【徒歩で100km】廃線になる三江線の全駅を死にそうになりながら記録してきた
三江線をご存知でしょうか?島根県江津市の江津駅から広島県三次市の三次駅まで35の駅を繋ぐ路線です。その三江線は利用者が少なく、惜しまれながらも2018年3月末までの営業をもって廃線することになりました。そして全長100km以上もある廃線前の三江線を、あるライターがその大半を徒歩にて全駅を訪れ必死でレポートいたしました。
さて、ここでもう一度戦略的な話をさせてただきたい。まずは、ここまでの行程をまとめると次のようになる。
次のワープ列車まで約1時間半、これまでのペースでいけば急いで歩いたとしても2駅程度しか移動できない。そうなると、難しくて漢字が読めない「石見簗瀬」から「明塚」までワープをすることになりそうだ。しかしながら、ここで重大な問題が発生する。
読めない駅から「明塚」まではたぶん近い。こんな区間で貴重なワープを使うなんてバカがやることだ。勝負を賭ける男ならここは黙ってもう一つ先の長そうな区間でワープを決めるしかない。
1時間半で2駅でもけっこうきつそうなのに3駅いくとなるとこれはもう狂気の沙汰。
それでもやるしかないのである。やってやろうじゃねえか、徒歩じゃねえ、Runだ、Run。これより我ら修羅に入るっっ! とか訳の分からないことを叫びながら走り出していた。
のどかな風景を尻目にとにかく走る、走る。ここまでのロング徒歩で体のあちこちに違和感があるのにこの仕打ち。体がバラバラになりそうなのを感じながらとにかく走った。
三江線利用促進キャンペーンみたいなものをやっていて、道路沿いにのぼりがたてられていた。「さあ、三江線に乗ろう」である。うるせえ、こちとら乗りたくて走ってるんだ。
見えた! あれが駅だ。ゼイゼイと呼吸を乱しながら、まずは1駅間を走り切った。
目次
- 三江線全駅巡り 駅No.13 乙原駅 15:15
- 三江線全駅巡り 駅No.14 石見簗瀬駅 16:22
- 三江線全駅巡り 駅No.15 明塚駅 16:51
- 三江線全駅巡り 駅No.16 粕淵駅 17:00
- 三江線全駅巡り 駅No.17 浜原駅 17:38
- 三江線全駅巡り 駅No.18 沢谷駅 18:57
- 三江線全駅巡り 駅No.19 潮駅 19:09
- 三江線全駅巡り 駅No.20 石見松原駅 20:44
- 三江線全駅巡り 駅No.21 石見都賀駅 4:21
- 三江線全駅巡り 駅No.22 宇都井駅 6:18
- 三江線全駅巡り 駅No.23 伊賀和志駅 6:35
- 三江線全駅巡り 駅No.24 口羽駅 7:30
- 三江線全駅巡り 駅No.25 江平駅 8:32
- 三江線全駅巡り 駅No.26 作木口駅 8:57
三江線全駅巡り 駅No.13 乙原駅 15:15
江の川や国道より少し離れた場所にかなり大きめの集落があり、その中心に駅が存在していた。集落は田園地帯が広がり、郵便配達のおじさんが畑の横でお婆さんと立ち話している、なんてのどかな風景が見られた。 ここも日当たりが悪いのか、ホームは全体的に苔むしていた。
急げ! あと2駅!
のどか、かつダイナミックな風景に浸っている暇はない。今はただとにかく走れ! 間に合わなくなるぞ。
「さあ、三江線に乗ろう」うるせえ、わかっとるわ。
走っていると、先の方にバス停が見えた。もしここでバスに乗ることができれば大逆転、一気に楽になるかもしれない。もしかしたら駅行きがあるかも、そして奇跡的に時間も丁度良くて、なんてことを期待しながら近づくと、
時刻表は乱暴に剥ぎ取られていた。何者かに略奪されたのか、それともこのバスは廃止されたのか。やはり走り続けるしかないのだ。
三江線全駅巡り 駅No.14 石見簗瀬駅 16:22
走ったのは完全なる戦略ミスだ。途中バテててしまい、普通に歩くより時間がかかってしまった。
「いわみやなぜ」と読むらしい。なぜ「簗」の文字のところだけ修正した痕跡があるのか、漢字でも間違っていたのかと気になるところだが、これであと1駅だ。
駅は、またホームの片側を潰している駅だった。駅周りに民家が集中していて、賑やかな印象を受けが、反面、駅にはほのかな寂しさが漂っていた。
ワープ列車が来るまであと25分。走れば間に合う距離だが、先ほどの区間でとんでもないペースダウンをしたことを考えると、かなり厳しい。いや、でも行くしかないだろう。ここで諦めたらなんのためにここまで頑張ってきたんだ。とにかく走れ! それしかないだろ!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! いそげえええええ。
途中、すごい大きな水力発電所みたいなものが見えた。
「さあ、三江線に乗ろう」やかましいわ!言われなくても乗るわ!
