東京から2時間でプチ猟師体験できる村へ行く【山梨県小菅村】
人は誰しも、ワイルドに憧れる生き物です。もし彼氏がいたら猫をかぶり小食なふりをしなくてはいけない人も、心の中ではライオンのようにいつでも骨つき肉にむしゃぶりつきたくてたまらないのです。自分一人では生きていけない、命は奪い奪われあい、そして続いていくのだという当たり前だけど忘れがちなワイルドライフを身近に感じることのできるツアーを体験できると聞いて、山梨県小菅村のプチ猟師体験ツアーに参加してきました。
人は誰しも、ワイルドに憧れる生き物です。もし彼氏がいたら猫をかぶり小食なふりをしなくてはいけない人も、心の中ではライオンのようにいつでも骨つき肉にむしゃぶりつきたくてたまらないのです。
自分一人では生きていけない、命は奪い奪われあい、そして続いていくのだという当たり前だけど忘れがちなワイルドライフを身近に感じることのできるツアーを体験できると聞いて、山梨県小菅村のプチ猟師体験ツアーに参加してきました。
山梨県小菅村は都心から2時間ほどで行くことのできる人口700人ほどの小さな山あいの村です。東京都民がお世話になっている多摩川の源流域の一つです。
美しい源流域
自然豊か!
特産品にはこんにゃくやソバ、ワサビなど豊かな水を利用した食べ物が多くあります。その中でも特に川魚の養殖は、この村が初めてヤマメの人工孵化に成功しており、ヤマメの里とも呼ばれています。
水はけのいい畑では
ソバや
こんにゃくが美味しく育つ
日本一美味しいヤマメの塩焼きも食べられます!
そんな小菅村には今年から、新たな特産品が加わろうとしています。それが「ジビエ」です。ジビエとは野生鳥獣の肉のことで、主に、イノシシやシカ、野鳥などです。昔から山里の人々は自分たちで猟を行いその恵みをいただいてきました。
小菅村でも、昔から「鉄砲ぶち」と呼ばれる猟師の方々が、シカやイノシシ、ウサギ、ヤマドリなどのジビエ肉を食べてきました。
小菅村へ出発!
今回参加させていただいたのは、NPO法人多摩源流こすげが行っている、「プチ猟師体験」というイベントです。山梨県小菅村に住む猟師の方が狩猟やそれに関わる基礎知識について教えてくれる日帰りの体験イベントです。
今回は新宿から1時間程度で来られるJR大月駅に集合し、そこからは車に乗って移動します。移動中も小菅村の説明や、野生動物などに素朴な疑問について答えてくれます。そうするうちにどんどんと山奥に進み、今にも鹿やイノシシが「やぁ」と飛び出してきそうです。
狩猟の種類
今回は山梨県小菅村で様々な自然体験イベントを主催している鈴木一聡さんと青柳博樹さんに案内してもらいました。お二人は若手猟師として活動中で、野生動物を活用する会社、株式会社boonboon(ブンブン)の代表でもあります。
矢野
「本日はよろしくお願いします! 私も早く猟師になってイノシシやシカを追いたいです!」
鈴木さん
「いやいや、矢野さん免許持ってないですよね? 狩猟をするにはきちんと免許が必要なので、猟をすることは無理ですよ!運が良ければ猟を見ることはできますが、、、」
矢野
「がーん、そうなんですね、、、 プチ猟師体験だから猟師になれるんだと思ってました!」
鈴木さん
「このツアーは狩猟とはどういうものか、自然や生き物との関わり、里山の暮らし、猟師の生態について簡単にですが、学ぶことができるツアーです」
矢野
「そうなのか、じゃあ、このツアーに参加して猟師の暮らしに興味がわけば猟師になろうかな、、、」
鈴木さん
「そのためにもしっかり今日は体験していってください! 実際僕たちのツアーを受けて猟師免許を取得した方もいますよ」
矢野
「えっ!猟師って免許が必要なんですね!?」
鈴木さん
「はい、僕たちは主にわな猟という罠を仕掛けて、罠にかかった動物を取る猟をしています。そもそも猟には罠での猟、鉄砲での猟など幾つか種類があり、免許もそれぞれ違います。僕も複数免許を持っています」
矢野
「鈴木さんたちが行うわな猟というと、大きなギザギザの歯ががばっと獲物を捕まえるやつですか?」
鈴木さん
「それはきっとトラバサミという猟具ですね、それは現在日本では禁止されている猟法ですね!」
矢野
「えっ! 罠っていうとそういうイメージでした」
鈴木さん
