駅-岡山県真庭市(無人駅):姫新線

山深い場所の道路沿いにある駅。94年に改築された木造の駅舎が特徴的な駅。駅構内に大きなイチョウの木があり、秋になると黄色く色づいて美しい駅の景観を作り出す。

線路の左側の奥に見える大きな木がイチョウの木。秋にはこれが色づく。

刑部駅-岡山県新見市(無人駅):姫新線

刑部という駅名は、新見市に合併する前の旧刑部町からきている。駅から少し行った場所に幕末の儒家・陽明学者である山田方谷の記念館がある。

刑部駅の駅舎は綺麗で新しい。最近になって改築されたんじゃないだろうか。駅舎には見えず、一見すると普通の民家みたいに見える。

丹治部駅-岡山県新見市(無人駅):姫新線

特徴的な三角屋根の駅舎が印象的な駅。駅舎は大佐公民館との合築である。

車内の子どもがこの「丹治部駅」で「丹次郎っぽい駅」と叫んでいたので、確かに字が似ていてその通りだなと感心してしまった。

岩山駅-岡山県新見市(無人駅):姫新線

味のある木造駅舎が特徴的。この地域の中心駅である新見駅から1駅とは思えないほど山深い場所にある駅。

列車は新見駅へと向かっていく。いよいよ姫新線の終着駅だ。

11:50 新見駅-岡山県新見市:伯備線、姫新線

姫新線の終着駅である。新見市の中心駅で、中国地方の中間部の交通要所の駅。伯備線を運行する全ての特急、寝台特急が停車する。また芸備線の起点駅は備中神代駅であるが、運転系統上は新見駅が起点となる。

新見駅に到着した。長かった姫新線もこれにて終わりである。ここからはきのう取り逃した芸備線を取りに行くのだけど、そこには朝昼晩の3本しか設定のない最難関区間が含まれる。ここ新見では次の芸備線まで1時間ほどの待ち時間がある。完全に昼飯チャンスだ。思えば朝から何も食べていない。

ここ新見駅は、姫新線の終点なだけでなく、芸備線の運行上の始点でもある。また、岡山から米子を経由し、出雲市とを結ぶ伯備線も通っており、特急も停車する。駅の利用者は多く明らかにこのエリアの中心駅であり交通の要だ。

駅すぐの場所は山が迫っており、その反対側に市街地が広がっている。

そして駅前を大きな川が流れる。市街地ではあるけどほとんど車の音も聞こえず静かなのでサラサラと川の音が聞こえる。心地よい光景だ。

なんとか食事をとらねばならないと考えていると目の前にラーメン屋が現れた。駅から12分ほど歩いた幹線道路沿いだ。お昼の時間帯ということもあるのだろうけど、人気があるようで、店の前には行列ができていた。

次の備後落合行きの列車まではあと40分くらい。これから並んで食べて駅まで戻ることを考えると実質的には28分くらいしか使えない。その間に席に通されてラーメンを注文して作るのを待って食べる。ギリギリかもしれない。

ただ、僕には打算めいたものがあった。休日のお昼ということもあって、並んでいるのはほとんど家族連れだ。それも5人も6人もいるような団体だ。そういった席は混雑しているけれども、カウンター席はすいている。単独客で並んでいる人もいない。つまり、「順番前後してもうしわけありません。さきに一人のお客様をお通しします」みたいになる可能性が高い。

それを期待して並んでいたところ、まったくそう言うことはなく、普通に順番通りに案内された。残り時間はそうない。

駅までは徒歩で12分。走れば8分くらいで行くか。そうなると使える時間がこれくらいあって料金を払って切符を買ってと計算する。ラーメンが出てくるのに10分かかるとして4分で食えばいけるか。

ここで、本当に書きたくなかったのだけど、書かないわけにもいかないので書かせてもらいますけど、まず、出てきたラーメンはめちゃくちゃ美味かった。昔ながらの澄んだスープで、面がやや太く、薄めのスープと良く絡んで、爽やかながら深い味わいを演出していた。人気があるのも納得の味わいだ。あまりの美味さに本当に4分でスープまで飲み干したほどだ。

