青春18きっぷで日本縦断。丸5日間、14,150円で最南端の鹿児島から稚内まで行ってみた[PR]

青春18きっぷを使い日本を縦断した記事をお届け!今回の旅では、旅の記録にアプリ「駅メモ」を使用。実際に行った駅全てでチェックインし、使用した鉄道のルートや、所要時間、料金まで細かくレポートいたします。青春18切符で日本縦断をする中でも、最短の「5日間」で達成したその記録をとくとご覧ください。(読了時間目安 : 30分)

2日目

4:00 新山口駅(山口県)

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新山口駅からおはようございます。時間は早朝の4時です。終電→始発のコンボはかなり精神的な何かが削られますね。あまりにも朝早すぎて駅に誰もいません。

 

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利用者がいないだけでなく、改札に駅員さんの姿すらありません。これでは青春18きっぷに本日分のスタンプを押してもらうことができませんので、しばらく待ちます。しかし本当に人っこ一人いないな。本当にこの駅は稼働してるのだろうか。不安になってくる。

 

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あまりに人がいなくて寂しいので「おでかけカメラ」で「みろく」を入れて撮影しておいた。2日目もみろくとの旅である。

 

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しばらく待っていると、やっとこさ駅員さんがやってきてスタンプを押してくれました。これで、2回目の欄が埋まります。まだあと3回分残っているわけで、今日の分を入れて4回分、それで稚内までいけるのか分かりませんが、今日も頑張っていきましょう。

 

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駅メモも日付を跨ぐとチェックイン駅数と移動距離がリセットされる。またこれを精力的に増やしていくことになる。

 

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微塵も朝の気配を感じることができないホームに佇みながら始発列車の到来を待っていると、にわかに隣のホームが騒がしくなってきた。あれだけ人の姿が見えない駅だったのに、隣のホームには人が集まってきている。おまけに全員が三脚にバズーカみたいなカメラを携えている。完全に剛の者っぽい人たちだ。

 

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これは完全に何かが来る気配だ。あまりにも気になったので線路越しに話しかけてみた。

「すいませーん、これから何か来るんですかー?」

「あー、これからSLやまぐち号の新しい客車の試運転があるんですよ」

親切に教えてくれた。どうやらこれからここにSLが来るらしい。それを狙って早起きして撮影に来るのもすごいけど、どうやってそういう情報を仕入れるんだろうか。しばらく待ってると本当にSLがやってきた。

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朝の薄明りの中で力強く蒸気をあげるSLは異様にかっこよく見えた。早起きをしてみるもんだ。良いものを見ることができた。

 

5:03発 山陽本線 岩国行き

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さて次に乗る列車がこれである。岩国行きなのでこれで一気に山口県を駆け抜ける予定だ。昨日はルートに迷って危うく大間違いを犯すところだったが、今日はそういった心配はない。ここから稚内を目指すのにはいくつかのルートが考えられるが、基本的に山陽本線、東海道本線が大正義である。列車の本数や利便性が桁違いに良いので、何も考えず山陽本線、東海道本線で東京方面を目指す。

 

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列車は10両くらいあったっぽいのだが、基本的に誰も乗っていない。スカスカだ。途中の駅で何人かは乗ってくるが、それでもやはりこれだけの車両数は必要ないんじゃないだろうかという気持ちになってくる。この半分でいいくらいだ。

なんて思っていたら、途中の駅で後ろ半分を切り離すらしい。その切り離しを行う駅が、昨日お前らがあれほど悪く言った柳井駅だった。

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お前らがあんなに悪しざまに言うからどんな駅が出てくるかと思ったら、駅前にビジネスホテルとかもあるし、発展してるし、良い駅だよ、ここは。よくもまああれだけ酷いことを言えたもんだ。なんかさ、人の温かさみたいなのを感じる人情の駅だね。昨日ここまで来なかったことを後悔したくらいだ。

 

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列車の切り離しも終わり、最強に良い駅柳井駅を後にして岩国へと向かう。そろそろ小腹が空いてきた。時間も朝食に最適な時間。どうせ岩国駅で乗り換え待ちがあるだろうからその時間を利用して朝食としゃれこもう。

 

7:07 岩国駅(山口県)

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チェックインした駅
 新山口、周防下郷、四辻、大道、防府、富海、戸田(山口)、福川、新南陽、徳山、櫛ケ浜、周防花岡、下松(山口)、光、島田(山口)、岩田、田布施、柳井、柳井港、大畠、神代(山口)、由宇、通津、藤生、南岩国、岩国
 [26駅/累計26駅/移動距離104km]