とにかく走れ。列車が来るまでには、まだ間がある。私を、待っている列車があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている列車があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。
メロスは黒い風のように走った。
森林に差し掛かると、遥か上の方、木の上の方から奇妙な鳴き声が聞こえた。
キーキーと鳴くその声は、野生の猿のものだった。ものすごく動きが早くて木から木へと飛び移っていて写真に収められないのだけど、上の画像の中にも少なくとも5匹は隠れている。いつのまにか、大量の猿に取り囲まれていた。北斗の拳の最初の方の一族みたいな状態だ。
もしかしたら、僕がリュックにぶら下げている非常食を狙っているのかもしれない。一斉に襲い掛かられて奪われてはひとたまりもない。取られるくらいなら食っちまおうと走りながら非常食を全部食べた。
遠くから踏切の音が聞こえた。
やばい、列車がきている。駅は? 見えた!
はるか遠くに駅舎のようなものが見えた。
三江線全駅巡り 駅No.15 明塚駅 16:51
駅に到着すると同時に列車が滑り込んできた。完全にギリギリ。猿に襲われていたら間に合っていなかった。
ここを取れたのはかなり大きい。俄然、後の展開が楽になった気がする。駅の周囲は、えっと、走って飛び乗ったのでよく覚えてないや。まあ、駅だった。民家もあった、たぶん。
完全にマリオがスター取った状態。
できることならずっと乗っていたいが、無情にも数分で次の駅へと滑り込んでいった。
三江線全駅巡り 駅No.16 粕淵駅 17:00
ワープ列車は無情にも行ってしまわれた。ありがとう、ワープ列車。
ここ粕淵駅で降りる人は意外にも多かった。おそらく次の列車が比較的短い時間でやってくることを見越し、散策のために降りたりするのだろうか。周囲や駅舎を撮影している人も何人か見られた。もちろん周囲に民家も多く、生活のために利用している人も他の駅より多そうだった。
ホーム自体は普通の造りだったが、やはりこれも両側にあったであろう線路を片側だけにしている。島形式のホームを活かせていない事態になっている。
この駅はこれまでの駅で随一と言って良いほど駅舎が立派だった。比較的新しく大きな建物だ。
ただし、駅舎の大部分は地元の商工会みたいな団体が使っていた。駅の待合室がおまけっぽくひっついているだけである。
しっとりと日が暮れてきた。山間部は日が傾いてからが早い。山がその光を隠すため、あっという間に夜の闇が覆い始めるのだ。
さて、次は浜原駅という場所を目指すわけだが、駅自体はさほど遠くはないが、ここでまた戦略的なお話をさせていただきたい。
賢明な読者の方ならお気づきかもしれないが、もう一度、おさらいのために時刻表を眺めてみよう。
例えばこれは、ずいぶん前の木路原駅の時刻表だが、三次方面の列車の多く、5本中3本が「浜原行き」であるところに注目したい。つまり江津-三次間を走る三江線であるが、一気に三次まで行くタイプの列車は少なく、その大半が浜原行きであるのだ。
つまり、浜原を境にして列車の運行が大きく異なることが予想されるのである。江津-浜原間の列車設定がほとんどであるように、三次-浜原間の列車もまた独自に設定されているに違いない。結論を言うと、ワープ列車のダイヤが大きく変わる可能性がある。浜原駅はそんな転換点となる駅なのだ。
さらに戦略的な話をさせてもらうと、浜原駅より先に1か所、大きな問題が存在している。とりあえず、そこに触れる前に、ここまでの行程まとめをみていただきたい。
浜原より一つ先の沢谷という駅と潮という駅の行程に深刻な問題が存在する。地図を見てみると、
三江線は沢谷を出た後に大きく右に曲がって潮駅に向かう。どうやら、そこで大きな山を越えるようで、地図を見る限りほとんどトンネルしかないようなルートを通るようだ。つまり、このルートの脇には並行して走る道路がない可能性が高い。
そうなると、沢谷駅をクリアした後、来た道をもう一度戻る大回りルートを通らなければならなくなる。これは大変なロスだ。できることなら避けたい。つまり、沢谷-潮間はワープ必須区間なのである。ここをワープできるかどうかが勝敗を大きく分ける。いわば天王山だ。日が落ちたから、なんて言ってられない。とにかく行ってみるしかない。
すっかり暗くなってしまったが、粕淵駅から浜原駅はそう遠くはない。さすが、三江線の中間の起点となる駅だけあって、周囲の集落はかなり大きかった。
三江線全駅巡り 駅No.17 浜原駅 17:38
起点となる駅だけあって、ホームの造りはかなりしっかりしていた。二つのホームが機能し、江津方面、三次方面ときっちり振り分けられていたようだ。
駅には三江線全通を記念した石碑もある。
さて、問題は時刻表である。この駅を境に変わるであろう時刻表、しっかりとワープ必須の場所でワープできるのか。固唾を飲んで覗きこんだ。
イエス。まだ列車はある。現在の時刻が17:40。17:04というやつは逃してしまったが、まだ最終の18:51に乗ることができる。これが来るまでに沢谷駅に移動し、そこからワープすればいいのである。沢谷駅までの距離を考えてもかなり余裕がある。
完全に日が落ちてしまい、すっかり夜になってしまった。そんな中をひた歩いていると急に心細くなってくる。民家からは夕ご飯の匂いと食器が擦れ合う音が聞こえてくる。そこに団欒がある。こんな遠くの知らない街にも団欒があることに妙な安心感を覚える。けれども僕はそんな団欒と無関係に歩くのみである。
しばらく歩けばすぐに集落は終わる。夜の闇に溶けた山々は結構不気味で怖い。たまに通りすぎる車のヘッドライトだけが闇を照らす明りで、街灯なんて存在しない。闇の中をただただ歩く。景色が見えないのでどれだけ歩くのか、どれだけ歩いたのかの感覚がいまいち分かりにくい。
目の前に突如としてトンネルが現れた。夜のトンネルも不気味で怖い。
おまけにこのトンネル、けっこう長い。距離にして1キロくらいある鬼のようなトンネルだった。なんとか1キロ走破しトンネルを抜けてはたと気が付く。あれ、そういやさっき戦略を立てた時、沢谷駅までのルートにトンネルってあったっけ? 嫌な予感がした。
背筋を走る冷たい何かを感じ、すぐに地図を確認した。
ガッデム!