それは全然いいのだけど、かなりの空腹だった、そしてめちゃくちゃ急いでいた、そういった事情が重なって、ラーメンの写真を撮り忘れてしまったのだ。これは取材ライターとして致命的! とかそんなことはどうでもよくて、あまり書きたくないとい言ったのは、「ラーメンに夢中で写真を撮り忘れた」なんて、むちゃくちゃ食いしん坊の人みたいじゃないですか。ケロッグもう我慢できないみたいにラーメンに飛びついているみたいじゃないですか。だから書きたくなかったんですよ。

しかしまあ、ラーメンの様子が分からないのも良くないので、なんとかならないかと探したところ、ちょうどこの時にスマホを操作していたら、意図せずにカメラが起動してしまい、そのプレビュー画面を意図せず画面キャプチャしてしまった画像が出てきましたよ。そこに奇跡的にラーメンが写っていました!

衝撃映像かよ。

なんかこの生々しい感じが本当にラーメンに飛びついているみたいで恥ずかしい。

ラーメンを食べ終え、小走りに駅へと舞い戻り、次の列車に間に合ったのでほっと胸をなでおろした。

思いのほかラーメンが出てくるのが早かったのでけっこう余裕をもって駅へと到着した。津山方面へ向かう姫新線の車両と、これから乗る三次方面への芸備線の車両が並んでいた。

18本目 13:05 新見発 芸備線普通 備後落合行き

1両編成

乗客40人くらい

車内は完全に満員だった。引き続き剛の者っぽい人もいるし、さらには列車の前方からムービーで撮影したい感じの人が増えていて、いい場所の取り合いみたいになっていた。かと思ったら「亡命?」と思うほどの大量の荷物を持っている人などかなりカオスな状態になっていた。

おそらく、ここから備後落合や三次に用事があってこれに乗っている人はほとんどいないと思う。そのほとんどが、日に3本しか設定のないレアな路線を乗ろうときている。休日だからそういう人が多いけど、やはり平日はそこまでではないと思う。

芸備線(備後神代~東城)営業係数4129 輸送密度81人/日

新見から東城のこの区間は東城で折り返す列車が3本設定されているため、日に6本の列車がある。営業係数は4129と驚異的でかなりの赤字路線だ。

備中神代駅-岡山県新見市:伯備線、芸備線

伯備線と芸備線の駅。芸備線は備中神代駅が起点だが全ての列車は新見駅を発着とする。隣の布原駅は伯備線の駅でありながら伯備線の列車は普通列車も含めて停車せず、乗り入れた芸備線のみが停車する。かつては木造駅舎があったが2001年に解体されてしまった。

坂根駅-岡山県新見市(無人駅):芸備線

木次線の「出雲坂根駅」でもあったように、坂根とは「境」を表す意味合いと「坂の根」つまりここより山越えルートが始まることを示している。出雲坂根駅では駅より三段スイッチバックが始まるほどの上り坂であった。ここ坂根駅でもここより広島県との県境越えの険しい山道が始まることを示しているのだろう。

市岡駅-岡山県新見市(無人駅):芸備線

駅舎は最近になって建て替えられ新しい。深い山間にあり、ここしか通す場所がないのか鉄道も高速道路も国道もすべてこの谷間を通っている。

矢神駅-岡山県新見市(無人駅):芸備線

この区間の芸備線の駅では唯一のすれ違い可能駅。駅名の由来は「矢田」と「上神代」の2集落が合併したときに1文字ずつとって村名をつけたことから。

野馳駅-岡山県新見市:芸備線

古い木造駅舎が特徴的。駅から周囲に商店が連なる小さな商店街がある。芸備線における岡山最後の駅。次の駅からは県境を越えて広島県となる。

東城駅-広島県庄原市:芸備線

山中の広島-岡山県境、その広島側の駅。新見から来た芸備線の半分はこの駅で折り返す。ここより備後落合駅を目指す路線は日に3本しかなく、全国でも有数の閑散路線となっている。旧東城町はこの区間の沿線としては大きな町で、その中心にある駅の周辺は民家や店も多い。備後西城駅のところで解説したけど、東城とは2つの城のうち東側の城があったことに由来する。