結果だけ言わせていただくと、朝食は食べられなかった。乗り換え時間が4分で、岩国駅に着いたらもう目の前に次の列車が待ち構えていたのだ。接続が良いのも考えものであるが、効率よく先に進めたとポジティブに考える。なあに、次の広島駅で結構な待ち時間があるさ。

 

7:11発 山陽本線 広島行き

車内はかなり混み合っていて、この旅において初めて座ることができなかった。立ちっぱなし状態は新鮮で、体が伸びる感じがしたので今後も定期的に立ち乗車をしたいと思った。

「おおー徳さん!」

「ありゃ、長さんじゃないの」

混み合う車内でおっさん二人が偶然会ったみたいで驚いた様子で会話を始めた。

「今日は3セットいくの?」

「いんや、今日は4いくよ」

「このこのー!」

「ゲハハハハハ」

と会話の内容は良くわからないけどすごく楽しそう。こんな風にすごく楽しそうに話していたのに、2分くらい目を離していたらこの二人が殴り合いの喧嘩をおっぱじめていたのですごいびびった。一体彼らに何があったのか。ちなみに二人は罵りあいながら宮島口で降りていった。

さて、宮島口を通過したということは長かった山口県が終わり、完全に広島県に突入したということである。つまり、終点の広島駅が近い。もう完全にお腹が空いてやばいので、絶対に広島駅で朝食を食べる。なんなら朝からお好み焼きいっちゃう。それくらいの決意を秘めていた。赤い列車と僕の情熱は滑るように広島駅へと吸い込まれていく。

 

8:08 広島駅(広島県)

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チェックインした駅
 和木、大竹(広島)、玖波、大野浦、前空、宮島口、競艇場前(広島)、広電宮島口、広電阿品、阿品、地御前、宮内串戸、廿日市市役所前(平良)、廿日市、山陽女子大前、楽々園、佐伯区役所前、五日市、広電五日市、修大付属鈴峯前、井口(広島)、商工センター入口、新井口、草津南、古江、東高須、西広島、広電西広島(己斐)、横川(広島)、新白島、牛田(広島)、白島(広島電鉄)、家庭裁判所前、広島
 [34駅/累計60駅/移動距離147km]

お好み焼きは無理だった。乗り換え時間2分で、また次の列車が目の前にスタンバっていやがった。明らかに接続が良すぎる。完全に飯を食わせるつもりがないようだ。

 

8:10発 山陽本線 糸崎行き

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憎らしくなってくるほどに接続が良い。お腹が減って目が回りそうだ。それでも、それでも、この列車の終着駅、糸崎駅ならなんとかしてくれるはず。きっと十二分に乗り換え待ち時間が設定されているはずだ。

 

9:30 糸崎駅(広島県)

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チェックインした駅
 猿猴橋町、天神川、向洋、海田市、安芸中野、中野東、みどり口、瀬野、八本松、寺家、西条(広島)、西高屋、白市、入野(広島)、河内、本郷(広島)、三原、糸崎
 [18駅/累計78駅/移動距離213km]

どうだ!糸崎まできたぞ。いい加減に空腹の限界、絶対にここで長い待ち時間があるはず。30分はあるはず。おらっ!どんだけ待ち時間あるんじゃーい!

「乗り換え時間 1分」

ウソ、だろ……?

何もここまで利便性を高めなくてもいいじゃないか。もっとこうさ、ゆとりをもったダイヤ編成をだね、などと考えていても仕方ありません。目の前に列車があるのならば乗る。それだけです。

 

9:31発 山陽本線 相生行き

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糸崎駅を出てすぐに車窓から見える瀬戸内海の景色は本当に奇麗なのだけど、空腹でそれどころじゃない。車窓から何個も何個もコンビニが見えるのに、なぜ列車は立ち寄ってくれないのか、そんなことばかり考えている。

 

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ダイナミックな景色も全く頭に入ってこない。とにかく朝食。何が何でも朝食、なのである。次の終着駅こそは!と決意するも、この列車は岡山県をまるごと通過して兵庫県まで行ってしまう長丁場の列車と知り、本当に気絶しそうになった。

 

12:18 相生駅(兵庫県)