完全に道を間違えて浜原駅の方に戻ってる。気付かずに1キロもトンネルを走破してしまった。ここから戻ると都合2キロのロス。ということは、絶対にワープしなきゃいけない列車が来る時間と、残りの距離を考えると……。ギリギリじゃねえか!
なんでこういつもワープ列車はギリギリになるかなあ、と思いつつ来た道を急いで引き返した。
正規のルートに戻っても安心はしていられない。道路は街灯もなく、民家もなく、暗くて怖い。
そして、ついにスマホが圏外になる地点が出現した。
なにより心細い。
そんなこんなで、とにかく真っ暗な道路をひた歩き、最後のほうは間に合わん! と全力疾走になりながらなんとか駅に到着した。
三江線全駅巡り 駅No.18 沢谷駅 18:57
駅の下からこの画像を撮っていたら、最終列車が滑り込んできたのですごい焦った。乗り遅れたらここまでの苦労が全てダメになる。急いで階段を駆け上がり、なんとか滑り込みセーフだった。
駅の周囲の状況に関しては、まあ正直に言わせてもらうと暗くて何も分からなかった。まあ、たぶん何もない。
最終列車には一人だけ乗客がいた。学者風の人で、なぜか車内で論文を読んでいて、意味不明な山奥の駅から乗ってきた僕を訝しげに眺めていた。
予想通り、列車はずっとトンネル内を走行していた。どう考えても並行する道路はない。つまり僕の戦略は当たりだったということだろう。
学者風の男が論文を折りたたみ、さらにマジマジと僕を見つめてきた。何か物語が始まりそうな予感めいたものがあったが、すぐに列車は駅へと到着した。僕は降りなければならない。物語は始まらなかった。学者はさらに怪訝な表情で僕を見つめているだけだった。
三江線全駅巡り 駅No.19 潮駅 19:09
どうやらこの潮(うしお)駅は、三江線随一の絶景駅らしい。待合室にそう書いてあった。どれどれ、そんなに絶景ですかな、と景色を眺めてみるが
暗くて全然分からねえや。
最後の全力疾走であまりにも足腰にガタがきたので、待合室でちょっと休憩させてもらう。予想以上に時間がかかり、完全に闇夜になってしまった。まさかこんなことになるなんて、と思いつつも荷物をチェックする。
なんと! 荷物の中にテントと寝袋が。どうりで重いはずだ。これプラス、全く使わなかった三脚と、ノートパソコン、タブレットが入っているから異常にリュック重かったのだ。食い込み過ぎて肩が痛い。死ぬかと思った。
しかし、テントと寝袋があれば百人力。どこかテントを張ることのできる場所を探してそこで寝れば……。
ダメだ、テントの張り方わからねーや。
ちょっとどういうものか出して確認してみたのだけど、説明書が全部中国語なのでとてもじゃないができそうになかった。テントの張り方イラストの男がすげえむかつく顔してたし。
だいたい、テントってそこかしこに張っていいもんじゃありません。ちゃんと土地の権利者の許可を得る必要がありますからね。その辺にテント張れそうな空き地があったとしても、だれが権利者かなんて分かるはずもなく、まあ、テントは絶望、というやつですな。ただの重いだけの荷物になり果ててますわ。
こうなったら先に進むしかない! 闇であろうとな!