ということで、東城までやってきてこの区間をクリア。

ここからは最難関区間である芸備線(東城~備後落合)へと入っていく。

芸備線(東城~備後落合) 営業係数25,416 輸送密度11人/日

山深い東城から山深い備後落合まで続く山深い路線。日に3本だけの列車が走る。間違いなく最高難度の路線。営業係数は2万5千を超えている。100円稼ぐのに2万5千円以上の経費を必要とする。これが個人の仕事だったら100円の利益のために2万5千円支払わされるわけで、悪い詐欺に引っかかっていることを疑うレベル。輸送密度2000人/日以下の路線がこの維持困難路線に挙げられているが、その輸送密度が11人/日と2000人どうこうのレベルではない。

さきほどまでの景色も十分に山深いものだったけど、さらに一段、山深くなったような印象を受ける。これが営業係数2万5千越えの路線、と思うと何とも言えない凄みみたいなものを感じる。車内の乗客の多くもそんな感じでちょっと色めきだっていた。

山深いエリアでは列車が唸りをあげて進むようだった。そんな長く苦しいエリアが終わると開けた場所に出て、水を張ったばかりの綺麗な水田の景色が広がっていた。そこに次の駅があった。

備後八幡駅-広島県庄原市(無人駅):芸備線

静かな山間にある駅。列車も1日に三往復しか来ないため本当に静かなロケーションになっている。以前は駅周辺の簡易郵便局に切符の販売を委託する簡易委託駅であったが現在は解除されて無人駅

駅メモ!画面の、本来「check in」と書かれているべき場所に「rader」と書かれていると思う。前述したようにボーっとしていて取り忘れたときなどに後からレーダーというアイテムを駆使して取ったよという表示だ。

ただし、ここに限ってはボーっとしていたのではなく、思いっきりスマホが圏外なので取れなかっただけだ。2駅ほど進んで電波が復活した後にレーダーで奪取した。

備後八幡駅のホーム。なぜか駅名標の看板のところがストラックアウトでぶち抜かれたみたいになっている。何があったんだ。

山深く、川を間近に望む地帯と、少し穏やかでちょっとだけ開けた田園風景とが繰り返される。

あまりにも繰り返されるものだから、最初はさすが営業係数2万5千! みたいに興奮気味だった車内の雰囲気もちょっと落ち着いてきた。

内名駅-広島県庄原市(無人駅):芸備線

1日に3往復しかない路線の中でもさらに、国道からも外れ閑散とした場所にあるため到達困難な秘境駅としてしばし取り上げられる。ただし周囲に数件の民家がある。鉄道に乗って到達し、下車した場合、次の列車までの待ち時間が多く発生する。2022年現在のダイヤでは、新見発の始発に乗り、6時6分に当駅に到着すると次の備後落合行きは8時間後である。そのため折り返して来た7時11分の新見行きに引き返す手法が一般的だ。

小奴可駅-広島県庄原市:芸備線

周辺集落の中心的な駅。駅前にはタクシー会社とスーパーがある。駅から少しのところにある要害桜はサクラとして広島県内有数の巨樹であり、県の文化財にも指定されている。

難所を抜けたのか、風景が落ち着いてきた。開けた部分の面積も大きく、住宅も多く見える。

道後山駅-広島県庄原市(無人駅):芸備線

駅西側にスキー場が隣接しており、スキーシーズンのみ有人駅となることもあった。ただしこのスキー場は2015年に閉鎖となり、ゲレンデ跡が残るだけになっている。そのほかは周囲に数件の民家があるだけである。ここから先の芸備線は山を避けるように大きく迂回する。

14:27備後落合駅(2回目)