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チェックインした駅
 尾道、東尾道、松永、備後赤坂、福山、東福山、大門(広島)、金光、備後本庄、笠岡、里庄、鴨方、新倉敷、西阿知、球場前(岡山)、倉敷市、倉敷、中庄、庭瀬、北長瀬、大安寺、備前三門、岡山、西川緑道公園、法界院、西川原、県庁通り、高島、東岡山、上道(岡山)、瀬戸、万富、熊山、和気、吉永、三石、上郡、有年、西相生、相生(兵庫)
 [40駅/累計118駅/移動距離357km]

もう朝食ではなく昼食という時間だ。乗り換え時間は3分。はいはい、ナイス接続。

 

12:21発 山陽本線 姫路行き

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この列車もかなり混み合っていて座ることができなかった。けれども、もはやそんなことはどうでもいい。とにかく空腹なのである。頼むから長い待ち時間きてくれ。飯を食わさせてくれ。

 

12:41 姫路駅(兵庫県)

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チェックインした駅
 竜野、網干、はりま勝原、広畑、英賀保、手柄、山陽姫路、姫路
 [8駅/累計126駅/移動距離379km]

乗り換え時間1分

 

12:42発 東海道・山陽本線新快速 野洲行き

完全に乗り換え設定が頭おかしい。1分や2分で次々と乗り換えていくと、グローバルの最前線で戦うビジネスマンになった気分がしてくる。今はそういうのいらないから、とにかく飯を食べたい。

途中、明石の街を通過している時に、日本の標準時を示す時計台が見えた。

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さてここからは18キッパーの強い味方「新快速」の登場である。兵庫県から大阪府、京都府と抜けて滋賀県まで走るこの列車は、その利便性や本数の多さ、速さから「18きっぷの救世主」とまで呼ばれている。かなり移動距離を稼げるのだ。

おまけに、今回の旅は駅メモを使って駅にチェックインすることが至上命題とされている。関西地方ははっきり言ってボーナスステージに近い。JRと並行して走る路線が数多く、とにかくチェックインしまくればエグい数の駅をとることができる。

ということで、新快速に乗り、神戸、大阪、京都の三都物語を一気に駆け抜け、滋賀県の「野洲」に着いた際の結果を記載したいと思う。

 

14:43 野洲駅(滋賀県)

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チェックインした駅
 東姫路、御着、ひめじ別所、曽根(兵庫)、宝殿、加古川、東加古川、日岡、東二見、浜の宮、西二見、別府(兵庫)、播磨町、土山、魚住、江井ヶ島、大久保(兵庫)、藤江、西明石、林崎松江海岸、西新町、明石、人丸前、朝霧、西舞子、霞ヶ丘(兵庫)、山陽垂水、東垂水、山陽塩屋、塩谷(兵庫)、須磨浦公園、山陽須磨、須磨寺、須磨海浜公園、新長田、高速長田、兵庫、新開地、ハーバーランド、神戸(兵庫)、西元町、花隈、みなと元町、元町(兵庫)、旧居留地・大丸前、三ノ宮、春日野道(阪急電鉄)、王子公園、摩耶、六甲道、石屋川、御影(阪神電気鉄道)、住吉(JR)、摂津本山、甲南山手、芦屋川、芦屋(JR)、打出、さくら夙川、西宮(阪神電気鉄道)、西宮(JR)、阪神国道、甲子園口、立花、尼崎(JR)、加島、御幣島、塚本、海老江、福島(大阪)、梅田、中崎町、南方(大阪)、新大阪、東淀川、吹田(阪急電鉄)、吹田(JR)、岸辺、摂津市、千里丘、宇野辺、茨木、茨木市、総持寺、摂津富田、高槻、高槻市、上牧(大阪)、島本、山崎(京都)、大山崎、西山天王山、長岡京、西向日、桂川(京都)、西大路、東寺、京都、七条、東福寺、御陵、山科、京阪山科、四宮、大津、石場、錦、中ノ庄、栗津(滋賀)、南草津、瀬田(滋賀)、草津(滋賀)、栗東、守山(滋賀)、野洲
 [119駅/累計245駅/移動距離537km]

ちょっとエグいくらいに取れてしまった。えらいこっちゃ。

ちなみにこの野洲駅の一つ前の駅は守山駅で、ちょっと前にネットで話題なった「ピエリ守山」というショッピングモールがある場所だ。現在ではリニューアルしているようだが、その前はテナントの撤退が相次ぎ、営業しているのに店もなく、人の姿もない廃墟のような場所だと話題になったのだ。