その決意を見越したのか、荷物の中には登山用のヘッドライトと、反射タスキが入っていた。これで暗い夜道も安心。通り過ぎる数少ない車からも僕の姿を認識してもらえる。まるで暗闇を歩くことを想定していたような周到さだな。
さて、すぐにでも出発したいところだが、まだ足が痛いので潮駅の待合所で少し休ませてもらう。
ここの待合所にも訪れた人が色々と書き込めるノートが置かれていた。
「景色最高です!」
「絶景に心が洗われます!」
「また来たい! この景色を見に! この俺さま!」
絶賛の声が並ぶ。最後のは意味不明で、俺様いるか? と思うのだが勢いは嫌いじゃない。ここまで言われるとその絶景を見たくなるが、やはり闇夜しか見えない。そんな絶賛の声の中で、タカシと名乗る人物の書きこみが目に入った。
「素晴らしい景色で本当に素敵な場所だと思いました。本当に素晴らしい場所だと思います。あと、駅の近くのお店ですごい美人で若い人が店番していました。こんな何もない場所に住んでるのかなあ。嫌になったりしないのかなあ…… タカシ」
タカシ、情緒不安定すぎるだろ。文章の前半と後半で言ってることが違いすぎる。前半で絶賛した場所を「こんな場所」「嫌になったりしないのかなあ」はないだろ。支離滅裂すぎる。大丈夫か、タカシ。
タカシの文章に勇気づけられ、ついに歩き出すことを決意した。
真っ暗な道路を、反射タスキとヘッドライトという完全装備とはいえ、孤独に歩いていると心細くなってくる。あと、11月とはいえ山の中なので結構寒い。おまけに体の節々が痛い。ああ、全駅制覇なんてバカなことしなければ今頃温かいお風呂に入ってストロングゼロ(レモン)でも飲みながらテレビ見ていたのに、と朦朧としていると、仄かに暖かい気配がしてきた。
湯気の匂いと表現したら良いだろうか、温かそうな匂いだ。おまけにカポーンという風呂独特の音まで微かに聞こえた。ああ、いよいよ最後の時が来たか。きっとこれは幻覚なのである。こんな山奥、住んでて嫌になったりしないのかなあ……とタカシが思うほどの山奥に風呂などあるはずがない。見ろ、民家だって満足にないじゃないか! と憤っていると、前方に明かりが見えた。
これはエルドラド?
温かそうな光に湯気の匂い。潮温泉、大和荘と書かれている。そこには「日帰り入浴」の勇ましい文字。完全なるヘブン。温泉に入ることができるかもしれない! 体も温まるし、体を癒すこともできる!
急いで駆け込むと、どうやら日帰り入浴は19時30分受付で終了らしい。時計を見ると19時40分。ダメかーとうなだれていると「20時までに上がっていただけるなら大丈夫ですよ」とお店の人(美人)が言ってくれた。完全にヘブンですわ。
ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
体の芯まで温まるとはこのこと! 五臓六腑に染み渡る!
もう生き返るとかそういうレベルの話じゃねえぞ。これはもう、何らかの不慮の事故で死んでしまったけど、向こうの世界でこれまでのすべての罪が許され、もう一度やり直そうと決意したらこっちの世界で息を吹き返した、レベルの話だぞ。あ、それ生き返るっていうのか。
とにかく、冷え切った体をどっぷり温め、丸一日歩いた汗とか何やらを洗い流し、源泉かけ流しのお湯を時間ぎりぎりまで堪能した。
- 温泉の効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、間接のこわばり、うちみ、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え性、病後回復期、疲労回復、健康増進、動脈硬化症、きりきず、やけど、慢性皮膚病、虚弱児童、慢性婦人病、高血圧症
- 日帰り入浴可。料金は一般(中学生以上)420円、小学生210円
- 宿泊は1室5400円より
さて、完全に行き返ったのでまだまだ頑張って歩けそう。闇夜の中をひた歩く。
国道とは名ばかりで、街灯すらない真っ暗な中を歩く。すると、森の奥の方から野生生物の唸り声のようなものが聞こえてくる。これまでの人生でなかなか味わったことないレベルの恐怖で、もしこの野生生物が熊だったらどうしよう、熊まで行かなくとも腹をすかせた猪だったら勝てないのでは、頼む、獰猛な野獣はやめてくれ! せめて鹿! と懇願しながら歩くこととなった。
途中、天才的閃きで「熊や猪でも百獣の王であるライオンは怖いのでは?」という考えに至り、スマホでYoutubeを開き、大音量でライオンの鳴き声を流しながら歩いたりした。途中、再生するヤツを間違えたのか、「しーんぱーいーないさー!」とか大音量で流れたが、結構心配である。
闇夜を歩き続け、ついに次の駅に到着した。
三江線全駅巡り 駅No.20 石見松原駅 20:44
ちょうど反対方向である浜原行きの最終列車が来ているところだった。あそこが駅のようだ。画像を見ても分かる通り、駅の位置がまあまあ高い。あんなに高いのに、登るルートが一切見つからない。
また三江線特有の初見殺しの駅のようで、闇も手伝ってか、駅への登り口がさっぱりわからない。
この先、なのか……?
