まるでラピュタの世界!夏になると姿を現す曽木発電所遺構が美しい

曽木発電所遺構(曽木発電所跡)は、鹿児島県伊佐市の観光スポット。渇水期の5月~9月にだけ、ダム湖の中から姿を現す遺構です。まさに秘境といった雰囲気で『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせる世界観。湖の中にあることから「カリオストロの城」なんていわれることも。

かつて繁栄した場所が、時代の移り変わりとともに忘れられ、ひっそりと大自然に侵食されている様子は心揺さぶる美しさがあると感じます。

今回ご紹介するのは鹿児島の「曽木発電所遺構」。渇水期の5月~9月にだけ、ダム湖の中から姿を現す遺構です。まさに秘境といった雰囲気で『天空の城ラピュタ』を彷彿とさせる世界観。湖の中にあることから「カリオストロの城」なんていわれることも。

曽木発電所遺構は明治42年(1909年)に竣工された水力発電所の跡で、発電量は最大6300キロワット。その当時の国内最大級の出力です。そのため周辺の下ノ木場地区は、スナックなどが立ち並ぶ栄えた一大集落だったそうです。

11月の曽木発電所遺構。12~1月はもっと水位が増す。

しかし度重なる河川の氾濫により、洪水調節と発電を目的とした鶴田ダムが建てられることになり曽木発電所は廃止の運命に。ダムが完成し貯水開始した昭和40年(1965年)湖底に沈みました。今は渇水期の5月~9月になると湖底から姿を現しています。

わずか半世紀の間で起きた目まぐるしい変遷。かつては一大集落があったなんて嘘のように、すっかり草木が勢いよく茂っています。自然と文明のコントラストが鮮やかに感じられる場所です。

遺構内部への立ち入りは基本禁止ですが、毎年夏限定で遺構内部に入るツアーが開催されています。この記事では、遺構内部の様子やツアー情報、周辺の施設情報について紹介していきましょう。

1. 曽木発電所遺構内部へ!

毎年8月の土日限定で伊佐市観光特産協会による「幻の発電所遺構」ツアーが開催されており、これに申し込めば遺構内部に入ることができます。7月に募集開始で、情報は伊佐観光特産協会のサイトから確認できます。また、facebookページでも最新情報を発信されています。

私も去年参加しました。この記事で紹介する写真は許可を得て今年改めて撮影しています。

8月の鹿児島は暑いので、帽子などを用意してツアーに参加してください。歩きやすい靴や動きやすい服装も必須です。

明治の面影を残すレンガ造りの洋風建築。中に足を踏み入れる瞬間は、特別な冒険をしているようで心躍ります。

人がいなくなった遺構内部に草が生い茂っている様子は、まるで『天空の城ラピュタ』の世界のよう。

10月~4月の秋から春にかけてはダム湖の中に沈んでいるので、これらの草はダム湖から水が引いた5月ごろから生え始めます。撮影したのは6月末、わずかな時間で一気に生い茂る草の力強さに驚かされます。

当時は、ドイツのシーメンス社製の発電機とフォイト社製の水車が計4基設置されていました。閉鎖に伴い、発電所の屋根を解体し、発電機は搬出されたようです。今は発電機が置かれていたであろうくぼみに水が溜まり、水草が生い茂っていました。

落差を利用した水力発電で、これらの穴から水を通して発電していたようです。

金具でレンガを留めるなどの補修をしてこの外観を保っています。

鉄骨で補強もしてあります。

ここで作られた電力は近くにある牛尾大口金山や近隣町村で使われました。またそれ以上の電力量があったため、余剰電力を使い水俣ではカーバイト生産を開始。後に、戦前における日本最大の化学会社へと発展したことから、この発電所は日本化学工場発祥の礎となりました。一方で、高度経済成長の頃には工業排水の影響で水俣病という公害病を引き起こしてしまったという考えさせる一面もあります。