ちょうど守山駅を通りかかった時、向かいに座る旅行中と思わしきカップルがその話題で盛り上がっていた。

「ねね、ここってあのピエリ守山がある場所でしょ?」

「なんだっけ?」

「ほら、店もなくなって人もいなくなってってネットで話題になってた」

「ああー、何年前だっけそれ、今はもう普通に営業してるんでしょ?」

「リニューアルしたみたいだよ」

「へー」

「なんかネットの記事にも書いてあったじゃん、当時はシャッターだらけで人もいなくて、営業してるのに、まるで、えっと、なんだっけ」

「ん?」

「なんだっけ、空き家?違うな。ボロ屋、うーん」

「???」

「思い出した!ハイギョだ、ハイギョ、ああいうのハイギョって言うんでしょ!」

ハイギョ(肺魚)-肺や内鼻孔などの両生類的な特徴を持つ魚で、肉鰭綱・肺魚亜綱に属する。他の魚類と同様に鰓を持ち、さらに幼体は両生類と同様に外鰓を持つものの、成長に伴って肺が発達し、酸素の取り込みの大半を鰓ではなく肺に依存するようになる。

 

14:44発 東海道・山陽本線普通 米原行き

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乗り換え時間1分。今日は本当に刹那的な生き方をしてるな。気が休まる暇がない。

 

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列車は大平原の中をひた走る。

 

15:19 米原駅(滋賀県)

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チェックインした駅
 篠原(滋賀)、近江八幡、安土、能登川、稲枝、河瀬、南彦根、ひこね芹川、彦根、鳥居本、フジテック前、米原
 [12駅/累計257駅/移動距離575km]

あまりにも乗り換えが良すぎ、おまけに列車の速度も速いのか、午後3時の段階で昨日の九州編を大きく上回る駅数と移動距離を稼いだ。今日はもっと大記録が狙えるかもしれない。

 

15:30発 東海道本線普通 大垣行き

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乗り換え時間が11分もある夢のような駅で、ホームには立ち食いうどんまであって絶好の朝食チャンスだったのだけど、この時点で空腹すぎてなんか気持ち悪くなってしまっていたので、パスすることにした。

さらに、次の電車まで改札付近でボーっと立っていたら、地元のヌシみたいな存在と思われたのか、すごい上品そうなマダムに道を尋ねられた。

「近江鉄道にはどうやっていったらいいですかね」

そんなもん、案内表示を見れば書いてある。改札を出て東口に向かい、下の出口から出ればいいっぽい。普通にそう答えれば良かったのだけど、あまりに上品なマダムの存在に狼狽し、丁寧な言葉を使わなければならないという強迫観念から、

「改札を出て、東口の下の出口ですよ」

と言うべきところを

「改札を出て、東口の下のお口ですよ」

上品なことを言おうとして下手なのに頑張ってる人が言う言葉責めみたいになってる!僕このミステイクするの2回目なんですよ。前にもマダムに下のお口発言をしている。

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大垣へと向かう列車の車内は混み合っていて座席には座れなかった。車両の一番後ろに立ち、また沸き上がってきた空腹感に、さっき食べておけば良かったと後悔し始めていた。横には部活帰りっぽい女子高生二人がいて、ずっと部活の先輩の悪口を言っていた。

その話を聞いていると、どうやら一部の先輩グループが厄介らしい、ということが分かった。キャプテンを含むレギュラー陣の派閥があって、そこの先輩は優しいが、万年補欠の派閥に属する先輩派閥が良くないらしい。自分らが補欠だからと後輩いびりに徹し、有能そうな後輩は虐めて辞めさせるらしい。現にミサポンはそれで辞めたそうだ。

チームの雰囲気も悪くなるし、有能な後輩が辞めていくのは大きな損失である。そこでレギュラー陣の派閥は今度の部活の時に補欠派閥に三下り半をつきつけるらしい。真面目にやらないなら辞めろと宣告するようだ。面白くなってきた。

しかし、補欠派閥の連中もその雰囲気を感じ取っていて、気の弱い後輩などを自分たちの派閥に取り入れているらしい。そこではレギュラー陣が部を私物化し、自分たちが気に入ってる人をレギュラーにしている、という世論が出来上がりつつあるそうだ。それが結構な勢力になっていて、下手したらレギュラー陣の派閥が負けるかもしれない。彼女たちはそれが心配なようだった。話していた片方の子も補欠派閥に入るように強く説得されたようだが、断ったようである。

「次の部活だね」

「絶対に負けない」

そう彼女たちが決意した時、列車は「関ケ原駅」を出発したところだった。

「まさに次の部活が関ケ原の決戦だね。負けんなよ!」

そう上手いこと言おうとしたが、危ない危ない。僕と彼女たちは何の関係もないのだった。物凄い親身になって聞いていたから話に入っていきそうになった。彼女達からしたらいきなり汚いオッサンが話しかけてくるわけですからね。完全に事案ですよ。

