レトロ自販機、知ってますか?
昭和40年ごろ開発された、食品を調理して自動販売する機械。
身近になくとも、テレビのバラエティ番組やニュースで見たことがある人もいるかもしれませんね。
今回は北海道で唯一あるレトロ自販機を目指して、広大な丘が映え映えの美瑛町におでかけしました!
美瑛町のレトロ自販機!
レトロだけどめちゃくちゃニュースポットなんです。
目次
北海道のレトロ自販機は絶滅していた
うどんやそばをはじめとした麺類の自販機をメインに、ハンバーガーやカレーライスなどの食事を提供する自販機はかつて全国にありました。
れらの自販機を有する場所やドライブスルーを『オートレストラン』なんて呼びました。
今はあまり聞かない単語ですね。
なぜ絶滅した?
昭和40年の後半、自販機に少し遅れてコンビニエンスストアが登場。
年々数を増やし続け、24時間食べ物が買える世の中となりました。
次第に活躍の場を失う自販機たち……。
自販機を製造していた会社もなくなり、修理をしたり、部品を手に入れるのも困難になりました。
なんとか存続するオートレストランもあるなか、北海道内で稼働する自販機はゼロに。
実際に、「ほんまかいな」と思った筆者が、北海道で自販機があった場所を一昨年に巡ってみましたが、本当に閉業しており、自販機の姿もありませんでした。
日本で1番広い都道府県北海道。でも一台もない。
マニアを含め、懐かしの自販機を想う人々にとって、北海道は『レトロ自販機不毛の地』となっていました。
奇跡の復活をしたレトロ自販機!
そんな中、昨年12月に北海道でレトロ自販機を復活させたと言われているスポットが!
北海道美瑛町にある商店『花輪食品』。
自販機はいったい何処に……。まさか店内だろうか?
商店は24時間営業ではないはず。
と思ったら、お店の軒先に真新しい小屋発見。
入ってみます。
これが自販機
ありました!
懐かしいと思う方もいるのでは?
メニューは天ぷらのうどんとそば。
どちらも350円。
メニューボタンに電気がついています。
動く……。こやつ、動くぞ……!
長年絶滅していた北海道のレトロ自販機がここに!
いったいどうやって……。
復活までのストーリーを聞いてみた
ここでオーナー登場。
花輪食品の3代目、花輪紀宏さん。自販機復活の立役者です。
お仕事の合間にインタビューに答えていただくことに。
お忙しい中、すみません。では、ガンガン質問していこうと思います。
自販機はどこからやってきた?
「北海道の当別町にかつて自販機が稼働してお店があって。とうに閉業してたんですが、もしかしたら実機があるかも、と思い見に行きました。そうしたら店内にまだあって! 譲っていただけることになりました。2017年の10月のことです」
これがその店『アウルショップ275』だった建物。
花輪さんが中を覗いた時には、写真左のスペースに自販機があったそう。
修理はどうやった?
「最初はまず、掃除です。タレやサビが年単位でそのままだったので、きれいにするまで一週間以上かかりました」
中を見せてくれる花輪さん。
器のレーンの構造なんか、サビを落とすとなると、かなり骨が折れそうな……。
「次に水を通してみたりしたんですが、なかなかお湯にならなくて」
こちらはお湯切りをする部分。
水がお湯にならないと、そもそも自動販売機として成り立たないので、死活問題ですね。
「困りましたね。そうこうしてる時に、関東で1番たくさんのレトロ自販機を置いているお店のオーナーさんが電話をくれて。状況を話したら『修理しに行くね』って。で、北海道に来て。1日で直してしまったんですよ!」
「なので、機械部分はその方がほとんど修理してくれました」
こちらがその関東1大きなレトロ自販機スポット。神奈川県相模原市にある「中古タイヤ市場」。
テレビで取り上げられる機会も多く、週末は若者までもが押しかける人気スポットです。
ここまでの台数を維持できるのは、自販機のメンテナンスができるからこそ。
関東にたくさんある自販機のメンテナンスだってしなくてはいけないのに、北海道まで来てくれるなんて……。
それだけ、花輪さんを気にかけてくれていたんですね。
営業する為の資金は?
自販機が動くようになった!よし営業だ!