備後落合駅に戻ってきた。これで最難関路線をクリアだ。

昨日も来た備後落合駅だけど、なんだか様子が昨日とは違う。

明らかに昨日より人が多く、活気がある。たくさんの人が駅構内にいて、観光客っぽい集団を引き連れて備後落合駅の歴史を語るガイドみたいな人もいる。

昨日はけっこう閑散としていたのになんでこんなに様変わりしているんだ、と思うのだけど、おそらく時間帯の問題だろう。昨日よりも到着時間が早い。そうなると列車の関係で多くの人が集まる時間帯があるのだろう。

この時間帯の芸備線の接続は良い。到着から16分ほどで三次方面への列車が出るようだ。

19本目 14:43 備後落合発 芸備線 普通 三次行き

日に5本しかない三次方面への芸備線と、日に3本しかない新見方面への芸備線の共演だ。かなりレアだと思う。

さて、ここからは昨日も通った路線だ。ここからは三次方面へと向かい、塩町から分岐する福塩線へと乗り継いでいく。もちろんそこも維持困難路線だ。

15:51 塩町(2回目)

昨日と同じ雰囲気の沿線を味わいながら1時間ちょっとの乗車時間で塩町へとやってきた。ここから福塩線へは1時間ほどの待ち時間があるらしい。

ただし、きのう撮影した塩町駅の風景はこれである。正直に申し上げると、ここで1時間はまあまあ苦しい。また意味不明にクレーンとか見に行く羽目になってしまう。

16:03 三次駅(二回目)

運賃:4,070円

ということで、三次駅までやってきた。塩町から分岐する福塩線はすべて三次駅を発着するからだ。どうせ1時間の待ち時間があるのならば三次駅の方が良い。

きのう断念した広島風お好み焼きを食べに来た。あまりに時間がなくて断念したけど、今日はたっぷりある。

肉玉焼き850円。今度は取り忘れることないよう、しっかりと撮影してから食べた。美味かった。やはり乗り換え待ちは1時間程度必要だ。そうすれば優雅に食事ができて有意義に過ごすことができる。落ち着いているので撮り忘れもない。

20本目 16:53 三次発 福塩線普通列車 府中行き

1両編成

乗客は15人ほど

乗客の構成は普段使いの住民の方々が半分、そしてローカル線に乗りに来た剛の者な方々が半分といったところだろうか。ローカル線はかなり本数が少ないので、乗り継ぎを考えた場合に同じ路線になることが多い。

つまり、朝から姫新線、芸備線と乗り継いできたけど、車内にいる剛の者メンツはだいたい同じだ。もう知り合いみたいなもので連帯感みたいなものが生まれてくる。

面白いのは、人によってテンションが上がる路線が異なることだ。芸備線でテンション上がってバルログみたいになっていた人が、福塩線ではトーンダウンしている。かと思ったら芸備線ではそうでもなかった人が福塩線ではテンションがぶちあがっている。なかなか面白いものだ。

つごう3回目となる塩町駅を通過し、いよいよ福塩線へと入っていく。

福塩線(府中~塩町)営業係数2,581 輸送密度162人/日

広島県福山市から三次市の塩町までを結ぶ路線。路線としては塩町駅までだが全ての列車が三次駅まで乗り入れる。特にこの府中-塩町区間ではほとんど通学での利用しかないため日中に7時間以上も列車の設定がないことがある。

三良坂駅-広島県三次市(無人駅):福塩線

駅舎が立派である。この駅舎は旧三良坂町時代の町長が一億円ふるさと創生事業資金の利息を利用して建て替えている。かつての三良坂町の中心であるため、駅周辺にはひととおりの商店は揃っている。

1億円かけたという駅舎をどうしても撮影したかったけれども、位置関係的に難しかった。なので、駅舎とは反対側にあった、どう考えても反対側にもホームがあったけど使わなくなった線路を撤去し、余ったホームを庭園風にした画像を撮影しておいた。