とにかく、彼女達もキャプテンも頑張って、ミサポンの仇を取って欲しい。そう決願していると、列車は大垣駅へと到着した。

 

16:02 大垣駅(岐阜県)

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チェックインした駅
 坂田、醒ヶ井、近江長岡、柏原(滋賀)、関ケ原、垂井、北大垣、室、大垣
 [9駅/累計266駅/移動距離607km]

さて、そろそろ危なくなってきた。肉体的疲労や空腹はもちろんだが、先ほどの関ケ原女子高生を見るに、昨日と同じ精神状態に陥る兆候が出始めている。自分と他人の境界が分からなくなり、車内全ての会話が僕を含めて行われているように感じるアレだ。まだまだ先は長いので悪化しないように自分を強く持っていかなければならない。

 

16:11発 東海道本線特別快速 豊橋行き

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ここからは大都会名古屋を通過していくことになる。つまり、駅チェックインのボーナスゾーンということになる。ここでもしっかりと稼いでいきたい。

正直に言うとこの辺の区間は完全に精神が死んでいた。何も覚えていない。景色すら記憶の片隅にもない。ただ黙々と駅にチェックインしていただけだと思う。脳が壊れる一歩手前で防衛本能が働いて回路を切断したのではないかと思っている。ハッと気が付いたら豊橋駅に到着していた。

 

17:39 豊橋駅(愛知県)

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チェックインした駅
 東大垣、横屋、穂積、西岐阜、岐阜、加納(岐阜)、茶所、岐南、木曽川堤、黒田(愛知)、木曽川、新木曽川、石刀、今伊勢、西一宮、尾張一宮、名鉄一宮、妙興寺、島氏永、清州、稲沢、丸ノ内、尾張星の宮、枇杷島、西枇杷島、東枇杷島、亀島、名古屋、近鉄名古屋、ささしまライブ、山王(愛知)、尾頭橋、金山(愛知)、西高蔵、神宮前、伝馬町、堀田(名古屋市交通局)、笠寺、本星崎、大高、南大高、共和、大府、尾張森岡、逢妻、刈谷、野田新町、東刈谷、三河安城、安城、南安城、西岡崎、六名、岡崎、相見、幸田、三ヶ根、三河塩津、蒲郡競艇場前、蒲郡、三河三谷、三河大塚、愛知御津、小田渕、西小坂井、小坂井、下地、船町、駅前、豊橋
 [70駅/累計336駅/移動距離723km]

全く記憶にないけど結構取っていた。たぶん繰り返し駅にチェックインする一連の動作が脳に焼き付いてるのだ。

もう愛知もほとんど終わりで次は静岡。ここまで来ると強烈に東京を意識する。なんとか今日中に東京まで行きたいものだ。

 

17:42発 東海道本線普通 浜松行き

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浜名湖を超えたあたりだろうか、急に様子がおかしくなってきた。予想通り、また自分と他人の境界線が分からない状態がやってきた。仕事の話をしている上司と部下みたいな人たちも、サークルの話をしている大学生も、テレビアニメの話をしている親子連れも、全部僕を交えて会話しているような錯覚に陥る。長いこと雑多な喧騒に触れていると自分という器が形を保てない、そんな感覚に近い。

色々な会話も、さも自然に割り込んでいきそうになりながらなんとか自分を抑え込む。怖い。まるで自分が自分じゃないみたいだ。顔をバンバン叩いたり、音楽を聴いて会話を聞かないようにしてなんとか耐えることができた。

浜松到着。静岡県入りである。

 

18:16 浜松駅(静岡県)

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チェックインした駅
 新豊橋、柳生橋、小池、南栄、二川、新所原、アモス前、大森(静岡)、鷲津、,新居町、弁天島、舞阪、高塚、新浜松、浜松
 [15駅/累計351駅/移動距離759km]

ホームに降りたち電車内の喧騒から離れると、自分という境界を取り戻すことができる。なんとか正気を保っていられる。青春18きっぷの旅はこんなにも辛いものなのだ。

 

18:26発 東海道本線普通 興津行き

今日は始発から一貫して接続が良い。おかげで飲まず食わず状態で旅する羽目になっている。他人の会話にカットインしそうになる現象に悩まされているが、これはもう開き直ってカットインするしかないのだと思う。ただし、大声でカットインしたら完全におかしい人なので、ここは一つ、ものすごい小声でカットインする手法を採用したい。

