青春18きっぷで日本縦断。丸5日間、14,150円で最南端の鹿児島から稚内まで行ってみた[PR]

青春18きっぷを使い日本を縦断した記事をお届け!今回の旅では、旅の記録にアプリ「駅メモ」を使用。実際に行った駅全てでチェックインし、使用した鉄道のルートや、所要時間、料金まで細かくレポートいたします。青春18切符で日本縦断をする中でも、最短の「5日間」で達成したその記録をとくとご覧ください。(読了時間目安 : 30分)

※本記事は『駅メモ! – ステーションメモリーズ!-』の提供でお送りいたします。

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湿り気を帯びた生暖かい風が、海が近いことを教えてくれた。夜の闇、広がる大草原、その真ん中にまっすぐに伸びる道路を歩く。遠くの方からトラックのエンジン音が聞こえて、東の空は少しだけ明るくなっていた。
まるでこれから始まる暑い暑い夏の一日を予告しているかのような光、僕はそれをずっと眺めていた。

というわけで、ヒマワリに囲まれた朝5時の無人駅からこんにちは。

ここがどこかといいますと、鹿児島県は指宿市にあります「西大山駅」という場所です。JR九州の指宿枕崎線の途中にある小さな小さな無人駅です。周りを見渡しても一面の草原というか畑で、特に大きな集落があるというわけでなく、ただポツンと駅だけがある、そんな場所です。その駅も画像から分かるように、ホームと小さなベンチがあるだけといった、小さな小さなものです。

さて、なぜこんな場所に、それも朝5時という、ちょっと尋常じゃない時間に佇んでいるのか。事情を説明するとなかなかややこしいのですが、順を追って説明したいと思います。

あれはちょっと前のことでした。このメディア「SPOT」を運営する編集部から以下のようなことを聞かれたのです。

編集部
「そろそろ記事を書きましょう。取材に行きましょう。どこか旅行に行きたい場所はありますか?」

望んでいただけることはありがたいことです。そのような問いかけに対し、僕はかねてから望んでいたようにこう返信をしたのです。


「優雅に日本を縦断したい。まだ知らない景色や人、物を見てみたい。この国はあまりに広すぎる」

世界地図で見ると日本なんて本当に小さな国です。けれども実際に住んでいる僕らからしたら広くて大きい、そう思うのです。そんな日本を隅から隅まで旅行し色々なものを見てみたい、そういった思いを常々抱いている僕としては、やはりどうしても日本を縦断してみたいのです。

しかしですね、単純に日本を縦断するといってもなかなか大変なものです。まず新幹線やら何やらの交通費が甚大になりますし、各地での宿泊費、もちろん、取材ですから旅館とかに泊まって地元の漁師が獲ったばかりの地魚の刺身なんか食べてですね、わっ、脂が乗っててプリプリしてる、おいし~、この辺の海で獲れたんですか?とか言わないといけないわけですよ。そんなのいくら経費がかかるか分かったもんじゃありませんからね。SPOTとしてもそうそう簡単に許可するわけにはいかないと思うんです。

多分ダメだろう。そう予想していたのですが、SPOT編集部より帰ってきた返答は驚くほど意外なものでした。

編集部
「承知しました。それでは優雅に日本縦断してきてください。JR最南端の駅から最北端の駅まで行ってきてください。切符はこちらで準備しますね」

これがかつては鬼とまで言われたSPOT編集部ですか。ずいぶんと丸くなったものです。それでもまあ、最南端から最北端まで旅行させてくれるとは嬉しいものです。大変な距離ですけど、今や九州新幹線や北海道新幹線までありますからね。優雅に縦断することはそうそう難しいことではありません。

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どれどれ、これが編集部が準備してくれた切符ですか。もう袋に思いっきり新幹線が描かれてるじゃないですか。悪いね、切符の準備までさせちゃって悪いね。もしかしたらグリーン車とか取ってるのかも。おいおい、それはいくらなんでも気を使い過ぎですよ、普通の指定席とかでいいですから~、そんな感じでウキウキで袋を開けました。

 

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は?

飛び出したるは鬼の「青春18きっぷ」でした。あいつら頭おかしいんじゃないか。

ご存知ない方のために簡単に説明させていただきましょう。

青春18きっぷとは
・JRが春季・夏季・冬季休暇期間を利用期間として発売される全線乗り放題の切符。
・1枚で、利用可能期間中の任意の日に5回まで利用できる。5回分は一度に連続して使用しなくてもよく、有効期間内であれば別々の日に1回ずつ使うことができる。また複数人で利用しても良い。
・1回分は原則乗車日当日限り有効で、乗車日内(0時から24時までの間)であれば、何度でも乗降や途中下車ができる。日付をまたいで運転する列車については、0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効
・値段は5枚綴りで11850円
・基本的にJRの普通列車、快速列車で使用できる(一部例外あり)
・新幹線や特急列車には原則として乗車できない

いやはや、まさかこれで最南端の駅から最北端の駅まで行けというのでしょうか。新幹線も特急列車も使えない。ただ普通列車のみで最北端へ。5日分使えるから楽勝だろう、みたいな悪魔の声が聞こえてきます。いい加減SPOT編集部を何らかの刑事罰に問えないのか思案することろですが、まあ、切符まで買ってもらったわけですし、気を取り直して出発するとしましょう。ここまで来てしまったものはしょうがない。

青春18きっぷを使えば14150円で最南端の駅(鹿児島県西大山駅)から最北端の駅(北海道稚内駅)までいける。

さて、この旅の実施にあたり、鬼の編集部の方から細かいルールの指示がありました。以下のようになります。

【今回の旅のルール】

1.青春18きっぷで利用できる交通機関以外を使用してはいけない
これはまあ、当然といえば当然でしょう。別料金を払って新幹線に乗ったりはもちろん、交通機関がないからとバスに乗ったりJR以外の私鉄に乗ってはいけないということのようです。

2.スマホで調べ物をしてはいけない。ただし、駅員さんや人に尋ねるなどはOK
便利な世の中になったものですから、今や乗換案内などを駆使すれば簡単に効率の良い経路が出てきます。けれどもそれじゃああまりに簡単になりすぎるということで禁止のようです。

3.証拠として位置ゲームアプリ「駅メモ!」を利用し、移動した駅の記録を残す。さらになるべく多くの駅にチェックインしまくること。
なるほど、全く信頼されていない。

まあ僕なら適当に18きっぷで移動したした言い張って、ネットで拾ってきた画像を繋ぎあわせて旅日記を完成させかねませんから、それを防ぐために駅メモで記録をつけてこいとのことでした。