とは、行かないらしく。
「自販機といえども、調理をするので飲食店扱い。屋内営業が基本になります。」
「24時間買えてこその自販機だから、商店が閉まった後も稼働させたい。自販機を置くための設備が必要になりました」
なるほど。それで商店の軒下に、この空間があるんですね。
でも、これを作るのだってお金がかかるでしょう。
「クラウドファインディングで協力を呼びかけたら、たくさんの人が応援してくれました」
窓には支援者の名前がずらり。
総勢220名の想いがここに。
きっとこの他にも、復活を楽しみにして応援した人がたくさんいたはず。
「北海道でレトロ自販機を復活させてくれてありがとうございます。ってよく言われるんです。昔の稼働してた時代の話をしてくれたりして」
「いや、こっちこそありがとうって感じで。動くようにして本当によかったな……。あとは、どれだけ長く動かせてあげられるかですね」
真剣な眼差しの花輪さん。
どうしよう。
まだ何も食べてないのに、口の中にしょっぱい汁が入ってきました。
レトロ自販機の仕込みを見学!
花輪さんのご厚意で、仕込みの様子を見学させていただけることに。
こちらが器。
自販機で使える器のサイズなど規格が決まっているので、洗って再利用します。
最初にかき揚げを入れて。
ネギを投入。
もう美味しそう。
「具の後に麺を乗せます。機械の中でお湯切りをするときに飛び散らないように、具は下なんです」
「そばに触れる前に、うどんを仕込みます。同じ機械に入れるから、完全なアレルギー対策にはならないかもしれないけど。具は卵と甲殻類は使っていない、野菜かき揚げです」
そこまで意識していたんですね!
仕込み作業完了です。
「認知度が上がった春からは、平日は50〜60杯仕込んでいます。週末は100食くらい売れますね。GWは150食連日売れて、仕込みに明け暮れていました!」
「ここにタレが入っています。仕込み立てをお召し上がりください!」
食べてみよう!
古い機械なので、小銭は一枚づつゆっくり入れる事を推奨します。
まずはうどんから調理していただきましょう!
すぐに始まるカウントダウン。
ニキシー管の数字の明かりがいいですね。
あったかいうどんが押し出されてきました!
スープは出汁がしっかり効いていながらも、後味すっきりさっぱり。
飽きがこない味です。
うどんに使用しているのは、北海道産『はるゆたか』。
そばも同じく北海道産で、旭川市の江丹別村のもの。
くるりと生身を回せば、先ほど器の底に仕込んだかき揚げが。
スープしみしみで美味しい!
ふわふわ衣と、シャッキリぽんな根菜です。
「月見もできますよ!」
卵を持ってくる花輪さん。
自販機のお客さん向けに、商店では1個30円で卵を販売しているようです。
キリッとしたスープに、まろやかな黄身の甘味が合わさって、また別のうまさ!
味変にもなります!
お土産も可能
麺もスープも、花輪さんこだわりのオリジナル。
ここじゃなきゃ食べられない?
と思いきや! お土産としてこのうどんそばを買うことが出来ました!
門外不出にしなくて大丈夫なんでしょうか?
具とか自由にアレンジしちゃっていいんですか?
という質問に
「ご自宅でアレンジしたり、お好きなものをプラスして楽しんでいただいて全然OKです!」
と、花輪さん。
お値段は薄めて使うタレが480円。
うどんが78円。そばは118円。
(自販機では値段を揃えるために、そばの量をちょっと減らしているそうです。)
自販機を愛する人たち
うどんそばに舌鼓していると、他のお客さんたちが。
「懐かしいよね。毎週食べにきているよ。遠い地域のナンバーの車なんかもよく来てて、来るたび楽しいよね」
盛り上がるレトロ自販機談義。
美瑛町の新しい人気スポットに、地元の人の評判も上場のようです。
デザートもあるよ
「いつもこれで食後のデザートを買う。これが俺の決まり」
なんと! 今年6月からは商店向かって右手にレトロアイス自販機も仲間入りしていたのでした。
これも、相模原市の中古タイヤ市場のオーナーさんがメンテナンスをしたもの。
自販機を絶やさないためには、オーナーさん同士の協力や情報交換が必須なんですね。
さいごに
うどんそば美味しかったです! 自販機復活ありがとうございます。
「難しいことは言いません! 未体験な人には初めての。知ってる人には懐かしの。『自販機から温かい食べ物が出てくる』という体験を、そのままに楽しんでください!」
花輪食品自販機コーナー 店舗詳細
富良野線『美瑛駅』から徒歩約3分。
道央自動車道『旭川北IC』から車で約40分。
旭山動物園で有名な旭川市と、ラベンダーで有名な富良野の間に位置する町です。
北海道観光にぜひ、北海道唯一のレトロ自販機もお楽しみくださいね!