完全に魑魅魍魎が住みつくトンネルだ。怖い。ここで遊び半分で肝試しをしていたヤンキーのうちの一人が発狂し行方知れず、その後全員不幸な事故で亡くなった、と言われても納得してしまいそうな説得力がある。
駅に続くルートがこれってすごいな。
最終列車が行ってしまった駅はひっそりとしていた。
石見松原駅の名誉のために付け加えておくと、駅へと続くルートは普通にちゃんとしたやつがあって、僕が登ってきたのは近道的な裏ルートだった。歩いてきた道をもうちょっと先に進めば正規ルートに繋がっていたみたいだった。
次の駅へと向かって歩き出す。
ここで今ご覧のみなさんにちょっとした質問をしてみたい。
例えば、夜中に山間の道をご自慢の愛車で走っていたとしよう。横に愛人を乗せててもいい。街灯もなく、ご自慢の愛車のヘッドライトだけが頼りだ。民家も少ない田舎の国道で、突如として歩いている人がいたとしたらどうだろうか。
すごく怖いと思う。田舎の国道は徒歩という交通手段を選択する人がほとんどいない。昼間でも歩いてる人がいないのに、夜だとしたらどうだろうか。反射タスキにヘッドライト、万全の装備なのがまた怖い。登山で死んだ人の霊、みたいに怖くなってしまうのではないだろうか。
かくいう僕も、たまに通りすぎる車をそうやって怖がらせていたようで、こんなところ昼間でも歩いてるやついないのに、こんな夜中に何事かってよっぽど怪しかったんでしょうね。すごい怪しかったんでしょうね。
職質されました。
「すいませーん、旅行者の方ですか?」
「はい、そうです」
「なんでこんなところ歩いてるのかなー?」
「ああー、あのー三江線を見に来まして」
「ほうほう」
「それで全部の駅を撮影しようと思ったんですけど」
「ふむふむ」
「思ったより列車の本数か少なくて、仕方ないから江津から歩いてきました」
警察官の方は即座に桜井君みたいな「ん?」って表情を見せた。
「なんでそんなことを」
「(僕にもよくわからない)」
こんな心温まるやり取りがあったわけです。どうも警察官の方は、僕の身をかなり案じてるらしく
「寝る場所ととかどうするんですか? この先、宿もないですよ」
「一応、テントと寝袋はあるんです。ほら(テントは張り方知らないけど)」
「ああー、準備はあるわけですね」
「はい、準備はしてあります(テントは張り方知らないけど)」
「じゃあ今日はテント張って寝る感じですか?」
「いえ、テントってどこでも張れるものじゃないですよね、権利者の許可取ったり大変なんで、もう使わずに夜通し歩こうかと思って(ほんとはテントの張り方知らないから)」
「それはやめてくださいよー、僕も心配ですよ。休んでください。そうだ、ちょっとテント張れる場所あたってみますね、お待ちください」
こうして親切にもテントを張れる場所をあたってもらえることになった。くっそ親切だな。僕のようなゴミになんでこんなに親切にしてくれるんだ。
「ほんとに夜通し歩こうと思ってたんですよ。ずっと駅を撮影していこうと思って」
僕がさらに食い下がると
「でも、なぜかは知らないですけど、駅を撮影したいなら夜の暗くて良くわからない写真より昼間が良くないですか? 駅も綺麗に写るし。だから寝た方がいいですよ」
と、ものすごいぐうの音も出ない正論をぶつけられたので、警察官の方の指導のままにテントをおったてて就寝となりました。ここまで親切にされたら張り方を知らないと言ってる場合ではない。見よう見まねで、多分こうだろうって感じでなんとか張りました。
というわけで怒涛の一日目は終了。ここまでをまとめると次の通りになります。
時刻表を思い起こすと、また朝6時ごろに始発のワープ列車が来るはずだ。それに合わせて起きて、つぎの駅でワープを決める。そう決意して眠りについた。
寝てから30分くらいでテントは潰れてグシャッとなった。三匹の子ブタの最初に脱落するヤツの家かよと思いつつ、なんかこのテント部品が足りてない気がするとかブツブツ言いながら何度かやりなおして寝てを繰り返しているうちに朝の4時になったので起床とし、出発することにした。
体の休息はばっちりである。これ以上の休息はいらない。だから起きた。というのは完全に建前で、テントを張りなおすのが面倒になったから諦めて起床することにした。
