憧れの「食堂列車」に西武線で乗れるって知ってた?実際に乗ってみた

西武鉄道が提供する食堂列車「旅するレストラン 52席の至福」の乗車レポートをお届け!夕方に西武秩父を出発し、車内で豪華な夕食をいただきながら東京方面へと戻るディナーコースは、記念日のお祝いや両親へのプレゼントに最適です。

突然ですが、

「食堂列車」って猛烈にあこがれません?

 

想像してみてください。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

山あいを走る列車のなか、流れていく景色を見ながらナイフとフォークを使ってコース料理を楽しむ。

ワインを飲みながら窓の外を見ると、Windows XPの壁紙みたいな田園風景がどこまでも続く。

心地よい揺れ。少し眠くなってくる。

ガタンゴトン…ガタンゴトン…

 

はい、眠くなってきました。もうぼくらの普段の生活からしたら完全に異世界ですね。

でもそんな異空間の乗り物がじつは意外と近場にいたんです。

 

それはなんと……

西武線です(笑)

 

これを見てください。ぼくが地元・西武線所沢駅のホームでたまたま撮影した写真なんですが…

どう見ても食堂列車です。

後日、あれはなんだったんだろう…とググってみたところ、西武鉄道が提供する食堂列車でした。しかも『旅するレストラン 52席の至福』とかいうシャレた名前までついてました。2016年から走っているそうです。

乗りてー。

食堂列車乗りてー!

という気持ちがマックスまで高まってしまったので、このたびSPOTさんで筆を執らせていただくことになりました。

コースは都内→秩父か、秩父→都内の2つがメイン

ここで一旦説明しますと、『旅するレストラン 52席の至福』には次の2つのコースがあります。

ブランチコース(1万円):お昼に池袋(または西武新宿)を出発→午後に西武秩父に到着

ディナーコース(1.5万円):夕方に西武秩父を出発→夜に池袋(または西武新宿)に到着

つまりブランチは食堂列車で秩父まで行き、その後は観光などを楽しむコース。逆にディナーは先に秩父方面を観光しておいて、食堂列車で帰るコースになります。

さて、予約は公式サイトから好みの日程を選ぶだけでさくっとできます。予約すると、こんな封書が送れられてきました。

なかには食堂列車の座席表と「西武線の一日乗り放題券」などが入っています。

今回はディナーコースを予約したので17時42分に西武秩父を出発し、車内で豪華ディナーをいただきながら、20時2分に西武新宿に帰ってくるわけですね。

ここは西武秩父駅。前回の記事で昼間の秩父市内をこれでもかと遊び倒したので、さっそく憧れの食堂列車に乗り込みます。

いまは17時30分。あと10分少々で『旅するレストラン 52席の至福』のディナー便が出発します。

高まる期待とともにホームに向かうと、そこに待っていたのがこの電車!!!!!!!

うわー!これー!これだよー!

めしが食える電車だー!

出発の時間が近づいてくると…んん?

レッドカーペットwww

たぶん人生で初めてレッドカーペットの上を歩いて電車に乗りました。

とにかく車両全体が特別仕様で、たとえば天井は秩父の木材で組まれたおしゃれな造形。

テーブルにセットされた食器には『旅するレストラン 52席の至福』オリジナルの刻印が。

ちなみにこの食堂列車、52席の限定席という意味合いから、トランプカード(52枚組なので)のモチーフがあちこちで用いられています。

本日のディナーメニューはこんな感じ。秩父野菜や舞茸、武州和牛など地元産の食材を使ったフレンチ・フルコースが楽しめるのです。

定刻になり、電車が西武秩父駅をゆっくりと発車――。

ガタゴトと音をたて、子どもの頃から乗りなれた西武線の心地よい揺れにほっと一息ついたところで、給仕の方がスパークリングワインをついでくれる。

電車のなかで泡である。

泡といっても缶ビールではない。

シャンパン的なやつである。

いつもは電車のなかで缶ビールとか飲んでると少々後ろめたい感じもするのだが、今夜はそれも許される。

失礼します。

ぐびぐび飲んでると、電車が止まった。

アナウンスが言うには、右手に芦ヶ久保の氷柱が見られるそうだ。

芦ヶ久保の氷柱といえば秩父の一大観光地。歩いて近くまで行くには混んでるし、ライトアップされる夜は寒いし、ちょっと二の足を踏んでいたのが、まさかこんな最高なシチュエーションで見られるなんて。

実際に間近で見ると窓の中からでも壮観。ライトアップされた氷柱を見ながらスパークリングワインを飲める食堂列車って世界にこれだけなんじゃないでしょうか(調べてないですけど)。

 

この演出には「やるじゃん西武線」と言わざるを得ない。

 

いままで地味な路線だと思っててごめんなさい。これからは地元の誇りだと思うことにします。

また電車が動き出したところで、今回の主役である素晴らしい料理の数々を紹介したい。

トリュフ香る秩父の野菜畑 シーザーサラダ風

はい。「トリュフ香る秩父の野菜畑」です。名前の通り受け取れば、これはあくまでも野菜畑。

野菜畑がシーザーサラダ風になっているわけです。

なのでもちろんこれはサラダではなく、定義上は野菜畑。

そのへんを理解したうえでこの野菜畑をいただくと、それはもうめちゃんこ美味い。こんなに美味い野菜畑は食べたことがないし、そもそも野菜畑を食べたのがたぶん人生初。

畑ってこんなにうまかったのか…。しかもトリュフかかってるし。

この色濃い半熟卵がまたやばい。

畑と半熟卵とトリュフをバゲットに乗せて食べたら一瞬、気を失った。

1品目のサラダ、じゃなかった野菜畑だけでもう完全にノックダウンである。

 