三良坂駅を出ると一気に住宅が見えなくなる。山間の田んぼだけが優しく傾いた陽の光を反射している、そんな光景が続いていく。

このように水を張ったばかりの水田は美しい。

しかしながら、田植え直後の整然とした感じもなかなか捨てがたい。

吉舎駅-広島県三次市(無人駅):福塩線

沿線の高校が新型コロナ感染拡大防止の対策として時差登校を行うのに対応するため、平日に限り三次駅との間で臨時の便が増発された。三次駅と当駅間では通学需要が高く、通学時間帯にはかなりの高校生が利用する。

この駅までの通学需要があるため、三次からきてこの駅で折り返す設定の列車がある。つまりこの先はさらに本数が減ることになり、朝6時台の列車の次が午後3時台と9時間の間隔が空く時間帯がある。

備後安田駅-広島県三次市(無人駅):福塩線

駅の近くを上下川が流れている。とてものどかなロケーションの駅で、通学需要がなくなるため、一気に利用者が減る。前の吉舎駅で1日平均160名程度だった乗車人員はこの駅で数人にまで落ち込む。かなりの落差がある。

なぜか駅には風車がいっぱい飾ってあった。誰もいない駅に風に吹かれた風車がカラカラと回る音だけが響いていた。

梶田駅-広島県三次市(無人駅):福塩線

駅舎はなく、簡易的な雨よけがあるだけの駅。周囲にも民家が少なく、田畑が広がっている。

甲奴駅-広島県三次市(無人駅):福塩線

それがなんだという気がしなくもないが、JR内で「ぬ」で終わる唯一の駅。ただ、こういうポイントでむりやりアピールしていくスタイルは嫌いじゃない。もっと前面に押し出していくべきだ。旧甲奴郡の中心地であり、周囲に住宅が多い。

上下駅-広島県府中市:福塩線

旧上下町の中心駅。旧上下町は旧石見銀山から瀬戸内海への銀山街道の宿場町の一つであり、天領とされ、両替商など金融業で栄えた町だ。駅周辺には民家も多く、旧町内は歴史的な観光名所も多い。

明らかに撮影に失敗しているけど、駅構内には福塩線最高地点がある。その高さは383.74 mだ。

僕は旧上下町に関して一家言ある男だ。上下駅から少しの場所に翁山という標高500mほどの山がある。クリスマスシーズンともなるとこの山にまるごとクリスマスイルミネーションが施され、世界一の巨大クリスマスツリーとして大々的に盛り上がる。僕が大学生くらいの頃からやっていて、調べてみると最近までも続いているようだった。いまではすっかり上下町の冬の風物詩という情報も出てきた。

大学生だったころ、好きだった女の子をこのロマンティックな世界一のツリーに誘おうと目論んだのだ。夜に点灯されるツリーを見にいくということは、必然的に夜のドライブになるわけで、おまけに同じ広島県でも上下町はかなり山奥にあるわけで、帰りが遅くなる。いろいろと期待してしまうシチュエーションだった。

夜の山道を上下町に向かって車を走らせる。隣には彼女、車内にはMr.Children、街灯の灯りが光の粒のようになって彼女の頬を照らす。

「寒いしコーヒーでものもっか」

展望台みたいになっている場所に自動販売機があって、その光に誘われてみたこともないような虫が蠢いていた。

「やだ、虫がいっぱいで気持ち悪い」

「俺が買ってくるよ」

虫が怖いなんてなんてかわいいんだと思いつつ、暗闇の中を歩く、自販機の灯りだけを頼りに歩いて行って、そのまま崖下に転落した。暗くて全く見えなかった。

幸いにもすぐ下にも小さな段があって、事なきを得たのだけど、その際にメガネをなくしてしまった。たぶんメガネだけはるか下に落ちていった。

「メガネがないから運転できない」

「私は免許がない」

結局、タクシーを呼んで帰った。携帯電話も圏外で、近くの民家で電話を借りて呼んだと思う。タクシー来るまで1時間くらい待った。その間、彼女も僕もずっと無言だったことを覚えている。