とにかく出発。朝の4時は夜並みに暗い。まあ、始発までに2時間あるので、2、3駅は行けるかもしれない。とにかく歩こう。
三江線全駅巡り 駅No.21 石見都賀駅 4:21
しばらく歩くと結構大きめの集落が現れた、その中心に駅があったのだけど、すごい高い位置に駅があり、そこへの登り方が分からない。またもや初見殺しの駅だ。
上の方に駅舎っぽいものが見えるのだけど、登る場所がない。ぐるっと一周してみたが、本当に上る場所がない。
一か所こんな階段があったが、さすがにこれを日常的に使っているとは考えにくい。本当に駅へのルートが分からず、ここでかなりの時間をロスしてしまった。
実際には、少し離れた場所に駅への登り口があった。案内も何もなく、まさかこんな場所にと唸りたくなるような隠しっぷりだった。
イシスのピラミッドの入口かよ、と言いたくなる入口がそこにはあった。これは本当に初見殺し。その入り口と地下道みたいな通路を抜けると、やっとホームに躍り出ることができた。
まだ暗いので定かではないが、高い位置にある駅なので昼間は眺めが良さそう。周囲の集落を見下ろすことができそうだった。先ほどのピラミッドの入り口みたいな場所から入る通路を駅舎っぽく考えてるらしく、時刻表などの掲示物はそこにあった。
すかさず時刻表をチェック。
現在は4時半くらい。始発までまだまだ時間がある。先に進めそうだ。
次の駅まで向かって歩いていると、街も起き出したのか、新聞配達の軽トラックが動き出す音が聞こえだした。まだ空は暗い、それでも街は動きだしている。
しばらく歩くと、分岐に差し掛かった。
これまでは国道375号線を歩いてきたわけだが、三江線の次の駅、宇都井駅はここで国道に別れを告げて右に行かなければならないらしい。これまでの国道でも街灯なし、道が狭いと怖かったのに、ここからはさらに道路が暗くて狭くなる。
暗い以上に、なんだか恐ろし気な雰囲気すらしてくる。ちなみに次の駅までこの道路を歩くわけだが、1台も車とすれ違わなかった。
途中、斜面に狂ったように丸太を突き刺している場所に遭遇した。彼岸島かな? とか思いつつ得体の知れない不気味さを感じながら通り過ぎた。本当にこの道路はこの旅随一の怖さと不気味さを持っていた。
少しづつ夜が明けてくる。なんとか不気味の森を抜けて次の駅があるであろう集落へと辿り着いた。
この宇都井の集落は古くて立派な屋敷が多い。どこに駅がありますかな、と朝もやの集落をウロチョロしていると、奇妙なものが目に飛び込んできた。
暗くて分かりにくいが、かなり高い位置まで縦に並ぶ灯り。こういっちゃ失礼だが、この小さな集落に似つかわしくない場違いな高層建築物が建っていた。しかも方角的にあれが駅っぽい。急いで近づいてみる。
近づいてみると、やはり高層建築物だ。イメージ―としては、団地の階段部分だけがニョッと建っている感じだ。
見上げると、はるか上に駅がひっついているようだ。
しっかりと駅と書かれている。
やはりここが目的の「宇都井駅」のようだ。
三江線全駅巡り 駅No.22 宇都井駅 6:18
よく見て欲しい、階段しかない。エレベーターもエスカレーターも存在しない。つまり、「登れ」ということだ。
ここ宇都井駅は「天空の駅」と呼ばれ、日本一の地上高を誇る駅のようだ。その日本一の地上高まで階段で登れというのだから、まあ、狂気の沙汰である。ここまで歩いてきて足腰がプルプルしている僕にとってトドメになりかねない。それでも登らないわけにいかないので、ヒーヒー言いながら登った。
「あと106段」の表示。完全に殺しにきてるだろ。階段は全部で116段あるらしい。
ちなみに地上高は20メートル、ビルの6階から7階に相当する高さらしい。この駅を日常的に使っていたら、「キャー遅刻、遅刻」って走ってきてもそびえたつ116段の階段、完全に遅刻だ。食パンも全部食べ切ってしまう。
死ぬ思いで階段を登り切ると、そこに待合所がある。掃除が行き届いていてすごく綺麗だ。
外に出るとホームはこのような感じ。普通のホームだけど、下を見ると
驚きの高さ。
駅から見える眺めは、さすが「天空の駅」と唸るばかり。
規格外な駅の存在に感動し、でも、この駅も三江線が廃線になるとなくなっちゃうんだろうか、それはなんか嫌だな、と思いつつたたずんでいると
プアアアアアアアアー
始発のワープ列車だ!