駅メモ!-ステーションメモリーズ
https://ekimemo.com/

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「おでかけをもっとたのしく。」をコンセプトにした位置ゲーム。スマホなどのGPS機能を利用し、その場所近くにある駅を集めることを目的にしている。対象は全国9000以上の駅であり、駅の争奪ゲームとしても楽しめるが、旅行などの移動の記録としても楽しめる。

早速、指定されたアプリをダウンロードしてみる。

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すぐにダウンロードが終わり、賑やかにアプリが起動した。どうやら駅の思い出を集めていこう!というコンセプトのゲームらしい。今回の旅にぴったりといえばピッタリだ。

まず初めに、一緒に旅をする「でんこ」と呼ばれる少女を選択しなければならないらしい。ここで選んだ子と日本縦断をすることになるのだから失敗は許されない。慎重を期して臨まなければならない。候補は3人いるようだ。これはなかなか悩む。

 

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メロ。おバカさん。勉強も運動も苦手だが驚異的な運の持ち主。というプロフィール。

うーん、一緒に旅するのにおバカさんは避けたいというのが正直な気持ちかな。プロフにまで書かれるってことは相当おバカですからね、これ。普段ならおバカな女の子も「かわいいなこいつ」ってなるかもしれませんけど、旅先ってちょっと気が立ってたりするじゃないですか。知らない土地で上手くいかなくてイライラ、なんてこともありますから、その場面でおバカな行動されて大らかに許せる自信がない。

それにちょっと衣裳が気になりますね。完全にへそ出しルック。今は鹿児島にいて暑いからいいですけど、僕らが目指すのは最北端ですよ。ちょっと冷えてきて、お腹冷えた~とか言われたらまあまあ面倒くさい。こりゃ今回の旅ではメロを選択することはありえません。

 

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ルナ。IQ200の天才。夜型で昼はいつも眠そう。

うーん、正直、青春18きっぷの旅にそこまでのIQはいらないと思うんですよ。というかその高いIQで、旅の間ずっと「なぜこんなバカな旅をしているのか」って問い詰められたらうんざりです。あと、この子もよくよく見るとへそ出しルックなので、絶対に稚内でお腹冷えたって言うので面倒くさい。というか北に行くって言ってるのにこんなへそ出しで来る時点で本当にIQ200の天才なのか疑わしい。

 

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みろく。明るくまっすぐで困った人を見ると助けずにはいられない性格。お腹の防御力よし!この「みろく」と一緒に旅をすることに決めた。

さて、一緒に旅をする「でんこ」が決まると今度は「チェックイン」という機能を使う必要がある。これが編集部に提示する確たる証拠になるわけだから、これから忘れずにやっていく必要がある。

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右下のチェックインというボタンを押すと、その時点で最も近くにある駅が記録されることになる。早速、押してみた。

 

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チェックインするとこんな画面が表れる。最も近い「西大山」駅にアクセスしたという情報と共に「リンク」できなかったという表示が。

どうやら、それぞれの駅には別のプレイヤーが保持する「でんこ」がまるで守護神のようにリンクしていて駅を守っているようです。そのでんこと戦って勝たないと駅とリンクすることができないようだ。

つまり今、この駅を守護している方のでんこはすごい強くて、たぶん完全に剛の者なので僕のでんこでは勝てなかったということだ。ただし、駅にアクセスすればその駅にアクセスしたという記録も残るし、経験値が入るので「でんこ」も強くなっていき、いつかは駅を守護できるようになる、ということだろう。なかなか面白そうだ。稚内までいくつの駅にチェックインできるのか。俄然やる気が沸いてきた。

 

1日目

8月21日 5:43 西大山駅(鹿児島県)指宿枕崎線

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ここ西大山駅は寂しい無人駅であるが、JR最南端の駅だけあってそれにまつわる看板などがいくつかある。
さらには早朝過ぎて開店していなかったが、周囲には数件の土産物や特産品を売る店があった。

 

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このように日本の東西南北、全ての極限駅が紹介されている。
こうしてみると稚内、異常に遠い。完全に別の国だ。ここまで鈍行のみで行くとか正気の沙汰じゃない。

 

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夜が明けてきた。長い長い1日が始まりそうだ。

 

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威風堂々とそびえ立つ「日本最南端の駅」の碑の後ろに見えるのは、見事な円錐形の形が特徴的な開聞岳だ。
綺麗な形してるなーとか考えながら始発列車の到来を待つ。

待ってる間、暇なのでついでに「おでかけカメラ」なるアプリもダウンロードしてみる。
どうやらこれは駅メモとセットのアプリのようで、愛しの「でんこ」と写真撮影ができるものらしい。(ちなみに、アプリのリンクはこちらです。【iOS版】【Android版】)

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「さあ、いこうよ」って言われてる感じがする。
やはりお腹が冷えなさそうで良い。僕の選択は間違ってなかった。

 

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そうこうしているとプワーンと警笛を轟かせて記念すべき1本目の列車がやってきた。

車内は通学と思わしき高校生数人と老人が数組乗っているだけだった。これに乗り込み2駅先の「山川駅」を目指す。列車は10分ほどで終着駅の山川駅へと滑り込んだ。

 

5:53 山川駅(鹿児島県)指宿枕崎線

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チェックインした駅
 西大山、大山(鹿児島)、山川
 [3駅/移動距離5km]

たった3駅にチェックインしただけで「みろく」のレベルが5まであがった。チェックインした駅の数と移動距離も表示されているので、なかなかやりがいがある。この調子で「みろく」を強くしていって、ゆくゆくは駅を守護する存在にしたい。そして鹿児島の駅メモユーザーを震え上がらせたい。

さて、この最初の終着駅、山川駅だが、実はこの駅も大きな特徴がある。

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目の前に海を臨む絶好のロケーションの駅。
朝日が海に反射してキラキラしていてとても綺麗。

 

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実はここは日本最南端の「有人」駅、らしい。
駅員が常駐している駅としては最も南にあるそうだ。

 

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ただ、朝早すぎるので肝心の駅員さんはいない。有人駅が聞いて呆れる。

なぜ駅員さんに拘っているかというと、青春18きっぷの場合、その日に使い始めた証明として乗り始めた駅でスタンプを押してもらわなければならないからだ。しかしながらここまで無人駅だったし、この駅で降りる時もチェックが皆無だったので、僕の18きっぷはまだ綺麗なままなのだ。

何もない駅で海を眺めながら18分の待ち合わせ時間を経て、次の列車がホームへと滑り込んできた。今度はあれに乗るらしい。

 

AM6:11発 指宿枕崎線 鹿児島行き

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たった今、鹿児島の方向から山川駅へと到着したこの列車がそのまま鹿児島行きになるようだ。早速乗り込む。
車内のメンツは先ほどの山川行きの列車と全く同じだった。誰も山川駅に用事がある人はおらず、そのまま全員が乗り換えたようだ。

 