「幻の発電所遺構」ツアー
主催:伊佐市観光特産協会
TEL:0995-29-5013 (平日10時-17時)
URL: http://isa-kankou.com/yoyaku-ikou-2018s/
伊佐市観光特産協会Facebookページ:https://www.facebook.com/isa.kankou/

2. 湖の上から曽木発電所遺構を眺められる船上ツアーも

NPO法人ひっ翔べ!奥さつま探検隊が主催するボートツアーが開催されています。2018年は11月の2日間だけ開催されました。2019年も11月に開催予定だそうです。日程はまだ未定で最新情報は、NPO法人ひっ翔べ!奥さつま探検隊のfacebookページで更新されるのでこちらから確認してください。

参加費は大人1,000円、子ども(中学生以上)500円で保険料、ライフジャケット代込み。ボートに乗って大鶴湖(ダム湖)を周遊しながら曽木発電所遺構の近くまで行きます。

ツアーは約30分。近くの岩々の迫力もなかなかです。タイミングを合わせてぜひ体験していただきたいツアーです。

NPO法人ひっ翔べ!奥さつま探検隊
TEL:0996-59-2522
facebookページ:https://www.facebook.com/hittobe.satsuma/

3.曽木発電所周辺情報

曽木発電所遺構は、普段は川の対岸にある「曽木発電所遺構展望公園」から見られます。基本的に、今までご紹介したツアー以外で曽木発電所遺構を見られるのはこちらからです。

また、曽木発電所遺構から約1.5キロ上流に「曽木の滝公園」があり、滝幅210メートルものダイナミックな曽木の滝が見られるのでこちらも合わせての訪問がおすすめです。そのスケールの大きさから“東洋のナイアガラ”といわれています。

公園内には、曽木の滝から曽木発電所まで水を運んでいた導水路跡が残っており、歩道として歩けるようになっています。

清水神社もあります。紅葉の時期に訪れたら、色づいた木々が鮮やかでした。

曽木の滝公園
住所:鹿児島県伊佐市大口宮人628-41
TEL:0995-23-1311(伊佐市役所)
定休日:無休
料金:無料
URL:https://www.kagoshima-kankou.com/guide/10942/

さらに、曽木発電所遺構から9km下流に行ったところには国土交通省が管理する「鶴田ダム」があります。九州最大規模の重力式コンクリートダムで、川内川の洪水調節と水力発電機能があります。こちらが完成し貯水開始したことで曽木発電所遺構は湖の底に沈みました。

こちらには、「ダムコンシェルジュ」というダムに詳しいスタッフさんがいて、月~金にダム内部や操作室に入れるダムツアーを無料開催しています。

鶴田ダムのサイトから予約できます。参加希望の場合は、お早目の予約がおすすめです。

鶴田ダム
住所:鹿児島県薩摩郡さつま町神子3988-2
TEL:0996-59-2030
定休日:土、日、祝祭日
料金:無料
URL:http://www.qsr.mlit.go.jp/turuta/

いろいろ見て回ったら、汗をさっぱり流したいですよね。近くに温泉もたくさんありますよ。私のおすすめは紫尾温泉。曽木発電所遺構からは車で約35分のところにあります。

6軒の温泉施設と産地直売所がある小さな山里の温泉街です。紫尾温泉の泉質はPH高めのアルカリ性単純温泉。クレンジング効果の高い泉質なので、一日中歩き回って汗でドロドロになった日に入ると、さっぱりしていいですよ。

紫尾温泉は【温泉好き必見!】温泉王国鹿児島から、選りすぐりの秘湯9選をご案内!【絶対行きたくなる】の記事で取り上げているので、よかったら参考にしてみてください。

まとめ

曽木発電所遺構は、年間を通して「曽木発電所展望公園」から見ることができますが、やはり体験していただきたいのは遺構内部に入れるツアー。当時の面影を残すレンガや遺構内部の様子にはノスタルジーを感じます。一方で、勢いよく侵食する草の生命力に驚かされ、自然と文明の対比を感じ取ることができます。限られた期間だけのチャンスなので、ぜひスケジュールを合わせて訪れてみてください。