ありがたやー、ありがたやー。
こんなありがたいものを廃止にしようだなんて何を考えてるんだ。
時間ぴったりに天空の駅に到着した始発列車に飛び乗った。車内には大学生っぽい四人グループが乗っているだけだった。会話の内容的に、これから広島市に遊びに行くっぽかった。
ワープ列車の車窓から景色を眺める。ここまで頑張って歩いてきてワープして正解だった。道はかなり険しそうだ。
三江線全駅巡り 駅No.23 伊賀和志駅 6:35
いよいよ0人になった。
完全に夜も開けてきた。実はこの駅は、「広島県三次市」に所属するらしい。ただし、また島根県に舞い戻ることになるのだけど、広島入り、それも三次入りできたことに喜びが隠せない。
駅周辺の集落もどことなく広島の匂いを漂わせていた。民家に停められていた車たちもしっかりと広島ナンバーになっていた。そう、ゴールは着実に近づいてきている。元気を出して次の口羽駅を目指す。
実は僕はここで大きな戦略ミスを犯していた。詳しくはこれまでのまとめを参照していただきたい。
次は「口羽駅」「江平駅」と攻めていくことになるが、その位置関係を地図で確認するとこのようになる。
現在いる「伊賀和志駅」と「口羽駅」が明らかに近い。さらに、その先の「江平駅」と「作木口駅」もそこそこ近い。つまり、「口羽駅」と「江平駅」間が多少離れているものの、次のワープ列車がやってくる2時間余りでこの3駅を一気に歩けてしまう可能性がある。そうすると、「作木口駅」でワープ列車に乗ることができて、かなり効率が良い。
この作戦を立案した時、自分はなんて戦略的なのだろうか、策士だ、策士、と思ったが、実際にはそうではなかった。それにはすぐに気づかされることになる。現在いる「伊賀和志駅」と「口羽駅」間のクローズアップした地図を見てみよう。
近いかと思われた口羽駅へのルートだが、それは鉄橋を使って川を渡る列車のみの話だった。徒歩である僕は、橋のある場所まで大回りしていかなければならない。これはかなりのロスだ。この区間こそワープ列車を使うべきだったのである。
忌々しい鉄橋が見える。ここを通らせてくれればどんなに楽だっただろうか。
この川に沿って大きく迂回しなければならない。
やっと迂回が終わり、徒歩で渡ることのできる橋に到達する。この辺りは川が県境になっていて、川を渡るたびに広島県に入ったり島根県に入ったりする。
途方もないロスをしつつも、ついに口羽駅に到着した。
三江線全駅巡り 駅No.24 口羽駅 7:30
比較的しっかりした作りの待合所に、2面のホームと、少し設備の良い駅だった。後でわかったことだが、どうやらここ口羽から三次まで走る列車が1本設定されているらしい。山間部に比べて1本分利便性が高いということだろう。そのために線路も2つ生きている。
駅前はかなり広いスペースになっていて、新たに公衆トイレを作ろうとしていた。ここからさらに奥地の学校に向かうスクールバスの発着点になっているらしく、休日だというのに地元の中学生が2名、バスが来るのを待っていた。
さて、ここから少し戦略的なお話である。
次のワープ列車まで3駅は歩ける! そう豪語していたわけだけど、これは口羽駅までのルートが直線距離でいけて、急げば15分くらいで歩けるはず、という目算の元でなりたっていた。実際には遠回りを強いられて、1時間近くの時間を消費してしまった。つまり、次のワープ列車までは1時間くらいしか猶予がない。
そこで地図を思い起して欲しいのだけど、
残された時間で頑張って「作木口駅」まで歩くのはほぼ不可能である。頑張って「江平駅」まで歩けるかどうか、といったところだろう。しかし、「江平駅」までいってワープ列車に乗ったところで、その先の「作木口駅」はなかなか近い。これでは何のためのワープなのか分かったものじゃない。
それだったら、ここから「江平駅」までワープすべきでは?
つまり、あと1時間くらいこの待合所で体を休める。足も痛いしちょうどいい。そこでやってきたワープ列車に乗って「江平駅」まで行く。1時間のロスは痛いが、無理をしてワープ列車を逃してしまっては元も子もない。もうそうするしかない。それが賢明であろう。
ということで、1時間、待合所で待った。昨日全く役に立たなかったテントを綺麗に折りたたんだり、画像ファイルを整理したり、寝袋を小さく圧縮したりしてるうちにあっという間に1時間が経過し、いよいよワープ列車が来るぞ、という雰囲気になってきた。
すると、颯爽とおばちゃんが登場。どうやら列車に乗る気らしく、いそいそと待合室に入ってきた。
「寒いねえ」
気さくに話しかけてくるおばちゃん。
「いやー、寒いですね」
なんでもおばちゃん、三次に用事があるそうで、車を運転するのも大変なので三江線で行っちゃおうと思ったらしい。すごい穏やかな物腰で、柔らかい感じのする方で、なんだかホッとする、そんな感じの方だった。
「さあ、行きましょう、そろそろくるわ」
いよいよ電車が来る時間になっておばちゃんとホームに出たのだが
奥のトンネルから見える光が、ワープ列車のヘッドライト。いよいよ列車が来るぞというタイミングだが、ちょっと線路を拡大してみよう。
線路上に猿が。
列車が警笛を鳴らして猿を追い払おうとするも、猿は動かない。すると、あれだけ平穏で穏やかだったおばちゃんが。
「うおー、殺せーーー! とにかく殺せーー!」
みたいに突如豹変してデスメタルみたいなことを言い出して、なんかすごく怖かった。猿に恨みがあったのかな。
危機を感じた猿も逃げ出し、いよいよワープ列車、入線。ありがたやーありがたやー。こんなありがたいものを廃止にしようだなんて。