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砂蒸し温泉で有名な指宿駅を通過すると、列車の進行方向が変わり思いっきり朝日が差し込んでくるようになった。あまりにもそれが陽気で気持ちよくて、まるでゆりかごのような電車の揺れとの相乗効果で眠ってしまいそうになるが、はっ、とそれができないことに気が付く。

そう、僕は駅メモを使ってとにかく駅にチェックインしまくることを義務付けられている。チェックイン自体は別になんてことない作業でワンタッチで終わるが、それは同時に、眠ることを許さないという悪魔の指令なのである。それに気が付いた。

多くの場合、よほどの田舎でない限り駅と駅の間は4~7分程度の間隔に設定されている。つまりその時間間隔でチェックインしなければならない。眠れるはずがないということだ。普通、こういった18きっぷの旅は乗ってしまって終点までグースカ寝ていれば良いのだけど、それすら許さないという編集部の悪行三昧。やつらの血は何色か。

純粋なる悪意。そんな言葉に身震いしながら車窓からの景色を眺めつつチェックインを繰り返していると、大きな声が耳に飛び込んできた。

「そうそう、昨日は温泉、今日は桜島を見るつもり」

指宿から乗り込んできた観光客っぽい人が携帯電話で大声で話をしているみたいだった。見ると恰幅の良い男性とその横にしなだれかかってる女性がいた。話している内容から推察するに、旅行に来て昨日は指宿で楽しい夜を過ごし、これから桜島観光に繰り出すようだ。

声デカすぎだろと思いながら見ていると、男は意気揚々と別の場所に向かい電話をし始めた。ただ、今度はちょっとトーンが違う。

「あ、はい、ええ、そうなんです。ちょっと通勤途中に気分が悪くなりまして本日は休ませていただけたらと。あい、すみません」

完全に会社を仮病で休む電話してるーー!

「ええ、途中までは通勤してきたんです。大丈夫です。帰れます。いま代々木なんで帰れます」

という言葉に車内にいた全員が「代々木じゃないだろお前は、今鹿児島だろ」って心の中でつっこみを入れていた。

さて、そんな感じで通学の人、通勤の人、観光の人に囲まれて指宿枕崎線に揺られて鹿児島中央駅を目指すのだけど、鹿児島市の中心部が近づくにある事実に気が付く。

「どうやら乗ってる路線以外の駅もチェックインできるっぽい」

これはよくよく考えたら当たり前なのだけど、駅メモはチェックインを押された瞬間の最寄りの駅にチェックインするようになっている。これは鉄道が一路線しかないような辺鄙な場所では、普通に乗っている路線の駅にしかチェックインできないのだけど、私鉄や地下鉄、路面電車などが入り組んでくる都市部では並行する路線の駅にもガンガンチェックインできる。

なるほど、とにかくチェックインしまくれって指示はそういうことか。つまり、ここまでは駅に停車した時にチェックインしていたけれど、今後、特に都市部では駅間でも気を抜く暇なくチェックインしまくれってことか、ますますもって鬼だな。あいつら人殺し以外は何でもやるんじゃないか。

ということで、並行する路面電車などの駅にもチェックインしまくりながら何とか数を稼ぎ、ついに鹿児島中央駅へと到達した。

 

AM7:28 鹿児島中央駅(鹿児島県)

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チェックインした駅
 指宿、二月田、宮ヶ浜、薩摩今和泉、生見、前之浜、喜入、中名、瀬々串、平川、五位野、坂之上、慈眼寺、谷山(JR)、谷山(鹿児島交通局)、笹貫、宇宿、宇宿一丁目、二軒茶屋(鹿児島)、南鹿児島、南鹿児島駅前、中郡(鹿児島)、郡元(JR)、唐湊、神田(交通局前)、中洲通、都通、鹿児島中央
 [28駅/累計31駅/移動距離53km]

さて、このまま青春18きっぷにスタンプを押されないのもキセルしているみたいで気持ち悪いものがあるので、ここ鹿児島中央駅で一旦改札を出てスタンプを押してもらう。

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しっかりと1日目のところに鹿児島中央駅のスタンプを押してもらえた。これで今日の一日は普通列車乗り放題というわけだ。

さて、鹿児島中央駅は九州新幹線の終着駅でもあり、各地への鉄道路線への分岐点にもなっている。ここで少しばかり戦略的なお話をさせていただきたい。ここは今後の旅を占う上で重要なターニングポイントとなるので慎重を期して臨みたいのだ。まずは地図を見てみよう。

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赤がここまでやってきたルートで、鹿児島中央駅から大きく分けて西に行くか東に行くかを選択しなければならない。東ルートの場合はこのまま宮崎県へと入っていき、大分を抜けていくルートを通ることになる。また、西を行くルートの場合、薩摩川内市などの西側の海岸線を通っていくルートとなる。このルートは九州新幹線が通っていることからも分かる通り、おそらくメインルートっぽい。

東側ルートは、宮崎市延岡市と宮崎県の海岸線を通るルートになっていくが、延岡より北、大分へと抜けるルートにかなり不安が残る。ほとんど列車がないんじゃないか。それならばやはり西ルート、つまりここから川内へと抜けるルートが正解か。

ここから川内へと行く列車は1時間ほどの乗り換え時間があって8時29分発。まあ、これが正解だ、これで行こうと決意して掲示板を眺めていると、むちゃくちゃ鉄道に詳しそうな剛の者っぽい人に話しかけられた。

「川内へいくんですか?」

「はい、ちょっと待ち時間ありますけど」

「あのー、さっき改札で見てたんですけど、青春18きっぷですよね」

「ええ、そうです」

「申し上げにくいんですけど、青春18きっぷでは川内より先にはいけませんよ」

「え!?」

なんでも、昔は川内より先の路線があって、西側の海岸線を通って熊本へと抜ける路線があったのだけど、九州新幹線の開業に合わせて第三セクター化し、「肥薩オレンジ鉄道」という別の会社が運営する路線に変わってしまったらしい。JR路線の普通列車しか乗れない青春18きっぷでは、川内に行ったらそのまま先に進めなくなってしまうようだ。

あぶねー。危うく超初期段階で行き止まりという大ミスをやらかすところだった。というかむちゃくちゃ親切な人だな、この人がいなかったら大変なことになるところだった。ついでだから色々と助言をもらおう。