「トラバサミのように動物に苦痛を与えるような猟法は厳しく禁止されているんです。ちなみによく漫画などである足で踏み抜くと木の上に吊り下げられるような猟も禁止です」
鈴木さん
「僕たちも狩猟をする際は、くくり罠という小さすぎる個体やかかった後に罠によって動物が傷ついたり苦しんだりしない罠を仕掛けて狩猟するようにしています」
矢野
「くくり罠?」
鈴木さん
「くくり罠とは動物たちが通る道に輪っか状のワイヤーを仕掛けて、踏み抜いた動物の足にワイヤーが閉まり、縛って捕まえる方法です」
このような感じです、実際に仕掛けてみせてくれます
獣の歩く道
矢野
「でも、これってこの広い山の中で、シカが通ってその罠を踏み抜いてくれないといけないんですよね、完全に途方もない奇跡に近い運ですよね。例えるならめちゃくちゃイケメンな人が自分のハンカチ拾ってその場で告白してくれるみたいな、、、」
鈴木さん
「いや、その例えはよくわからないけど、そんな途方もない奇跡の話ではありません。きちんとここならかかりそうだぞというところに仕掛けるので」
矢野
「そんなの神様くらいしかわからなさそう!」
鈴木さん
「シカやイノシシなど野生動物も行動パターンというのがあります。どのような行動をとり、日常なにをして暮らしているのか、どのような食べ物が好きか、そういったことを知っていれば大体の行動範囲がわかります」
矢野
「相手を捕獲するには、まず相手を知ることからなんですね」
実際に動物たちがどのような行動を山の中でとるのか、鈴木さんたちに案内してもらって学びます。最近では人が歩いている生活道路のすぐそばにも獣が現れるそうです。
鈴木さん
「最近は奥山にいたはずの動物達が民家近くまで降りてきてしまうようになりました、例えば観光施設近くのここに動物たちが歩く道があるのですがわかりますか?」
矢野
「いえ、まったく!」
鈴木さん
「よく見てください、ここにうっすらと道のようなものが見えませんか?これが獣道というものです。獣たちも木々の間の歩きやすい平坦な道を選んでいるのがわかります。もう少しハッキリと足跡があれば、どこから来て、どこに向かっていくのかもわかります。これらをフィールドサインと呼んでいます」
鈴木さん
「例えば動物によって足跡や歩き方も違うんです。このフィールドサインを見ればどんな動物がここを歩き、どのように生活しているのか知ることができます。ベテランの猟師になると何日前につけられた足跡か、何才くらいの個体かオスかメスかなどもわかる人がいます」
矢野
「すごっ! よっぽど動物が好きな人じゃないとわからないことですね、猟師さんは自然のエキスパートなんですね!」
鈴木さん
「そうですね、実際僕も動物が大好きで、大学では野生動物の研究室にいました。他の猟師さん達も自然について本当に詳しいです」
山の恵みをいただく
鈴木さん達は自分達の会社で、捕獲した野生動物の資源活用としてシカ肉の製品化や革製品の製作などを行っています。山の恵みを無駄にしないための取り組みです。
命をいただくランチタイム
実際に野生動物達が生活していた場所を見ることで、生き物の息づかいを間近に感じることができ、ワイルドな気持ちになってきました。ワイルドとは荒々しいという意味ではなく、自然に感謝して生きる気持ちのことなのかもしれません。依然として肉にはかぶりつきたい気持ちは消えないけれども。
お昼は、小菅村の特産品をふんだんに入れた「源流弁当」でもてなしてくれます。また、先ほど見学した処理場で処理された獲れたてのシカ肉なども振舞ってもらいました。味はクセがなく、いい意味で野生感が残っています。牛肉などに比べると少し硬いのですが、かめばかむほど旨味がでてきます。
矢野
「どれも美味しいですね! 意外とクセがない!」
鈴木さん
「そうですね、きちんと処理されたものは野生肉でも臭くなく食べやすいと思います。多少ワイルドさが残りますが、それも美味しさの一つですよね」
矢野
「うんうん、これははまりますね! この味のチューイングガムが出たらずっと噛み続けちゃうと思います!」
鈴木さん
「うん、その例えはよくわからないけど、うちの子どもは普通のお肉より鹿肉の方がよく食べます」
矢野
「ワイルドエリート!」
鈴木さん
「もう少し上級者向けの猟師体験コースでは、参加者の方に実際に解体作業を体験していただくこともあります。美味しくさばくことで、資源を無駄にしないですみます」