さて、朝一番のワープ列車は乗客が少なかったものの、この列車はほぼ満員。観光客風の人々や剛の者も多く、座る場所もなく立ったままワープとなった。あっという間に列車は江平駅に吸い込まれていった。
三江線全駅巡り 駅No.25 江平駅 8:32
かなり簡素な待合ベンチみたいなものがあるだけの駅だった。ちょっと行った場所にバス停があり、お、もしかしたらかなり都合よく使えるんじゃ、バスに乗れると時間的にも体力的にもかなり楽になるぞ、と急いで時刻表を確認してみた。
目指してる「作木口駅」行きのバスあるじゃん、でもちょっと時間があわないなー11時ってことは3時間待ちだからなー、と思いつつよくよく見ると、衝撃の「運行日:木曜日」の文字。木曜日しか運行していない。今日は土曜日なので、バスの待ち時間5日間だ。待っていられるわけがない。
またもや川の左右に国道と旧道があるスタイルで、線路に近い旧道をひた歩く。思えば昨日、猿に囲まれた時に「どうせ奪われるくらいなら」と非常食を全部食べてしまってから何も食べていない。買い物できるような店がなかったからだ。
ああ、そろそろ腹減ったな、空腹で死にそう、そう思いながら川の向こう岸を眺めると
川の向こうに華やかそうな施設が。「川の駅」というらしい。僕は比較的視力が悪くて、あまり遠くが見えないのだけど、死力を尽くしてズームアイをしてみると
燦然と輝く「ラーメン」ののぼり。くそーあっちの国道を通るのが正解だったか。あそこにさえ行けばラーメンが食べられるのに。
ただし、ここからあのラーメンの地点まで行こうとすると、橋がある地点まで大回りしなければならず、ものすごいロスになってしまう。ここは泣く泣く諦めて愚直に前に進むしかない。
もう腹減った、足が痛い、線路も見飽きた、そんなことをブツブツ言いながら歩く、すると前方に駅らしき物が見えてきた。この旅をしていると、駅の気配にはかなり敏感になる。なんとなく雰囲気で駅があることがわかるのだ。
三江線全駅巡り 駅No.26 作木口駅 8:57
ここも簡素な造りの駅だった。待合いのベンチに雨よけがついているだけのものしかない。ただ、駅の前には大きくて立派で新しいこの地区の集会所があった。
一応、時刻表を確認してみる。朝の2本の列車はもういってしまった。次の列車は7時間後のようである。相変わらず極端だ。ちょっとしばらくはワープを望めそうにない。
さて、このまま旧道を進むとかなり大回りになることが予想されるので、ちょうどこの駅のところに国道に出る橋があったのでそれを使って国道の方に移動した。
ただし、国道と言ってもドライブインやコンビニがあるわけでもなく、何もない山道が続く。つくづくさっきの「川の駅」に行けなかったことが悔やまれる。
トンネルにさしかかる。正直言うと、トンネルにあまり良い思い出はない。道を間違えてないかしっかり確認しながら進む。それにしても腹減った。
トンネルを抜けると、「カヌー公園さくぎ」という施設の看板が目に入った。どうやらカヌーを楽しむ施設らしい。ハッキリ言わせてもらうと、ほら、カヌーで腹は膨れないざんしょ? カヌーは食べられないざんしょ? カヌーに恨みはないけど、ちょっとこういう無遠慮なのはどうかと思う。今は食料が欲しいんだ。
がっかりしながら歩みを進めると、カヌー公園の駐車場にはこんなのぼりが。
「ラーメン」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
やばい、心臓が破裂しそう!
ラーメンを食べることができる!
カヌー最高!
もうダッシュに近い形になりながらカヌー公園に飛び込む。どうやらカヌー公園の中心的な建物にレストランがあり、そこでラーメンが食べられるらしい。これはもうヘブンか。
あれがカヌー公園の建物か。あそこにレストランがあるんだな!
うおおおおおおおお! と建物に突入、いくぜレストラン! と城門を突破する前田慶次みたな勢いで駆け込んだ。レストラン! レストラン! ラーメン!
カヌー死ね。
もう目まいがして心臓が止まりそうだった。そうなったら横にあるAED誰か使ってくれるかなって思ったほどだった。
どうやらレストランの営業時間は11時よりらしく、今の時間は10時、早すぎて開店していないようだった。ただ、その手前の売店部分は営業しているらしく、地元の特産品などを販売している中でカップラーメンを売っているのを発見。親切にもカヌー公園の事務局の人がお湯と箸を提供してくれて、なんとかカップラーメンを食べることができた。
とても親切にしていただいたのでしっかりと宣伝をしておく。
カヌースクールが開催されており、レンタルして学ぶことができる。カヌーは予約制なので、ご注意を。
また、施設内には囲炉裏を備えたコテージがあり、宿泊も可能。仲間内でワイワイと囲炉裏料理をしたら楽しそうだ。
さらにキャンプ場も併設されていて、カヌーだけでなく、アウトドアレジャー全般を楽しむことができる素敵な施設。お湯と箸ありがとう。
さて、腹が満たされたので、また次の駅に向かって歩き出す。
反対側、つまり江津方面に向かう三江線が見えた。列車の速度から見て、駅から出てあまり時間が経ってないように見える。まだ加速しきっていない。つまり駅が近いということだ。
放置空き家問題は根深い。こうして放置された家を道中で山ほど見かけた。なかには崩れ始めていて危険を伴うため、家の前の道路を通行止めにしているところまであった。
国道を外れて集落へと下っていき、モダンな駅舎を持つ駅へと到達した。