「じゃあ、宮崎県の方を通る路線で行った方がいいんですね」

この人はきっと鉄道路線の神なので、きっと良いルートを示してくださるに違いない。

「うーん、どちらまでいくんですか? 最終的に」

「稚内です」

「へ?」

「稚内です」

「何県の?」

「北海道の」

「そう、北海道の稚内ですか。そうですか、なるほどなるほど」

「ええ、北海道の稚内なんです」

「なんでそんなところまで行くんですか?」

「(それは僕にもわからない)」

こういった心温まるやりとりがあり、頂けた助言が「とりあえず九州を脱出することを今日の目標にして、第三のルートを通るのがベスト」ということ。宮崎県の海岸線を通る東側ルートも列車の本数的にあまりお勧めはしない。西側は行き止まりなのでダメ。そこで第三ルート「隼人駅」というところで乗り換えることができる肥薩線という路線、これを使うべきらしい。東側でも西側でもない、ちょうどど真ん中の山間部を通り抜けていく第三のルート、これが良いそうだ。

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この青で示したルートこそが正解だ。ということは8時9分発の国分行きに乗り込むのが正解か。さすが鉄道路線の神、良いルートを示してくださった。丁重にお礼を言って別れる。

 

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確かに切符の料金表をよくよく見てみると、川内より先に何も線がひかれてない。危ないところだった。川内駅に行ってはいけない。隼人駅で乗り換えて吉松駅を目指すのが正解だ。

 

AM8:09発 日豊本線(鹿児島本線) 国分行き

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車内は通学の高校生たちで混み合っていた。

駅を出てしばらく走るとすぐに海岸線へと出て、車窓から桜島が見えた。

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あの親切な人がいなければ、今頃川内駅で半べそかきながら「なんだよオレンジ鉄道って、全然オレンジじゃねえじゃねえか」とか悪態をついていたかもしれない。こうして桜島を眺めることもなかったかもしれない。そう思うと異常に感慨深い。

きっちりと駅にチェックインしつつ景色を眺めていたら、すぐに目当ての隼人駅に到着した。

 

AM8:46 隼人駅(鹿児島県)

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チェックインした駅
 鹿児島中央駅前、加治屋町、高見橋、市役所前(鹿児島)、桜島桟橋通、鹿児島駅前、鹿児島、竜ヶ水、重富、姶良、帖佐、錦江、加治木、隼人
 [14駅/累計45駅/移動距離88km]

この駅は宮崎方面へと向かう日豊本線と、先ほど導きだした正解ルートである肥薩線の分岐駅であり、さらには鹿児島空港まで行くバスも出たりしているらしい。近くに高校や大学もあるみたいで利用客はまあまあ多い。それでも周囲の雰囲気は、鹿児島中央駅のそれより随分とのどかだ。

乗り換え時間は16分ほどなのであまり時間はない。もう既にホームに次の列車が待機していたので、駅周辺を見て回る時間はなかった。

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AM9:09発 肥薩線-吉都線 都城行き(吉松経由)

一両しかない列車だ。

この一両の列車も瞬く間に通学の高校生で満たされた。一般の利用客や観光客はおらず、車両内すべてが瑞々しいほどに青春ってやつを醸し出してる高校生で満たされていた。こいつらがいきなり歌い出して踊りだしてポカリのCMみたいになったらどうしよう、僕も踊った方がいいのか。でもオッサンだぞ。そんなことを考えていたら、青春を満載した列車は滑るように走りだした。

というか、こいつらこそ青春そのものなわけだから、青春18きっぷにうってつけなわけで、稚内に行くべきではないか、そんな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えとしていると途方もないことが巻き起こった。

走りだして何駅かすると、ちょっと信じられないレベルの森の中を走るようになったのだ。草木をかき分けて進行しているんじゃないかと思うほどの何もない地帯で、民家とかも全然ない。そうなると怪しくなってくるのが電波である。

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携帯電話の電波はすぐに3Gに格下げされ、さらにその3Gすらすごい勢いで薄らいでいく。

 

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あっという間に圏外に。車内の高校生たちは慣れているのか動揺している様子がない。スマホゲームに興じていたのに当たり前のようにやめて友人とのおしゃべりに移行していた。圏外であることを当たり前のように享受し、受け入れていたのだ。狼狽していたのは車内にいる唯一のオッサンだけである。

 

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駅メモはサーバーと連動して動いているわけで、当然ながら圏外となると全く駅にチェックインできない。二つか三つか、駅を通過する間、ずっと圏外で何もすることができない時間が過ぎた。ここまでしっかりチェックインしてきたのに、こんなことで取りこぼすなんて。

 

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と思ったら、なんか最初にいくつかもらえたアイテムの中に「レーダー」なるものがあり、これが周囲の駅であれば最寄りでなくてもチェックインできるというアイテムらしく、見事に取りこぼした駅にチェックインすることができた。これはいい。たぶん4駅くらいしか射程がないのだけど、寝過ごしたりした時はこれで取るしかない。数に限りがあるので大切に使おう。

山間部を1時間ほど走ると吉松駅へと到着した。

 

AM10:03 吉松駅(鹿児島県)

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チェックインした駅
 日当山、中福良、表木山、嘉例川、霧島温泉、植村、大隅横川、栗野、京町温泉、鶴丸、吉松
 [11駅/累計56駅/移動距離117km]

さて、ここから熊本に抜けるための「人吉方面」の列車の時刻表を調べる。

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かなり本数が少ないことに驚くが、どうやら2時間ほどの待ち時間があるらしい。この旅で初のロング乗り換え時間だ。ここは途中下車も自由自在、青春18きっぷの旅の醍醐味として駅周辺を観光するしかない。

 

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のどかな場所にある駅。

 

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なんか情報過多すぎてこの画像、どこから突っ込んでいいのかわからねえな。

 

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駅を出ると、無料の鉄道の資料館なるものがある。その横にはSLが展示されている。

 

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まあ、この辺はたとえジックリ見たとしても10分くらいしか時間を潰せません。

他に何かないかなと駅前を眺めると、

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温泉がありやがる!

まじかー、見知らぬ旅先、疲れた体、汗ばんだこのボディ、2時間の空白、そして温泉、これで入らないやつがいたとしたらそれはもう人間じゃねえ。早速、温泉施設へと駆け寄る。

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ド――ン。源泉かけ流しの文字が勇ましい。これはもう神がくれたご褒美に違いない。

早速入りましょうかねと入り口を見つめると

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いやー、入浴料250円とは安いですな。最高じゃないですか、と思っていると一番下の表示が目に飛び込んできます。

「休日 20日と21日の午前」

これはどういう設定なのか。日本語は難しい。20日と21日の両日、午前が休みなのか、それとも20日は終日休みで、21日の午前まで1日半休むということなのか、なんだか分かりにくい設定だなと思っていると、気が付きます。あれ、今日って……。

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完全に21日の午前。

どっちの解釈をしてもピンポイントで休日という間の悪さ。とんでもない。運がないにもほどがある。せっかく源泉かけ流しの温泉に入れると思ったのに休みかーと落胆していると、中からは普通に人がいるような気配がしている。