列車が動き始めてすぐ、例の現象が始まった。目の前の夫婦が引っ越しをするかしないかで揉め始めた。

「引っ越したいんだよねー」

「またすぐそうやって。実際に引っ越しの準備するのは誰だと思ってるの?あなたは何も手伝わないじゃない」

「でもさ、コンビニ遠いじゃん。スーパーだって不便だし」

「だからそうやってポンポン引っ越されても困るのよ」

「いつも新鮮な気持ちで暮らしたいじゃん」

みたいな会話も、僕の中では僕を交えて3人で話してることになってるので、必然的にクリティカルな助言をしなくてはならない気持ちになってくる。いきなり助言をし始めても完全に頭のおかしい人なので、聞こえないレベルの小声で助言する。

「だったら別居すればいい。旦那は引っ越しできてハッピー。旦那の荷物だから自分で準備するだろうし、奥さんもハッピー」

よし。これならOK。基本的には人には聞こえないから怪しまれないし、会話に参加した気になって僕の気持ちも満たされる。ずっと乗ってるのは僕ぐらいのもので、他の乗客は入り変わり立ち代わりなのだけど、あらゆる会話に小声で参加していく。そのうちなんか気持ちが安定してきた感じがした。

 

20:01 興津駅(静岡県)

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チェックインした駅
 天竜川、豊田町、磐田、袋井、愛野(静岡)、掛川、掛川市役所前、菊川(静岡)、金谷、新金谷、島田(静岡)、六合、藤枝、西焼津、焼津、用宗、安倍川、静岡、日吉町、春日町、柚木(JR)、柚木(静岡鉄道)、古庄、県総合運動場、県立美術館前、草薙、御門台、狐ヶ崎、桜橋(静岡)、新清水、清水(静岡)、興津
 [32駅/累計383駅/移動距離846km]

正直に言ってしまうと、あまり聞いたことがない駅が終着駅だった。興津ってそんなメジャーな駅だろうか。駅の周りに家が沢山ある感じだが、これといって目ぼしい何かがあるわけではなさそうだ。たぶん車両基地の関係でここが終着駅なのだろう。

18分ほど乗り換え時間があるようで、完全なる朝食チャンスだったが、明らかに駅構内にはそういった飲食施設がなさそうだったので諦めた。駅の外に打って出るのは18分という時間はリスキーだ。大人しく次の列車を待つ。

 

20:19発 東海道本線普通 熱海行き

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熱海の文字を見ると何だか帰ってきた気がしてホッとする。けど、別に帰ってきたわけじゃないのな。ただ単に稚内への道の途中というだけだ。

実は、僕はちょっとこの旅には自信があった。普段から少し長い時間列車に乗ることなんて何とも思わない人間なので、最南端から最北端、楽勝でしょ、という驕り昂りが確かにあった。ただ、現実にやってみると何とも言えない苦しみがそこにあった。

例えば東京-大阪間を青春18きっぷで移動するといった場合、確かに辛いことなのだけど、そこには終わりがあるわけだ。大阪を目指していて、熱海、名古屋、京都と近づいていくとゴールである大阪を強烈に意識する。

けれども、この旅は最南端から熱海まで来てなおゴールが見えない。稚内という存在を全く感じることができない。これはかなり心にくる。完全に心が折れてしまいそうだ。肉体的疲労ももちろんだが、精神的な部分がかなり辛く苦しい。

ただ、問題が精神的な部分だけならば解決しようがあるという側面もある。肉体が破壊されて、例えばもう足が動かないとなったら旅の続行は不可能である。けれども精神的な理由ならば気の持ちようである程度対処できるのだ。心が折れたならば繋ぎ直せばいい。そう頑張って先に進むんだ。

そんなことをお経のように繰り返しブツブツ言っていたらすぐに熱海に到着した。

 

21:23 熱海駅(静岡県)

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チェックインした駅
 蒲原、新蒲、東静岡、原、富士川、富士、新富士(静岡)、ジヤトコ前(ジヤトコ1地区前)、吉原、岳南富士岡、東田子の浦由比、原(静岡)、岳南江尾、片浜、沼津、大岡、下土狩、三島、長泉なめり、三島田町、三島二日町、函南、来宮、熱海
 [24駅/累計407駅/移動距離905km]