「すまないが、シェフに会いたい」

そう心の中でつぶやいて隣の車両を覗いてみると、次のお皿の準備をしていた。

こちらのスペースでは盛り付けの様子を見学できるほか、特別なおみやげの展示もしている。

もちろん車内で実際に購入できる。記念日とかで乗った人はいい思い出になりそうだ。

里芋とズワイ蟹のラヴィオリ サフラン風味

きましたね、ラヴィオリ。この餃子みたいなやつがラヴィオリですね。サフランの香りがすごいそそります。

でっかりズワイ蟹。これが当然のように美味い。蟹は美味い。

スープもすっごい。「あ゙〜〜うめ〜」ってなる。正直いままで到底味わったことのない何か。これなんて言えばいいんだろ…。

絶対こうなる。うまい。

そして次はメイン。和牛フィレ肉に備えて、秩父ワインのピノ・ノワールに移行。

なおアルコールは追加料金がかかるが、ソフトドリンクは無料である。

武州和牛フィレ肉のインボルティーニ バジルソース

インボルティーニきましたね。

もちろんスマホで調べてあります。

インボルティーニは「包む」とか「巻く」という意味なので、要は肉巻きですかね。アスパラの肉巻きみたいな?

ちみに添えられた人参がむちゃくちゃ甘くておいしかったです。

で、何かを巻いたインボルティーニ本体を食べてみると、

 

「ふぉっ……」

ああ、これはすごくおいしい。

フィレ肉が柔らかくて、包まれたトマトがじゅわっとしてもう最高としか言いようがない。ピノ・ノワールとのペアリングも間違いない。

はあ〜うまい。

秩父舞茸と手打ちパスタ セージバターソース

まず見たままに言うと、とりあえずお皿がすごくでかい。

そこにかわいく盛り付けられた麺と舞茸。

ものすごく大きなお皿の“ふち”の部分にチーズらしきものが乗っかっています。

“ふち”のほうが大きなお皿というのを初めて見たかもしれません。

このパスタは一瞬「つけ麺?」って思ってしまいそうですが、

この秩父舞茸がむちゃんこ美味しいことに驚きました。こんな雄々しくて、美しくて、おいしい舞茸があるなんて…。

麺は何度見てもつけ麺なのかな?って思ってしまいますが、食べてみたら完全にパスタでした。

チーズをかけると濃厚な味わいが加わってもうなにこれ美味いよ。ううーって悶絶しちゃう味。

このちょこっと乗ったパスタがディナーコース感あっていい。意外とここまででお腹いっぱいだから不思議。

でもスパークリング飲んで、野菜畑食べて、スープ飲んで、メインの牛フィレ食べて、赤ワイン飲んで、パスタ食べたら、そりゃ普通に満腹です。

ここでこんなメッセージカードが。スタッフの方からの温かい言葉にほっこりする。

かごに入ってる“ちちぶまゆ”は、さきほど運ばれてきた「よこぜのおいしい紅茶」に投入。ほんのり甘みが出てきておいしくなる。

砂糖の代わりに“ちちぶまゆ”を使うなんてさすが食堂列車。この一工夫にこだわりを感じる。

そしたら車内で演奏が始まった。武田真治が吹いてそうな楽器で静かにクラシックナンバーを演奏してくれる。

誕生日の祈念に乗車していたご夫婦にハッピーバースデーを演奏して、みんな拍手でお祝いしたり、車両全体が和やかな雰囲気に。

ふと気づくと外はもう所沢駅。以前、私がこの食堂列車をたまたまホームで目撃した地元の駅だ。あのときチラッと見えた演奏風景はこれだったんだ…。

 

あの日ホームに立ち尽くした自分に言ってやりたい。

 

「寒い夜、食堂列車のなかでサックスプレイを聞きながら飲むあたたかい紅茶は格別である」と。

所沢駅から西武新宿線までは特急なら30分程度だろうか。もうまもなく終着駅についてしまう。

ここでデザートが出てきた。

苺のズッパとホワイトチョコジェラート

そうか。君がズッパか。

もう今夜何度目かわからない初めて聞いた単語である。

もはやスマホで調べていないがズッパは美味かった。

苺がすっぱ甘くて、上に乗ったたぶんスッパ本体だと思われるパリパリした物体がいい感じの歯ざわりで、下のほうに隠れているホワイトチョコレートと一緒に食べるとたいそう美味であった。

ここでディナーコースはすべて終了。電車は西武新宿駅に到着。

特別仕様につくりこんだ車両、こだわりを尽くしたコース料理、スタッフの皆さまのおもてなし、本当に本当に大満足です。

最後にお土産までもらえる

帰りにはチョコレートのお土産がもらえるわ、テーブルにセットされてたこのオリジナルコースターがもらえるわ、普通の電車ではあり得ないおもてなし攻勢の数々にもうすっかりやられちゃいました。

まさか西武新宿駅で電車の中からレッドカーペットを歩いて出てくるなんて、誰が想像しただろう。自分でも混乱してます。

17時42分に西武秩父を出発して、2時間20分の豪華ディナー列車の旅、いかがでしたでしょうか。

記念日のお祝いとか両親へのプレゼントとかに最適なのではと思います。特別な日にぜひ。

旅するレストラン 52席の至福

運行区間:池袋〜西武秩父駅間・西武新宿〜西武秩父駅間・西武新宿〜本川越駅間など

運行日:土休日を中心に年間100日程度の運行を予定

公式HP:https://www.seiburailway.jp/railways/seibu52-shifuku/