ダメもとで温泉施設のドアを開けてみると…

「へいらっしゃい!250円!」

と、受付で仁王立ちしているオッサンが。どうやら営業しているらしい。もう訳が分からない。とにかく、やってるなら入らない手はない。普通に250円払って入浴することにした。

お金を払った際に、やっぱり気になったのでそれとなく…

「すいません、表に21日の午前は休みって書いてあったんですけど、今って21日の午前ですよね、なんでやってるんですか?」

って質問したら、すげえ満面の笑みを返されただけだった。あの、まさかですけど、もしかして定休日を忘れてたってことはないですよね。いや、こりゃ忘れてたな。

細かいことは気にせず、さっそく脱衣所へと行くと、一組の服が脱いであって先客がいる様子。続けと言わんばかりに服を脱ぎ捨てて温泉に突入すると、風呂場のど真ん中で爺さんが座禅を組んで瞑想していた。

風呂に入るでもなく、体を洗うでもなく、ただ床に座って微動だにせず瞑想をする爺さん。なんだろう、即身仏でも作ろうとしてるのかなって思ったのだけど、もしかしたらそういうオブジェなのかもしれないと思いつつ、気にせず入浴をすることに。

体を洗い、お湯に浸かる。最高。体がバラバラにほぐれそうや。もう18きっぷの旅なんてバカなことやめて、この辺で旅館でも取ってゆっくり過ごしたい。そして明日はパラグライダーをやりにいくんだ。18きっぷ最南端から最北端の旅なんて危険だから、真似する人が出たらどうするんだって批判が高まって中止になるべきなのである。

そんなバカなことを考えてるうちも爺さんは微動だにしなくて、これもしかして僕には見えないだけで爺さんは精神世界で妖魔たちと戦っているのでは、世界を救おうとしてるのでは、なんて考えが浮かんできて、そしたら窓の外から本格的な雷鳴が聞こえてきてですね、あ、これいまボス的な妖魔がでてきたやつだ、ってなったんです。ええ、早い話が、ここまで5時間くらい列車に揺られただけで精神的に疲れてきて訳のわからないことを考え始めているんです。

さて、じっくりと体をほぐしたので、相変わらず妖魔と戦っている爺さんを尻目に風呂を上がります。まだもうちょっと時間あるんで、この辺の名物とか食べて少し早い昼食にしますか、そう考えたんです。

でもまあ、建物から出てみると、先ほどの雷鳴からかなり激しい雨が降っていまして、傘を持っていない僕としてはとてもじゃないが街を散策できない状態に。せっかく温泉に入ったのに雨に濡れちゃしょうがないですからね。仕方ないので大人しく駅に戻って次の列車を待つことに。

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駅の待合室はこのように畳敷きの部分があって、足を伸ばしてリラックスできるようになっていた。なんだかここがすごく涼しくて吹き抜ける風も気持ちよく、ものすごく快適に過ごすことができた。

そうこうしていると次の列車が来そうな時間になったのでホームに向かうことに。

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けっこう雨が激しくなってきている。

 

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これが次の列車。ホームに入ってきて最初に感じたのは、あれ、なんか今までの列車と雰囲気が違う、ってことだった。なんというか、溢れ出る高級感みたいなものがある。

 

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車内に入ってみてさらに驚愕。完全に青春18きっぷで乗れるレベルの列車じゃない。絶対にこれ別に特急料金とか必要なやつだ。不安になって何度も駅員さんに質問するのだけど、「別に青春18きっぷで乗って構わない」と言うだけ。本当にこんな高級感が溢れる列車に乗っていいのかよ。騙されてるんじゃないだろうか。後から払えって言われても困るよ。

 

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机まで兼ね備えたシート。これは上流階級の人とかが乗るやつだろ。我々18きっぷの民には無縁の存在でしょ。でも、駅員さんが乗れるって言うんだから、ここは乗っておくしかない、そういうことですよ。

 

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ここまで立派な机を兼ね備えたシートがあるなら駅弁を買うしかない。そんな想いに駆られまして、ホームで販売していた駅弁を購入しました。駅弁を楽しむのに机の有無は極めて重要です。机がない場合、せっかくの駅弁を膝の上に乗せて貧乏臭く惨たらしい感じで食べなくてはなりませんからね。こんなに立派な机があるなら駅弁を買うしかない。みよ、この威風堂々のパッケージを。こりゃもう、腰を抜かすほど立派な弁当に違いない。

パカッ

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わっ、けっこう普通。思ってたのの3倍くらい普通。

それでもまあ、机で優雅に食べることできますからね。とても18きっぷの旅とは思えない優雅さがそこにはあるんですよ。いやー、最高だね、なんて考えながら食べようとしていると、車内放送が入りました。

「ボックス席は全て指定席となります。指定席券をお持ちでないお客様はお座りになれません。自由席にお座りください」

なんと。ボックス席は指定席らしい。今僕が駅弁を広げているこの場所は誰がどう見ても、どんなに自分に都合の良いように解釈しても見紛うことなきボックス席である。完全無欠の指定席だ。そうだよな、世の中そんなにうまい話はないよな。

スゴスゴと退散し、自由席へと移動する。

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ここが自由席らしい。レトロ風で、なんとも豪勢な、おおよそ列車の椅子とは思えない良い座席だが、残念ながら机がない。もう開けてしまったものは仕方がないので、この自由席で膝の上に駅弁を乗せて貧乏くさい感じで食した。そうこうしているうちに列車は人吉駅に向かって発車した。

 

AM11:49発 肥薩線 しんぺい2号 人吉行

走り出してからの車内放送を聞いて分かったが、どうやらこの列車は「観光列車」という位置づけらしい。宮崎―熊本の県境の山越えをする路線で、綺麗な景色を楽しむことに特化した列車のようだ。だから18きっぷで乗ることのできる普通列車なのに「指定席」という概念が存在する。車内も豪華でレトロ調な佇まいなのも観光列車だからだろう。

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観光列車なので途中の停車駅ではしっかり停車し、乗客が駅を見学する時間が与えられている。駅ではその乗客を狙ったおばあちゃん達が売店を展開しており、地元の特産品やら土産物を販売している。

最初の停車駅であるここ「真幸駅」は真の幸せと書く駅名から、幸せが訪れる駅として人気があるらしい。

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ホームには幸福の鐘があり、だれでも鳴らすことができる。

 

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こんな感じでおばちゃんたちが店を出して特産品などを販売している。
ちなみに、「真幸駅」の名前が入った入場券が縁起が良いと人気であり、これも駅舎の中でおばちゃんが販売している。

 

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数分の停車時間ののちに出発。おばちゃんたちがむちゃくちゃ笑顔で手を振ってくれる。

 

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駅を出てものの2分ほど、何もない場所で突如として列車が停止した。さっき駅で停車したばかりなのになんでこんな場所で停まるんだろう。周りに何もないぞ、と考えつつ、一つの可能性が頭の中に生まれてきた。

「これはもしかしてスイッチバックではないだろううか?」

スイッチバックとは、山越えなどの急勾配を克服するため、線路をZ字型に建設し、ポイントの切り替えと列車の逆行を繰り返して高度を稼いでいく方法だ。図にして表すとこんな感じになる。

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このスイッチバック形式の線路は山越えの手段として数多く建設されたようだが、高速化の妨げになるといった点からトンネルへの切り替えが進められ、この日本内でも現存するものはそう多くないらしい。絶対、こんな場所で停まるのはスイッチバックだ。噂のスイッチバックをこんな場所で見られるのかもしれない。

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ババババ!