うおおおお、ついに熱海だ。やはり帰ってきた感がする。熱海の街自体にそんなに縁もゆかりもない。なんなら街を歩いたことすらないのになんでこんなホーム感があるかというと、たぶん熱海からSuicaが使えるからだ。もちろん18きっぷの旅なので使う機会はないけど、いつも使ってるSuicaを使える範囲に来たってことが途方もないホーム感を生み出しているんだと思う。

ただいま熱海。

 

21:28発 東海道本線快速アクティー 東京行き

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「東京」の文字を見てなんだか力が抜けたような気がした。これがホームグラウンドに帰ってきた安心感というやつなのだろうか。熱海の街自体が「おかえりなさい」って言ってくれているような気がした。

列車に乗り込んでみると、車内の会話もすごい東京っぽい。「インスタ」「ナイトプール」「バー」「横浜」みたいな単語がポンポン飛び出してくる。すごいすごい。東京に帰ってきた。

途中、茅ケ崎駅からとんでもない若者集団が乗り込んできた。6人組の男女というか、女性5人に男1人といったアンバランスな構成で、明らかに夏の砂浜でタオル振り回していそうな感じの集団だった。男のほうはすげえ金髪にクッソ日焼けをしていて刺青とか入ってて、こいつが投資話を持ち掛けてきても絶対に乗らないと言いきれる風貌の人だった。

で、女の子5人も、完全に「彼氏の浮気を男友達に相談してるうちにその男友達にヤラれる」感じのアッパッパーな感じなんだけど、女の子5人が座席に座ったかと思うと、その架空の投資話を持ち掛けてきそうな男が端からバンバン乳を揉んでるわけ。5人の女の子の乳を順番に揉んでるわけ。一瞬何が起こっているのか分からなくて、ついに幻覚が見え始めたかと思った。

でもやっぱり本当に架空の投資話は当然のように乳を揉んでいて、女の子たちも嫌がるでもなく、驚くでもなく、当たり前にそれを受け入れてるわけ。自然と共に生きる部族みたいに、あるがままに全てを受け入れてるわけ。なんなら乳を揉まれながらスマホでモンストとかしてる勢い。数えてみたんですけど、男はきっちり24揉みしてから次の子に移るんです。合計でじつに120揉みですよ。なんなんだよこれ。

これは何らかの儀式なのか、それともそういうプレイなのか、もしかして僕も揉みに行ったら当たり前に揉めるんじゃないか。困惑しちゃいましてね。なんかすごい怖くなっちゃったんです。これが東京なんだ、みたか、とそう言われているような気がして泣きたくなっちゃったんです。

数駅したらおっぱい集団も降りて行っちゃってですね、あれは夢だったんじゃないか、夏が見せた幻だったんじゃないか、そう思いたくなるほどの強烈なインパクトを残して消えていったのです。まるで夏の夜の花火のように。

東京が近づいてくると、車内は仕事帰りの人や飲み会帰りの人でごった返してきました。その中で対面に座る一組の男女が目に留まった。会話の内容から察するに、どうやらこの男女、付き合ってるというわけではなくただ単に同じ職場か何かでたまたま帰り道が一緒だったような感じだ。

「疲れちゃいましたね」

「疲れましたね」

「私寝ていいですか?品川駅で起こしてくださいね」

「寝るんですか。うーん、わかりました」

そんな会話をして女性の方が眠る素振りを見せるんですけど、完全に狸寝入りなんですよ。で、女の左手がですね、男の右手の近くに投げ出されてるんですよ。この手と手の距離感が絶妙でしてね、なんていうか、磁石と磁石が引き合わないギリギリの距離、みたいな、ある種の緊迫感をもった位置に投げ出されてるんですよ。

たぶんね、女性は誘ってるんですよ。彼が手を握ってくるように誘ってる。男のほうもそれに気づいててすっげえ迷ってるんです。たかだか手を握るってだけですよ。さっきなんて無造作に5連発で乳揉んでる男がいたくらいですよ。手ぐらいどうってことないじゃないですか。

ただ、彼は分かってて、ここで手を握るということは同僚だった彼女がそうではない関係になるということです。それを受け入れられるのかという問題なのです。ジリジリと電車の揺れが二つの手の距離を縮めたり離したりします。もう僕はヤキモキしちゃいましてね、もう握っちゃえよ、ほれ、握っちゃえよ、って心の中で応援してました。