そんな苦い思い出のある上下駅だ。

備後矢野駅-広島県府中市:福塩線

駅舎内に食堂が入っており、福塩線の名称にちなんだ福縁うどんが人気。駅舎内にもさまざまな福縁にちなんだ仕掛けがあり幸運のスポットとして人気がある。この駅は「なにこれ珍百景」にも紹介されている。ローカル線の駅は珍百景に登場することがなにげに多い。

本当にしっかりと駅舎内にうどん屋があった。

それ以外にも、無骨な感じの見所が多そうな駅だ。なんか辻堂みたいなものもある。何が祀られているのだろうか。

ちなみに、この横には「便所」という案内表記があった。これまでの福塩線のどこかの駅でも見た気がするので、この区間の福塩線内ではトイレのことを便所と表記するのがスタンダードなのかもしれない。

備後三川駅-広島県世羅町(無人駅):福塩線

世羅町唯一の鉄道駅となるが、街の中心からは大きく離れた集落の中にある。位置関係的に世羅町の人はあまり使わないだろう駅だ。

駅舎はかなり立派だ。そしてここにも「便所」だ。

やはり「便所」で表記を統一しているみたいだ。

備後三川駅を過ぎると、かなり川が近くなってくる。川沿いのダイナミックな景色が見られるようになる。

さきほどの「備後三川駅」も、これから向かう「河佐駅」もどちらも駅名に川か河が入る。それほどこの地区では生活と川が密接な関係にあるのだろう。

河佐駅-広島県府中市(無人駅):福塩線

近くの河佐峡は川遊びやバーベキューが楽しめる場所として人気。

河佐駅を出ると景色が急速に移り変わっていく。

このように急に開けた場所に出たかと思ったら、次には山が迫ってきていたりする。

山の斜面には多くの住宅が建っていて、それを皮切りに徐々にではあるけど住宅が増えていく。

中畑駅-広島県府中市(無人駅):福塩線

川を挟んだ向かいにはいくつかの住宅があるが、駅周辺にはなにもない。すこし離れた場所に集落があるが、それも数件程度の小さなものだ。ただただ芦田川の水の音だけが聞こえる、そんな駅。

下川辺駅-広島県府中市(無人駅):福塩線

府中駅の1つ手前の駅であり、周囲に住宅が増えてくる。この駅を出ると芦田川に沿って大きく迂回をしながら府中駅へと進んでいく。

あまりにこの駅に関する情報がないので、ちょっとグーグルのクチコミ情報を調べてみたら「僕の恋はここからはじまった。彼女とキスしたのもハグしたのもこの駅」という情報しか出てこなかった。

18:39 府中駅-広島県府中市:福塩線

この駅をキップに印字する場合は「(塩)府中」と印字される。これは福塩線の駅であることを示しており、徳島にあるJRの「府中駅(こうえき)」と区別するためだ。府中は駅名として人気があり、僕が知る限りで4駅あり、府中本町など府中を含む駅では7駅存在する。

福塩線(府中-塩町)もクリア。

福塩線はまだまだ先につづき、福山駅まで続くけど、ここからは列車の本数もかなり多くなり、利用者も多い。何両編成かもわからない長い列車がどんどことやってくるので完全に別世界の趣だ。

21本目 18:42 府中発 福塩線普通 福山行き

車両数 いっぱい

乗客 いっぱい

やはりここからは利便性が桁違いなだけあって乗り換え待ちも3分ほどしかなかった。福山駅に到着する頃には、周囲は暗くなっていた。

19:30 福山駅-広島県福山市:山陽新幹線、山陽本線、福塩線

運賃:1,690円

もう暗くなってしまったのでなるべく維持困難路線は取らないようにしたい。ただし、明日の始発から効率的に動けるように準備しておく必要がある。様々な可能性を考え、入念に経路を検討する。

福山駅は駅から城が見える。ライトアップされていてとても綺麗だ。城を眺めながら新幹線ホームへと移動することにした。そう、ここからさらに移動する。

22本目 20:01 福山発 山陽新幹線 こだま 岡山行き

 