運転手さん出てきたー!絶対にスイッチバックだ!

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スイッチバックは停車後に進行方向を逆にしないといけないので運転手さんが運転席を飛び出してきて、少し小走りに後ろの車両へと走っていく。

この光景には僕の向かいに座っていた親子連れのお父さんが大興奮していて、

「みろ!タダシ、スイッチバックだぞ!」

と叫んだんですけど、タダシはDSに夢中で、ほーんって感じで生返事していました。スイッチバックはいいからSwitch買ってくれ、くらい思っているのかもしれませんね。

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スイッチバックによるターンを決めたので、さきほど停車した真幸駅が、ちょっと下に見える場所を走行する。まだおばちゃんがこっちに向かって手を振ってる光景に狂気を感じた。

 

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妖魔と戦う爺さんの影響であいにくの雨模様だが、景色の良い場所ではしばし停車してくれる。なかなかサービスの行き届いた観光列車だ。しばらく走るとどんどん標高があがっていき、次の駅に停車した。ここでもある程度の停車時間があり、駅を見学できるようになっている。

 

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矢岳駅。いつの間にか熊本県に入っていた。鹿児島、宮崎、ときて3県目に突入だ。しばしの休憩時間を挟み、また列車は出発していく。山越えが終わったのか、今度はぐんぐん下っていく。しばらくすると、また何もない場所で停車した。

くるぞ、下りのスイッチバックだ!

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ババババ!

進行方向を変えるためにまた運転手さんが車内を駆け抜けるのだけど、スイッチバックも二回目ともなると乗客も慣れっこであまり興奮していない。ただ、僕の向かいに座るお父さんだけは大興奮で、

「みろタダシ!またスイッチバックだ!すごいな!」

ただタダシはDSに夢中で、ほーんって感じだった。やっぱりSwitchとか欲しいんでしょうね。

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しばらく下っていくと、「大畑駅」に停車する。どうやらこの駅には「名刺を貼ると出世する」という言い伝えがあるらしい。そのため、降りた乗客が競うようにして名刺を貼りにいっていた。

 

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貼ってあるものは全て名刺。古今東西ありとあらゆる職種の名刺が貼ってあった。みんなよっぽど出世したいらしい。

 

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完全に何か禍々しいものを封じ込めてるとしか思えない。ちょっとこれは異様な感じがしたな。

さて、再び列車は動きだし、終点の人吉駅を目指す。ちなみに、車内で色々アナウンスしてくれたり、駅で解説してくれたり、販売までしてくれる車掌的な女性がいるのだけど、くっそ美人だった。

 

13:05 人吉駅(熊本県)

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チェックインした駅
 真幸、矢岳、大畑、川村(熊本)、相良藩願成寺、人吉(人吉温泉)
 [6駅/累計62駅/移動距離145km]

旅のパートナーである「みろく」が結構レベルアップして強くなっていて、別のプレイヤーを倒して駅を守護する存在にぼちぼちなり始めていた。こうなると俄然面白くなってくる。駅を守護すればするほど経験値が入り、さらに「みろく」が強くなるようだ。どうやって取るか、からどうやって守るかに意識が変わりつつあった。

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ちなみに、人吉駅のホームでは二つの観光列車の共演が見られた。右が乗ってきた「しんぺい2号」で、左の青いやつが熊本市へと向かう「かわせみ号」らしい。ちなみに、「かわせみ号」は特急なので我々18きっぷの民は乗ることを許されていない。

 

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ちょっとだけ上流階級の世界を見てみたくて特急列車の中を覗いてみると、完全に豪華絢爛で、とてもじゃないが我々18キップの民には手が届かない存在だった。

 

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13:54発 肥薩線 八代行

49分の乗り換え時間を経て次に乗る列車がこれである。こういった旅を続けていると49分の乗り換え時間はかなり接続が良い部類に入る。東京では乗り換え時間8分とかでも待たされた気がするが、早くも待ち時間49分でも微動だにしない精神状態へと移行した。

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山と山の間を流れる川に沿って線路は続いていく。そろそろ出発から10時間ほどが経過し、腰が痛いわ尻が痛いわという状況になってくる。けれども、まだ九州脱出はおろか、位置的にも九州の半分にも到達していない事実に心が折れそうになる。

 

15:07 八代駅(熊本県)

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チェックインした駅
 西人吉、渡、那良口、一勝地、球泉洞、白石(熊本)、吉尾、海路、瀬戸石、鎌瀬、葉木、坂本(熊本)、段、八代
 [14駅/累計76駅/移動距離189km]

山間を抜け、けっこう都市部に出たなと思っていたらすぐに八代駅に到達した。僕の「みろく」もレベルが23となりかなり強くなっている。ちょっとした駅の守護神なら簡単に蹴散らしてしまうほどだ。

八代駅での乗り換えは16分。かなりタイトな乗り換えで、ホームで待っていたらすぐに熊本行きの列車がやってきた。

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15:23発 鹿児島本線 熊本行

ここからは特にルートに悩む必要がない。ただ九州脱出を目指して北上していくだけである。早いものでもう帰宅時間になるのか、制服姿の高校生で溢れていた。その高校生に小汚いオッサンが混じって列車に揺られていく。ここで少し余裕が出てきたので駅メモの攻略について考えた。

僕が育ててきた「みろく」もまあまあ強くなり、駅にチェックインした際にそこを守護する別プレイヤーの「でんこ」を蹴散らすことができ、駅を守護できるようになったのだけど、当然ながら、駅を守護するようになると他のプレイヤーから攻撃を受けるのである。

長い時間駅を守護しているほど経験値が入るので、できることなら長いこと守護していたい。けれども駅を取ってから数分で取り返されることが多々あるのだ。それはまあ、いくら強くなったとはいえ今日始めたばかりのひよっこなので仕方ないって分かるのだけど、問題は別の部分にある。

例えば、複数の駅を「みろく」が守護していた場合、複数の駅分の攻撃を受けるのである。これでは「みろく」が持たないのだ。おまけに、一度負けると守護していた全ての駅の守護が解除されてしまうことになる。これが痛い。たまに守護する者がいない駅に出会うのはこれが原因だったのだ。