「お前ら見てっとイライラすんだよ、お互いに好きなら付き合っちまえよ。なに怖がってるんだ」

なぜかドラマの江口洋介的ポジションで言いそうになりましたが、危ない危ない。彼らからしたら僕は知らない人だった。

結局、意を決した男が手を握ってですね、そこからはまあ、すごい指を絡めてですね、お互いに見つめ合ってうっとりですよ。二人でどこか遠くに行きたい、そんな顔してました。青春18きっぷ投げつけて「稚内まで行ってこい!」って言いそうになりましたよ。「チェックインも忘れるな。ラブホテルじゃねえぞ」って言いそうになりましたよ。

それにしても今日はほとんど乗り換え待ちがなく、まだ朝食すらとっていない。移動距離も大変なことになってるなあ、と思いながら駅メモを眺めていたら…

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移動距離がカンストしちゃいました。

 

23:07 東京駅(東京都)

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チェックインした駅
 湯河原、真鶴、根府川、早川、箱根板橋、小田原、緑町、井細田、鴨宮、国府津、二宮(JR)、二宮(湘南軌道)、大磯、平塚、茅ヶ崎、北茅ヶ崎、辻堂、本鵠沼、藤沢、湘南深沢、富士見町(神奈川県)、大船、本本郷、戸塚、舞岡、東戸塚、保土ヶ谷、和田町、天王町、西横浜、平沼橋、横浜、神奈川、東神奈川、神奈川新町、子安、新子安、生麦、国道、鶴見、鶴見市場、八丁畷、川崎、京急川崎、六郷土手、雑色、蒲田、梅屋敷(東京)、大森(東京)立会川、大井町、新馬場、北品川、品川、泉岳寺、汐留、内幸町、日比谷、有楽町、大手町(東京)、神田(東京)、東京
 [65駅/累計472駅/移動距離999km(測定不能)]

すげえ家に帰りたい。とにかくこのまま家に帰りたい。

ここから電車一本で帰れるというのになぜ稚内を目指さないといけないのか。もうね、これは観光とか趣味でやる旅じゃないですよ。罪人とかがやらされるやつですよ。とにかく、ほんと、家に帰りたい。

 

23:11発 京浜東北線 大宮行き

そういえば、ここまで大阪や名古屋といった大都市で駅にチェックンインしまくってきて、大都市は並行して走る路線の駅まで取れるのでえらいことになる、という教訓を得たのですが、東京は思ったほど取れませんでした。東京は取りまくれてエライことになると予想していたのですが、そうではありませんでした。

これはですね、東京は乗っている路線の駅間の距離がそもそも短いということに起因しているようで、確かに沿線に別路線の駅は沢山あるのですが、そもそも乗っている路線の駅がすぐ近くなのでそこばかり拾ってくるんです。だから予想よりも取れなかった。あまりボーナスゾーンではなかったのです。

ということで、飲み会帰りのサラリーマンなどにもみくちゃにされながら大宮に到着です。

 

23:58 大宮駅(埼玉県)

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チェックインした駅
 秋葉原、末広町(東京)、御徒町、上野御徒町、上野広小路、京成上野、上野、日暮里、鶯谷、西日暮里、田端、尾久、上中里、栄町(東京)、王子、王子駅前、東十条、赤羽、赤羽岩淵、川口、西川口、浮間舟渡、蕨、南浦和、浦和、北浦和、与野、さいたま新都心、大宮(埼玉)
 [29駅/累計503駅/移動距離1037km]

走行距離はカンストしていたが、別の項目でその日のレポートを見ることができる。それによるとこの日の総移動距離は1037kmだった。500駅チェックイン、1000km移動、この二つを同時に達成するのは結構な大記録ではないだろうか。飛行機でも新幹線でもなく、普通列車のみでこれをやると精神的にかなり蝕まれるのがわかる。

さて、ここ大宮駅は大都会なのでまだまだ北に行く列車がある。0:08発の宇都宮行きだ。これに乗ってさらに北上と行きたいところだが、あいにくまだこの先のプランが決まっていない。プランが決まる前にやみくもに進んでいくのは危険なので、ここ大宮で二日目を終了とすることにした。

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閑散としている大宮駅コンコース。この街で睡眠と電源を確保することにしよう。あと朝食。

 

2日目のまとめ

ということで2日目のまとめはこちら。

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総評
とにかくタイトな乗り換えだった。山口から大宮まで移動できるとは思わなかった。1000分以上も列車に乗車していたわけで、途中精神的に危うくなる場面が何度か見られた。二日目はルートを迷う心配はなかったが、明日からは18キッパーの間でまことしやかに「高難度エリア」と囁かれる東北である。なんとかして効率よく北上していきたい。あと、食べられるときに貪欲に食事をするように心がけたい。本当に長い一日だった。

 

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