ここより新幹線移動を行い、一気に岡山駅まで移動する。

岡山-岡山市北区:山陽新幹線、山陽本線、宇野線、津山線、吉備線

運賃:2,750円(自由席新幹線特急券1760円を含む)

中国地方の中心となる駅。山陽地方を東西に移動する山陽本線だけでなく、山陰方面や四国方面への列車も発着する。

 

もう20時を超え21時になろうかという時間だ、さすがにここで本日の移動はおしまい、明日に備えてゆっくり休みましょう、といきたいのだけどそういうわけにはいかない。

まだ津山まで行く列車がある。きょう通過した津山駅にもう一度戻ろうという作戦だ。

ここで津山まで移動しておくことはかなり大切だ。

ここ岡山駅から津山までの津山線は維持困難路線ではない。しかしながら、その先の因美線が維持困難路線であり、津山から先を取っておく必要がある。そしてその因美線もそこそこに本数が少ないので、しっかりと始発で取ろうという作戦だ。始発で取るには今夜中に津山駅に到着しておく必要がある。困難な路線は始発で、どこかで述べた攻略法だ。

津山線の出発までは30分ほどある。ここらでしっかりと食事をとりたいのでちょっとした立ち食いそばを食べたいと探す。

あった。理想どおりの蕎麦屋だ。しかも絶賛営業中。今までのパターンで行くとすでに閉店しているみたいな展開が待っているのだけど、それもなさそう。今が20時28分くらいなので、20時閉店ならもっとひっそりしているし、21時閉店ならまだまだラストオーダーではない。よし、ソバ食うぞ。

閉まっていた。なんで?

20:30閉店のパターンは考えていなかった。

閉店時間になった瞬間、鬼のような速さでシャッターが閉まった。すごい速さだった。何人たりとも寄せ付けない鉄壁の城塞みたいなシャッターだった。

23本目 21:05 岡山発 津山線 普通 津山行き

2両編成委

乗客30人ほど

岡山という大きな街から離れていく夜中の列車らしく、進めば進むほど乗客が降りていく、そんな列車だった。最終的には7人くらいまで減っていたと思う。

 

22:34 津山駅(2回目)

運賃:1170円

 

1時間30分ほどの乗車を経て、本日2回目の津山駅に到着したのは22時30分過ぎ、もう23時になろうかという時間だった。もうヘロヘロではやく宿に入って休みたいのだけど、明日の始発だけはチェックしておかなければならない。因美線、智頭方面の始発だ。ここを始発で効率よくクリアするため、無理して津山駅まで来たんだ。絶対に始発に乗らなくてはならない。

は?

智頭行き、5時1分。

あまりに始発が早すぎる。いまから6時間後じゃねえか。

これはもう宿泊ではありませんよ。1泊ではありません。6時間です。

きょうは奮発していい値段の宿を抑えたのに、これから移動してチェックインして23時、そして4時30分にはチェックアウトしたいから5時間30分くらいしか滞在できないのか。もちろん朝食もなしか。とんでもねえな。

もう一度いう。これは宿泊ではない。6時間だ。

ということで、津山の夜は更けていく。6時間後の出発に向けて。

といったところで3日目は終わり。まとめはこちら。

制覇した維持困難路線(累計19/30)

姫新線(播磨新宮~上月)、姫新線(上月~津山)、姫新線(津山~中国勝山)、姫新線(中国勝山~新見)、芸備線(備中神代-東城)、芸備線(東城~備後落合)、福塩線(塩町~府中)

アクセス駅数 113駅(累計343駅)

総移動距離 408 km(累計1374 km)

数字の9を描くようにして移動してきた、多くの維持困難な区間を持つ姫新線、芸備線をすべてクリアできたことは大きい。明日は5時1分という異常な始発から因美線を攻略し、その後、山陰本線を取りにいく作戦だ。でもいくらなんでも6時間はひどい。

4日目につづく!

【次のページ】4日目

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