つまり、「みろく」単体で攻略している限り、長時間駅を守護することが難しいっぽいのだ。これは何とかしなければならない。 解決策はすぐみつかった。アプリの説明を見てみると「連結」という機能であと3体の「でんこ」を保持できるようになるらしい。最初に貰ったガチャ券を駆使して3体の「でんこ」をゲットし、これらにローテーションで駅を守護させる。これなら1体倒されても他のでんこが守護する駅は保持される。これがおそらく攻略の近道だ。

早速、ガチャを回すとなかなか良さそうな3体の「でんこ」がでてきた。

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もえ。機器メンテ、修復を行う救護タイプのでんこ。とのこと。おそらく体力回復とかしてくれるのだろう。お腹の防御力も申し分なし。

 

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ふぶ。耐寒性に優れたでんこ。これは稚内を目指すのに最適なでんこではないか。絶対にお腹冷えたとか言い出さない。

 

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ベアトリス。とある西の国出身のでんこ。少し肌の露出が多く寒さに弱そうに見えるが、しっかりお腹は防御されているので良しとする。

今後はこれに我らが「みろく」を加えた4体で攻略していくことに。駅にチェックインしまくりながら新体制を整えていたらあっという間に熊本に到着した。

 

16:01 熊本駅(熊本県)

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チェックインした駅
 新八代、千丁、有佐、小川(熊本)、松橋、宇土、富合、川尻、西熊本、田崎橋、熊本
 [11駅/累計87駅/移動距離226km]

時間的余裕があれば熊本の街を観て回りたかったが、掲示板を見てみると乗り換え時間は14分しかないらしい。非常にタイトな乗り換えだ。すぐに次の列車がホームに滑り込んできたので余裕なく移動するしかなかった。

 

16:15発 鹿児島本線 鳥栖行

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自分の中で咀嚼し、納得していたつもりだったが、自分の中で「なんで稚内までいくんだろう」という気持ちが強まってくるのを感じた。それは怒りに近い感情だったのかもしれない。稚内まで行く、一万歩譲って行くとしても飛行機で行くべきである。なんで青春18きっぷで……、やり切れない気持ちが生まれつつあった。

目の前にカップルがいた。

どこかに遊びに行った帰りなのか、二人は満足そうな顔をして膝のところでお互いの手の指をグッチョグチョに絡ませ合っていた。

「遠かったね」

「うん、でも楽しかった」

そんな会話が聞こえてくる。

「また来ようね」

「うん」

「わたし、タカシとだったらどんな遠くでもいけちゃう。どれだけ電車に乗っても辛くない」

「俺も」

ああ、そうですか。どんな遠くでも苦じゃないですか。じゃあ稚内まで行ってこい!その内容をSPOTで書け!駅へのチェックインを忘れるな!ラブホテルにチェックインじゃねえぞ!と18きっぷを投げつけそうになった。危ない危ない。これじゃあただの頭おかしい人じゃないか。冷静にならねば。 けっこう都市部になってきたので駅以外の場所でもガンガンと別路線の駅へチェックインできるようになってきた。「目標をセンターに入れてスイッチ」とかブツブツ呟きながら淡々とチェックインしていく。ある駅に停車した時、とんでもない事件が起こった。

「あれれー? もしかしてなんですけど……」

乗り込んできた乗客に突如として話しかけられた。驚いた。頭のおかしい人かと身構えた。

顔を見るとどこかで見た顔で、すぐには思い出せなかったけど昔の職場で同僚だった人だった。まさかこんな場所で会うとは。偶然にも程があるだろ。

「ですよね、すごい偶然。いま熊本で働いてるんですよ。仕事終わって帰るところなんです」

元同僚はすごい話しかけてくるんだけど、僕はもう、駅にチェックインしなければならないので適当に返事しつつスマホの画面を凝視していた。

「今東京に住んでるんですよね?どうしてこんな場所で電車に乗ってるんですか?」

という元同僚の言葉に少なからず動揺し、

「りょ、旅行だよ」

と答えたのだけど、元同僚が異常に食いついてきて

「どこからどこまでいくんですか?」

って聞いてくるもんだから、さすがに「稚内まで行く」「最南端から最北端」とか答えたら完全に頭のおかしい人になりますし、「なんでそんなことを?」って聞かれたら「それは僕にも分からない」と答えるしかないので、適当に熊本から福岡まで行くんだ!って答えておきました。

元同僚とも別れ、そろそろうっすらと日が陰ってきた景色を眺めていたら、車内放送で「博多方面お急ぎの方は大牟田駅で快速にお乗り換えください」と言われたので、快速は18きっぷでも乗ることができる!といそいそと乗り換えることにした。

 

17:08 大牟田駅(福岡県)

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チェックインした駅
 熊本駅前、新町(熊本)、段山町、本妙寺入口、上熊本、韓々坂、崇城大学前、植木、田原坂、西里、木葉、肥後伊倉、玉名、大野下、長洲、南荒尾、荒尾(熊本)、大牟田
 [18駅/累計105駅/移動距離268km]

乗り換え時間2分という途方もない、魔の乗り換えトリックレベルの過程を経て門司港行きへと乗り換えた。門司港といえば九州の玄関口だ。九州脱出は近い。なんだかテンションが上がってきた。

 

17:10発 鹿児島本線快速 門司港行

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なんだか車両もかっこよく椅子も座りごごちが良い。会社から帰宅する人が多いのか車内はなかなか混み合っていた。

 

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どんどんと日が沈んでいく。

さて、快速電車とは普段ならちょっとしょぼい駅なんかを飛ばして走ってくれる便利な存在なのだが、この旅に限ってはそうでもない。飛ばされる駅たちもチェックインしていこうと考えると一瞬たりとも気が抜けないのだ。むしろ、きっちり停車してくれる普通列車よりも気を張り詰めていなければならず、精神的にかなり疲弊する。

肉体的な疲労はもちろんのこと、こういった精神的疲労もあるのだろう、おまけに朝の5時からずっと13時間近く列車の中という雑多な喧騒の中にいると、自分でも想像すらしていなかった精神状態に追い込まれることになる。その症状がついに現れ始めた。

どういう状態なのか端的に言ってしまうと、「自分と他人の境界が曖昧になる」という異常状態だ。列車の中の雑音というものは本当に雑多で、あらゆる話し声や物音が混ざってる。その音全てが情報を持っていて、途方もない勢いで押し寄せてくる。いわば情報の洪水だ。そこに列車の振動や騒音が加わるともうメチャクチャで、自己を確立するのが難しくなる。