無駄なく利用、革でクラフト
獲った獲物は革も利用して無駄にしません。猟師さんはまるごと利用する知恵も持っています。昔は革や毛皮を自分で腰あてや、靴などにし、それを身につけて猟に向かっていたそうです。
青柳さん
「まず革の特徴ですが、鹿革は牛などに比べると柔らかいのが特徴です。イノシシは少し硬いのがわかると思います。よく見ていただくとイノシシは毛穴が3つです。これは豚も同じなので、今度革製品を買うときに見てみると豚かそれ以外か見抜くことができます」
矢野
「本当だ! イノシシは少し硬くて毛穴が3つですね、模様みたいでかわいい。これを知っていたら少し猟師っぽくてかっこいいですね」
青柳さん
「それぞれの動物、それぞれの個体で革の雰囲気や染まり方、触った感じが違うのも、野生動物ならではの魅力です。どれもいいのでお気に入りを選びましょう」
矢野
「なるほど、私にぴったりの革を選ぶんですね! 運命の人を探すように、運命の一枚を!」
青柳さん
「まあ、その例えはよくわからないけど。運命の人よりは簡単に見つかるはずです」
丁寧に教えてくれるので、初めての人でも2時間程度で小物入れを作ることができます。裁縫は並縫いだけという私でも作れたので、皆さんもきっとうまく作れるはずです。
矢野
「自分だけの革製品だと思うと、愛着が湧きますね。使うのもったいないから神棚にでも飾ろうかな」
青柳さん
「いや、革製品は使えば使うほど味が出てくるので、ぜひ使ってあげてください。そして、使うたびにこの小菅村の自然に思いを馳せてください」
矢野
「確かに、使うたびに小菅村やここに住むワイルドに生きていたシカ達の姿を思い出しそうです!好きだった人と同じ匂い嗅ぐだけでその人を思い出すみたいことですね!」
青柳さん
「まあ、その例えはわからないけど、、、」
一日猟師体験をしてわかったことは、猟師の方達が自然を敬い、そして自然とともに生きているということでした。生き物の命と向き合ってきたからこそ、その大切さを知っているし、余すところなく使いたいという思いが生まれ、なによりもその素晴らしさを伝えることが出来るのだと思います。
小菅村の自然の恵みはまだまだ!
小菅村にはジビエ以外にも自然の恵みを活かし楽しめる場所が沢山あります。
美しい水の生まれる場所である小菅村には、世界的にも珍しい高アルカリ性温泉「多摩源流温泉小菅の湯」があります。小菅の湯はそのツルツルのお湯から美人の湯といわれており、春夏秋冬楽しむことができます。
多摩源流温泉小菅の湯
〒409-0211 山梨県北都留郡小菅村3445番地
TEL:0428-87-0888
http://kosugenoyu.jp
温泉の近くには小菅村の自然を生かした自然共生型アウトドアパーク「フォレストアドベンチャーこすげ」があり、専用のハーネスをつけて高さ15mから滑り出す、長さ137mの日本で唯一の里山ジップスライドは美しい小菅村の自然が一望できて、鳥になったような爽快感があります。
フォレストアドベンチャー・こすげ
〒409-0211 山梨県北都留郡小菅村3445番地
TEL:080-4857-7406
https://forestadventure-kosuge.jimdo.com
冬季は休業
温泉やフォレストアドベンチャーなどは全て、道の駅こすげに併設しており、新鮮野菜を買うことができる物産館や小菅村の食材を使ったイタリアンが楽しめる源流レストランなどもあります。いたれりつくせりとはまさにこのことです。辞書でいたせりつくせりをひいたら小菅村って出てくるんじゃないかな。
四季に応じたワイルドな楽しみ
小菅村は自然とともに生きている村なので、旬の野菜は旬の時期にしか手に入らず、アクティビティも春は新緑の森を歩く沢歩き、夏は源流域の川を楽しむ源流体験、秋はキノコ狩りや小菅村の夜を楽しむツアー、冬は猟師体験など四季に応じて変化していきます。いつでも自分の中のワイルドを呼び起こすことができるのです!
今回体験した猟師体験も動物観察コースや本格的な猟師体験など様々なコースが用意されているので、ワイルドな非日常体験をしに山梨県小菅村にでかけてみてください!
取材協力:NPO法人多摩源流こすげ http://npokosuge.jp
山梨県小菅村 http://www.vill.kosuge.yamanashi.jp