具体的に言うと、目の前で会話しているおばちゃん二人、これはどう考えても他人なのだけど、異常な精神状態に陥ってるので他人の気がしない。僕を交えて3人で会話しているように思えてくるのだ。

「それでね、竹中さんが言うわけよ、旦那が反対してるから参加できないって」

「んまー、心の狭い旦那ねー」

とか会話している時に、危うく「でも竹中さんの旦那さんの言い分も分かるし、もしかしたら竹中さん自身が参加したくなくて旦那に責任を転嫁している可能性すらある」って口を挟みそうになるんですよ。

そんな感じで、列車の中の乗客全てが僕を交えて会話しているような奇妙な感覚に陥り、何度となく色々な人の会話に口を挟みそうになってハッとする、ってのを繰り返しながら、ついに小倉駅へと到着した。実に乗車時間2時間30分の長丁場だった。

 

19:36 小倉駅(福岡県)

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チェックインした駅
 新栄町(福岡)、西鉄銀水、銀水、東甘木、倉永、吉野(福岡)、西鉄渡瀬、渡瀬(福岡)、南瀬高、瀬高、筑後船小屋、羽犬塚、西牟田、荒木、津福、試験場前、久留米、肥前旭、鳥栖、田代、弥生が丘、立野(佐賀)、基山、けやき台、原田(福岡)、天拝山、二日市、都府楼南、水城、大野城、春日(福岡)、南福岡、笹原、竹下、博多、千代県庁口、吉塚、箱崎、貝塚(福岡)、名島、西鉄千早、千早、香椎宮前、香椎、九産大前、唐の原、和白、福工大前、新宮中央、ししぶ、古賀、千鳥、福間、東福間、東郷、赤間、教育大前、海老津、遠賀川、水巻、折尾、陣原、熊西、西黒崎、黒崎、八幡(福岡)、スペースワールド、枝光、戸畑、九州工大前、西小倉、平和通、小倉(福岡)
 [73駅/累計178駅/移動距離407km]

さて、いよいよ次の乗り換えで九州脱出となるわけである。下関行きの列車までには若干の余裕があるので有名な「かしわうどん」を食べることに。ここ小倉駅のホームで営業する立ち食いの「かしわうどん」は有名らしい。

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うむ、美味い。

思えばここまであまりちゃんとしたものを食べていなかったので体中に栄養がいきわたる感じがした。完全に生き返りますわ、これ。

 

19:51発 山陽本線 下関行

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これで九州脱出!いやーすげえ長丁場だった。正直、九州なんて島でしょ。脱出なんてちょろいちょろいって思っていた部分もあったけれども、実際に普通列車のみで旅をすると九州はでかい。とにかくすごい。感慨めいた想いを胸に九州最後の乗り換えを決行した。

 

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そういった仕様なのか、それともトラブルなのか知らないけど、走ってる最中に何度もバシュンとか言って車内の電灯が落ちて真っ暗になっていた。これから海底トンネルを通って本州入りするのだけど、大丈夫かいな、海の底で停まったりしないだろうかと不安になりながらつき進んだ。

 

20:06 下関駅(山口県)

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チェックインした駅
 門司、門司港、小森江、下関
 [4駅/累計182駅/移動距離413km]

ついに、ついに九州脱出である。最南端から出発するとほぼ1日がかりという事実に驚愕した。本当に残り4日分で稚内までいけるんだろうか。不安だし、時間的にもまだまだなのでもうちょっと先に進んでおきたい気持ちが沸き上がってきた。

 

20:19発 山陽本線 柳井行

ということで、まだまだ先に進めそうなので乗り換え時間13分で「柳井駅」まで向かう列車に乗り込む。ここで注意しなくてならないのは、終着駅があまり聞いたことないような場所だった場合、それが終電である可能性が非常に高い、ということだ。

柳井駅のことを悪く言うつもりはないが、はっきりいってあまり聞いたことない駅だ。そこまで行く列車が待機しているということはまだ夜の8時台だというのに終電である可能性が高い。不安になってホームにいた駅員さんに尋ねると、やはり柳井駅より先の接続はないらしい。ということは、これが本日最後の乗り換えになるわけだ。そうなってくると一つの問題が生じてくる。

柳井駅のことを悪く言うつもりはないが、はっきりいってあまり聞いたことない駅だ。そんなところに終電で放り出されたらどうなるか。別に始発まで待つことはそこまで苦ではないが、駅メモを使わないといけないというルールがある限り、スマホの電源は確保せねばならない。ホテルなりネカフェなり、充電できる場所の確保は必須条件だ。そうなると、別に悪く言うつもりはないが柳井駅は少し心許ない。柳井駅の周りに何があるかスマホで調べれば一発だが、ルール上それはできない。情報がない状態であまり大博打をするわけにはいかないのだ。

ということで、柳井駅行きの列車に乗り込みつつ、都会的な駅があればそこで降りて電源確保。1日目の旅を終わりにするプランを立てた。柳井駅を悪く言うつもりはないが、やはり柳井駅では不安だ。柳井駅ではダメだ。 柳井駅はまったく頼りにならない。さて、もう完全に夜になってしまい、車窓から見える景色は漆黒の闇そのもの。家の明かりや街灯すらもほとんど見えない場所を駆け抜けていく。別に柳井駅を悪く言うつもりはないが、どうせ柳井駅もこんな感じの闇なんだろ。

車内の乗客はまばらで、ほとんどが座席に座って寝ている。あまり騒がしくないので幻聴めいたものが聞こえる状態にはならなかった。ただ、すげえ酔っぱらったオッサンがいて、「柳井行きです」という車内アナウンスに絡んでいって「てやんでえ、柳井なんてクソだ!」みたいなことを言ってた。彼は絶対に柳井駅のことを悪くいうつもりがある。僕はそこまで言わない。

しばらく走ると煌びやかな「新山口駅」という新幹線すらも停まる駅に到着したので、ここで1日目の旅を終わりとした。

 

21:28 新山口駅(山口県)

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チェックインした駅
 幡生、綾羅木、新下関、長府、小月、埴生、厚狭、小野田、目出、南中川、岩鼻、居能、宇部、妻崎、厚東、本由良、嘉川、上嘉川、新山口
 [19駅/累計201駅/移動距離476km]

 

1日目のまとめ

ということで、1日目のまとめはこちら。本州に入ったばかり。稚内はまだまだ遠い。

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総評
見どころの多い行程だった。八代以降は都市部を走行し、乗り換えもタイトだったので駅数と距離を稼げたが、あまり散策はできなかった。吉松-人吉間を走る列車は観光列車だけあって見所も多く、青春18きっぷで乗れる列車としてはかなり満足度が高いのでお勧めしたい。自分と他人の境界線が曖昧になる精神状態には気を付けて2日目以降は距離を稼ぎたい。

 

 【次のページ】2日目

 

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